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2008年10月22日 自発呼吸ある時に、夫が臓器提供意思カード所持を告知
急変時DNR方針の患者に人工呼吸器装着、77例目脳死
無呼吸テスト時に血圧低下 名古屋第二赤十字病院
2008年10月13日 第36回日本救急医学会総会・学術集会
杏林大学:人工呼吸以外で治療を中止、カルテの記載曖昧が35%
大阪大学:臨床的脳死以外は、終末期判断に医師の意見分かれる
武蔵野赤十字病院:延命治療 高齢者施設の66%以上が事前確認
福岡県粕屋医師会:住民の既往歴、服薬歴、アレルギーなど情報登録
山口大学病院:電気生理学的検査と画像診断をもとに全脳機能不全と診断
2008年10月 4日 シンポジウム 小児の長期人工呼吸の適応と選択
京都:自宅で不可解な死を遂げた在宅人工呼吸2例
山田氏:選択的医療を受け容れやすい、にくい症例
鹿児島:最重症在宅人工呼吸療法患児の看取り
41回日本小児呼吸器疾患学会
   

20081022

自発呼吸ある時に、夫が臓器提供意思カード所持を告知
急変時DNR方針の患者に人工呼吸器装着、77例目脳死
無呼吸テスト時に血圧低下 名古屋第二赤十字病院
 

 2008年10月22日、名古屋第二赤十字病院に入院中の40歳代女性が法的に脳死(77例目)と判定され、翌10月23日、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓が摘出された。

 第77目の脳死下での臓器提供事例に係る検証結果に関する報告書http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002f88u-att/2r9852000002f8cd.pdfは、p2の冒頭で「本報告書は、平成22年10月に行われた第77例目の脳死下での臓器提供事例・・・」と、法的脳死判定を行なった年を2年間、間違えている(2012年9月23日現在)。

 報告書によると、40代女性は高血圧と肝臓血管腫の既往があり、5年前に出血型もやもや病に対して両側の頭蓋外−頭蓋内血行再建術、3年前に胆嚢摘出術を受けていた。
 10月15日15:30頃、娘が帰宅すると鍵のかかった室内からうめき声が聞こえたため、父親を呼びに行った。夫が中に入ると倒れて左半身麻痺を認めたため、15:57救急要請。16:03に救急隊が到着した時の意識はJCS 100、両側の瞳孔は散大し対光反射はなかったが、自発呼吸は認められた。16:21に当該病院に搬入された際、意識はJCS 200、血圧は154/−mmHg、脈拍は72/分、呼吸は21回/分、両側共に対光反射は消失していた。救急外来にてニカルジピンの持続静注が開始され、以後は収縮期血圧130mmHg前後に維持された。
 頭部CTで右視床から中脳にかけて5×4×5cmの血腫が認められ、脳室穿破を伴い、10mmの正中偏位、脳腫脹が見られた。血腫が中脳に達しており外科治療によっても意識の改善は望めないことが医師から説明され、家族の同意のもとSCU(脳卒中ケアユニット)で降圧薬、止血薬、脳浮腫改善薬による保存的治療が開始された。
 10月16日(発症翌日)に施行されたCTでは、血腫の増大は認めなかったが正中偏位は12mmと増悪していた。家族との相談・同意のもとに、保存的治療を行い急変時にはDNRの方針となったが、この際に夫から本人が臓器提供意思表示カードを持っていたとの情報提供があった。10月19日(発症5日目)、脳死下臓器提供(眼球以外)の記載のあるカードが見つかり、家族も臓器提供に同意した。
 10月20日(発症6日目)03:54には深昏睡となり自発呼吸が停止した。当初、DNRの方針であったが、家族の同意のもとに、気管挿管の上、人工呼吸器が装着され、ICUに入室した。同日9時に脳波測定を行ったところ波形が認められたが、この際に前庭反射以外の6項目の脳幹反射を確認した(同日12時)ところ、いずれも消失していた(報告書p3)。

 報告書p9は「10月16日、意識レベル低下し、頭部CT上、血腫増大を認める。主治医より家族へ救命困難である旨説明したところ、家族より意思表示カードを所持している旨の申し出があったものの、迷いがあった。10月19日、家族より意思表示カードの提示あり」としている。

