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2003年1月31日 腎移植医が脳外科医と同行回診 藤田保健衛生大学救命救急センター
2003年1月29日 ドナーカードのない患者家族が「今からでもカードを書こうか」
8歳小児から臓器摘出、温阻血時間0分の心停止?後腎提供
入院1時間後に臨床的脳死、法的脳死判定後に「心停止」下腎提供
臓器提供承諾率が年々低下、脳死臓器提供施設の94%が負担感
小児専門病院職員、移植は賛成・臓器提供意思表示はしない
第36回日本臨床腎移植学会
2003年1月27日 京大病院(田中院長)が、生体肝提供者へのドミノ移植を発表
ドミノ肝の配分・二次レシピエント選択ルールが、各施設任せ
2003年1月15日 心臓移植の成績良い理由は、若い心筋症患者だから
中山、宮崎、福島議員を中心に改悪動く 北村総長

20030131

 腎移植医が脳外科医と同行回診 藤田保健衛生大学救命救急センター

 藤田保健衛生大学救命救急センター脳神経外科病棟では、毎朝腎移植医が脳外科医と同行回診し、家族に対する臓器提供の提案率は70%〜ほぼ100%と高率だが、承諾率は低下してきた。

 神野 哲夫:脳死段階での臓器移植−何がその開始を阻んでいるか、救急医療の現場から、現代医学、41(2)、369−373、1993によると、
(p369)我々の救命救急センター内では脳神経外科用14床の回診は毎朝8時30分より始まる。この回診に脳外科医は当然のことながら全員出席する(彼等は7時15分からの病棟回診をすでに終わっている)。特筆すべきことは、このセンターの回診に過去13年間毎朝、泌尿器科、詳しくは腎移植医が出席していることである。最初は腎臓の専門家が脳外科の患者を診ても仕方ないであろうと考えたが、彼らの意図が腎移植の提供者の発見にあることは明らかであった。以後、彼らの熱意に引きずられ、今日まで117例の心停止後の腎移植の提供が我々の施設から出ている。おそらく、この数は全国で一、二を競うものであろう。(この様に毎早朝、回診に来られる習慣をつけられた藤田民夫、現名古屋記念病院泌尿器科部長、星長清隆、泌尿器科講師の熱意に敬意を表します。)

 神野 哲夫:脳外科医・救命救急医と腎移植−使命感とジレンマ、泌尿器外科、7(2)、105−109、1994にも同様の記載があり、腎移植医の回診参加は1979年頃より、7時にはほぼ集合している模様だ。

 現代医学、泌尿器外科ともに1979年〜1993年3月までの中枢神経系救急症例6866、死亡例1150、心停止後の腎提供依頼例約820、腎提供承諾例117、7例に1例の承諾率としている。

 2003年1月29日から31日に開催された腎移植連絡協議会(編集:高橋 公太、腎移植連絡協議会からの提言 Donor Action Program −われわれは今なにをすべきか−日本医学館発行)のp75によると、藤田保健衛生大の星長 清隆氏は「脳外科医の(臓器提供)オプション提示率はほとんど100%、・・・・・・昔は承諾率は50%ぐらいありましたが、最近は10%くらいしかとれていません」と発言した。

 


20030129

ドナーカードのない患者家族が「今からでもカードを書こうか」
8歳小児から臓器摘出、温阻血時間0分の心停止?後腎提供
入院1時間後に臨床的脳死、法的脳死判定後に「心停止」下腎提供
臓器提供承諾率が年々低下、脳死臓器提供施設の94%が負担感
小児専門病院職員、移植は賛成・臓器提供意思表示はしない
第36回日本臨床腎移植学会

 1月29、30、31日の3日間、下呂水明館において第36回日本臨床腎移植学会が開催 。シンポジウム「移植コーディネーションの問題点」では、4名の臓器移植コーディネーターが発表した。「今日の移植」19巻2号p169〜p191より。

 

  1. 静岡県腎臓バンク移植コーディネーターの清水 牧子氏は、「法的脳死判定が施行できなければ脳死診断できないとされた症例」を発表。今後の課題として「心停止前処置を施行するための統一的な脳死判定規定が必要である」とした。
     
