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2004年12月31日 低感度の頭皮上脳波も測定せず臨床的脳死と診断
大阪三島救命救急センター 年間73例のすべて
2004年12月24日 30歳「脳死」女性が在宅9ヵ月 島田市民病院
法的脳死と差がない患者 在宅介護生活を実現
2004年12月19日 腎不全を移植 手術台上でドナー死亡宣告? 鹿児島大
2004年12月18日 献腎移植 最初から腎臓に血流なし
41日目に摘出 浜松医科大学
2004年12月10日 中国ほかで臓器売買 移植学会評議員アンケート
インフォームドコンセントなし、合併症・術式情報なし
2004年12月10日B 2001年もヤミ脳死3例、ダブルバルン使用127例
温阻血時間30分以上は6% 腎移植臨床登録集計報告
2004年12月 1日 脳死小児から被虐待児を排除する方策に関する提言
小児脳死症例から被虐待児を排除可能な病院は少ない
早急に整備を 院内虐待対策委員会と公的監視チーム
2004年12月 1日B 広島県立病院の献腎摘出チーム 2003年9月
検死前から抗血栓剤ヘパリン投与、心臓マッサージ
2004年12月 1日C 法的「脳死」移植レシピエントの死亡は累計14人

20041231

低感度の頭皮上脳波も測定せず臨床的脳死と診断
大阪三島救命救急センター 年間73例のすべて

 大阪府三島救命救急センターにおいて2004年1月1日から12月31日まで1年間に臨床的脳死と診断された症例は73例だった。年報(第19号)p46によると、原疾患は頭部外傷18名、クモ膜下出血15名、脳内出血13名、脳梗塞4名、CPAOA23名。この症例のなかでドナーカードの提示はなく、脳波またはABR(聴性脳幹反応検査)を施行した症例もなかった。

当Web注:脳死判定における脳波測定は、頭皮の上に脳波測定用電極を設置しているため、電極と脳組織との間に「硬膜、髄液、頭蓋骨、頭皮」などが入る。このため脳組織の表面で測定するよりも、脳波が2分の1〜5,000分の1に弱まり、雑音が増え、記録される脳波も大脳表面から深さ5ミリ〜1センチ程度の脳活動に限られる。

 


20041224

30歳「脳死」女性が在宅9ヵ月 島田市民病院
法的脳死と差がない患者 在宅介護生活を実現

 静岡県島田市立島田市民病院緩和ケア科の廣瀬 光氏らは、30歳の女性脳死患者が在宅療養を開始して9ヵ月間、対応を要する感染エピソードもなく家族のケアで支えられていること、家族は睡眠・覚醒の様子を感じていること、夜間に自発呼吸があるらしいことを、「ホスピスケアと在宅ケア」12巻3号p215〜p218で「いわゆる脳死患者、および家族との在宅ケア体験」として報告した。

 患者は2003年12月29日に心肺停止、蘇生後一貫してJCS300。1週間後の時点でも、瞳孔散大、対光反射消失、自発呼吸なし。血圧は投薬を中止した状況では90〜70mmHg。蘇生過程で胎内死亡していた36週の死児を1月6日に自然娩出。四肢の自発的な運動はこのころから認められていた。1月13日、脳波の再検でも平坦化を認め、聴性脳幹反射でも誘発電位は認めず、高次脳機能の回復は不可能と判断された。

 母(看護師)は在宅移行を決断し、2004年2月17日より在宅療養を開始。人工呼吸器ではルームエアー(酸素は使わない)。経腸栄養900Cal/日。投薬は原則的になし。訪問看護が週3回、往診は10日毎および要請時に行われている。社会福祉協議会からのヘルパー派遣と週1回の介護入浴サービス。その他、訪問歯科診療。日常は姉が終日介護、母、祖母も介護に参加する。

