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2005年2月26日 岡山大・心臓血管外科 ブタを出血多量死させ心臓を摘出
「心停止ドナー」と称して 第23回日本心臓移植研究会
2005年2月24日 小児集中治療ベッド数を500〜700床に
年間500人前後の救命ができる可能性
埼玉医科大学小児科の桜井・田村氏
2005年2月16日 麻酔影響下の脳死判定+長時間無呼吸テスト 横浜市立大も
2005年2月15日 第33例目法的脳死判定 麻酔影響下の患者を判定か?
無呼吸テストで脳に傷害 摘出時に麻酔・筋弛緩剤を準備
2005年2月10日 日赤和歌山医療センターでヤミ脳死体腎移植が2例
献腎+脳死体腎が35例増加 日本移植学会が報告

20050226

岡山大・心臓血管外科 ブタを出血多量死させ心臓を摘出
「心停止ドナー」と称して 第23回日本心臓移植研究会

 2月26日、アクトシティ浜松において第23回日本心臓移植研究会が開催され、岡山大学大学院医歯学総合研究科・心臓血管外科の小谷 恭弘氏らは“死体心移植においてドナーモデルの違いが移植後心機能に及ぼす影響”を発表した。

 脱血死させたブタから摘出した心臓のほうが、呼吸停止死させた場合よりも心拍出量回復率が良好だった。小谷氏らは「呼吸停止死ドナーは、心停止に至る過程での低酸素血症、両心室筋の過伸展が移植後心機能に影響したと考えられた」と述べた(「移植」第40巻3号p281より)。

当Web注:腎臓移植では心臓拍動下で、冷却灌流液を注入するために静脈血管から脱血することが、草創期から一般的な手技として行われている。

 


20050224

小児集中治療ベッド数を500〜700床に
年間500人前後の救命ができる可能性
埼玉医科大学小児科の桜井・田村氏

第32回日本集中治療医学会学術集会が2月24日(木)〜26日(土)、京王プラザホテルおよび 新宿NSビルを会場に開催される。

 25日、ポスター会場10では埼玉医科大学総合医療センター小児科の桜井 淑男氏、田村 正徳氏が「わが国における小児集中治療の必要性と今後の展望」を発表する(第32回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集、p215)。

対象と方法

  1. 前回の全国アンケート調査で“看護単位が少なくとも独立している小児集中治療室”を有する都道府県とその地域で14歳以下の小児の総死亡率、不慮の事故による死亡率を比較した。
  2. 外国のデータを基にわが国全体での必要な小児集中治療ベッド数を試算した。
  3. 今後、小児集中治療体制が確立し、現在先進諸国との比較で死亡率の高い1〜4歳までの死亡率を改善できたと仮定した場合の全国で救命できる人数を試算した。

結果

  1. “不慮の事故”による14歳以下の死亡率では、有意に“独立の小児集中治療室”を持つ地域で低かった。
  2. 諸外国のデータを基にすると、わが国全体で必要とする小児集中治療ベッド数は500〜700床と推測された。
  3. 1〜4歳の年齢層で年間500人前後の救命ができる可能性がある。

考察

 以上の結果から、現在整備中の小児救急医療体制に包括して、わが国に小児集中治療体制の確立が望まれる。

 

 

 26日、第2会場では東北大学加齢医学研究書の近藤 丘氏が「肺移植医療の現況と直面する課題」を発表する。

 近藤氏は「移植後の成績をみると、脳死肺移植では18名中13名が、生体肺移植では40名中35名が生存中で、両者合わせて58例の1生率89.2%、5生率78.4%は欧米の成績(1生率72.7%、5生率44.7%)を凌駕する結果である。欧米では気腫性肺疾患が中心であり、わが国ではこれまでは原発性肺高血圧症と肺リンパ脈管筋腫症が中心であった。移植手術や術後管理を考えると、わが国の移植後の成績は驚異的であると言っても過言ではないであろう」という(プログラム・抄録集、p114)

 近藤氏は、加齢医学研究所雑誌第52巻第1・2号「内外における肺移植の現状と展望」において、臓器移植の成績を向上させるために、重症患者と肺気腫患者は移植待機患者に登録しない旨を書いていた。

 


20050216

麻酔影響下の脳死判定+長時間無呼吸テスト 横浜市立大も

 横浜市立大学医学部附属市民総合医療センターに心停止後の蘇生後脳症で入院中の50歳代の女性は、2005年2月15日に34例目の法的脳死 判定、33例目の臓器ドナーとされ、16日心臓、膵臓、腎臓が摘出された。脳死判定の対象外とすべき中枢神経抑制剤の投与が行われ、また無呼吸テストでは意識消失や呼吸抑制を発生させるほどの長時間の無呼吸テストを行ったにもかかわらず、脳死下での臓器提供事例に係る検証会議は「本症例を法的に脳死と判定したことは妥当である」とした。

 報告書http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/11/s1109-3a.htmlによると脳死ドナーとされた女性は、2月5日の10時頃に気管支喘息発作を発症し、救急隊が現場に到着した時には心肺停止状態、来院時10時26分も同様であり、蘇生術ならびに喘息治療に反応しないために、蘇生室にてPCPSの使用と全身麻酔薬セボフルランの吸入とを行った。全身麻酔薬のプロポフォールも投与した。2月6日5時頃瞳孔散大、対光反射消失、JCS300となり、自発呼吸が消失。2月9日に平坦脳波。

 報告書は「(平坦)脳波所見は、薬物の影響が排除できた2月9日の時点において得られている。・・・全身麻酔薬のプロポフォールとセボフルランは使用を中止してからそれぞれ約78時間及び約94時間を経過している」ことで「脳死判定の対象としての前提条件を満たしている」とした。脳不全患者では脳組織内に長期間、薬物が残留することを考慮に入れなかった。

