99歳に透析導入 透析延長で認知症改善 愛仁会高槻病院
意思表示できない患者に透析非導入を検討 高知赤十字病院
移植直前にドナーの脳死判定が覆った 柏友クリニック
透析は週1回+低塩・低蛋白食でスタート 東京医科大学
完全な隔日透析の効果 健常人と同等の生活 西城クリニック
長時間の大量液置換透析で症状改善 日高リハビリテーション病院
第53回日本透析医学会学術集会・総会
第53回日本透析医学会学術集会・総会が、6月20日から22日まで神戸市中央区の神戸コンベンションセンター他を会場に開催される。以下は日本透析医学会雑誌41巻Supplement1より注目される報告の概要(タイトルに続くp・・・は掲載貢)。
*布施 善和(愛仁会高槻病院透析科):高齢者の透析導入に年齢制限はあるか 99歳の導入例を診て、p744
【はじめに】高齢の透析患者は増加傾向にある。この傾向にあって一体幾つまで透析を導入するべきなのか、年齢制限はないのか考えてみた。
【症例】99歳男性、ごく軽度の認知症があるが、日常生活に支障はない。慢性腎不全でCr3〜4で外来通院を続けていたが、肺炎をきっかけに腎機能が悪化し、BUN60.9、Cr6.21まで上昇した。この段階で透析導入について本人および家族に確認したところ、年齢や本人の負担を理由に拒否された。しかし書面で確認を求めるとためらわれ即答は得られなかった。この間にも腎機能は悪化するため、とりあえず1回だけという条件で透析を開始した。一時的に検査値は改善したが数日経つうちまた悪化、しかし家族らの結論は得られないまま2回、3回と同様に透析は延長された。回を重ねるうちに、これまで認知症の進行と考えられた症状が改善、以前のように清明になり、透析に対する抵抗も薄れ、結局維持透析となった。
【まとめ】高齢者では透析で長命が期待でき、認知症症状が改善することも期待できる。年齢にかかわらず適応があれば透析導入すべきである。
*塩津 智之(高知赤十字病院泌尿器科):末期腎不全はすべて透析導入すべきか 自者自身が意思表示できない場合は、p581
【はじめに】透析患者は年々増加し、予後も改善しているが、本来の目的である社会復帰を逸脱した症例に臨床現場で価むことがある。症例を提示し透析非導入について考えたい。
【症例】74歳女性、糖尿病、脳梗塞、心筋便塞、高度の認知症で寝たきり状態、ADLは全介助、経口摂取は出来ず他院入院中、腎機能が悪化し、紹介される。家族の強い希望で透析導入し、シャントは作成困難で長期留置型カテーテルを挿入。栄養は高カロリー輪液、経鼻栄養からPEG
施行。在宅療養は困難なため、転院となり透析療法を継続している。(他に1例提示する)。
【考察】透析導入に関して厚生省の透析適応基準はあるが、透析非導入に関して生命倫理に関するガイドラインは不備である。透析非導入は患者、家族、医療従事者さらに法律家などの学識経験者を加え結論を出す必要があるが、今回の症例のように患者自身が意思表示できず生命を維持するだけの場合、治療の不作為による死が倫理的にかつ法的に許されるのか、きちんとした基準案を望みたい。
当Web注:当サイトでは、問題があると思われる主張も広く知られる必要があると判断し掲載しています。
*伊勢 まゆみ(柏友クリニック):透析サテライトにおける腎移植 6症例から学んだこと、p643
40歳女性、透析歴19年、移植直前にドナーの脳死判定が覆り、見送りとなる。
*中尾 俊之(東京医科大学腎臓内科):慢性腎臓病(CKD)の末期腎不全に対する保存的食事療法と低頻度血液透析の複合療法 保存期から完全腎代替療法への移行期腎不全のステージ概念とその治療方式、p303
腎機能が一定レベル以下に低下したからといって、いきなり週3回の透析を適応して、低蛋白食から食事療法をきりかえる従来型の血液透析は受容しがたい面がある。腎機能低下は緩徐に直線的連続性を持って進むとすれば、ある時点をもって治療方法を全く転換することは不自然でもある。このようなステージの患者に低塩・低蛋白食事療法と低頻度血液透析(週1回・4時間)を併用する複合療法が1つの効果的な治療方式となりうる。
複合療法を87名に導入、継続期間は4年以上10%、2−4年12.5%、1−2年30%、0.5−1年35%。全例が社会復帰状況は良好で、週3回の従来型血液透析と比べ医療費は1/2、受診時間は1/3、残腎機能が保持される傾向を認めた。
*伊與田 義信(西城クリニック):完全な隔日透析を27年間施行した慢性透析患者の臨床的検討、p567
56歳男性、糸球体腎炎のため1975年4月28日導入、維持透析を開始。透析開始2ヵ月後に在宅透析に移行し、2年後の1977年より2003年までの27年の間、完全な隔日透析を行った。貧血予防に対して大きな効果をもたらしrHuEPOは27年間をとおして使用する必要はなかった。基礎体重は27年間を通して60kg前後と安定していた。様々な合併症が消失し、健常人と同等に生活・仕事をこなすことができた。自由食に近い食生活が可能だった。
*星野 大吾(日高リハビリテーション病院):深夜長時間On-Line HDFによる全身症状の著明な改善を認めた一例、p568
49歳男性、6年間で合計4施設において3.5時間×週3回の血液透析を施行。心胸比増大、DW減少、高血圧症、レストレスレッグズ症候群、貧血、体重増加による呼吸苦・心不全などが著明となり、当院転入に至る。透析量増大の目的で透析条件を大幅に変更し、On-Line
HDFを7時間×週3回とした。
転入時から8ヵ月経過時点で心胸比は10%の減少、DWは10%増加、平均血圧は150から120mmHgへ減少、降圧剤内服数は5系統7種から1種類に減量された。その他にレストレスレッグズ症候群の症状消失、貧血の改善など、多項目におよぶデータ改善がみられた。透析後の疲労感・倦怠感を減少させつつ、多項目におよぶ血液データ、身体症状が改善され患者QOLは大きく向上した。
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