 廣瀬氏らは「今回の事例では家族は『脳死』であるか否かという『医学的、法的』な解釈には影響されない、別な認知で患者を介護の対象として生活の中に受け入れて過ごしている。意識を失ってしまった家族という受け止めにとって人工呼吸器の有無の差は大きなものでは必ずしもない。家族は介護が安定して継続される事を目標にし、且つ前提にして生活を組み立ててもいる。法的脳死診断を得た個体とほとんど差異を認知できない患者に在宅介護生活が実現されている」
 「特殊な技術で支えられている訳でもなく、不穏やせん妄などが無いむしろ静かな状態で過ごす日常がある。ラジオをヘッドフォンで聴かせており、ときおり手足をゆるやかに動かす時、家族は自分たちへの働きかけへの反応と受け止めることが出来る。点でしか接していない医療者には分からないが、家族には『今起きている』『眠っている時は』と様子の違いを受け止めて表現している。在宅開始から長期間に至ってむしろ命を最近強く感じているようである」としている。

 10月の脳波所見にも有意の波形は見出すことはできなかった。広瀬氏らは「脳死は在宅医療や介護の対象か」「この昏睡患者と家族の間で日常のケアをとおして共有されている時間体験が、ケアされる者の「命」はすでに失われたという解釈の上に成り立っていると捉える事は医療者の立場でも難しい」など、医療者としての戸惑いを書く。

 最後の3行は、こう書いてある。

 「しかし、この事例を前にすると、立ち止まってしまう。その点家族の認識はとらわれるものがなく自由である。再三家人が報告する『夜間の自発呼吸』という現象を訪問時に目撃することを願う気持ちがこの長期間の在宅期間を経て自分のなかで高まっているのを感じる。」.

 

当Web注:川崎医療福祉大学の内田らは、遷延性意識障害者の家族は、約4割の患者は周囲に対する理解・認知があると感じていることを報告している。
 


20041219

腎不全を移植 手術台上でドナー死亡宣告? 鹿児島大 

 12月19日、城山観光ホテル(鹿児島市)において第109回日本泌尿器学会鹿児島地方会が開催され、鹿児島大学の山田氏らは、腎臓移植を受けたレシピエントの血清クレアチニン濃度が26mg/dlと、極めて腎機能が低下した状態で退院したことを報告した(血清クレアチニン濃度の基準値は0.4〜1.2mg/dl)。

 ドナーは69歳女性、2004年4月5日に心肺停止状態(解離性大動脈瘤、肺穿波)で近医に救急搬送された。心停止後、開腹下に下行大動脈を切開し、内腔を確認したうえでダブルバルーンカテーテルを2本留置し、腎臓の冷却を行いながら腎摘出を行なった。温阻血時間は11分、総阻血時間は左腎26時間35分、右腎27時間59分。

 右腎の移植を受けたレシピエントは、移植3日目に初尿を確認し14日目に透析を離脱、血清クレアチニン濃度2.4mg/dlで退院した。左腎の移植を受けたレシピエントは、移植7日目で初尿確認し17日目に透析離脱、血清クレアチニン濃度26mg/dlで退院した。移植1時間後の腎生検では、左腎の急性尿細管壊死が強かった。

 山田氏らは「解離性大動脈瘤を合併したドナーにおいては、カニュレーションにより片側の腎血流が低下する可能性がある。また死戦期において片側の血流が低下している可能性もあり、十分な配慮が要求される」とまとめた。

 

 出典:山田 保俊(鹿児島大学)ほか:解離性大動脈瘤を合併したドナーからの移植腎摘出の経験、西日本泌尿器科、68巻2号、p79〜80(2006年)

 

当Web注:ダブルバルーンカテーテルの挿入は第3者目的の処置、かつ脱血・冷却液注入を行うための準備でもあり、法的脳死判定手続き下で行わないと傷害致死罪に問われる可能性がある。開腹して臓器の状態確認、ダブルバルーンカテーテルの挿入を行うだけでも約10分間かかると見込まれる。温阻血時間が11分であることから、ドナーは手術室に搬入されてから死亡宣告直後に開腹された可能性が高い。

 


20041218

献腎移植 最初から腎臓に血流なし
41日目に摘出 浜松医科大学

 第9回静岡県腎移植研究会が12月18日、ホテルアソシア静岡ターミナルにて開催。浜松医科大学泌尿器科の古瀬 洋氏らは、献腎移植を受けるも術直後から腎臓に血流が認められず、41日目に移植腎を摘出した小児例を報告した。

