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20020610

法的脳死移植レシピエントの死亡7例目

 2000年3月29日に国内初の脳死肺移植を受けた2人のうち、神奈川県の女性(手術時38歳))が、10日死亡した。この女性は公表されている脳死臓器摘出では5例目のドナーから摘出された右肺、左肺のうち右肺移植手術を、東北大加齢医学研究所付属病院(現在の医学部付属病院、宮城県仙台市青葉区)で受けた。退院後は自宅で過ごしていたが、10日早朝、容体が急変。東京都内の病院に救急車で搬送されたが、間もなく死亡した。直接の死因は、血栓が肺動脈に詰まる肺塞栓症の可能性が高いと報道(6月12日)されている。

 脳死移植レシピエントの死亡は7例目、脳死肺移植では3例目、東北大では2例目。死亡5例目(東北大)、6例目(大阪大)、そして今回の7例目(東北大)と肺移植レシピエントの死亡が続いている。片肺移植を受けたレシピエントの生存率は International Society for Heart and Lung Transplantation(ISHLT) によると、移植後2年目で約60%。東北大加齢医学研究所は、脳死肺移植の成績を良く見せかけるために肺気腫と重症患者は肺移植登録に送ってくるな 。コンディションの良いレシピエントしか登録しない方針を実行してきたが、これまで累計10例の肺移植のうち、死亡1例目は13ヶ月後、2例目は8ヶ月後、3例目は2年2ヵ月後に死亡した。

 法的「脳死」移植レシピエントの死亡年月日、レシピエントの年齢(主に移植時)←提供者(年月)、臓器(移植施設名)は以下のとおり。 

  1. 2000年11月20日 47歳女性←Iドナー(20001105)  肝臓(京都大)
  2. 2001年 5月25日 10代女性←Mドナー(20010319)  肝臓(京都大)
  3. 2001年 9月11日  7歳女児←Kドナー(20010121)  小腸(京都大)
  4. 2001年12月11日 20代女性←Qドナー(20011103)  肝臓(北大)
  5. 2002年 2月 3日 43歳男性←Jドナー(20010108)  右肺(東北大)
  6. 2002年 3月20日 46歳女性←Oドナー(20010726)  右肺(大阪大)
  7. 2002年 6月10日 38歳女性←Dドナー(20000329)  右肺(東北大)

 


20020601

4月の脳死肝移植、信州大レシピエント飛ばしは、レシピエントの体調?
ドナー肝の状態?移植医の技量格差?+河野父子への過剰な配慮?

 6月15日付の週刊現代は“スクープ 河野洋平父子 生体肝移植「感動の美談」に犠牲者あり!待機していた「重病第一号患者」の手術は延期された”を掲載した。4月15日(月)に行われた肝臓移植手術のレシピエント第一候補者が、日本臓器移植ネットワークの公式発表と異なり、北海道大学の患者ではなく信州大学の患者が第一候補者だったことに関する記事。

 厚生労働省臓器移植対策室は4月末に信州大で手術をしなかったのは「医学的理由」とのみ回答していたが、週刊現代の取材には「確かに待機リストの1位は信州大の患者さんでしたが、風邪から肺炎になっていたか、なりかかっていたかで医学的見地から見送られたと聞いています」と答えた。

 しかし信州大の杉山 敦助教授によると、移植しなかった理由が異なり「ドナーの循環系に問題があった。これは通常、移植をお断りする数値であったということです。血圧が不安定で、イノバン、ドプトレックスが大量に使われていた。北大の患者はリストの4位だったそうです。ウチ以外にも2つの医療機関が断っている。河野さんの手術があったから、お断りしたということは絶対にないです」という。

 北海道大学の古川 博之教授は「肝臓が傷んでいる可能性が高いと想像できましたが、アメリカで500例くらい脳死肝移植をやっているので、やってみたらうまくいくケースも結構あるんです。もうひとつ、うちの患者さんは待機リストの優先順位8番目だったんです。このままだと4〜5年は待たなければいけないが、この患者の余命は半年から1年と想定される重症患者なんです。そのふたつのポイントを考えて、やろうと決断しました」。

 河野 洋平氏に肝臓を提供した長男の河野 太郎氏は「ドクターにも、手術は1日、2日延期しても構わないという意志はつたえてあったんです。ボクら父子のせいで手術を延期した?それはないと思いますよ」。

 星野 一正京大名誉教授は「もし使えないというドナー肝がほかの施設で成功しているということになれば、厳密な医学的理由がなければ違法になる。仮に医師の裁量でウェイティングリストを守らないようなことがあれば、医の倫理以前に法律の問題になってしまいます」と述べている。

 


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