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非血縁生体間移植 倫理無き「倫理指針」改定

 

 生体間の臓器移植では、ドナーとレシピエントの組織適合性・年齢・健康状態などに影響を受けて、手術後のレシピエントの健康・精神状態が左右される以外に、ドナーの健康 ・精神状態、ドナーとレシピエント間の心情的問題、強要・利害関係・売買の発生、保険適応外の高額医療費、臓器移植以外の治療取り止めなど、懸念される問題がある。

 ドナーを直接的な生物学的つながりのある両親(1親等)や兄弟姉妹(2親等)から、対象者を拡大して組織適合性の面では非血縁者となる祖母・祖父(2親等)、オジ・オバ(3親等)、義父母、従兄弟、さらにまったくの非血縁者である配偶者、親族でも遠縁(民法上の親族とは、6親等以内の血族と配偶者、3親等以内の姻族)、親族にもあたらないまったくの他人、と拡大するほど問題が深刻化する。

 日本移植学会 倫理指針は、生体臓器移植ドナーは(1) 原則として血縁者または家族に限定する。(2)本人の自発的な意思によってなされるべきである。(3)報償を目的とするものであってはならない。(4)他から強制があってはならない。(5)未成年者ならびに精神障害者は対象としない、としてきた。

 しかし2003年10月27日、同学会総会において「第3者の生体移植の臓器提供者について、症例ごとに医療機関の倫理委員会で検討することを条件に容認する。ドナーの意思が他人からの強制でないことを、ドナーの権利を保護する立場にある第三者(家族や移植医療関係者以外)が確認する。未成年者ドナーも、(1)成人に匹敵する判断能力がある(2)十分な説明を受け、書面で同意、などの条件で16歳以上の未成年の提供も認める」と倫理指針を改定し28日から施行した。

 このように倫理指針を改定するのであれば、一般には「これまでは第3者ドナー、未成年ドナー、障害者ドナー、報酬のやりとり、提供の強制などは、1例も行なわれていなかった」と受け取られるが、実際には旧倫理指針に違反した生体間移植が、すでに非血縁ドナーを中心に数十〜百例規模で行なわれている( 一部には無血縁健腎移植ではなく無血縁病腎移植、つまりドナー側の疾患の治療のために腎臓を摘出することになり、その腎臓を非血縁者に移植した、という倫理上の問題は少ないケースもある。病腎を移植されたレシピエントの健康など医学的問題は別にある)。

 従来の家族間の臓器提供においてさえ、圧力、圧力を受け入れる事情、金銭的利益の提供などがある以上、これらの問題発生を防ぐ具体策を提示するとともに、旧倫理指針に反した移植の実態を自ら検証し、総括し、公表しないならば、「倫理」指針の改定は、新たな事件の頻発を予告したことにしかならない。

 腎臓移植でQOLを低下させた患者がおり、医療関係者のなかでも腎移植施設に勤務し実態を知るスタッフのほうが移植医療を選択する者が少ない。医療施設の営利主義から、本来は不必要な透析を導入された結果として、移植を選んだ患者がいると見られる。その移植を受けた患者も2〜4割も、透析に戻っている。

 2003年9月、科学技術研究所は、「生きている提供者の保護のための臓器移植法改正案・試案」(PDFファイル)を公表した。移植医療の実態を踏まえるならば、同試案に組織摘出に関する規定も加えて検討する必要があるだろう。

 

 以下では、生体間臓器移植において非血縁ドナーの範囲を拡大してきた歴史をみるとともに、レシピエント・ドナーの健康(精神)状態、心情的問題、強要・利害関係・売買、腎不全医療スタッフの意識、透析医療に関する文献を紹介する。

 

東大の腎移植は、第4例目で無血縁健常ドナー

 稲生 綱政(東京大学第2外科):腎移植の臨床、内科、20(4)、712−718、1967によると東大が腎移植の臨床第1例目を行ったのは1964年3月27日。以下、移植年月日とレシピエント、ドナー、レシピエントの転帰。