 レシピエントは家族性膜性増殖性糸球体腎炎の13歳男児、ドナーは脳梗塞の70歳男性。移植直後よりドップラーエコーで腎実質に血流を認めず、36日目に腎生検で移植腎の完全壊死を確認し、41日目に移植腎摘出術を施行した。病理所見は、ほぼ完全な壊死像を呈しており、壊死しなかった部分に血管型拒絶反応を認めた。

出典:DIC腎のため移植腎摘出に至った小児献腎移植の1例、今日の移植18巻2号、p244(2005年)

 


20041210

中国ほかで臓器売買 移植学会評議員アンケート
インフォームドコンセントなし、合併症・術式情報なし

 日本移植学会雑誌「移植」39巻6号は、巻頭に「倫理指針遵守状況とドナー交換腎移植に関するアンケート」を掲載した。アンケート対象は日本移植学会評議員192人、回答があったのは103人(回収率53.6%)。以下は主な内容。

  1. 親族以外のドナーからの生体移植について
    実施2例のうち、1例において@第三者による自由意志の確認A施設内の倫理委員会の承認B学会の倫理委員会への見解要請 が行われていたが、1例では@第三者による自由意志の確認のみだった。
     
  2. 海外での移植について
     紹介状の作成依頼があったとする回答が21名、13名は「作成した」と回答。内訳は生体移植4例(腎2、肝2)、死体移植19例(腎7、肝7、心3、肺2)。 
     
    1. 臓器の売買や受刑者からの提供ではないことを確認したのは11名、4名は「問い合わせなかったが『ない』と思っている。
       
    2. 昨年1年間で海外移植後の管理を引き受けたことがあるのは26名。
       問題点として感じられたこと。
      1. 中国での移植であり、治療内容の情報が少ない。
      2. 高齢者(74歳)に十分なインフォームドコンセントなしに腎移植が行われた。ドナーであった25歳の人に25万円を現金で渡した。当然、生体腎であったが、メディカルレコード(中国から持参したもの)には、死体腎と書かれてあった。
      3. 多額の費用、短期間でドナーが見つかっている事が疑問。
      4. 臓器売買ではなかったか危惧している。
      5. ドナーの情報がほとんどない。
      6. 術式の情報がない。術直後から帰国までのフォローシートの様な詳しい経過を同封してこない。
      7. 免疫抑制剤投与量が多く、入院中の合併症について不明。
      8. 患者自身が免疫抑制剤について理解していない(説明されていない)。
      9. 移植後一番管理の大変な時期に帰国して管理を頼まれる。
      10. 日本の現状を考えると患者さんの苦しい選択はやむをえないことかもしれません。もちろん患者さんの紹介など関与すべきではありませんが、移植手術後の免疫抑制剤投与は医師として、人間として引き受けております。
      11. 引き受けることで容認派と誤解される恐れあり。
      12. 移植医自身を守るシステムの欠如。
         
  3. ドナー交換腎移植に関する学会見解案について
     「ドナー交換腎移植」の必要性ある45名、ない51名、無記載5名。この回答を腎臓のみ移植している評議員に限ると、33名中12名が必要性ありと回答。

 


20041210B

2001年もヤミ脳死3例、ダブルバルン使用127例
温阻血時間30分以上は6% 腎移植臨床登録集計報告

 移植、39巻5号p643−p651掲載の「腎移植臨床登録集計報告(2002)−2 2001年実施症例の集計報告」によると、2001年の献腎・脳死体腎移植は19例。日本臓器移植ネットワークがhttp://www.jotnw.or.jp/datafile/offer01.html#13において公表している16例よりも3例多い(このほか脳死・心停止の記入なし7例)。2000年の腎移植臨床集計報告においても、日本臓器移植ネットワーク集計より脳死移植は4例多かった。

 ダブルバルン使用の「死体」内灌流を行ったのは127例(84.1%)、死体内灌流なし11例(7.3%)、不明6例(4.0%)、記入なし7例(4.6%)。ダブルバルーンカテーテルは生前の挿入が大部分であり、さらに 「腎動脈内に挿入した2つのバルーンを膨張させて腎動脈を閉塞すると同時に冷却灌流液を注入、同時に静脈側に挿入しておいた脱血用カテーテルを開放して 、脱血しながら冷却灌流液を抵抗なく流す手技」と一体であり、このような臓器獲得が法的脳死判定手続きも踏まずに実施されている。