 翌10月21日(発症7日目)、07:30より再度脳波測定を行ったところ平坦脳波が確認され、さらに前庭反射も陰性で、10:46に臨床的脳死と診断された。「なお、経過中脳死判定に影響し得る薬剤は全く投与されていない」としている。

 法的脳死判定第1回検査、無呼吸テスト開始前の血圧は121/72mmHg、2分後に113/65mmHg、4分後に93/54mmHg、6分後に94/56mmHg、終了後に111/75mmHgとなった。
 第2回検査、無呼吸テスト開始前の血圧は149/90mmHg、2分後146/86mmHg、4分後128/78mmHg、6分後116/72mmHg、終了後に164/94mmHgとなった。

 レシピエントの選択において、肺は第15候補者の移植実施施設側が移植を受諾し、左肺移植が実施された。第1候補者の移植実施施設側が移植を一旦受諾したものの、ドナーの医学的理由により辞退した。第2〜5、7、12候補者はレシピエントの医学的理由、第6、8〜11、13、14候補者はドナーの医学的理由により辞退した。右肺は、ドナーの医学的理由により、移植は見送られた。
 膵臓については、第3候補者の移植実施施設側が移植を受諾し、膵腎同時移植の移植が実施された。第1、2候補者の移植実施施設側が移植を一旦受諾したものの、レシピエントの都合により辞退した。
 腎臓については、第4候補者の移植実施施設側が移植を受諾し、移植が実施された。第1、3候補者はレシピエントの医学的理由により辞退した。第2候補者は未更新であったため、意思確認は行わなかった。
 なお、膵臓第1候補者は膵臓単独移植希望であり、受諾した時点で腎臓移植は第4、5候補者がそれぞれの移植実施施設で準備を進めていたが、膵臓第1候補者が摘出直前に辞退したため、膵臓第3候補者が膵腎同時移植を受けることとなり、腎臓第5候補者が受けられなくなった。

 


20081013

第36回日本救急医学会総会・学術集会
杏林大学:人工呼吸以外で治療を中止、カルテの記載曖昧が35%
大阪大学:臨床的脳死以外は、終末期判断に医師の意見分かれる
武蔵野赤十字病院:延命治療 高齢者施設の66%以上が事前確認
福岡県粕屋医師会:住民の既往歴、服薬歴、アレルギーなど情報登録
山口大学病院:電気生理学的検査と画像診断をもとに全脳機能不全と診断
 

 2008年10月13日〜15日の3日間、第36回日本救急医学会総会・学術集会が札幌市で開催される。以下は日本救急医学会雑誌より注目される発表の要旨(タイトルに続くp・・・は掲載貢)。

ワークショップ1 終末期医療ガイドラインを受けて

*小泉 健雄(杏林大学救急医学教室):救命センターにおけるPalliative Careの重要性、p520

 2005年1月から2008年4月までの杏林大学高度救命救急センター入室患者6,241人のうち、DNARオーダーとなったのは348人の診療記録から、ガイドラインとの合致の度合いを調査した。脳死と診断されたものが310人であった。DNAR取得群のうち195人に治療のwithholdingが選択されたが、特筆すべきは人工呼吸器中止を選択された症例は皆無であったことにある。カルテへの記載に関して、ガイドラインに十分即しているが曖昧な文書化がなされているものが68例あった。

当Web注:救急患者に対する人工呼吸器中止を行わない治療中止は、関西医科大学病院・救命救急センターが報告しているように検査、輸血、輸液、栄養、酸素、抗生物質、昇圧剤、体位変換、感染予防など各種ある。

 
 

*松嶋 麻子(大阪大学高度救命救急センター):救命センターの終末期医療に対する臨床倫理検討、p521

 2003年から2008年3月までに臨床的検討を行った症例から、日本救急医学会のガイドラインで「終末期」の定義を満たした症例を抽出し、当センターにおける終末期医療を後方視的に検討した。

  • 「不可逆的な全脳機能不全と診断された症例」に該当した症例は5例(来院時心肺停止4例、クモ膜下出血1例)であり、全例臨床的脳死状態で治療固定(withholding)を行った。