 第1回法的脳死判定における無呼吸テストでPaCO2が6分後に94mmHgとなった、第2回目の無呼吸テストでは4分後に83mmHgとなったことについて「いずれも検査結果を得るための時間を数分要したことから、PaCO2が結果として 80mmHgを超えたことは、やむを得なかった」で済ませた。

 


20050215

第33例目法的脳死判定 麻酔影響下の患者を判定か?
無呼吸テストで脳に傷害 摘出時に麻酔・筋弛緩剤を準備

  2005年2月14日、聖隷三方原病院(静岡県浜松市)に入院中のクモ膜下出血、脳室内出血の成人男性が第33例目の法的脳死と判定され、15日、心臓、肺が摘出された。心臓は国立循環器病センターの60歳男性に、左肺は京都大学医学部附属病院で50歳代男性に移植された。

 第33例目の脳死下での臓器提供事例に係る検証結果に関する報告書http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/08/s0811-1.htmlによると、臓器提供ドナーとされた男性は、2月13日22時45分に臨床的脳死と診断され、第1回法的脳死判定を2月14日5時32分に終了。6時間21分後の11時53分に第2回法的脳死判定を開始し、2月14日14時23分に法的脳死判定を終了した。

 麻酔・筋弛緩剤などの中枢神経抑制剤の影響が残っていると、誤って脳死と判定されるため、脳死判定の開始にあたっては、中枢神経抑制剤の影響下にないことの確認が求められる。この報告書では「2月11日に行われた脳室ドレナージ術の麻酔導入時に使用されたフェンタニル静注については、臨床的脳死診断の開始までに約61時間を経過しているため、脳死判定への影響はないと考えられる」とした。

 第1回法的脳死判定の無呼吸テストにおいて、テスト開始6分後に動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は83mmHgとなった。報告書は「ガイドライン等に定められたように、PaCO2が80 mmHgを超えないことが望ましかった」とした。

 この聖隷三方原病院における33例目法的脳死判定について、同病院麻酔科部長の高田 知季氏が臨床麻酔30巻4号p635〜641(2006年)に「一般病院での脳死判定 実情、考え方」として報告している。高田麻酔科部長によると、臓器摘出に際して「降圧を(全身麻酔剤)セボフルランの吸入で、脊髄反射などの体動に対してはベクロニウムブロマイド静注で対応することにした。しかし、セボフルランの使用には至らず安定した循環動態が得られ」たという。

 

当Web注

  1. 全身の状態が極度に悪くなければ、麻酔を投与されても血流により次第に脳や神経組織から麻酔薬が排除され、肝臓で分解されて腎臓から排出される。しかし脳不全患者は脳血流が低下し、なかには肝臓・腎臓の機能も低下している患者がいるため、時間が経過しても麻酔等の濃度が低下しない。守屋 文夫氏(高知医科大学法医学)は日本医事新報4042号p37〜p42(2001年)において、臨床的脳死状態で塩酸エフェドリンを投与された患者が約72時間後に心停止し、解剖して各組織における薬物濃度を測定したところ、心臓血における濃度よりも53倍 (3.35μg)の塩酸エフェドリンが大脳(後頭葉)に検出されたことを報告している。生きている患者の脳組織を採取して、血液内の薬物濃度を比較することはできないため、中枢神経抑制剤を投与された患者は脳死判定対象から外すべきと指摘されている。
     
  2. 唐澤 秀治氏は脳死判定ハンドブック(羊土社、2001年)p214において「PaCO2が70mmHg以上になると、呼吸刺激ではなく呼吸抑制が生じてしまう。さらに80〜90mmHgになると意識が消失し、これをCO2ナルコーシスという」と無呼吸テストにより動脈血内の二酸化炭素の圧力が高まりすぎると、脳にダメージを与えることを指摘している。
     林 成之氏は脳蘇生治療と脳死判定の再検討(近代出版、2001年)p87において「PaCO2の上昇と共に、動脈血のpHは進行性に低下する。pH7.2未満になると、赤血球のヘモグロビンと酸素の結合を切り離す補因子が産生されなくなり、動脈血酸素分圧(PaO2)が高い値を示しても、実際の神経細胞には充分酸素が行かなくなる危険性が生じる」と指摘している。

 


20050210

日赤和歌山医療センターでヤミ脳死体腎移植が2例
献腎+脳死体腎が35例増加 日本移植学会が報告

 

 日本移植学会雑誌「移植」40巻1号はp47〜p52に、日本臨床腎移植学会・日本移植学会による「腎移植臨床登録集計報告(2005)−1 2004年実施症例の集計報告−(1)」を掲載した。

 それによると2004年に実施された腎移植症例数は生体腎725例、献腎166例、脳死体腎7例の合計898例だった。2003年に比べると生体腎では3例減少したが、献腎は33例、脳死体腎は2例増加した。これを日本臓器移植ネットワークがhttp://www.jotnw.or.jp/datafile/offer01.html#16に掲載している統計と比較すると、献腎+脳死体腎の合計は173例と同じだが、移植学会統計は脳死体腎移植症例数が1例多い。

 p50〜p51にかけて「2004年の施設別腎移植実施症例数」を掲載しているが、2004年7月5日、法的脳死判定31例目(移植30例目)ドナーから兵庫県立西宮病院において60歳代女性レシピエントに移植した事を書き漏らし、代わりに日赤和歌山医療センターにおいて2例の脳死体腎移植を行ったことを記載している。

 


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