 温阻血時間は平均14.2分、30分以上はわずか9例(6%)しかない。3徴候死の形式的(非倫理的)確認でも5分間、病室から手術室までの搬送にさらに数分間、そして冷却灌流用のカテーテル挿入・灌流開始までさらに10〜20分間を要することから、3徴候死後の臓器提供ならば温阻血時間が30分以下になることはありえず、温阻血時間からも法的脳死判定手続きの形骸化が裏付けられる。

 小児も含まれる10〜19歳の献腎・脳死体腎ドナーは6例。献腎・脳死体腎ドナーのうち2名は白人。ドナーの全血輸血歴のある献腎・脳死体腎レシピエントは3例。

 生体腎移植は554例、非血縁ドナーが69名(12.5%)、うち夫婦61名(11.0%)、その他の非血縁8名。2000年の夫婦間移植は50名(8.3%)で増加傾向。日本人以外の東洋人レシピエント、ドナーがそれぞれ6名。白人ドナー1名。

 


20041201

脳死小児から被虐待児を排除する方策に関する提言
小児脳死症例から被虐待児を排除可能な病院は少ない
早急に整備を 院内虐待対策委員会と公的監視チーム

 日本小児科学会小児脳死臓器移植基盤整備ワーキング委員会(清野 佳紀委員長)は、日本小児科学会雑誌108巻12号p1538〜1547に「脳死小児から被虐待児を排除する方策に関する提言」を発表した。以下の枠内は、p1538掲載の提言および要旨。

提 言

 アンケート結果の解析から、現状の医療機関の対応では、小児脳死ドナーからの被虐待脳死小児の紛れ込みを除外できない場合がある。
 その対策として、当事者となる担当医のみならず、看護師、MSWなどの医療関係者の虐待への正しい認識と発見能力の研修が必須である。
 さらに、客観性をもたせるために、院内虐待検討委員会の設置、第三者による公的な監視チームの介入と評価を同時かつ早急に推進することが肝要である。

 

要 旨

 脳死小児から被虐待児を排除する方策を検討するため、日本小児科学会小児脳死基盤整備ワーキング委員会では、日本小児科学会認定施設467ヵ所、救命救急センター170ヵ所に対してアンケート調査を実施した。平成16年3月末で締め切り、全体で274施設から回答を得た(小児科223、救命51、回収率43%)。その結果から次のように結論した。

 

(1)緊急で搬送された脳死また重症の小児における入院中の処遇について

 被虐待児においては親の8〜9割が虚偽申告を行うため、虐待の診断に時間を要した。虐待の診断確定がなされたのが受診後60日以上、というケースが9症例存在した。さらに、医療者側に虐待に関する知識が少ない、内科的疾患との鑑別困難なども見逃しの要因となりうる。―方、また患児への慎重な診察、入院中の保護者への観察は、虐待の診断に役立つ。
 以上の事から、小児科や救命センターにおける小児虐待の認定は困難であり、脳死などの重症症例に対しては、つねに虐待を想定することが重要である。さらに患児入院中は保護者に対して少なくとも1〜2ヵ月間の観察を行い、被虐待児を完全に排除することが必要である。

 

 

(2)被虐待児を発見するためのシステム構築と整備に関して

 本邦においては、被虐待児を発見するための院内虐待検討委員会は、小児科認定病院や救命センターの半数以上で存在しなかった。さらには児童相談所や警察による早期の介入が不十分であり、本調査では9割の医師が公的機関の速やかな連携を必要としていた。今後は、院内虐待対策委員会に加えて、地域における公的な虐待対策部隊(SCAN team)を別途に設立し、十分な予算を投入して機能させ、地域医療機関と緊密な連携可能なシステムを構築すべきである。さらには、システムを機能するための教育プログラムを充実させる必要がある。
 虐待診断の知識向よと虐待発見のための能力向上を目的とした、専門教育プログラムの実施が必要である。対象者は、専門Eの他に、小児科医、救急医、外科医、看護師、MSW、地域行政local teamのスタッフである。定期的な小児虐待の研修、定期的な事例検討会ならびに教育プログラムを行う必要がある。