  • 「生命が新たに開始された人工的な装置に依存し、生命維持に必須な臓器の機能不全が不可逆的であり、移植などの代替手段もない場合」に相当した症例は7例あり、PCPSを導入した症例だった(急性心筋梗塞4例、心不全2例、ARDS1例)。終末期と判断した後、7例ともPCPSの回路交換を行わず治療固定としたが、臨床的脳死となった3例を除き5例では心機能、呼吸機能の不可逆性の判断が困難であり、終末期と判断するまでに医療者間で意見が分かれた。

  • 「悪性疾患や回復不能な疾病の末期であることが、積極的な治療の開始後に判明した場合」に該当した症例は3例あり、3例とも末期癌症例であった。1例は患者本人の事前意思に基づき治療固定を行ったが、2例は事前意思がなく、医療者間で末期癌の定義、集中治療の適応について意見が分かれた。 
      

 

ワークショップ2 高齢者における救急医療システム

*原田 尚重(武蔵野赤十字病院救命救急科):武蔵野赤十字病院救命救急センター医療圏内の高齢者施設に対するアンケート調査、p523

 当救命センターは75歳以上の高齢者推定99,000人を超える医療圏を有している。当院医療圏内の高齢者医療施設134施設のうち、回答が得られた78施設(回答率58.2%)について、24時間対応の医療機関と提携している施設は特養100%、老健57.1%、ホーム57.1%、有老50%。延命治療の是非については有老100%、有老71.4%(誤植:いずれかが老健の数字とみられる)、ホーム71.4%、特養66%で事前の対応を確認していた。施設での看取り対応については有老10%、特養66%、ホーム14.3%、老健7.1%であった。
 
 

*原 速(福岡県粕屋医師会): 福岡県粕屋北部における「かかりつけ医」(医師会)主導の在宅医療・独居高齢者支援システム、p523

 福岡県粕屋北部在宅医療・独居高齢者支援システムを紹介する。地域住民は「かかりつけ医」で既往歴、服薬歴、アレルギーの有無など必要な情報を事前に登録、この情報は医師会を通じて消防署、救急病院へと伝達される。患者として救急搬送または独自に救急病院を受診する際、この情報を元に病院側は救急医療を提供する。例えば身元不明、意識不明の脳卒中患者が救急搬送された時、搬送先の救急病院では患者の既往歴、服薬歴、輸血や手術を含めた集中治療希望の有無、患者家族への連絡先などもわからないまま治療方針に迷う事例がある。こうした経験を元に粕屋地区では2006年11月から本システムを開始、2008年3月31日現在で510症例、このうち57例に入院治療を行った。


 

一般演題 第2日目

*鶴田 良介(山口大学医学部付属病院先進救急医療センター):私たちは何を根拠に蘇生後の患者の延命措置を中止してきたか、p755

【背景】「救急医療における終末期医療の関する提言(ガイドライン)」は蘇生後脳症患者の治療方針の決定までの道筋の確認として有用であったが、これにより延命措置の中止が増えたとは思われない。
【目的】蘇生後脳症患者の延命措置の中止(withdrawal/withholding)の決定に至った因子を分析する。
【方法】2000年1月1日〜2008年2月29日で当院高度救命救急センターに7日間以上入室した16歳以上の蘇生後脳症患者を対象とし、延命措置の中止になったW群と中止に至らなかったNW群に分け、1)延命措置の中止に至った背景因子、2)延命措置の中止を決定するための条件因子について診療録をもとに後方視的に分析した。2群間で比較した項目は年齢、性別、心停止の原因、心停止時間、病院前心拍再開の有無、来院年(2004年と後)、脳低温療法と気管切開術の有無、ICU日数、ICU死亡。W群では決定までの日数、全脳機能不全の診断法について検討した。
【結果】W群(45例)では70歳以上の患者が有意に多く、ICU日数が長く、ICU死亡が多かった。一方、NW群(26例)では有意に多く脳低温療法と気管切開術が行われていた。延命措置の中止に影響している因子は70歳以上と病院前心拍再開なしであった。W群では中央値5(3−8)日に決定がなされ、脳波、聴性脳幹反応、頭部CT などの組み合わせで91%の患者に全脳機能不全の根拠としていた。
【結語】ガィドライン後に延命措置の中止は増えていなかった。電気生理学的検査と画像診断をもとに全脳機能不全と診断し、高年齢と全脳虚血時間(病院前心拍再開なし)が延命措置の中止に影響していた。今後,ワークシートを診療録に人れて前向きに検討を行いたい。

