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20100720

法的「脳死」臓器移植レシピエントの死亡は累計48名
肺移植患者が1名死亡

 日本臓器移植ネットワークは、7月20日更新の脳死での臓器提供ページで死亡した臓器移植患者数は累計48名になったことを表示した。前回、死亡データを更新した2010年 6月14日から、肺移植患者の死亡が1名増加した。

 臓器別の法的「脳死」移植レシピエントの死亡年月日、レシピエントの年齢(主に移植時)←提供者(年月)、臓器(移植施設名)は以下のとおり。

  1. 2005年 3月 7日 50代男性←bP2ドナー(20010121)  心臓(国立循環器病センター)

  2. 2005年 3月21日 40代男性←bR2ドナー(20041120)  心臓(大阪大)

  3. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明            心臓(施設名不明)
     

  4. 2002年 2月 3日 43歳男性←bP1ドナー(20010108)  右肺(東北大)

  5. 2002年 3月20日 46歳女性←bP6ドナー(20010726)  右肺(大阪大)

  6. 2002年 6月10日 38歳女性←a@5ドナー(20000329)  右肺(東北大)

  7. 2002年12月 5日 20代女性←bQ2ドナー(20021110)  両肺(岡山大)

  8. 2004年 6月 7日 50代男性←bR0ドナー(20040520)  両肺(東北大)

  9. 2005年 3月10日 50代男性←bR6ドナー(20050310)  両肺(京都大)

  10. 2006年 5月初旬  40代男性←bP9ドナー(20040102)  右肺(岡山大)

  11. 2006年 5月27日 40代女性←bS6ドナー(20060526)  両肺(岡山大)

  12. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明       肺(施設名不明)

  13. 2006年10月24日 30代女性←bS3ドナー(20060321)  両肺(京都大)

  14. 2007年 7月?   32歳男性←bS9ドナー(20061027)  左肺(福岡大)

  15. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明       肺(施設名不明)

  16. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明       肺(施設名不明)

  17. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明       肺(施設名不明)

  18. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明       肺(施設名不明)

  19. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明       肺(施設名不明)

  20. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明       肺(施設名不明)

  21. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明       肺(施設名不明)

  22. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明       肺(施設名不明)
     

  23. 2000年11月20日 47歳女性←bP0ドナー(20001105)  肝臓(京都大)

  24. 2001年 5月25日 10代女性←bP4ドナー(20010319)  肝臓(京都大)

  25. 2001年12月11日 20代女性←bP8ドナー(20011103)  肝臓(北大)

  26. 2002年 9月10日 20代男性←bQ1ドナー(20020830)  肝臓(京都大)

  27. 2005年12月26日 50代女性←bS1ドナー(20051126)  肝臓(北海道大)

  28. 死亡年月日不明   20代男性←bQ9ドナー(20040205)  肝臓(大阪大)

  29. 死亡年月日不明   60代男性←bR6ドナー(20050310)  肝臓(京都大)

  30. 死亡年月日不明   40代男性←bQ2ドナー(20021111)  肝臓(北大)

  31. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明     肝臓(施設名不明)

  32. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明     肝臓(施設名不明)

  33. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明     肝臓(施設名不明)

  34. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明     肝臓(施設名不明)

  35. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明     肝臓(施設名不明)

  36. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明     肝臓(施設名不明)

  37. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明     肝臓(施設名不明)
     

  38. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明     膵臓・腎臓(施設名不明)
     

  39. 2004年 6月頃   50代女性←bP5ドナー(20010701)  腎臓(東京女子医科大学腎臓総合医療センター)

  40. 死亡年月日不明   50代男性←a@5ドナー(20000329)  腎臓(千葉大)

  41. 死亡年月日不明   30代男性←bP4ドナー(20010319)  腎臓(大阪医科大)

  42. 死亡年月日不明   50代男性←bP6ドナー(20010726)  腎臓(奈良県立医科大)

  43. 死亡年月日不明   50代男性←a@2ドナー(19990512)  腎臓(東京大学医科学研究所附属病院)

  44. 死亡年月日不明      女性←bQ6ドナー(20031007)  腎臓(名古屋市立大)

  45. 死亡年月日不明   50代男性←bR6ドナー(20050310)  腎臓(国立病院機構千葉東病院)

  46. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明     腎臓(施設名不明)

  47. 死亡年月日不明   レシピエント不明←ドナー不明     腎臓(施設名不明)
     

  48. 2001年9月11日   7歳女児←bP2ドナー(20010121)  小腸(京都大)

 


20100710

岩手大学動物病院 ネコ腎臓移植の高死亡率、ドナーの長期データなしを周知せず
“不遇な状況にいるドナー” 安楽死より臓器提供・レシピエントと同居でQOL向上?

