大阪大学:ドナー情報の6割は深夜〜早朝、脳死肝移植11例中2例死亡
岡山大学:移植後9日で死亡、移植待機15例のうち4例が軽快・取り消し
名古屋大学:生体肝移植手術の直前に、ドナーの逡巡が判明
第29回日本肝移植研究会
第29回日本肝移植研究会が2011年7月22、23日、仙台国際センターで開催された。以下は「移植」46巻6号より注目される発表(タイトルに続くp・・・は掲載ページ)。
*永野 浩昭(大阪大学大学院消化器外科学):当院における脳死肝移植の経験とこれkらの課題、p632〜p633
2010年12月までに当院で行なわれた脳死肝移植症例11例(成人10例、小児1例)、ネットワークからのドナー情報は、深夜〜早朝(23:00〜8:36)に7例(64%)あり、このうち早朝での6例では情報連絡から病院出発まで平均2時間28分(136〜272分)であった。肝移植11例中、9例(82%)が健存しており、肝移植成績については、生体部分肝移植の成績と同等であった。
*楳田 祐三(岡山大学医歯薬学総合研究科消化器腫瘍外科):改正臓器移植法施行後の脳死肝移植における問題点、p633
2007年5月以降の脳死肝移植登録19症例、うち4例に脳死肝移植を施行した。平均待機期間は308日(3〜1、399日)であったが、緊急度6点の1例を除き、9点症例は3〜8日の短期間で脳死ドナーを得た。移植後成績は、3例が生存・社会復帰を果たし、1例を一般病棟転棟後の移植後9日目に致死的不整脈で失った。死亡症例については、通常の生体肝移植に準ずる移植前の入院精査が、重症・移動困難にて不可能であった。
非移植15例の転帰は、死亡転帰5例(待機期間480日)、軽快・取り消し4例(待機期間359日)、生体肝移植施行2例(待機期間118日)、待機中4例(待機期間415日)であった。緊急度9点の慢性肝不全の待機症例では、連日血液製剤を要する状況であり、待機期間が30日を超えて、診療経費・待機先が問題となりつつある。
*坪井 千里(名古屋大学医学部附属病院移植連携室):ドナーの肝機能異常を契機に手術中止に至つたケースからの教訓 手術直前に判明したドナーの逡巡、p652
53歳の父親(C型肝硬変)への提供を希望とした24歳男性。ドナー一次検査時には提供に対する迷いが払拭されていなかったが、精神科医の面談の時点ではドナーとなる気持ちが固まっていると判断された。また術前のインフォームドコンセントでも提供手術における危険性について自ら質問するなど、自発的な提供の意思が認められると考えた。しかし術前日にドナーの肝機能異常が判明したことで手術は延期、同時に心境の変化が生じた。自身の身体面の不安とともに、手術延期による家族の動揺を感じ取り、再び提供に対する気持ちの揺らぎが出現した。その後、肝機能が正常化したものの、迷い・揺らぎは続き、約1力月後に再び提供の申し出があった。一方で同時にレシピエント候補の父親から、提供依頼と受け取れる発言もあったため、ドナー不適格の疑いを考え協議、再度精神科医に面談を依頼した。しかし面談日の当日にレシピエントが死亡、移植には至らなかった。
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