  2. 岡山県臓器バンク移植コーディネーターの安田 和広氏は、「家族の希望と主治医の治療方針の違いで苦慮した症例」で、ドナーカードがない患者家族が「今からでもカードを書こうか」と家族の感情が高まり、「心停止後」に腎臓、角膜、心臓弁、血管を提供。主治医としこりを残した事例を発表した。
     
  3. 日本臓器移植ネットワーク中日本支部・移植コーディネーターの加藤 治氏は、「献腎での呼吸器停止はどこまで可能か」と、脳死判定のない患者で人工呼吸器を停止した場合の献腎を、ネットワークが斡旋しなかった実例を紹介。尊厳死の要件を満たした患者からの献腎の斡旋も認めるように提案した。
     
  4. 日本臓器移植ネットワーク東日本支部・移植コーディネーターの芦刈 淳太郎氏は、「心停止後のヘバリン注入事例」で「脳死状態と診断されていないため心臓停止前のへパリン注入ができない。心臓停止・死亡確認直後の心臓マッサージなど主治医ならびにスタッフの負担、家族の理解と協力を得られない場合は、提供を断念せざるをえない。レシピエントに対する長期予後の影響が非常に懸念される」と述べた。

 

 以下は「移植」第39巻3号より(凡例=抄録の筆頭執筆者名(所属施設):タイトル、掲載ページ)。

8歳小児から臓器摘出

  • 長沼 俊秀(大阪市立総合医療センター):小児ドナーから成人への献腎移植の2例、312−313

 症例1は51歳男性、身長158cm、体重50kg、症例2は47歳女性、身長154cm、体重40.5kg。同一ドナーの8歳の小児ドナー(身長130cm、体重26kg)からの献腎移植。総阻血時間は症例1で4時間、症例2で6時間34分と短時間であり、レシピエントの体格が小柄であったことも移植腎の生着に有利に働いたと考えられた。

当Web注:年齢および阻血時間から、大阪透析研究会会誌21巻1号に掲載の症例とみられる。温阻血時間3分ときわめて短時間で腎臓を冷却するには生前にカテーテルを挿入しておくしかない。また脳内出血していたドナーに抗血栓剤も投与したであろうが、このような行為を正当化する法的脳死判定手続き、ドナーの生前同意(生前意思表示の法的効力無き8歳小児)に関する言及はない。

 

3徴候死を形式的にも確認しなかったとみられる温阻血時間1分、0分の心停止?後腎提供

  • 松川 宣久(社会保険中京病院):透析歴27年の患者に対する献腎移植の1例、331

 2002年8月15日、ドナーは60歳男性、くも膜下出血のため心停止後、腎摘出が行なわれ、同日、腎移植が施行された。温阻血時間は1分。

  • 樋口 濃史(京都府立医科大学):透析離脱に時間を要した死体腎移植、339

 2001年9月、脳死状態となった59歳男性より提供を受け死体腎移植施行。ドナーは、臨床的脳死判定の後14時間後に心停止。直ちに腎摘出となった。wit0分。

当Web注:温阻血時間=wit0分とは、血液循環下に腎臓を冷却した、または心停止状態の継続を1分間未満しか観察しなかったことを示す。

 

入院1時間後に臨床的脳死、法的脳死判定後に「心停止」下腎提供

  • 木村 貴美子(静岡県立総合病院):法的脳死判定後に心停止下で腎提供された症例の検討、316

 49歳女性、脳幹部出血で入院し1時間後に患者は「臨床的脳死」に近い状態となった。家族より静岡県腎臓バンクの腎提供カードを所持しており、患者の意思を尊重したいと臓器提供の申し出があった。
 脳神経外科では、脳死判定はいかなる場合でも法的脳死判定にもとづくべきだという立場から、法的脳死判定の実施に踏み切り心臓死からの献腎・献眼に至った。2回目の判定は2時間早く実施され完全な脳死判定ではなかった。

当Web注:入院1時間後に「臨床的脳死」という判断が可能であるのか。「脳死判定はいかなる場合でも法的脳死判定にもとづくべき」という立場は、現行の法的環境下では当然だが「2回目の判定は2時間早く実施」するならば形式的な態度だったことになる。

 