 チクサン出版社発行のCAP(Campanion Animal Practice)2010年7月号は、p58〜p68に岩手大学農学部獣医学課程・小動物外科学教室の片山 泰章氏による「猫の腎移植,成功へのシナリオ」を掲載した。

 片山氏は、岩手大学動物病院は2010年度からネコの腎移植プログラムを末期腎不全に対する治療オプションのひとつとして打ち出した、という。小動物医療における腎臓移植は、米国ではGregor氏yらが1987年にイヌ、ネコの症例を発表し、日本では麻布大学の三品氏らがネコの臨床例を発表している。日本で臨床獣医師に腎臓移植が治療法として馴染みの薄い要因として、片山氏は1968年の和田心臓移植事件をあげた。ドナー選定の段落は以下の枠内。

ドナーの選定

 ドナー問題は臓器移植には付き物で,議論が尽きることはないであろう。ドナーとなる動物は,感染症や全身疾患に罹患していない健康体である必要がある。さらにいえば,“不遇な状況にいる”ということであろうか。再生不能な貴重な臓器を提供するのであるから,基本的には生活の質が維持されている動物からの臓器提供は避けたいものである。本学における腎移植医療のコンセプトを図1(レシピエントは腎移植で、ドナーは飼いネコになることでQOL向上を目指す図、当Webでは省略)に示す。本来であれば,人間サイドの理由で安楽死を余儀なくされている動物から臓器提供を受け,その代わりにレシピエントの飼い主に終生愛情を持って,ドナーを飼育してもらうことで生活の質を向上させるという方法がよいのではないかと個人的には考えている。この方法であればドナー・レシピエント両者において生活の質を同時に向上させることが可能となる。どの腎移植実施施設でも同様であるが,筆者の施設においてもドナー猫の選択法は以下の2とおりの方法を採用している。

1.実験・実習用として飼育された猫
 筆者の所属する小動物外科学教室にて飼育している実験・実習猫の中から,レシピエントと適合する猫を選択するので,ドナー選択については飼い主の意向は反映されない。さらに,岩手大学動物病院では,レシピエント猫の飼い主は,ドナー猫をレシピエント猫と同じ愛情を持って飼育することを義務化している。

2.飼い主が飼育する同居猫

 「ドナー選定」に続く「片腎摘出のその後」では、ドナー猫の詳細な腎機能測定が実施されていないことを指摘し、「今後の追加報告が待たれるところである」としている。

 「術後成績」では、「Schmiedtらは6ヵ月生存率65%、3年生存率40%と報告している。全体の22.5%が入院中に死亡しているが、うまく周術期を乗り切り退院することができたケースでは6ヵ月生存率は84%、3年生存率は45%とされている。このことから周術期死亡率の高さがうかがえる」

 「ケース紹介」されたレシピエントネコは、実験で右腎を摘出され、左の自家腎を摘出・保存・再植したところ腎機能廃絶に陥ったため、他の実験において摘出された腎臓を用いた再移植に踏み切ったオスネコ(体重6.2キロ)。「現在、レシピエントは筆者が並々ならぬ愛情を持って飼育している。家の中で活発に遊んでいる様子をみると、腎臓がひとつしかない状態ではあるが、実験施設で生涯を終えるよりは、明らかに生活の質が向上しているといえる。ドナー猫に対しても同様のことがいえるのではないか・・・・・・と個人的に感じている」と記した。

当Web注

  1. 片山氏は、2012年の獣医麻酔外科学会雑誌43巻(臨時増刊)p42〜44掲載の「猫の腎臓移植」でもSchmiedtの報告を引用して「全体の22.5%が入院中に死亡している」と記載した。
     ところが岩手大学動物病院・猫の腎移植プログラムのホームページhttp://news7a1.atm.iwate-u.ac.jp/~hospital/renaltransplantation.htmでは、術中死の可能性もあることは記載しているが、レシピエントネコの周術期死亡率が22.5%と高い報告があること、そしてドナーネコが片腎となった後の長期経過が観察されていないことを記載していない(最終確認2013年1月13日)。
     

  2. 日本初の臨床ネコ腎移植例は、三品 美夏(麻布大学獣医)ほか:Renal Transplantation in Cats with Chronic Renal Failure(猫の慢性腎不全に対する腎移植の臨床的考察)、The Journal of Veterinary Medical Science、58(7)、655−658、1996はhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jvms1991/58/7/58_7_655/_pdfで公開されている。

 


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