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20071231

2006年、2007年に小児「脳死」ドナーが計2名
11〜15歳 脳血管障害1名、その他外因死1名

 日本臓器移植ネットワークがまとめた「小児の腎臓移植に関する詳細データ(2007年12月末現在)」http://www.jotnw.or.jp/datafile/offer/pdf/syouni.pdfによると、2006年・2007年とも16歳未満の小児臓器ドナーは 各1名あった。同ネットワークが以前に公開していた2005年末までのデータと比べると、2006年・2007年の小児臓器ドナーはともに11歳〜15歳の年齢層に属し、ドナーの原疾患は脳血管障害が1名、その他外因死が1名であることが判る(臓器摘出が死因のドナーもありうる)。

 日本小児科学会は、小児ドナーの臓器は、小児レシピエントに移植することを要望しているが、実際にはレシピエントの年齢が31歳以上が過半数を占めている。このPDFファイルは最後の2ページに、「小児から小児への移植事例における患者生存率・移植腎生着率」と、「小児から成人への移植事例における患者生存率・移植腎生着率」は掲載しているが、「成人から小児への移植事例における患者生存率・移植腎生着率」は掲載していない。

 なお、「心停止後」と称して膵島を提供したドナーは日本臓器移植ネットワークの統計に入らないため、実際には上記以上の小児「脳死」ドナーが隠されている可能性もある。

 

当Web注:「心臓が停止した死後の臓器提供」と称して、家族の同意だけで小児からも臓器摘出が行われているが、以下の問題がある。、

  1. 生体解剖の恐怖、激痛を感じない死体か?=臓器摘出にあたり、1960年代から死亡宣告後に麻酔をかけたり心臓マッサージを行ったりしている。三徴候死をした死 体であるから死亡宣告をしたはずなのに、「麻酔が効き、麻酔が必要」という状態があるのか?死亡宣告した後に心臓マッサージをするから、生体として維持され麻酔が必要な状態であり、また血流があるから麻酔剤が運ばれて麻酔が効くので あろう。麻酔が必要である状態は、生体解剖の恐怖や激痛を感じうるとみなされる。
     
  2. 適正な医学的・法的手続きで行っているのか?=臓器摘出目的で生前からのドナー管理カテーテル挿入、人工呼吸器停止あるいは人工呼吸器継続下の臓器摘出など、ドナーの生命の不可逆的状態の判断、法的脳死判定手続きをすべき行為が「心停止後」と称して横行している(小児は法的脳死判定手続きの対象外、脳死判定後の復活例も多い)。
     臓器摘出前には、抗血液凝固剤ヘパリンを投与すること、そのヘパリンをいきわたらせるために血流が必要となる。ヘパリン投与を しないと、臓器に血栓・血塊を生じるため移植可能な臓器は摘出できない。しかしヘパリンを循環させる血流があるならば、死の三徴候が継続している死体とはいえない。
     
  3. ドナー家族の承諾は、法的に有効か群馬大学病院の脳外科医は出血性疾患の ドナー候補患者にヘパリンを投与することから「移植に関わりたくない」と非倫理性を指摘している。2002年3月19日(または20日)の8歳女児からの臓器摘出における説明文書で確認したところ、日本臓器移植ネットワークは、ドナー候補者家族に対して、抗血液凝固剤ヘパリンを投与する目的は説明していたが、この 血を固まらせない作用のある薬剤が、頭部外傷患者や内出血患者には致死的危険性があることを説明していなかった。
     
  4. 被虐待児・犯罪被害者をドナーとすることの排除=虐待された小児や犯罪被害者を臓器ドナーとすることは、証拠隠滅とともに倫理面から許容されない。ドナーの死に方(三徴候死、脳死)に関わりなく、虐待されたり犯罪被害者を除外する手続き、特に被虐待児についての取り組みが存在しないのに、日本臓器移植ネットワークは発足時から35名もの小児から臓器を摘出した。 1960年代以降の小児「死体」臓器ドナーは約200例と推定される。

 


20071210

腎臓移植の統計不備で、生体ドナー傷害保険制度が保留
東海大・加藤氏 ドナー登録・健康調査・統計整備を提言

 東海大学医学部の加藤 俊一氏は、日本移植学会雑誌「移植」40巻6号の“特集 生体ドナーに関する適応と諸問題”に「造血幹細胞移植」を執筆し、骨髄移植におけるドナー傷害保険を紹介し、臓器移植への提言も行った(p529〜p535)。