 

 このほか大阪大学医学部付属病院の清水氏らは、急性肝不全症例における血漿交換治療の継続の是非、内科的治療による生存ほかを発表する。概要は肝移植回避例に掲載。

 


20081004

シンポジウム 小児の長期人工呼吸の適応と選択
京都:自宅で不可解な死を遂げた在宅人工呼吸2例
山田氏:選択的医療を受け容れやすい、にくい症例
鹿児島:最重症在宅人工呼吸療法患児の看取り
41回日本小児呼吸器疾患学会
 

 2008年10月3、4日の2日間、函館国際ホテルを会場に第41回日本小児呼吸器疾患学会が開催された。以下は日本小児呼吸器疾患学会19巻supplementより注目される発表の要旨(タイトルに続くp・・・は掲載貢)。

シンポジウム 小児の長期人工呼吸の適応と選択

*西問 三馨(国立病院機構福岡病院)、梅原 実(前神奈川県立こども医療センター救急診療科、現うめはらこどもクリニック):座長の言葉、p45

 小児科領域においても救急・集中治療医学の進歩により急性呼吸不全の救命率の増加とともに急性期を脱した後に長期人工呼吸管理を要する症例が増加傾向にある。長期化する小児人工呼吸管理は種々の原因によるが、長期化する事による二次的諸問題も生じてくる。通常、開始時から長期化することを目的として人工呼吸管理をしない。しかし、長期化が予測される場合は日常臨床においてしばしば遭遇する。“長期人工呼吸”を急性期を脱した“慢性期人工呼吸”と言い換える事もできる。さらに“在宅人工呼吸”の導入の可否についても考慮しなければならない。そもそも“人工呼吸管理”は、“呼吸不全”に対する最終的治療選択肢の一つであり、その目的は急性呼吸不全の急性期を乗り越えるためのものである。はじめから“長期人工呼吸管理”を目標とすることは本来の目的と異なるとも言える。今まで、人工呼吸管理の長期化に対する問題点や合併症などに関する議論は数多く行われてきた。しかし、今回、本学会において「小児の長期人工呼吸の適応と選択」というシンポジウムの企画がなされ、人工呼吸導入時に長期化してしまうことを認識するという視点から検討することとなった。全く今までにない切り口である。
 長期化する人工呼吸管理は、入院期間の長期化問題に直結しており、医学的側面、社会的側面など多様化する小児医療の一面を映し出していると考える。本シンポジウムの演者は日常診療の現場で、直面している課題と真っ向から解決に取り組んでいらっしゃる方々ばかりで、演者の先生方を指名された学会長石川先生の本シンポジウムへの思い入れを強く感じさせられる。多くの課題を持つ小児の「長期人工呼吸」ではあるが、参加される会員とともに活発な議論を期待し、できる限り検討を行い今後へ繋げられる実りあるシンポジウムにしたい。

 

*鈴木 真知子(京都大学医学研究科人間健康科学系専攻成育看護学):小児の長期人工呼吸の適応と選択、p46

 小児在宅療養の推進が求められているなか、日本小児科学会倫理委員会が2007年に8府県における超重症心身障害児1246人を対象にした調査では、入院率約30%、急性期病棟は15%であり、12%は退院できるが、自宅を含め受け止めることができない状況にあったと報告しており、長期人工呼吸を必要とする患児者への支援のあり方が課題となっています。そのような中で、私は、この20数年間、看護師として、教員として、また、2000年からは「人工呼吸器など医療的ケアを必要とする子ども(成人)と家族へのケア検討会」を開催し、そこでの活動をとおして、主に重心や神経筋疾患のお子様とご家族への支援に取り組んでいます。(中略)私のところには、途方にくれているというご家族からの相談が寄せられます。そこで、ここでは、倫理的課題と思える状況を取り上げ、お子様とご家族からのメッセージをお伝えし、皆様と共に考えたいと思います。

