岩城氏 ドナー候補者の7倍の移植希望患者を示し臓器不足を扇動
心臓移植適応患者188例中23例が人工心臓で心機能回復、離脱
第30回日本外科系連合学会学術集会
第30回日本外科系連合学会学術集会が6月24、25日の2日間、日本大学会館とアルカディア市ヶ谷を会場に開催された(以下は日本外科系連合学会誌第30巻3号p310、p351〜p353より)。
南カリフォルニア大学の岩城 裕一氏は“提供者不足下でのアメリカにおける移植臓器の実情について”を招請講演。「アメリカにおいても深刻な臓器不足が現実の問題となって現場の患者、そして医療関係者を悩ませている。2005年4月1日時点で、87,951も患者が移植を希望しているのに対して、前年度2004年の脳死ドナー数は7,150であり、そのアンバランスは明白である」と述べ
、アメリカにおける取り組みを紹介した。
このほか東京大学心臓外科では、2002年4月以来、重症心不全に対する補助人工心臓により8例中2例が離脱したこと(補助中の死亡も2例)。埼玉医科大学心臓血管外科でも1992年以降、心臓移植適応と考えられる末期的重症心不全患者37例に補助人工心臓治療を行い、そのうち8例が心機能が回復して離脱したこと(補助中の死亡も9例)。大阪大
心臓学血管外科でも1992年以降、末期重症心不全76例中6例に心機能回復を認め離脱、国立循環器病センターは1994年以降、重症心不全で心臓移植が考慮され補助人工心臓を装着した67例のうち、7例が計画的に離脱し長期生存していることを報告した。
大阪大学の松宮 護郎氏らによると「補助人工心臓により若年で心不全歴が短く、fibrosisの比較的軽度の症例では比較的高率に期待しうる」という。
当Web注:米保健福祉省は臓器提供が可能だった死亡者は年間12,000人〜15,000人(JAMA日本語版2002年6月号p68) としている。
ドナー候補者発生数に対して数倍の移植希望患者がいては、どのような工夫をしても移植希望患者のすべてが「死体」臓器の移植を受けられるように
はなりえない。まじめに臓器不全患者の治療を考える医師は、臓器移植以外の治療法を優先して考慮するのではないか。
舌癌患者へヒト・ドナーの舌移植 術後13ヶ月でガン
ウィーンで 機能面の問題は否めない Remmert教授
6月16日付のMedical
Tribune(7面)は、オーストリアで行われた舌癌患者へのヒト・ドナーの舌移植について報道した。
ウィーン市立総合病院のChristian Kermer博士とウィーン大学病院耳鼻咽喉科のMichael Oeckher博士が発表(Wiener
Klinische Wochen-schrift
2004;116:643−644)したところによると、レシピエントは42歳男性、舌根に生じた扁平上皮ガンのため舌切除をうけた。ヒト・ドナーの舌を移植したところ、術後1年で他者が理解できる程度の話ができるようになった。舌背は敏感で形状・温冷の識別も可能だったが、移植された舌を積極的に動かすまでには至らなかった。術後13ヶ月ほどして顎角部に新たなガンを発見、その数週間後に患者は死亡した。
メディカルトリビューンは、免疫抑制剤により重複ガンが発生しやすい環境であることを指摘。また聖アンナ・マルタ騎士修道会病院耳鼻咽喉科のStephan
Remmert教授の「機能面での問題は否めない」
筋移植では神経線維の変性により意味のある協調運動の実現はほとんど不可能。
患者自身の筋組織を用いた再建術のほうが免疫抑制剤は不要。
他人の舌を口に入れて暮らすという考えに違和感を持つ者は少なくない。
というコメントも掲載している。ドナーに関する記述はない。
法的「脳死」移植レシピエントの死亡は累計19人
高度肥満を遠因に打撲から感染 術前指導が不足
東京女子医科大学腎臓病総合医療センター
日本臓器移植ネットワークはhttp://www.jotnw.or.jp/datafile/example.htmlにおいて
、法的脳死判定15例目ドナーからの腎臓移植手術を東京女子医科大学腎臓病総合医療センターで受けた
50代女性が死亡していることを掲載している。法的脳死判定手続下の 臓器移植でレシピエントの死亡が判明したのは19例目となった。
東京女子医科大学雑誌75巻1・2号p20〜25掲載の「脳死ドナーからの腎臓移植 ―東京女子医科大学病院における経験―」によると、この女性は体重90kg(BMI34.7%)と高度肥満、移植前より不整脈に対して抗凝固剤を内服していた。移植後の腎機能は良好だったが、術後2年目に肥満に由来する歩行障害を呈するようになった。術後2年2ヵ月目に右下腿打撲から広範囲の皮下血腫を形成し、同部位への感染を引き起こした。さらにその治療経過中にS状結腸穿孔を来たして人工肛門を造設した。一時、全身状態の改善を認めたが、術後2年7ヵ月目頃より脳梗塞様の症状が出現、次第に意識レベルは低下し、術後2年11ヵ月目に呼吸不全を合併して死亡した。
この論文を書いた東京女子医科大学腎臓病総合医療センター・外科の中島 一郎氏らは、「献腎移植では、初期情報から移植までに十分な時間的余裕がない場合が多く、献腎移植登録者に対する定期的な術前指導が必要と思われる」と考察している。