 現時点では、小児脳死症例から被虐待児を排除することが実質上可能な病院は少なく、移植法が改訂された場合の提供病院登録は、院内虐待対策委員会が実質上機能している病院から始めることが適切である。

 

  以下は当Web注

  1. 第1次調査に回答した247施設で、過去5年間に身体虐待が疑わしかった症例(軽症も含む)は合計1,452例。虐待によって脳死または障害を残した症例数は253施設で合計129例。
     
  2. 「あなたの医療機関に、非虐待児を発見するための組織や専門家はいますか?(複数回答可)」の質問に、院内虐待検討委員会10.9%、小児科医36.9%、外科医6.9%、精神科医8.0%、ケースワーカー16.4%、とくにいない・その他(児童相談所・警察に相談・マニュアル)54.7%。
     
  3. 虐待診断確定に60日間以上要した9症例の内訳は、60日間3例(0歳1ヵ月男・0歳4ヵ月男・記載なし女)、120日間1例(0歳3ヵ月女)、150日間2例(0歳6ヵ月男・2歳1ヵ月男)、180日間2例(0歳7ヵ月女・1歳10ヵ月男)、400日間1例(記載なし女)。
     
  4. 第2次調査で回答を得られた45症例の転帰は、死亡21例、脳死状態で加療中2例、重度後遺症で入院中9例、後遺症を認め通院中7例、ほぼ通常の生活を送っている5例、不明1例。
     
  5. この提言にある公的な虐待対策部隊SCAN teamとは、suspected child abuse/neglect review teamのこと。提言は米国の虐待発見システムとその防止効果(乳児死亡率を10万人当たり11.4から6.1に減少させたカリフォルニア州ロサンゼルス郡ほか)、さらに参考URLもhttp://ICAN-NCFR.ORG/など紹介している。
     
  6. 脳死判定され、あるいは臨床的に脳死とみなされてから数日〜数ヶ月の後に、脳死判定を覆す状態になった小児が、過去約20年間に日本国内だけでもおよそ1 3例あることが報告されている。参照小児脳死判定後の脳死否定例(概要および自然治癒例)

 


20041201B

広島県立病院の献腎摘出チーム 2003年9月
検死前から抗血栓剤ヘパリン投与、心臓マッサージ

 広島県立病院腎臓総合医療センターの田中 一誠副院長らは、広島県立病院医誌 第36巻第1号p93〜p106で「平成15年腎臓総合医療センター年次報告」を行った。以下は臓器摘出、移植関連記述の要旨。

 2003年の腎移植症例は、生体腎移植7例、献腎移植3例の計10例(2002年は生体間5例、献腎2例)。このうち2003年10月7日に父をドナーに移植を受けた15歳女児はVZV感染で死亡、10月21日に母をドナーとした22歳男性はEBV感染で死亡、そして12月14日に「死体」腎移植を受けた46歳女性は穿孔性汎発性腹膜炎で死亡した。

 新規透析患者は、血液透析45名、CAPD患者2名、(腎移植後腎機能低下による)再導入は4名。血液透析45名のうち70歳代16名、80歳代10名と透析患者の超高齢化時代を迎えている。当Web注:高齢の透析患者は移植を希望しないことが多い。

 献腎摘出チームは2003年5月31日(土、夜間)と12月14日(日、21時)、広島市立安佐市民病院脳神経外科の沖 修一部長のご協力により、それぞれ1例の献腎提供があり、前の晩から泊り込んだ。9月18日、今度は当院において献腎提供の方が現れた。9月22日(月)午前6時50分、急に心停止。心臓マッサージを行いながらヘパリンを静脈内投与したが、結果として効果的でなかったようだった。検死に約20分間と手間取り、午前7時30分頃摘出できたが、摘出後腎灌流を行うもまったくwash outできず、使用を断念した。

 


20041201C

法的「脳死」移植レシピエントの死亡は累計14人

 日本臓器移植ネットワークは、12月1日までにData File において法的脳死判定2例目ドナーからの腎臓移植手術を東京大学医科学研究所附属病院で受けた50代の男性が死亡していることを表示した。