 骨髄移植におけるドナー傷害保険は、1991年に骨髄バンクを設立する際に、善意の非血縁ボランティアドナーに対する傷害保険が不可欠であると判断した厚生省(当時)が大蔵省金融局(当時)と連携して「骨髄ドナー団体傷害保険制度を新設した。発足当初は、リスクが正確に計算できる資料がなかったため、20万円の掛け金で死亡時1億円、後遺障害最大1億円という設定で開始された。保険の発動が少なかったことから掛け金は数次にわたり減額され、現在では2万5千円となっているという。

 加藤氏の“臓器移植への提言”は以下の枠内。

 臓器移植への提言

 ドナー団体傷害保険を骨髄から末梢血幹細胞に拡大する際に、日本移植学会理事会の決議を受けて生体臓器移植のドナーにも拡大することを保険会社に要望した。保険会社から国内における過去数年間の生体ドナーの数と事故の発生件数についての資料を求められたが、肝臓、肺については比較的正確な数が把握できているものの、腎臓についての統計がなかったため、「保留」の状況となっている。
 生体移植という医療行為は健康なドナーの存在なくして成立しないものである。安全性確保のためには、学会や行政によるドナーの登録制度、健康状況の追跡調査制度、事故などに対する補償制度は欠かせないものである。WHOは臓器移植の指針の改定を検討中で、これらの制度を各国に義務づける方向で条文を調整している。日本移植学会としても学会としての対応が求められることになる。
 まず確立しなければならないものとして臓器ごとの生体ドナーの登録制度であり、可能であれば事前登録とすることが望ましい。とくに最も古い歴史を持つ腎移植領域において生体ドナーの登録や継続的な健康調査のシステムがなく、早急にドナー登録制度を導入すべきものと考える。


当Web注

  1. 2006年2月発行の移植40巻6号によると、日本移植学会は2008年末までの計画で臓器移植の全数調査に着手し ているが、生体腎・肺ドナーの調査は行っていない。
     

  2. 大阪透析研究会会誌に掲載された「大阪府で行われた腎移植に関する実態調査」は2006年(24巻2号)、2007年(25巻2号)ともに、「移植腎機能喪失後は移植施設より、透析病院に転院しており、移植腎機能を喪失した症例の約半数は追跡不能であった」と報告しており、日本移植学会単独での全数調査は達成困難と見込まれる。
     透析患者の消息調査では、日本透析医学会は施設回収率99%近い高水準で統計をまとめている(日本移植学会の腎移植臨床登録集計報告における施設回収率は 70%弱)。日本移植学会は、日本透析医学会に協力を求めなければ、高精度の統計データは得られないのではないか。

 


20071210B

腎臓移植患者の4人に1人は追跡不能
さらに4人に1人は生死不明=半数は消息不明
腎移植臨床登録集計報告 生存率は推定で算出

 日本臨床腎移植学会と日本移植学会は「移植」42巻6号p545〜557に、2004年までに実施された腎臓移植症例に関する「腎移植臨床登録集計報告(2007)−3 2006年経過追跡調査結果」を報告した。献腎移植患者の生存率(生着率)は1年90.4%(82.8%)、20年63.4%(38.8%)。生体腎移植患者の生存率(生着率)は1年95.3%(93.4%)、20年73.0%(51.8%) だった。

  今回の追跡調査対象は、2004年までに実施された腎移植17,744症例のうち、過去の追跡調査(1999年、2000年、2003年)において追跡不能(死亡を含む)と判明した4,716例を除外した13,028症例。2006年8月に全国の移植施設 および転院先透析施設など686施設に調査用紙を送付し、2007年10月末現在で477施設から10,655症例についての回答を得た。 施設回収率69.5%、症例回収率81.8%。

 調査対象としながら未回収となった2,373例と生死不明・生着廃絶不明の1,722例、生死の記入なし8例を合計すると消息不明例は4,103例、消息判明例は8,925例で消息判明率は 69%(8,925/13,028=0.685)と前回の200 3年調査よりもわずかに改善したようにみえる。しかし、移植実施17,444症例に対して、消息判明率は50%に下がる(8,925/17,744=0.503)。

 今回の調査で回収したのは10,655症例だったが、腎移植患者の生存率・臓器生着率の解析については、2004年までに初回移植症例の16,914例を母数とし た。移植誌には「過去の追跡調査から得られた情報も加え、Kaplan-Meier法を用いて生存率および生着率の推定を行った」と書かれている。

 


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