市立札幌病院の脳死判定 3年間に40例以上
5倍感度測定は20分間のみ、30分間行わず
電極間距離も、微弱な脳波は描出しにくい設定
2008年5月30、31日の2日間、第57回日本医学検査学会が札幌市内で開催され、市立札幌病院の久保 喜義氏らは臨床的脳死診断時の脳波測定で電極間距離は7cm以上、通常感度(10マイクロボルト/mm)で10分間、5倍感度(2マイクロボルト/mm)で20分間測定していること、3年間に40例以上の臨床的脳死患者症例で脳波を測定したことを発表した。
*久保 喜義、西垣 希代子、谷口 雅、中村 厚志、小林 克己(市立札幌病院):脳波(ECI)測定検査 当院3年間、40例の経験より、医学検査、57(4)、638、2008
当Web注
唐澤秀治著「脳死判定ハンドブック」は法的脳死判定マニュアルの曖昧な表現を批判し、「脳波活動が弱いと20分は波形は出ないが、その後に間歇的に波形が認められることがある」とのjorgensen(1974年)の指摘を引用して、5倍感度で30分間測定する必要性を指摘している。そして電極間距離は「微弱な脳波も描出できるように10cm以上あけること」としている。
市立札幌病院は、第33回日本集中治療医学会学術集会でも鼓膜損傷で法的脳死判定ができない患者から、臓器を摘出したことを報告した。
法的「脳死」臓器移植レシピエントの死亡は累計45人
膵臓移植患者の死亡は初めて
日本臓器移植ネットワークは5月15日更新の脳死での臓器提供ページで、臓器移植患者の死亡が6名増加したことを表示した。法的脳死判定手続下の臓器移植でレシピエントの死亡が判明したのは累計45名で、膵臓移植を受けた患者の死亡は1例目となる。このほか心臓移植を受けた患者がさらに1名死亡
、肺移植を受けた患者もさらに1名死亡、肝臓移植を受けた患者もさらに1名死亡、腎臓移植を受けた患者がさらに2名死亡している。
臓器別の法的「脳死」移植レシピエントの死亡年月日、レシピエントの年齢(主に移植時)←提供者(年月)、臓器(移植施設名)は以下のとおり。
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2005年 3月 7日 50代男性←bP2ドナー(20010121) 心臓(国立循環器病センター)
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2005年 3月21日 40代男性←bR2ドナー(20041120) 心臓(大阪大)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 心臓(施設名不明)
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2002年 2月 3日 43歳男性←bP1ドナー(20010108) 右肺(東北大)
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2002年 3月20日 46歳女性←bP6ドナー(20010726) 右肺(大阪大)
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2002年 6月10日 38歳女性←a@5ドナー(20000329) 右肺(東北大)
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2002年12月 5日 20代女性←bQ2ドナー(20021110) 両肺(岡山大)
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2004年 6月 7日 50代男性←bR0ドナー(20040520) 両肺(東北大)
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2005年 3月10日 50代男性←bR6ドナー(20050310) 両肺(京都大)
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2006年 5月初旬 40代男性←bP9ドナー(20040102) 右肺(岡山大)
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2006年 5月27日 40代女性←bS6ドナー(20060526) 両肺(岡山大)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肺(施設名不明)
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2006年10月24日 30代女性←bS3ドナー(20060321) 両肺(京都大)
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2007年 7月? 32歳男性←bS9ドナー(20061027) 左肺(福岡大)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肺(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肺(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肺(施設名不明)
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2000年11月20日 47歳女性←bP0ドナー(20001105) 肝臓(京都大)
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2001年 5月25日 10代女性←bP4ドナー(20010319) 肝臓(京都大)
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2001年12月11日 20代女性←bP8ドナー(20011103) 肝臓(北大)
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2002年 9月10日 20代男性←bQ1ドナー(20020830) 肝臓(京都大)
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2005年12月26日 50代女性←bS1ドナー(20051126) 肝臓(北海道大)
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死亡年月日不明 20代男性←bQ9ドナー(20040205) 肝臓(大阪大)
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死亡年月日不明 60代男性←bR6ドナー(20050310) 肝臓(京都大)