  1. 1964年3月27日、レシピエントは慢性糸球体腎炎の25歳男性、ドナーは28歳の妻、レシピエントは移植後第9病日に血管閉塞のため死亡。
  2. 1965年10月29日、レシピエントは亜急性腎炎の23歳男性、ドナーは無血縁で遊走腎のため腎摘出にいたった57歳男性、レシピエントは移植後第9病日に肺炎のため死亡。
  3. 1966年11月25日、レシピエントは慢性糸球体腎炎の26歳男性、ドナーは51歳の母親、レシピエントは移植後第12病日に心不全のため死亡。
  4. 1966年12月5日、レシピエントは慢性糸球体腎炎の27歳男性、ドナーは有志で無血縁で健康な22歳男性、レシピエントは移植後第83病日、消化管出血のため死亡 。
  5. 1967年2月6日、レシピエントは慢性糸球体腎炎の21歳男性、ドナーは49歳の母親、レシピエントは移植後第85病日に敗血症のため死亡。

 稲生氏は、第1回腎移植臨床検討会において腎移植第9例目ドナーは義理の姉であることを報告した(移植、4(1)、7、1969)。

1967年7月時点で無血縁健腎移植が4例

 自由討論会 臓器移植の可能性、日本移植学会雑誌、3(2)、1967は、p2に東大 稲生 綱政氏による1967年7月1日現在の腎移植臨床集計(17施設)に、移植総数68例のうち無血縁健腎が4例であることを記載している。ドナーはすべて男性で平均年齢24.9歳。

術後のドナーとレシピエント間に不愉快な事件

 Round Table Discussion 移植学会 移植臓器入手法、日本移植学会雑誌、3(2)、42、1967は、京都府立医科大の川村氏が「healthy volunteer の選定には種々難しい問題もあり、術後のdonor とrecipient の関係に不愉快な事件を見聞した」、京都府立医科大第二外科の東氏が「少なくとも両者間にお互いに名前を知らすべきでない」と発言したことが報告されている。

未成年からも生体臓器摘出

 中村 宏(慶応大学泌尿器科):本邦最年少と思われる腎同種移植の経験、日本移植学会雑誌、5、78−79、1969は、10歳男児に14歳実兄の右腎を移植したことを報告している。

 

 

非血縁生体腎移植が1980年代後半から増加

 日本移植学会:腎移植臨床登録集計報告(1994.中間報告)、移植、30(4)、428−449、1995によると、1970年以前の生体間腎移植では、親がドナーになった移植が64回、続いて非血縁ドナーが43と、主に配偶者をドナーにしたと推定される非血縁ドナーは生体間腎移植の31.4%(43/137)を占めた。しかし、1971年〜1985年は非血縁ドナーは0件〜5件で経過し、以後は増加し1994年までの合計は3.4%(241/7,077)となった。1990年代までの腎移植臨床登録集計報告には、夫婦間移植にさえ危惧する表現がみられる。未成年ドナーによる生体腎移植も、1983年〜1994年に6回、1998年に2回行なわれたことが統計にある。

死体 実子 同胞
(兄弟姉妹)
一卵性
双生児
他の血縁者 非血縁
生体
無記
(生体)
0〜19歳
生体ドナー
1970年以前
移植、30(4)
37 64 27 43 174

1994年まで累計
移植、30(4)
2,724 5,418 54 1,246 20 78 241 20 9,801 6(1983〜1994)
1983年〜1997年
※生着率データ記載例のみ
移植、36(2)
2,649

親または実子
4,486

941   84 249
1998年(1年間)
移植、35(2)
143 342 78   叔父・叔母
その他
35 613
2000年(1年間)
移植、37(1)
146 413 11 83 祖父母
叔父・叔母
その他
夫婦
50
その他
詳細不明
15 746

 以上は、下記の資料より作成した。

日本移植学会:腎移植臨床登録集計報告(1994.中間報告)、移植、30(4)、428−449、1995
日本移植学会:腎移植臨床登録集計報告(1999)、移植、35(2)、43−48、2000
日本移植学会:腎移植臨床登録集計報告(2000)−U 1999年追跡調査報告、移植、36(2)、91−105、2001
日本移植学会:腎移植臨床登録集計報告(2001)−T 2000年実施症例の集計報告(2)、移植、37(1)、1−11、2002