  1. 重心児のご家族:「助けた命に責任が持てないのなら助けるな」
     心肺停止で救急搬送された救命センターの急性期病棟では、医療者は緊急対応に追われ、在宅支援はできないという。気管切開で長期人工呼吸の重心児は、退院を迫られても行き場がなく、ご家族は24時間の付き添いをしながら、引き受け先を探し回っていた。
     

  2. SMA1の父親:「人工呼吸器を使用するのは、延命とは違うんでしょう」 両親に人工呼吸の決定が委ねられ、母親は拒否。子どもの介護を主として行うのは妻であり、妻は子どもの介護でしんどい思いをしたくないという。父親は、妻の母親にも強要され、しかたなく真意に反した署名をしたが、たとえ、子どもが無表情で目だけしか動かない状態になったとしても、子どもには生きてほしいと願っていた。
     

  3. 自宅で不可解な死を遂げたSMA1の2事例。
    1)SMAl1母親:「長期人工呼吸により、可愛らしかった子どもの姿が変化していきますよね。それって、子どもの尊厳傷つけられることなんじゃないの」
     長期在宅療養後、自宅で夜間人工呼吸器の接続が外れているのに気付かず、子どもは死亡。人工呼吸器使用開始時には、母親は上記のように思っていた。在宅数年後、父親より「母親は子どもに眼脂がべったりくっついても何もしない。子どもを見ようとしていない」
    2)SMA1の父親:「障害があり、人工呼吸器までつけた子を、どうして・・・」 
     在宅5年目、父親が一人で留守番をしており、家族が帰宅時、人工呼吸器がはずれたままで、心肺停止状態であった子どものそばに立っていた父親を母親が発見。緊急搬送先の病院で、子どもは3日目に自然死という診断のもと、死亡。在宅への移行に際しては、母親の強い希望により在宅したが、父親は上記のことを述べていた。

当Web注:SMA1=脊髄性筋萎縮症の重症型ウェドニッヒ・ホフマン病

 

*山田美智子(神奈川県立こども医療センター):重症心身障害児者の医療としての「選択的医療」、p47〜p48

 (前略)高度な医療が誰でもが当たり前に治療可能な日本の現状の中で、重症心身障害児(者)の急変時や看取りのために、どこまでの医療を行うかを選択する医療を私は「選択的医療」と名付
け実践してきました。
 (中略)いままでに、意志決定能力のない子供達(重症児、準超重症児、超重症児)の医療の選択に対するインフォームドコンセントについての複数のアンケート調査の結果は、全ての重症児に
対してあらかじめ、急変時にどこまでの医療を希望するかを家族と話し合い、そのうえでスタッフ全員にも話すということが共通した認識でした。
 「選択的医療」を受け入れやすい症例は、1)施設入所期間が長い、2)施設の外来部門のフォローと施設入所期間の合計が長い、3)今までの医療内容に不満がない、4)医療サイドと家族が信頼関係にある、5)家族、医師、看護師等の職員の同意がある場合です。
 「選択的医療」を受け入れられない、言い出せない症例は,1)入所期間が短い、2)家族と医師の信頼関係がない、3)トラブルがある場合が挙げられます。(後略)

 

*樋之口 洋一(総合病院鹿児島生協病院小児科):最重症在宅人工呼吸療法患児の看取りを考える、p116

 家に帰りたいという家族の思いを実現し、限られた小児病床の有効利用という観点から最重症例でも在宅人工呼吸療法(HMV)を追求すべきであると考えるが、「HMVの看取り」については未だ論議が少ないと思われるので報告する。
 症例は男児。生後7か月時に急性壊死性脳症に罹患し救命されたが深昏睡状態となった。瞳孔散大固定、脳幹反射なし。平坦脳波。自発呼吸・咳漱反射なし。頭部CTで正常脳構造を認めず。気管切開、胃瘻造設。脳下垂体機能不全のためホルモン補充療法を行っていた。症状安定期に入り家族が在宅医療を希望した。上記の状態から当初HMVの適応はないと判断したが家族の希望は強く、急変時の対応について(どこまで治療するか)話し合いを重ねHMVへ移行した。
 1年3か月後に気道感染症に罹患し入院、抗菌薬投与を開始したが急速に呼吸不全が進行した。退院時の確認に従いそれ以上の治療は行わず、入院翌日に家族(父母、4人の兄姉妹)の見守るなか永眠した。

 


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