臓器提供承諾率が年々低下

 2002年9月末における(当Web注:ドナー候補者家族への臓器提供)オプション提示はポテンシャルドナーの88%であった。承諾率は22.7%と年々低下傾向にあった。拒否理由のなかで「本人意志が不明だからそのままにしてほしい」とするものが53%と顕著に増加していた。
 一般社会への移植の認知だけでなく、腎移植の必要性に対する理解が向上するような啓発がなされなければ提供側の協力があっても承諾率に限界があると考えられる。

 

脳死臓器提供経験施設の94%が負担感

  • 野村 知子(北里大学病院救命救急センター):腎提供病院医師への臓器提供に対するアンケート調査、
    移植Co、NW、摘出医、移植医に対する改善点の集計を中心に、314

 脳死臓器提供経験施設、4類型施設(未経験)、4類型外施設の3群1990施設を対象にアンケート(回収率33%)。脳死臓器提供について、経験施設の94%が負担であり、未経験施設の半数以上が不安であると回答した。改善を望む点に、NWへはドナー管理の早期からの関与があった。

 

小児専門病院職員、移植は賛成・臓器提供意思表示カードは持たない

  • 原 との子(静岡県立こども病院):静岡県立こども病院における臓器移植に関する意識調査、315

  職員全員393名、344名の回答を得ることができた。「移植のために臓器提供について貴方はどう思いますか」について賛成237名・反対15名。「臓器提供意思表示カードを持っていますか」については、はい110名・いいえ234名と賛成者の割合と比較しカード所有は少なかった。

 


20030127

京大病院(田中院長)が、生体肝提供者へのドミノ移植を発表
ドミノ肝の配分・二次レシピエント選択ルールが、各施設任せ

 京都大学医学部附属病院の田中 紘一院長(臓器移植医療部長)は、生体肝移植のドナーが重体になり、名古屋大病院の患者から摘出した肝臓でドミノ肝移植を行なうことを発表。同日午後、手術を開始した。国内の生体肝移植で、ドナーの再手術が必要になるのは初めて。同病院だけでなく他の施設でも、生体肝移植ドナーが術後、脳死肝移植が必要とな り、2名生存中ということも明らかになった(この20030127ニュース最下部)。

 京都大学医学部 医の倫理委員会は今回の手術を承認するに当たり「生体肝ドナーが肝不全に陥った経緯と理由を、専門小委員会が十分検証すること」という条件を付け、またドミノ肝の配分・二次レシピエント選択ルールがないことから、再確認する必要がある」とした。以下は同病院の資料。

 

京都大学医学部附属病院

  1. 平成14年8月の肝移植についての倫理委員会

 京都大学医学部 医の倫理委員会は、生体肝移植について、500例を越えた時点で一定のルールを決め、その範囲内の事例については改めて倫理委員会を開催する必要はないという取扱いとしており、今回の事例については、そのルールの範囲内のものであったため、倫理委員会は開催していない。
 

  1. 平成15年1月の肝移植についての倫理委員会

(1)開催日時
  平成15年1月24日:肝移植専門小委員会開催及び答申
              医の倫理委員会(親委員会委員全員にFAXにて申請書送付)
  平成15年1月26日:医の倫理委員会 親委員会委員からの意見の取りまとめ

(2)提出資料
  ○生体肝移植におけるドナーの死亡、あるいは救命的な肝移植について
  ○疾患名、主訴、既往歴、家族歴、現病歴、現症、検査成績クラフ等
  ○(資料1)平成15年1月の肝移植レシピエントのこれまでの経過、現在の問題点と治療
  ○(資料2)平成14年8月のレシピエントのこれまでの経過及び再移植後の経過
  ○(資料3)平成14年8月臓器提供術前状態(ドナー)の評価
  ○(資料4)残肝容積からみたドナー術後肝機能、脂肪侵潤から見たドナー術後肝機能、
         全区域枝離断と欝血の関連について等 (参考資料)

 下線部資料のうち、資料4以外についてはドナー及び患者の個人情報であるため、また資料4については未公表資料であることから、公表することはできない。ただし、これらの資料については、その概要を別添の形で取りまとめ、家族の了承を
得た上で既に公表しているところである。なお、提出資料のうち、 「生体肝移植におけるドナーの死亡、あるいは救命的な肝移植について」ついては、既に公表されている資料に含まれている。

