福岡大病院 1年半移植を待っていた30代男性
肺移植で人工心肺から離脱できず、翌日に死亡
福岡大病院(福岡市)は8月3日、7月31日に法的脳死臓器摘出143例目ドナーから肺の提供を受けた30代男性が、8月1日に死亡したことを発表した。
死亡した男性は重度の閉塞性肺疾患で、1年半前に脳死移植の待機登録をしていた。7月31日に両肺の移植手術を受けている際、血圧が著しく低下。術後も集中治療室(ICU)で治療を受けていたが、人工心肺から離脱できず、8月1日午前0時すぎ、呼吸循環不全のため亡くなった。男性は手術の約2カ月前から呼吸不全が重症化し、人工呼吸器を装着していたという。
法的「脳死」臓器移植患者の死亡は累計67名
肺4名、腎2名、肝1名、膵腎同時1名が死亡
日本臓器移植ネットワークは、8月2日に更新した移植に関するデータページhttp://www.jotnw.or.jp/datafile/offer_brain.htmlで、法的脳死判定手続にもとづき臓器移植を受けた後に死亡した患者数が、累計
67名に達したことを表示した。肺移植後の死亡患者が4名増加
、肝臓移植後の死亡患者が1名増加、膵腎同時移植後の死亡患者が1名増加、腎臓移植後の死亡患者が2名増加した。
肺移植患者の死亡は累計25名、肝臓移植患者の死亡は累計21名、膵腎同時移植患者の死亡は累計5名、腎臓移植患者の死亡は累計11名になった。
垣内 俊彦(国立成育医療研究センター):当センターで改正臓器移植法施行後に脳死肝移植登録をおこなった小児症例の検討、日本消化器病学会雑誌、108(臨時増刊)A692、2011は、劇症肝不全(体重33kg:右葉移植)と胆道閉鎖症原発性過蓚酸尿症(体重6.7kg:外側区域移植)の各1例で脳死肝移植となり、原発性過蓚酸尿症の1例は死亡したことを報告している。
今回、日本臓器移植ネットワークが表示した肝臓移植患者の死亡例は、移植時期からみると、2011年1月27日、前橋赤十字病院における法的脳死118例目ドナーからの分割肝提供を受けた患者(10歳未満女児)の可能性が高い。
竹田 雅(神戸大学大学院腎泌尿器科学分野):HAL0ミスマッチドナーからの膵腎同時移植後GVHDの経験、日本泌尿器科学会雑誌、103(2)、408、2012によると、1型糖尿病性腎症にて維持透析中だった37歳男性は、2011年2月にHAL0ミスマッチの脳死ドナー(法的脳死124例目)より膵腎同時移植施行。術後免疫抑制剤はタクロムリス、ステロイド、ミコフェノール酸、バシリキマブの4剤併用で導入維持、術直後より透析およびインスリン離脱可能で、膵腎双方のグラフト機能は良好に経過していた。
持続する下痢に対して、術後41日目に小腸生検で血栓性微小血管障害所見を認めた。ほぼ同時期に全身の皮疹が出現、皮膚生検にてGVHDの診断を得た。ステロイロ大量投与にて皮膚症状は改善、これを漸減していくも、緑膿菌を起炎病原体とする肺炎を発症、菌血症を続発した。集学的治療にて対応するも全身状態悪化、術後156日目に死亡した。
(ポスターを文書化)腸管病変は、当初は薬剤性(タクロムリス)と考えてカルシニューリン阻害剤をシクロスポリンに変更、その後、カルシニューリン阻害薬が誘因と考えられる疼痛症候群を疑い、カルシニューリン阻害剤を一時中止した。明らかな拒絶反応の所見はないが免疫抑制としては不十分でGVHD発症の誘引となった可能性がある。ステロイドパルス療法で免疫抑制を強化した後に重症感染症を発症した。
これまでの臓器別の法的「脳死」移植レシピエントの死亡情報は、臓器移植死ページに掲載。
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