法的「脳死」移植レシピエントの死亡は累計12人
データ隠しはすべて腎移植、透析患者も不利益
日本臓器移植ネットワークは、2002年12月30日(24例目)までの「脳死」下臓器提供を記載したData
File・「脳死での臓器提供」ページで、臓器移植手術後に死亡した患者(レシピエント)には**印をつけているが、死亡は累計12人に達した。このうちマスメディアで報道されなかったために死亡年月日や死因が不明のレシピエント3名は、すべて腎臓移植を受けた患者ばかりだ。
死亡の事実や死因、死亡までの経過、死亡年月日などの情報は、患者家族のプライバシーを侵害しないで公開が可能な情報だ。腎臓移植を選択肢に検討する透析患者・医療関係者にとって、生存率・生着率の情報は不可欠な基本的データだ。国民から移植医療に対する正当な評価を受けるためにも、適切な情報公開を「フェア・ベスト・オープン」を標榜する移植医療関係者は行なうべきだろう。
法的「脳死」移植レシピエントの死亡年月日、レシピエントの年齢(主に移植時)←提供者(年月)、臓器(移植施設名)は以下のとおり。
- 2000年11月20日 47歳女性←bP0ドナー(20001105) 肝臓(京都大)
- 2001年 5月25日 10代女性←bP4ドナー(20010319) 肝臓(京都大)
- 2001年 9月11日 7歳女児←bP2ドナー(20010121) 小腸(京都大)
- 2001年12月11日 20代女性←bP8ドナー(20011103) 肝臓(北大)
- 2002年 2月 3日 43歳男性←bP1ドナー(20010108) 右肺(東北大)
- 2002年 3月20日 46歳女性←bP6ドナー(20010726) 右肺(大阪大)
- 2002年 6月10日 38歳女性←a@5ドナー(20000329) 右肺(東北大)
- 2002年 9月10日 20代男性←bQ1ドナー(20020830) 肝臓(京都大)
- 2002年12月 5日 20代女性←bQ2ドナー(20021110) 両肺(岡山大)
- 死亡年月日不明 50代男性←a@5ドナー(20000329) 腎臓(千葉大)
- 死亡年月日不明 30代男性←bP4ドナー(20010319) 腎臓(大阪医科大)
- 死亡年月日不明 50代男性←bP6ドナー(20010726) 腎臓(奈良県立医科大)
このほか2002年11月の23例目ドナーからの肝臓は、当初の発表は「第―候補者は京都大の10歳未満女児、第二候補者は東北大の40歳代女性」としていたが、実際には京都大の10歳未満女児とともに、分割肝を東京大の10代男性に移植していた。
21年間透析で生存、「死体」腎移植40日後に死亡 大分大学
21年間にわたり血液透析により生存していた46歳男性が、「死体」腎移植の40日後に死亡した。大分大学医学部泌尿器科Nomura Takeo氏らがInternational
Journal of Urology11巻9号p774〜p777(2004年)に報告した「死体腎移植後の腸穿孔(Intestinal
perforation after cadaveric renal transplantation)」によると、移植を受けたのは3月18日。
移植後5日目にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による腸炎を生じた。高度の腸潰瘍を示し穿孔を生じ、大腸の亜全摘と移植腎の摘出を行なった。しかし摘出術後に汎血球減少症、播種性血管内凝固症候群、脳出血性梗塞が出現して40日後に死亡した。
当Web注:「死体」腎移植を受けたレシピエントの20人に1人は1年以内に死亡している。1年後に腎臓が生着しているのは6人のうち5人。
宗教法人・大本のノン・ドナーカード、普及が加速
大本の信徒ではない一般の人々への発送が8割
宗教法人・大本が、2001年3月に「人類愛善会・生命倫理問題対策会議」から200万枚作成し配布してきた、臓器提供をしない意思を表す「ノン・ドナーカード」
の、信徒ではない人々への普及が加速している。
同会議事務局によると、「大本信徒ではない一般の方のみへの発送は
2001年は
発送が30件で発送枚数は計1,245枚、
2002年は同48件、878枚、
2003年1月〜3月末までの3ヶ月間では発送13件、計519枚」とのこと。このままのペースでいけば今年は年間2000枚程度と2001年の6割増し、2002年の2.5倍程度になりそうだ。
宗教法人・大本は2000年秋、87万1,571人の「脳死」・臓器移植反対署名を厚生大臣に提出した。
約1年間におよぶ街頭署名活動などを通して、ノン・ドナーカードを配付し、署名提出以降は、店頭にカードスタンドを常時設置してもらうなどの地道な活動に移行した。
しかし大掛かりな配付活動を終えた後も、ノン・ドナーカード希望が寄せられ、その8割が一般市民からのもの。署名提出から2002年3月1日までのノン・ドナーカー
ド発送は75件のうち一般が62件(全体の82.7%)、発送枚数7,639枚のう
ち一般が4,619枚(全体の60.5%)だった。
問い合わせのほとんどは、大本のホームページhttp://www.oomoto.or.jpや
「異議あり!脳死・臓器移植」(天声社刊)
を見ての送付依頼だ。看護学生からは、「現代の医学の在り方に強く疑問を持っています。わたしも脳死・
臓器移植に強く反対します。さらに自信をもって言えるように、ノンドナーカードを送ってください」という便りも届いたとのこと。
「人類愛善会・生命倫理問題対策会議」事務局は、ノン・ドナーカード普及加速の理由を
「『脳死』・臓器移植に対する市民の不信感、嫌悪感が増し、その実態に対する理解が進んでいることの現れと言えるでしょう」と語っている。
胎児脳死症例 鹿児島市立病院
第55回日本産婦人科学会総会ならびに学術講演会が4月12日から15日まで福岡市内で開催され、鹿児島市立病院の楠元氏らは胎児脳死症例を報告した。
母親は37歳、1経妊0経産。胎児の状態は特に異常なく経過していたが、39週3日、陣発にて来院。内診およびBASにて刺激するも胎動なく帝王切開した。術中所見では、胎盤、臍帯の異常は認めなかった。
児は娩出後、筋緊張、自発呼吸なく、アプガースコア1分値1点、5分値1点、臍帯血pH7.496、二酸化炭素分圧34.2、酸素分圧39.7。1生日目のCT所見では、新生児低酸素性虚血性脳症に認められる脳浮腫は認められず、大脳半球に広範囲なlow
densityを認め、脳波、ABRも全くの無反応であった。以上の所見より、分娩中ではなく分娩前に胎内でなんらかの原因により脳死に近い状態になったことが示唆されたという。
出典:楠元 雅寛(鹿児島市立病院)ほか:Fetal Brain Death
Syndromeと考えた一症例、日本産科婦人科学会雑誌、55巻2号、p479(2003年)
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