 

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京大記者クラブ様

肝移植883例目、40才代後半、女性

疾患名:生体肝移植ドナー手術後、肝不全

主訴:;黄疸、凝固能異常、意識障害

既往歴:高血圧症、肝右葉切除術(生体肝移植ドナー手術、平成14年8月)

現病歴:
 平成14年8月生体肝移植後の肝不全に陥った10代後半の患者に対する生体肝再移植のドナーとして、肝右葉切除術を受けた。術後循環管理のためICU管理としたが、術後肝障害が遷延し、大量腹水も持続した。画像検査上の容積としては十分な肝再生を認めたが、術後3ヶ月から肝障害が徐々に進行し機能的には肝再生は不十分と考えられた。12月に入り、肺炎の合併と同時に肝不全に陥り、その回復に努めたが、呼吸状態は改善したもめの肝機能の回復は得られず、現在は脳症W度の状態となっている。

現症:全身黄疸著明、腹部膨満 身長160cm、体重58.3s

ドミノ肝移植に至るまでの経過
 考え得る様々な治療法にて肝障害の改善に努めてきたが、本年1月に入り現在の治療法では限界である旨を家族に伝え、救命のための肝移植の必要性を説明した。1月下旬、名古屋大学で近々代謝性肝疾患に対する移植が行われる予定であることを知り、1月22日名古屋大学より、この代謝性肝疾患患者さんが、臓器提供の意思があることが正式に伝えられた。そこで今回名古屋大学での移植の実施にあわせてドミノ移植を計画した。

 

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平成14年8月臓器提供術前の評価

年齢::40才代後半

既往歴:若い頃より高血圧

術前指摘された問題点:
1)循環器系 高血圧
心電図検査にてU、V、AVFで軽度のST低下あり。負荷心電図では胸痛なく、心電図上も虚血性変化認めず。心エコー検査にては特に異常なし。これら所見にて,手術後1日集中治療室にて管理することとした。
2)肝機能 生化学デー夕にて軽度のトランスアミナ―ゼ上昇。超音波検査にて肝腎コントラスト陽性で脂肪肝を疑う。CTにてCT値の肝脾の比が1.0で、中等度脂肪肝の可能性が示唆された。C丁にて前区域から中肝静脈に流入する太い肝静脈(V8)を認めた。CTポリュームメトリ―にて、予想全肝容積1215ml、予想右葉容積758ml、残肝容積比(予想残肝容積/予想全肝容積)は37%であった。
手術内容 手術時間:8時間40分、出血量540ml
中肝静脈付きグラフトを採取(グラフト重量900c)。グラフトは中程度脂肪肝(術中生検材料にてmacrovesicular30%)

 

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患者の今回の移植に至る経過

術前日 生体肝移植ドナーとして入院。
平成14年8月 肝右葉切除術施行。術前の risk factor を鑑み、循環体液管理のため集中治療室にて術後管理を行った(通常ドナーは―般外科病棟で術後管理)。
術後第2日目 肝機能の改善が思わしくなく、呼吸困難も伴うため再挿管し人工呼吸器による呼吸管理を行った。循環動態も不安定で少量のカテコールアミンを使用した。
術後第3日目 高アンモニア血症に伴う意識障害に対し持続緩徐式血液透析濾過を開始した。
術後第5日目 ピリルビン値は徐々に上昇傾向するため、血漿交換を3日間行った。以後全身状態、意識障害ともに改善傾向を認めた。
術後第10日目 意識状態、呼吸状態ともに改善し抜管可能となった。また8月末には車椅子歩行も可能となった。
術後3週目 集中療室より―般病棟へ転棟した。
術後4週目 肝容積、再生評価のためCT撮影した。画像上、肝容積は130Occとなり、肝容積としては十分に再生していると判断した。
術後6週目 肝機能の改善はいまだ十分でなく腹水の流出が増加するため肝生検施行し化膿性胆管炎および脂肪肝との診断を得た。
術後2ヶ月 脂肪肝の改善を期待して、経腸栄養開始した
術後2ヶ月半 ビリルビン値は徐々に減少し5まで低下したが、一方では腹水の流出は依然増加し、1日に8から12リットルに達した。
術後3ヶ月 腹水コントロール目的に経頸静脈的肝内門脈大循環シャント留置術(TIPSS)施行した。同時施行の肝生検にて、依然として化膿性胆管炎、高度脂肪肝を認めた。その後腹水は1日約6リットルにまで減少し,全身状態も改善傾向を示した。
術後4ヶ月 肺炎を合併し呼吸状態が急激に悪化したため、集中治療室搬入の上、挿管し人工呼吸器による呼吸管理を行った。またこののち徐々に意識状態が再度悪化してきたため、持続緩徐式血液透析を開始した。
術後4ヶ月半 高アンモニア血症に伴う意識障害に対し血漿交換を開始。
術後5ヶ月 この頃より昏睡状態となっている。
 