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死亡年月日不明 40代男性←bQ2ドナー(20021111) 肝臓(北大)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 膵臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 膵臓・腎臓(施設名不明)
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2004年 6月頃 50代女性←bP5ドナー(20010701) 腎臓(東京女子医科大学腎臓総合医療センター)
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死亡年月日不明 50代男性←a@5ドナー(20000329) 腎臓(千葉大)
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死亡年月日不明 30代男性←bP4ドナー(20010319) 腎臓(大阪医科大)
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死亡年月日不明 50代男性←bP6ドナー(20010726) 腎臓(奈良県立医科大)
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死亡年月日不明 50代男性←a@2ドナー(19990512) 腎臓(東京大学医科学研究所附属病院)
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死亡年月日不明 女性←bQ6ドナー(20031007) 腎臓(名古屋市立大)
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死亡年月日不明 50代男性←bR6ドナー(20050310) 腎臓(国立病院機構千葉東病院)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 腎臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 腎臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 腎臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 腎臓(施設名不明)
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2001年9月11日 7歳女児←bP2ドナー(20010121) 小腸(京都大)
法的脳死判定70例目 判定対象外の患者を脳死と判定した可能性 薬物影響
血圧48mmHgで臨床的脳死診断を開始 198mmHgで無呼吸テストを開始
2008年5月12日、広島市立広島市民病院に入院中の70歳代女性が法的脳死(70例目)と判定され、5月13日に肝臓、腎臓、膵臓
が摘出された。
第70例目の脳死下での臓器提供事例に係る検証結果に関する報告書http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001zhsd-att/2r9852000001zhvt.pdfによると、70代女性は2008年5月1日朝、突然
、頭痛・吐き気をもよおし他院受診。高血圧の診断で治療を受けるも軽快せず、複数の医療機関を受診した。5月7日夜間救急で広島市民病院を受診した。CT検査でくも膜下出血と左内頸動脈瘤を認め入院となった。
5月8日、高齢と発症日時(くも膜下出血第7病日と推定)より脳血管れん縮期と予想されたことから、家族同意のもと脳血管内治療による動脈瘤閉塞術を施行した(開始13:40−終了17:20)。
カテーテルの選択的な送りこみができず、18:09、手術室に移して、全身麻酔(セボフルラン、プロポフォール、フェンタニル、)気管挿管後に左開頭・STA-MCA吻合術・動脈瘤クリッピング術が施行された。術開始約3時間後に、意識レベルが低下し、左中大脳動脈の閉塞を確認した。直ちに同日家族同意のもと開頭手術による脳動脈瘤クリッピング術と浅側頭動脈・中大脳動脈吻合術(開始18:09終了23:27)を施行した。
術翌日9日のCTで左中大脳動脈領域に広範囲な脳梗塞を認めたため、内減圧術を含めた脳圧コントロール対策を提示するも家族の承諾が得られなかった。以降、脳圧降下剤と脳梗塞の治療、血圧の維持を行った。
5月10日にご家族から保存的治療は継続するがdo not resuscitate (DNR)の申し込みがあった。また、5月11日に臓器提供意思表示カードの提示があり、その後に臓器移植の意思表示がなされた。
手術直後より5月11日9:38までプロポフォール投与のため、意識レベル判定不能。手術直後より左瞳孔散瞳(手術操作による)、10日、右瞳孔は中程度散瞳、
11日9:25両側散瞳、対光反射消失となる。プロポフォール投与中止約5時間半後、11日15:00に臨床的脳死判定を開始したが、一過性の低血圧が出現し、昇圧剤にて血圧を維持した。
11日17:00臨床的脳死と診断された。喘息の既往があったので胸部臓器の提供はしないこととなった。
検証会議報告書は、脳死判定を行うための前提条件について「経過中5月11日9:38、プロポフォールの持続投与は中止され、また、5月8日から投与されていた抗痙攣薬のフェニトイン(1/2筒:125mg、2回/日)は、5月11日9:10、最終投与であった。プロポフォールの投与中止から5時間22分経過しており、臨床的脳死判断に麻酔薬と抗痙攣薬の影響はない状況で判定がなされている。
本症例は上述の経過概要からみて、脳死判定の対象としての前提条件を満たしている」としている。
当Web注:唐澤秀治著「脳死判定ハンドブック(羊土社・2001年)」は、「フェニトインは作用が発現するのに個人差が著しい。脳死判定を開始する目安の時間は14時間としている。5月8日からフェニトインを投与し、その後に脳圧上昇があったのならば、この脳死判定に影響する可能性のある薬剤は、脳内に滞留していた可能性がある。70歳代という身体条件からも薬物の代謝・排出は遅れる可能性がある。中枢神経抑制剤に影響されている可能性のある患者として、脳死判定の対象外とすべきではなかったか?
臨床的脳死診断の開始時に、血圧は48/30mmHg、終了時120/68mmHg、検査中の使用昇圧薬はドパミン、バソプレシンだった。報告書は「開始時に低血圧は認められるものの、臨床的に脳死と診断して差し支えない」「臨床的脳死診断を開始時、血圧は低値を示すも、直ちに投与されたドパミンにより経過中は血圧は正常に維持されている」としている。
当Web注:低血圧で誤って臨床的に脳死と診断される可能性があるため、昇圧剤が投与されたと見込まれるが、低血圧患者の血圧を上げた場合に、何時間経過したら安定した脳死診断が可能となるのか。血圧を正常血圧に近い値まで上昇させたら即、安定的に神経学的検査と脳波測定が可能になるのか否か?ついて、根拠はないのではないか?