 法的脳死判定手続下の移植でレシピエントの死亡が判明したのは14例目(腎臓移植レシピエントの死亡は例外扱いで、死亡日も報道されていないため正確に14例目であるか否かは不明)。

  法的「脳死」移植レシピエントの死亡年月日、レシピエントの年齢(主に移植時)←提供者(年月)、臓器(移植施設名)は以下のとおり。 

  1. 2000年11月20日 47歳女性←bP0ドナー(20001105)  肝臓(京都大)
  2. 2001年 5月25日 10代女性←bP4ドナー(20010319)  肝臓(京都大)
  3. 2001年 9月11日  7歳女児←bP2ドナー(20010121)  小腸(京都大)
  4. 2001年12月11日 20代女性←bP8ドナー(20011103)  肝臓(北大)
  5. 2002年 2月 3日 43歳男性←bP1ドナー(20010108)  右肺(東北大)
  6. 2002年 3月20日 46歳女性←bP6ドナー(20010726)  右肺(大阪大)
  7. 2002年 6月10日 38歳女性←a@5ドナー(20000329)  右肺(東北大)
  8. 2002年 9月10日 20代男性←bQ1ドナー(20020830)  肝臓(京都大)
  9. 2002年12月 5日 20代女性←bQ2ドナー(20021110)  両肺(岡山大)
  10. 2004年 6月 7日 50代男性←bR0ドナー(20040520)   両肺(東北大)
  11. 死亡年月日不明   50代男性←a@5ドナー(20000329)  腎臓(千葉大)
  12. 死亡年月日不明   30代男性←bP4ドナー(20010319)  腎臓(大阪医科大)
  13. 死亡年月日不明   50代男性←bP6ドナー(20010726)  腎臓(奈良県立医科大)
  14. 死亡年月日不明   50代男性←a@2ドナー(19990512)  腎臓(東京大学医科学研究所附属病院

 


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ホーム ] 総目次 ] 脳死判定廃止論 ] 臓器摘出時に脳死ではないことが判ったケース ] 臓器摘出時の麻酔管理例 ] 人工呼吸の停止後に脳死ではないことが判ったケース ] 小児脳死判定後の脳死否定例 ] 脊髄反射?それとも脳死ではない? ] 脊髄反射でも問題は解決しない ] 視床下部機能例を脳死とする危険 ] 間脳を検査しない脳死判定、ヒトの死は理論的に誤り ] 脳死判定5日後に鼻腔脳波 ] 頭皮上脳波は判定に役立たない ] 「脳死」例の剖検所見 ] 脳死判定をしてはいけない患者 ] 炭酸ガス刺激だけの無呼吸テスト ] 脳死作成法としての無呼吸テスト ] 補助検査のウソ、ホント ] 自殺企図ドナー ] 生命維持装置停止時の断末魔、死ななかった患者たち ] 脳死になる前から始められたドナー管理 ] 脳死前提の人体実験 ] 脳波がある脳幹死、重症脳幹障害患者 ] 脳波がある無脳児ドナー ] 遷延性脳死・社会的脳死 ] 死者の出産!死人が生まれる? ] 医師・医療スタッフの脳死・移植に対する態度 ] 有権者の脳死認識、臓器移植法の基盤が崩壊した ] 「脳死概念の崩壊」に替わる、「社会の規律として強要される与死(よし)」の登場 ] 「脳死」小児からの臓器摘出例 ] 「心停止後」と偽った「脳死」臓器摘出(成人例) ] 「心停止後臓器提供」の終焉 ] 臓器移植を推進する医学的根拠は少ない ] 組織摘出も法的規制が必要 ] レシピエント指定移植 ] 非血縁生体間移植 倫理無き「倫理指針」改定 ] 医療経済と脳死・臓器移植 ] 遷延性意識障害からの回復例(2010年代) ] 意識不明とされていた時期に意識があったケース ] 安楽死or尊厳死or医療放棄死 ] 終末期医療費 ] 救急医療における終末期医療のあり方に関するガイドライン(案)への意見 ] 死体・臨死患者の各種利用 ] News ] 「季刊 福祉労働」 127号参考文献 ] 「世界」・2004年12月号参考文献 ]