現在の問題点と治療

  1. 肝不全  持続緩徐式血液透析濾過、血漿交換による肝補助療法
  2. 菌血症
  3. 意識障害、脳神経障害の回復の予測
  4. 腎障害
  5. 循環障害

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MH(レシピエントの娘)経過
2ヶ月 先天性胆道閉鎖症の診断の元、葛西手術。上行性胆管炎、食道静脈瘤破裂繰り返す。
9歳 肺内シャント出現
11歳 父親をドナーとして生体部分肝移植。以後、地元病院および京大病院でフォローアップ。
14歳 拒絶反応に対しステロイドパルス。難治性拒絶との診断の元、OKT3治療。以後AST、ALT100強で経過。T‐Bil 1.5前後で推移。
19歳(2002年)
7月 AST870、ALT640、ビリルピン6と上昇。新たに発症した自己免疫性肝炎と考え免疫抑制強化するも肝機能増悪。
8月 消化管出血、DIC併発。脳症出現し、血漿交換と持続血液濾過透析にても改善せず、保存的療法の限界と判断。
母親をドナーとして生体部分冊移植

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医の倫理委員会審議経緯

 

平成15年1月23日:移植外科から倫理委員会事務局に報告。同日、委員長が肝移植専門小委員会開催を要請。

平成15年1月24日::肝移植専門小委員会開催および答申(夕刻)。その後、倫理委員会親委員会全員にFAXにて申請書送付後、電話等にて検討。

平成15年1月26日:午後3時、委員からの意見の最終取りまとめ。移植外科ヘ報告。

 

倫理委員会議論の要約

 本例は「緊急避難」のケースとして扱う。移植を緊急避難的に承認する根拠として、
@現在の二次レシピエント候補者の重症度が京大病院内では最も高く、かつ移植によって救命の可能性があること。
A生体肝移植において、ドナーの生命を最優先とするこれまでの原則を守ること。
 移植を施行しないことによる不利益は、「ドナー死亡」というドナー自身及びそのご家族にとって甚大なものになる。

 ―方、問題点及び今後解決しなければならない点として、以下の点があげられた。
@生体肝ドナーが肝不全になった医学的理由の検証:ドナーに今回のように重篤な後遺症が出た際には、その例において医学的に厳密な検証が必要。
A移植用臓器配分の公平性の問題:脳死体からの臓器提供は、移植ネットワークが配分を行っている。しかし、ドミノ肝提供に関しては明確なルールがない。京大病院では、他大学等からドミノ肝の提供の申し出があった際には、脳死肝移植の待機リストの順に従って移植を施行するという原則で対応してきた。ドミノ肝の提供があった際の二次レシピエント侯補者の選択法について再確認することが必要。

 以上のような見地から、倫理委員会として承認する際には、以下のような条件を付す必要がある。
@今回の生体肝ドナーが肝不全に陥った医学的な経緯及びその理由を、移植外科は専門小委員会に詳細に報告し、専門小委員会が十分検証すること。

 同時に倫理委員会は、ドミノ肝の提供があった際の二次レシピエント候補者の選択に際して、現行の脳死待機リストに順ずる、という方式でよいかどうかを再確認する必要がある。

以上

 

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昨日・2003年1月26日(日)までのデーター

 

@生体肝移植手術総数 871
        18才以上 310(35.6%)
        18才未満 561(64.4%)