法的脳死判定第1回
では、無呼吸テスト開始時の血圧104/66mmHgが、4分後に155/90mmHg、6分後に192/113mmHg、9分後の記録はなく、終了後に105/67mmHgと低下した。
法的脳死判定第2回では、無呼吸テスト
開始時の血圧198/104mmHgが、8分後に180/100mmHg、12分後に150/87mmHg、14分後の記録はなく、終了後に99/60Hgと低下した。2回とも検査中に昇圧薬のドパミン、バソプレシンを使用した。
当Web注:収縮期血圧が200mmHgに近い状態は、不適切な管理と見込まれる。
第1回検査で無呼吸テスト中の血圧上昇は、患者が恐怖を感じた可能性がある。
第2回検査で、無呼吸テスト 開始時の血圧は198/104mmHgだった。高血圧で、自発呼吸能力があっても発現しない可能性がある。臓器移植法の改訂論議の際に、日本移植学会の寺岡理事長(当時)は「法的脳死判定の無呼吸テスト時に血圧が下がった患者はいない」など、無呼吸テストが安全に行なえると
の発言をした。
法的「脳死」臓器移植レシピエントの死亡は累計39人
日本臓器移植ネットワークは5月9日更新の脳死での臓器提供ページで、腎臓移植を受けた患者がさらに1名死亡していることを表示した
。法的脳死判定手続下の臓器移植でレシピエントの死亡が判明したのは累計で
39例目。
臓器別の法的「脳死」移植レシピエントの死亡年月日、レシピエントの年齢(主に移植時)←提供者(年月)、臓器(移植施設名)は以下のとおり。
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2005年 3月 7日 50代男性←bP2ドナー(20010121) 心臓(国立循環器病センター)
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2005年 3月21日 40代男性←bR2ドナー(20041120) 心臓(大阪大)
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2002年 2月 3日 43歳男性←bP1ドナー(20010108) 右肺(東北大)
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2002年 3月20日 46歳女性←bP6ドナー(20010726) 右肺(大阪大)
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2002年 6月10日 38歳女性←a@5ドナー(20000329) 右肺(東北大)
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2002年12月 5日 20代女性←bQ2ドナー(20021110) 両肺(岡山大)
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2004年 6月 7日 50代男性←bR0ドナー(20040520) 両肺(東北大)
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2005年 3月10日 50代男性←bR6ドナー(20050310) 両肺(京都大)
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2006年 5月初旬 40代男性←bP9ドナー(20040102) 右肺(岡山大)
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2006年 5月27日 40代女性←bS6ドナー(20060526) 両肺(岡山大)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肺(施設名不明)
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2006年10月24日 30代女性←bS3ドナー(20060321) 両肺(京都大)
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2007年 7月? 32歳男性←bS9ドナー(20061027) 左肺(福岡大)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肺(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肺(施設名不明)
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2000年11月20日 47歳女性←bP0ドナー(20001105) 肝臓(京都大)
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2001年 5月25日 10代女性←bP4ドナー(20010319) 肝臓(京都大)
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2001年12月11日 20代女性←bP8ドナー(20011103) 肝臓(北大)
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2002年 9月10日 20代男性←bQ1ドナー(20020830) 肝臓(京都大)
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2005年12月26日 50代女性←bS1ドナー(20051126) 肝臓(北海道大)
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死亡年月日不明 20代男性←bQ9ドナー(20040205) 肝臓(大阪大)
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死亡年月日不明 60代男性←bR6ドナー(20050310) 肝臓(京都大)
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死亡年月日不明 40代男性←bQ2ドナー(20021111) 肝臓(北大)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 膵臓・腎臓(施設名不明)
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2004年 6月頃 50代女性←bP5ドナー(20010701) 腎臓(東京女子医科大学腎臓総合医療センター)
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死亡年月日不明 50代男性←a@5ドナー(20000329) 腎臓(千葉大)