法的「脳死」移植レシピエントの死亡年月日、レシピエントの年齢(主に移植時)←提供者(年月)、臓器(移植施設名)は以下のとおり。
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2000年11月20日 47歳女性←bP0ドナー(20001105) 肝臓(京都大)
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2001年 5月25日 10代女性←bP4ドナー(20010319) 肝臓(京都大)
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2001年 9月11日 7歳女児←bP2ドナー(20010121) 小腸(京都大)
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2001年12月11日 20代女性←bP8ドナー(20011103) 肝臓(北大)
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2002年 2月 3日 43歳男性←bP1ドナー(20010108) 右肺(東北大)
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2002年 3月20日 46歳女性←bP6ドナー(20010726) 右肺(大阪大)
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2002年 6月10日 38歳女性←a@5ドナー(20000329) 右肺(東北大)
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2002年 9月10日 20代男性←bQ1ドナー(20020830) 肝臓(京都大)
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2002年12月 5日 20代女性←bQ2ドナー(20021110) 両肺(岡山大)
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2004年 6月頃 50代女性←bP5ドナー(20010701) 腎臓(東京女子医科大学腎臓総合医療センター)
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2004年 6月 7日 50代男性←bR0ドナー(20040520) 両肺(東北大)
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2005年 3月 7日 50代男性←bP2ドナー(20010121) 心臓(国立循環器病センター)
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2005年 3月10日 50代男性←bR6ドナー(20050310) 両肺(京都大)
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2005年 3月21日 40代男性←bR2ドナー(20041120) 心臓(大阪大)
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死亡年月日不明 50代男性←a@5ドナー(20000329) 腎臓(千葉大)
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死亡年月日不明 30代男性←bP4ドナー(20010319) 腎臓(大阪医科大)
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死亡年月日不明 50代男性←bP6ドナー(20010726) 腎臓(奈良県立医科大)
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死亡年月日不明 50代男性←a@2ドナー(19990512) 腎臓(東京大学医科学研究所附属病院)
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死亡年月日不明 20代男性←bQ9ドナー(20040205) 肝臓(大阪大)
法的「脳死」移植レシピエントの死亡は累計18人
日本臓器移植ネットワークはhttp://www.jotnw.or.jp/datafile/example.htmlにおいて
、法的脳死判定29例目ドナーからの肝臓移植手術を大阪大学医学部附属病院で受けた20代男性が死亡していることを掲載している。
法的脳死判定手続下の 臓器移植でレシピエントの死亡が判明したのは18例目。これまで腎臓移植レシピエントの死亡は別扱いで死亡日も報道されていな
かったが、他の臓器レシピエントについても同様の対応となってきた模様だ。
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