 

 

生体間肝移植も非血縁ドナー実施ずみ

  • 萩原 邦子:生体肝移植におけるドナーの適応拡大:心理社会的評価の有用性、移植、37(総会臨時号)、310、2002

 本邦で主要な生体肝移植7施設1,427例の生体肝移植症例中1,410例は2親等以内の生体ドナーであったが、5施設において3親等15症例および4親等2例と生体ドナーの血族関係を拡大した症例が存在し、さらに非血縁の親族も4症例あった。・・・・・・当施設で98例にドナー評価を施行し、移植に至った全例に精神科医がレシピエント移植コーディネーターの収集した情報をもとに心理社会的評価を施行した。それにも関わらず、評価後に2例が提供を拒否し、1例が家族の反対で断念した。また配偶者ドナーの肉親の同意に難渋したケースが3例あった。当施設で経験した2親等および配偶者以内の生体ドナーにおいても心理社会的な葛藤や問題が認められた。今後、ドナーの適応範囲拡大に際して心理社会的評価が必須であり、重要な課題である。

 

 

確認容易でない外国人同士の生体間腎移植も

 日本移植学会:腎移植臨床登録集計報告(1990)、移植、26(5)、494−517、1991掲載の「表9 人種別・腎移植回数」「表10 ドナーの人種・種類」「表11 ドナーの人種・種類」 を照合すると、血縁関係の確認が容易ではないはずの外国人の生体間移植はもちろんのこと、全くの非血縁者である外国人間の臓器提供移植も、日本で27年間に数10例規模で行なわれていることがわかる。表から確実と思われる「異人種」生体間腎移植は、

  1. 日本人実子ドナーからアジア人親レシピエントに1回
  2. 関係不詳のアジア人ドナーから日本人レシピエントに2回
  3. 黒人同胞ドナーから日本人同胞レシピエントに1回
  4. 日本人親ドナーから白人子レシピエントに1回
  5. 日本人親ドナーから黒人子レシピエントに1回

 「異人種」間の親子間・同胞間移植は、国際結婚でしかも再婚により生じた法定血族関係の親子間・兄弟姉妹間で行なったのであろう(初婚で生まれた混血児の一方を、便宜的に異人種としていない限り)。このほか不確実だが、「日本人親ドナーからアジア人子レシピエントへ」が7回、「日本人同胞ドナーからアジア人同胞ドナーへ」の移植が1回、それぞれ実施された可能性がある。

 1964年〜1990年の7,740回の腎移植のうち、7,461回(96.4%)が日本人同士の移植、残る279回が外国人同士の移植と外国人−日本人間の移植だった。このうち死体腎による移植回数は、日本人の死体腎が1,830回、以下同様に白人死体腎149回、アジア人死体腎10回、黒人死体腎10回、無記3回(白人、黒人、アジア人の死体腎は、全米臓器配分ネットワークUNOSが使用しなかった、US腎が大部分とみられる)。レシピエントの人種からみると、日本人7,667回、アジア人68回、白人2回、黒人1回の移植が行なわれた。白人の死体腎移植を受けた白人レシピエントが1人があることは明らかで、このほかに日本人の死体腎移植またはUS腎移植を受けたアジアも8人いる。極めて少数だが、日本人も外国人に臓器提供の実績があることになる。

 日本移植学会:腎移植臨床登録集計報告(1999)、移植、35(2)、43−48、2000の「表7 1998年ドナーの人種」でも、1998年の白人ドナーによる生体腎移植が1回、東洋人生体ドナーが同じく6回、不明は生体腎2回(献腎の人種不明も22回)としている。日本移植学会:腎移植臨床登録集計報告(2001)−T 2000年実施症例の集計報告(2)、移植、37(1)、1−11、2002の「表2 ドナーの背景」でも、日本人以外の東洋人生体ドナー5回、記入なし49回(献腎の記入なしも29回)としている。

 

 

