法的「脳死」臓器移植レシピエントの死亡は累計22人
北海道大学病院 移植も死亡も年間最多
法的脳死判定41例目ドナーからの肝臓移植手術を北海道大学病院で受けた50歳代女性が
、26日午後9時41分、腹膜炎敗血症のため死亡した。法的脳死判定手続下の臓器移植でレシピエントの死亡が判明したのは
22例目。
報道によると死亡した臓器レシピエントは、B型肝炎で7月に生体肝移植を受けたものの、肝機能の回復が思わしくなく、脳死肝移植の再移植手術を受けた。再移植手術は11月26日〜28日にかけて28時間かかった。日本臓器移植ネットワークによると、臓器移植法に基づく脳死肝移植の手術時間としては過去最長。北大病院は「大量出血があり、止血に時間がかかった」と説明、術後の容体は安定しているとしていた。今月中旬になって膵炎を起こし、腹膜炎を併発したという。
今年の法的脳死ドナーは9例と臓器移植法施行後は最多だが、死亡が判明したレシピエント数も8例と最多。
法的「脳死」移植レシピエントの死亡年月日、レシピエントの年齢(主に移植時)←提供者(年月)、臓器(移植施設名)は以下のとおり。
- 2000年11月20日 47歳女性←bP0ドナー(20001105) 肝臓(京都大)
- 2001年 5月25日 10代女性←bP4ドナー(20010319) 肝臓(京都大)
- 2001年 9月11日 7歳女児←bP2ドナー(20010121) 小腸(京都大)
- 2001年12月11日 20代女性←bP8ドナー(20011103) 肝臓(北大)
- 2002年 2月 3日 43歳男性←bP1ドナー(20010108) 右肺(東北大)
- 2002年 3月20日 46歳女性←bP6ドナー(20010726) 右肺(大阪大)
- 2002年 6月10日 38歳女性←a@5ドナー(20000329) 右肺(東北大)
- 2002年 9月10日 20代男性←bQ1ドナー(20020830) 肝臓(京都大)
- 2002年12月 5日 20代女性←bQ2ドナー(20021110) 両肺(岡山大)
- 2004年 6月頃 50代女性←bP5ドナー(20010701) 腎臓(東京女子医科大学腎臓総合医療センター)
-
2004年 6月 7日 50代男性←bR0ドナー(20040520) 両肺(東北大)
- 2005年 3月 7日 50代男性←bP2ドナー(20010121) 心臓(国立循環器病センター)
- 2005年 3月10日 50代男性←bR6ドナー(20050310) 両肺(京都大)
- 2005年 3月21日 40代男性←bR2ドナー(20041120) 心臓(大阪大)
-
2005年12月26日 50代女性←bS1ドナー(20051126) 肝臓(北海道大)
- 死亡年月日不明 50代男性←a@5ドナー(20000329) 腎臓(千葉大)
- 死亡年月日不明 30代男性←bP4ドナー(20010319) 腎臓(大阪医科大)
- 死亡年月日不明 50代男性←bP6ドナー(20010726) 腎臓(奈良県立医科大)
- 死亡年月日不明 50代男性←a@2ドナー(19990512) 腎臓(東京大学医科学研究所附属病院)
- 死亡年月日不明 20代男性←bQ9ドナー(20040205) 肝臓(大阪大)
- 死亡年月日不明
女性←bQ6ドナー(20031007) 腎臓(名古屋市立大学病院)
- 死亡年月日不明
50代男性←bR6ドナー(20050310) 腎臓(国立病院機構千葉東病院)
2年間「脳死」の4歳男児 快・不快の表情示す
お風呂で気持ちよい顔 関東の大学病院小児外科
神奈川県立こども医療センターの平野 美幸氏は、20日発行された日本看護学会誌25巻4号において、医師から「脳死の状態」と説明されている小児が、担当する看護師の観察では、ケアに反応して快・不快の表情を示していることを報告した。
これは関東圏にある大学病院小児外科病棟においてのこと。
これはp13〜p21の「人工呼吸器を装着し、脳障害のため意識も反応もない子どもへの看護師の関わり ‘子どもの声’を聞き分ける」で紹介している4名の人工呼吸器装着患者(うち「脳死」2名)のなかで4歳男児(C君)をケアしているE看護師の観察。
C君は2歳時に痙攣重積、呼吸停止により小児急性壊死性脳症を発症、脳波は平坦、自発的な運動はない。入院期間は2年間。毎日、親が面会に来て、抱っこ、吸引、マッサージ、ベッドサイドでの沐浴などを行っている。
ベッドサイドでお風呂に入れて体を洗ってあげている時、C君の上肢がわずかに持ち上がり、口がだんだんと開いてきた。E看護師は「C君はお風呂の時は、口を開けて表情が緩みますね。気持ちよさそうな顔をしていると思います。ベビーバスの上に頭を乗せているから、首が伸展して口が開いているのかもしれないし、動いたのは不随意運動かもしれないですけど、でも嫌なときは眉間をしかめて嫌そうな顔をしているので、やっぱり気持ちがいいんだと思います」という。
「臓器摘出施設に、優先的に臓器配分しろ」 脳死前にドナー管理開始
