第16例目「脳死」下での臓器提供 日本臓器移植ネットワークの発表資料
平成13年7月26日
社団法人 日本臓器移植ネットワーク
ドナーの方は近畿地方の医療機関に入院中の10歳代の女性の方。
ドナーの方の原疾患は脳出血である。
ドナーは、臓器提供意思表示カードに脳死下での臓器提供の意思を表示。提供臓器として心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸に○があった。ご本入の署名のみで、ご家族の署名はない。記載時期は平成11
年4月。
日本臓器移植ネットワーク近畿ブロックセンターに提供施設より連絡があったのは、7月25日10時50分である。
日本臓器移植ネットワークのコーディネーターが説明を行った上で、7月25日17時45分にご家族から脳死判定承諾書及び臓器摘出承諾書を受領。
ご家族からは、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸の提供についてご承諾を得た。
7月25日21時27分、第―回法的脳死判定を開始。
7月25日23時56分、第―回法的脳死判定を終了。その結果、判定基準を全て満たしていると判定された。
7月26日06時02分より第二回法的脳死判定を開始。
7月26日08時20分に第二回法的脳死判定を終了し、法的に脳死と判定された。
※ご家族および当該医療機関の強い要望により下記の事項について厳守いただきたい。
報道に当たっては,プライバシーの保護に十分ご配慮いただき
たい。
摘出された臓器を収納する容器を撮影することは、控えていた
だきたい。
※ご家族の強い要望により下記の事碩について厳守いただきたい。
ご家族の強い要望により、患者家族に対する取材等は―切行わないでください。
ご家族の強い要望により、病院に対する取材等は―切行わない
でください。
ご家族の強い要望により、報道のために他の患者さんの診療や提供病院にご迷惑をおかけしたり、今後も提供しようと思っておられる方が提供しにくくなるので、報道を最小限にしていた
だきたい。
コーディネーション業務に支障をきたす恐れがあるため、(社)日本臓器移植ネットワークのオフィス内(4階、6階及び7階スベース)への報道関係者の入室及び個別の取材はご遠慮願いたい。
レシピエントの選択及び移植実施施設等について
心臓移植実施施設及びレシピエントについて
心臓移植の第―候補者は東京女子医科大学で移植希望の40歳代の女性で、原疾患は拡張型心筋症である。
肺移植実施施設及びレシピエントについて
肺移植の第―候補者は大阪大学で移植希望の50歳代の女性で、原疾患名は特発性間質性肺炎である。
肺移植の第二候補者は大阪大学で移植希望の40歳代の女性で、原疾患名は肺リンパ脈管筋腫症である。
肝臓移植実施施設及びレシピエントについて
肝臓移植の第―候補者は京都大学で移植希望の10歳代の女性で、原疾患名は先天性肝・胆道疾患である。
膵臓・腎臓移植実施施設及びレシビエントについて
膵臓・腎臓移植の第―候補者は福島県立医科大学で移植希望の40歳代の男性で、原疾患名は糖尿病性腎不全である。
腎臓移植実施施設及びレシピエントについて
腎臓移植の第―候補者は奈良県立医科大学附属病院で移植希望の50歳代の男性で、原疾患名は慢性糸球体腎炎である。
臓器の摘出手術について
18:06 手術開始
臓器の搬送子定について
心臓の搬送予定経路について
病院→(パトカー)→南紀白浜空港→(チヤ―タ―機)→羽田空港→(東京消防庁へり)→防衛庁屋上へリポート→(救急車)→東京女子医科大学病院
肺の搬送予定経路について
病院→ (パトカー)→南紀白浜空港→ (和歌山県防災ヘリ)→大阪大学へリポート→大阪大学医学部付属病院
肝臓の搬送予定経路について
病院→(タクシ―・JR・南海)→(京都大学救急車)→京都大学医学部附属病院
膵臓・腎臓の搬送予定経路について
病院→(タクシー)→南紀白浜空港→(チヤ―タ―機)→福島空港→ネットワーク緊急車両)→福島県立医科大学病院
腎臓の搬送予定経路について
病院→(タクシ―・JR)→奈良県立医科大学附属病院
虚偽の説明で臓器獲得か、国立南和歌山病院
移植コーディネーター「痛み反射がない」と説明
国立南和歌山病院(和歌山県田辺市)で7月25日13時50分に10代後半女性は臨床的脳死と診断され、家族に対する臓器移植コーディネーターの説明が、主治医と看護師長も同席して15時〜16時10分の間行なわれた。
看護師長だった泉かよみ氏による臓器提供病棟報告−国内15例目の脳死下臓器提供を経験して−、ナースマネージャー(日総研出版)、5(7)、80−85、2003によると、コーディネーターは脳死判定の説明として「人工呼吸器でなければ呼吸ができない、意識レベルの低下、反応がない昏睡状態、痛み反射がない、脳波が平坦な状態が脳死である」など説明したという。
臓器摘出時の体動や血圧の急上昇が報告されており、脊髄反射なのか意識下の反応なのかの議論はあるが、いずれにしても「痛み反射がない」の説明は不適切といわざるをえない。
日本臓器移植ネットワークはPR資料「いのちへの優しさとおもいやり」に、Q.脳死ってどんな状態ですか A.・・・痛みなどの刺激に対する反応もなくなり回復することはありません。・・・と書いている。これは脳死判定時に疼痛刺激を加えて無反応を確認していることを、援用した表現とみられるが、家族は臓器摘出時に痛みを感じさせる事態を心配しているのである。
第15例目「脳死」下での臓器提供
脳出血のため聖路加国際病院(東京都中央区)に入院していた60歳代の男性が、2001年6月30日未明に臨床的脳死と診断。同日午後5時前から法的脳死判定を始め、1日午前4時過ぎに臓器移植法に基づき脳死と判定された。
二個の腎臓は、二つともこの男性の慢性腎不全の親族に、東京女子医大(新宿区)で50歳代女性、東邦大大森病院(大田区)で40歳代男性に移植された。関係者によると、提供者の家族の希望で親族に移植された。臓器移植法に基づく脳死判定は15例目、移植手術は14例目、親類に対して臓器提供が行われるのは、臓器移植法施行後初めて。
腎臓移植を受ける患者は通常、日本臓器移植ネットワークに登録している移植希望者の中から、レシピエント選択基準に基づき、選択する規則がある。特定の人への提供は原則的に認めていない。しかし、1日の移植ではこの規則は適用しなかった。厚生労働省臓器移植対策室は「一般論として、提供者の家族の強い希望があれば、こうしたケースも認められる。臓器移植法の国会審議でもそのような答弁が残っている。臓器移植ネットワークと移植前に話し合ったが、親類への移植は公平性を害するとまではいえず、問題はない。今後、ネットの中央評価委員会で審議されるので、その時点で評価したい」と説明している。
日本臓器移植ネットワークの森 達郎理事は「厚生労働省の了承を得てしたことだが、こうした場合のルールは明文化されていない。今後、厚生労働省で検討してほしい」と話しているという。日本臓器移植ネットワークの内規は「心停止後腎臓移植で親族に臓器提供する場合も、腎臓1個は親族に、残り1個は通常の手続きで全国の登録患者のなかからレシピエント選定を行う」としているが、今回はこの内規も無視した。
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