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死亡年月日不明 30代男性←bP4ドナー(20010319) 腎臓(大阪医科大)
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死亡年月日不明 50代男性←bP6ドナー(20010726) 腎臓(奈良県立医科大)
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死亡年月日不明 50代男性←a@2ドナー(19990512) 腎臓(東京大学医科学研究所附属病院)
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死亡年月日不明 女性←bQ6ドナー(20031007) 腎臓(名古屋市立大)
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死亡年月日不明 50代男性←bR6ドナー(20050310) 腎臓(国立病院機構千葉東病院)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 腎臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 腎臓(施設名不明)
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2001年9月11日 7歳女児←bP2ドナー(20010121) 小腸(京都大)
関東地方の病院、40歳代男性を法的脳死と判定(69例目)
動脈瘤破裂?外傷性くも膜下出血?鑑別できず原疾患不明
無呼吸テストで血圧105mmHg、酸素飽和度91%に低下
生体腎移植済みの患者にレシピエント候補と連絡
2008年5月8日、関東地方の病院に入院中の40歳代男性が法的に脳死と判定され心臓、右肺、肝臓、腎臓、膵臓が摘出された。臓器提供施設名は非公表だが、腎臓移植が虎の門病院分院(神奈川県川崎市、タクシー搬送の所要時間24分)と東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市、タクシー搬送の所要時間79分)で行なわれたことから、臓器提供施設も神奈川県下と見込まれる。
「第69例目の脳死下での臓器提供事例に係る検証結果に関する報告書」http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001zhoc-att/2r9852000001zhrv.pdfによると、この40歳代男性は5月2日朝8時頃、妻によりいつもと変わりなかったことが確認されている。夜8時頃、妻が帰宅した際に、家にいなかった。5月3日4時40分頃、屋外から大きな物音が聞こえたため、妻が見に行くと、アパートの階段の下で患者が側臥位で倒れており救急車要請。救急隊到着時、心肺停止状態。
5時20分、病院に到着。心電図は心静止、5時30分心拍再開、5時50分再度、心静止。5時56分心拍再開。頭部CTにてくも膜下腔鞍上槽中心にくも膜下出血、右側頭葉に急性硬膜下血種と思われる高吸収域を確認。頭蓋底、前頭蓋骨に骨折を認めた。また、胸部CTにて両側背側中心に、肺挫傷を疑う浸潤影を認めた。
動脈瘤破裂または外傷性変化かの鑑別診断目的に頭部CT施行したが、造影剤による血管描出不十分で脳浮腫と皮髄境界不鮮明の所見のみであった。画像結果から家族に回復の可能性がない旨を説明した。第4病日(5月6日)家族が臓器提供意思表示カードを持参し、心停止、脳死いずれも全臓器提供する患者本人の意思を確認した(報告書の「初動体制並びに家族への脳死判定等の説明および承諾」では、本人の健康保険証の意思表示欄の提示。家族は、「本人が臓器提供の意思を持っていたので活かしてあげたい。昔から医師になりたいという夢を持っていた。型は違ってしまうがその意思を尊重したい」と話した)。
第5病日第1回法的脳死判定、第6病日(5月8日)第2回法的脳死判定が行なわれた。筋弛緩剤、鎮静剤など神経症状に影響を及ぼす薬物は使用していない。
第1回法的脳死判定で無呼吸テスト開始前に、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)35mmHg、動脈血酸素分圧(PaO2)219.2mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)100%、血圧128/61mmHgだった。4分後に動脈血二酸化炭素分圧が規定の60mmHgに達し、動脈血酸素分圧111.8mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度98%、血圧105/48mmHgと低下。6分後に動脈血二酸化炭素分圧が66.3mmHg、動脈血酸素分圧75.0mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度91%とさらに低下した。6分後の血圧は記載がない。
第2回法的脳死判定で無呼吸テスト開始前に、動脈血二酸化炭素分圧36.5mmHg、動脈血酸素分圧274.6mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度100%、血圧135/74mmHgだった。6分後に動脈血二酸化炭素分圧が63.0mmHgに達し、動脈血酸素分圧80.5mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度92%、血圧107/54mmHgと低下した。
レシピエントの選択において、肺は、第10候補者の移植実施施設側が移植を受諾し、右肺の移植が実施された。第1、6候補者はレシピエントの医学的理由により辞退し、第2〜4、7〜9候補者はドナーの医学的理由により辞退し、左肺の移植が見送られた。
腎臓は、第2、11候補者の移植実施施設側が移植を受諾した。第1、3、7候補者はレシピエントの医学的理由により辞退し、第4〜6、9、10候補者はレシピエントの都合により辞退。第8候補者は生体腎移植済みだった。
当Web注
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報告書のp12「参考資料 第69例臓器提供の経緯」に、法的脳死判定の確定後に検視が行なわれたことが記載されているが、報告書本文には受傷の経緯、原疾患について明確な記載がない。
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臓器移植法の改訂論議の際に、日本移植学会の寺岡理事長(当時)は「法的脳死判定の無呼吸テスト時に血圧が下がった患者はいない」など、無呼吸テストが安全に行なえるとの発言をした。
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