ICU同行回診の移植医が主張 与死しないと達成できない移植実現まで
医学図書出版発行の「泌尿器外科」12月号は献腎移植を特集。藤田保健衛生大学泌尿器科学の星長
清隆氏(p1417〜1424)は「献腎配分ルール改正にむけての私的提言」として以下の5項目を掲げた。
- HLA 6マッチは優先してブロック外にもシッピングする。
- 登録患者の待機期間によるポイントを下げ、献腎発生地域ポイントを上げる。
- 摘出された2腎のうち1腎を摘出チームに優先して配賦する。
- 2腎とも6マッチで他ブロックに送られた場合には、次に他ブロックで摘出された献腎の1腎は先的(優先的か?原文のママ)に摘出施設に配賦されるように配慮する。
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摘出チームに優先して配賦された献腎の場合、該当施設での優先順位が最も高い待期(待機か?原文のママ)患者が他施設登録であっても、その患者が希望すれば摘出チームの施設で移植を受けることができる。もし、患者が摘出チーム施設での移植を希望しない場合は、同施設に登録している患者の中から、最もポイントの高い患者を選出して移植する。
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藤田保健衛生大学では1979年より2004年12月までに228例の心停止(と称する)ドナーがあり、451腎を摘出した。日本臓器移植ネットワーク発足後は72ドナーから137腎を摘出し128腎が移植されたが、同施設で移植されたのは36腎だった。星長氏は「移植医が連日のICU回診に参加し・・・精神的、肉体的負担が大きい献腎移植にしか参加できず、自らが献腎移植を行う機会がほとんどないようでは、移植医のモチベーションは低下し」とし「私の提案の中には、最近まで議論することさえタブー視されたものがいくつか含まれている。・・・・・・献腎移植がわが国で軌道に乗るまでは(年間1,000例程度が妥当か)、患者側の理解を得た上で、私の提案を公の場で議論して頂きたいと願う次第である」と書いた。
当Web注:移植医が臓器ドナー獲得目的で、連日ICU回診同行が習慣化されていることから異常である。また同施設の脳神経外科医の神野 哲夫氏は「医学のあゆみ」196巻13号p1121〜p1123(2001年)において「臓器保持のための処置がフライングであるかどうかの判定は微妙なこところがある。しかし、今後の移植医療の真の発展を望むなら、臨床的脳死判定以後に行なうことを肝に命じておかなければならないであろう」と書いた。
移植用臓器獲得のためのドナー管理を、法的脳死の確定後に開始するのではなく「臨床的脳死判定以後に行なうことを肝に命じて」いる施設が存在するのに、臓器摘出施設への臓器配分を認めるルールに改悪すると、現状以上の人権侵害が多発するのは必至とみられる。
星長氏が「献腎移植がわが国で軌道に乗るまで(年間1,000例程度)」という腎臓移植症例数は
、日本の脳死判定数、ドナー適格者比率、家族承諾率(藤田保健衛生大では20%程度)からすると、脳死判定対象とされた重症脳不全患者だけをドナー候補者と
していたのでは実現できない。より軽症な意識障害患者に死を与えることまで行われる恐れがある。
脳死を経ない腎臓提供 群馬県下で
急性心筋梗塞の69歳 人工心肺装着
第198回日本循環器学会関東甲信越地方会が12月10日、ラフレさいたま(さいたま市)において開催。富士重工業健康保険組合総合太田病院・循環器科の根本尚彦氏らは、脳死を経ない「心停止後」の腎臓提供が群馬県下であったことを報告した。
ドナーは69歳、HCV−Ab陽性、急性心筋梗塞による心原性ショックの治療後だった。経皮的心肺補助循環装置(PCPS)と大動脈内バルーンパンピング(IABP)を装着していた。
出典:根本尚彦:急性心筋梗塞による心原性ショックの治療後に心停止後の腎臓提供に至った一例、Circulation
Journal、70(Suppl.II)、1105、2006
当Web注:上記資料には、臓器摘出時の詳細は記載がない。経皮的心肺補助循環装置や大動脈内バルーンパンピングを装着した臓器ドナーは、2004年の第37回日本臨床腎移植学会でも報告されている。いずれにしても臓器摘出に際しては、血流がある時あるいは心停止後でも心臓マッサージ下に抗血液凝固剤(ヘパリン)を投与しないと、摘出する臓器に血液が凝固して移植に使えない。血流があれば「心停止後」ではなく、生理的にも死亡しているとはいえないため、臓器摘出目的の処置を行うと傷害致死罪に問われる可能性が高い。また、死亡宣告直後に心肺補助循環装置を使ってドナーの全身冷却も行われている。冷却はドナーの生還を予定しない行為でもある。このような行為が法的脳死判定手続きを無視して行われることに疑問が呈されている。
臓器提供ドナーの大多数(95%以上)が死刑囚
中国衛生省が確認 倫理的な問題はない?