        再移植    45( 5.1%)
京大患者のみの再移植  40( 4.8%)

A成人生体肝移植における右葉グラフト症例232、この中に、ドミノ2例、APOLT2例を含む。

B生体肝移植手術症例の成績
                1年生存率 79.3%
                3年生存率 78.1%
                5年生存率 76.8%

 

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生体肝移植におけるドナーの死亡、あるいは、救命的な肝移植について

 

 生体肝移植ドナーの死亡については、単一の報告にすべてが記録されておらず、また、情報収集のシステムが確立されていないため、正確な統計を出すことが出来ない。しかしながら、ここ数年間の文献、及び、personal communication を総合すると、ある程度の実数を把握することが出来る。

 2000年11月の Liver Transplantation の特集の中で、詳細はまったく記述されていないが、米国にて1例の生体肝移植ドナーの死亡例があったと述べられ、死亡率<0.3%と算出している。また、欧州においては、術後複数台併症のため1例の生体肝移植ドナーの死亡例があったと記載があり、死亡率約0.8%と計算されている。また、別のグループによると、3例の生体肝移植ドナー死があったと報告し、その原因を肺塞栓3例、敗血症1例としている。彼らは、小児生体肝移植ドナー死を2/1500の0.13%、成人生体肝移植ドナー死を1/500の0.2%と計算している。

 また、2002年4月のThe New England journal of medicine の Review Article に、生体肝移植ドナーにおける死亡について述べられており、この中でドナー706例中2例の死亡があったと報告され、0.28%の死亡率と算出されている。

 総合すると、文献的には生体肝移植ドナーの死亡率は、0.13〜0.8%ということになる。もっとも最近では、2002年1月米国 New York のMlL Sinai 病院において、57歳の男性ドナーが、臓器提供から3日後に、細菌感染(Clostridium perfringens)が原因と思われる胃出血により、死亡している。

 しかしながら、移植の国際学会の発表やpersonal communication を含めると、実際の生体肝移植ドナー死の実数は、もう少し多いと思われる。これらをまとめると世界的には、欧州において4例(Hamburg, Essen, Lyon, Jacnc)、米国において3例(North Carolina, San Antonio, New York )の計7例のドナー死が少なくともあったと考えられているが、詳細は不明である。

 ―方、生体肝移植が盛んに行われているアジアでは、韓国で1例の生体肝移植ドナー死がうわさされているが、詳細は不明である。日本においては、約2000例の生体肝移植が施行されているが、生体肝移植ドナー死はこれまで報告されでいない。

 また、personal communication としては、生体肝移植ドナーが術後、脳死肝移植が必要となり、2名生存中という情報もあるが、これについても詳細不明である。

 


20030115

心臓移植の成績良い理由は、若い心筋症患者だから
中山、宮崎、福島議員を中心に改悪動く 北村総長

 成人病と生活習慣病(東京医学社) Vol.33 No.1 は「移植医療の現状」を特集。国立循環器病センターの北村 惣一郎総長は、日本での心臓移植の成績が良い理由は、比較的高齢の虚血性心筋症患者と先天性心疾患の幼児・小児患者がないことと、移植を受けたレシピエントが若い青年・壮年期の心筋症患者が中心であることが「大きな理由と考えられる」とした。

 北村氏は「心臓移植医療の現状 ―日米の比較― 」p59〜p65のなかで、米国の移植例の45%は虚血性心筋症、45%が心筋症、2%が先天性心疾患などであるのに対して、わが国で心臓移植適応と考えられた検討症例147例(1997.4.1〜2002.11.20)のうち78%が何らかの特発性心筋症で、虚血性心筋症が10%に過ぎないことを円グラフで表示して、移植後成績の良好な理由を説明した。

 このほか北村氏は、渡航移植患者の搬送手配、臨床工学技師の派遣など「国立の医療施設として使命感を持って行なっているが、国立循環器病センターとしては大きな負担となって来ている」と経済事情もあることを訴え「この問題に関係の深い日本小児科学会や日本医師会が明確な意思を表示してくれることが重要である。・・・(中略)・・・平成15年には小児への移植の道を開く法改正の動きも中山太郎、宮崎秀樹、福島豊議員らを中心に始まる・・・(中略)・・・」とした。

 


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