日本初の肝臓移植、長期生着の見込みなく強行 千葉大・中山外科
ドナーは脳に障害を持った新生児、レシピエントは胆道閉塞症5ヵ月児
1964年3月20日、千葉大学附属病院・中山外科は、半脳症で死産した新生児の肝臓を、先天性胆道閉塞症の5ヵ月の乳児に移植した。
同外科の中山恒明、山本勝美、南園義一、大坪雄三、山口慶三、野本昌三の各氏が第64回日本外科学会総会に発表(日本外科学会雑誌65巻11号p944−p945、1964年に掲載)した「中山外科に於ける肝切険119例の経験とその遠隔成績について」によると、レシピエントは術後2日までは胆汁排泄もあり、経過良好であったが、術後4日目に黄疸指数が上昇、移植肝は壊死の傾向を示したため生体への影響を考え術後5日目に、移植肝を剔除した。肝壊死の原因は「静脈吻合側の閉塞によるものと考えられる」という。
日本小児外科学会雑誌1巻1号p133〜p134掲載の「先天性胆道閉塞症に対する肝同種移植の経験例について」によると、レシピエントは第12病日に死亡した。
以下は当Web注
半脳症とは、1側の大脳半球が欠如した胎児:hemiencephalus。
後年に行われる肝臓移植とは異なり、ドナーの肝臓を腸骨動静脈を利用して、一次的に移植を行い(肝臓は後腹膜外に固定)、その後に様子をみてレシピエントの肝臓摘除を予定していた。
中山氏らは「乳児に対する同種肝臓移植例は外にその報告を見ず、本症例が第1例であるが、先天性胆道閉塞症の乳児に対する吾々の同種肝移植法は此の分野えの明日えの大きな魁になるものと信じる」と発表したが、この移植に先立つイヌの移植実験では、14頭のうち5日以上生存は6頭、14日生存1頭、31日生存1頭であったことも報告している。当初より、移植した肝臓の長期生着の見込みは持てないままの移植であり人体実験の側面が大きいといえよう。
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