北京の共同通信記者が中国誌「財経」最新号の記事として伝えたところによるとhttp://www.excite.co.jp/News/world/20051209131736/Kyodo_20051209a323010s20051209131739.html、中国衛生省の黄 潔夫次官がマニラで開かれた国際会議で、中国国内で実施している臓器移植に用いられている臓器の大多数が死刑囚から提供されていることを初めて認めたという。
同誌によると、昨年中国で実施された肝移植は約2700例、腎移植は約6000例。95%以上は死刑囚からの提供だった。黄次官は「死刑囚本人と家族から同意を得ており、倫理的な問題はない」と強調。また、死刑囚からの臓器提供や管理整備のための「人体器官移植条例(臓器移植法)」の制定を進めていることを明らかにし「国際社会が抱いていた中国の移植に関する『灰色地帯』を解消することが可能になる」と述べたという。
札幌医大 中国から移植不適合の肝臓を輸入
年内にも再生研究に利用 倫理委員会が承認
毎日新聞は、札幌医大が年内にも中国から臓器移植に不適合になった肝臓の提供を受け、肝臓再生研究に活用すると報じた。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051206-00000075-mailo-hok
上海に本部がある半官半民の研究機関から、年内に提供を受け、札幌医大の三高 俊広教授(分子病理病態学)が実施する。5日の研究会での報告によると、臓器は患者またはその家族の同意で提供され、脳死だけでなく心停止後に早期摘出される。提供数が多く、移植に使われなくても研究に利用することができるという。
上海の研究機関は、ヒト肝細胞を用いて肝臓の代謝機能や肝疾患研究に取り組んでおり、三高教授は、この研究機関と交渉を開始。9月末に札幌医大の倫理委員会に申請し、同委は11月8日、「上海の研究機関は審査機関を持ち倫理面も適切に対応している」として承認したとのこと。
皮膚提供者は11年間に214人、心停止から平均5時間で採皮
日本外科学会雑誌106巻12号は“重症熱傷の治療”を特集。杏林大学救急医学の田中 秀治氏らはp755〜759の「アログラフトとスキンバンク」において、1994年から2004年までの11年間に214人から皮膚の提供を受け、295人に472回の皮膚供給を行ってきたことを明らかにした。
年 |
提供者 |
保存枚数 |
2004 |
28 |
1533 |
2003 |
27 |
1620 |
2002 |
21 |
1361 |
2001 |
25 |
1600 |
2000 |
19 |
1074 |
1999 |
20 |
877 |
1998 |
18 |
752 |
1997 |
18 |
593 |
1996 |
9 |
− |
1995 |
11 |
− |
1994 |
18 |
− |
年次別の提供者数、保存枚数の推移は左記のとおり。
田中氏によると、皮膚の採取・保存・供給作業を行うスキンバンクシステムは、1991年10に杏林大学救命救急センターにわが国で初めて導入された。2004年に日本スキンバンクネットワーク(JABN)が設立され、全国で53施設が参加している。専属の組織移植コーディネーターは4名。
皮膚採取の最長限度は心停止後8時間を目安としているが、2004年のデータでは心停止から採皮時刻、いわゆる温阻血時間は5時間8分だった。採取される皮膚の厚さは1000分の15インチ前後で、採取部位は主に背部、臀部、下肢後面で、家族の承諾があれば前面からの採取も行っている。
採取した同種皮膚の使用適応基準は、熱傷治療専門施設に入院した熱傷症例で、熱傷指数10以上または深達性2度熱傷以上で15%以上の広範囲熱傷患者。同種皮膚を使わなかった熱傷治療例と比較すると、burn
index40〜80までの最も救命効果の高い患者群では、死亡率は10〜20%改善した。
当Web注:2005年の皮膚提供者数の記載はないが、文中には「年間30例を超えるまでになった」とある。
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