非血縁ドナーの、レシピエントとの関係はさまざま

 高山 孝弘(佐賀県立病院好生館外科):サイクロスポリン、イムラン、ブレドニンの3者による免疫抑制法を使用した非血縁者間生体腎移植4例の検討、移植、23(5)、503−504、1988

 非血縁者間生体腎移植4例のうち、配偶者が4例、養母が1例

 

 森 淳(高知県立中央病院):非血縁ドナーの腎移植、移植27(5)、654、1992 

 生体腎移植80例のうち、6例が非血縁ドナー。内訳は妻3例、夫1例、義父1例、伯父1例、この6例中2例は再移植において非血縁ドナーからの腎移植だった。

 

 平賀 聖悟(東海大):非血縁生体腎移植:移植27(5)、655、1992

1976年1月から1991年12月までの生体腎移植78例のうち、非血縁間生体腎移植は6例(5.8%)。異母姉妹1例、7親等の親族1例、夫婦2例、元会社の同僚1例だった(当サイト注:1例分記載なし)。「会社元上司と部下の術後精神科的チェックでは、ドナーは精神的な父親であるといった評価すべき結果が得られた。

 

  まれなケースではあろうが、腎動脈瘤のため摘出、体外手術で修復し移植された非血縁生体腎もある。星長 清隆(藤田保健衛生大泌尿器科):腎動脈瘤修復後の非血縁生体腎を用いた腎移植症例の検討、移植、28(5)、605、1993 は、右動脈瘤ならびに腎動脈狭窄による腎血管性高血圧症患者(30歳男性)に、治療の選択肢として動脈塞栓術、自家腎移植を説明したが、患者は確実な治療を望み、また血型が入手困難なB型Rh(-)であったため、完全を期して右腎摘術を行うこととした。ただ腎機能は良好で腎動脈瘤は体外手術で修復可能と考えられたため、摘出後の右腎の提供を依頼した。摘出腎は23歳男性レシピエントに移植された。

 遠藤 忠雄:偶発的に提供された腎による非血縁生体腎移植の1例、神奈川医学会雑誌、21(1)、162、1994は北里大学において「腎性骨異栄養症で歩行困難な女性に、18歳時に free kidney による非血縁生体腎移植を行なった」という。抄録のためか free kidney の説明はしていない。

 

 

女性の腎ドナー多く、腎レシピエントは少ない

 生体腎レシピエントの性別は、日本移植学会:腎移植臨床登録集計報告(2000)−U 1999年追跡調査報告、移植、36(2)、91−105、2001によると、1983年〜1997年で女性1,942名(33.9%)、男性3,795名(66.1%)。生体腎ドナーの性別は日本移植学会:腎移植臨床登録集計報告(1999)、移植、35(2)、43−48、2000によると、1998年は女性307名(65.3%)、男性156名(33.2%)、性別不明7名(1.5%)。

 生体間腎移植におけるドナー:レシピエント男女比の逆転は、母親がドナーになるケースが多いためとみられているが(親の性別を記載した腎移植臨床登録集計報告は筆者は未見)、夫婦間移植でも妻がレシピエントとなる症例が多く見られる。

  1. 内田久則:ワークショップ「非血縁ドナー」に対するコメント、移植、27(5)、655−656は、わが国の1984年〜1990年の配偶者間腎移植25症例のうち夫から妻への移植が4例、妻から夫への移植が21例としている。
  2. 石川 暢夫:非血縁者間生体腎移植症例の臨床的検討、日本泌尿器科学会雑誌、88(2)、262、1997は、東京女子医科大で施行した1990年4月より1995年10月までに施行した夫婦間移植36例のうち、夫から妻が14例、妻から夫が22例としている。

 移植適応患者に男性が選ばれることが多いこと、夫婦間の年齢差(罹患率の高低、臓器提供条件の合致度)、社会的経済的地位の格差などが影響しているとみられる。

 日本肝移植研究会:肝移植症例登録報告、移植、37(6)、245−251、2002は、1968年〜2001年の生体間肝臓移植でレシピエント性別は女性1,029(57.5%)、男性760(42.5%)と、肝臓移植では女性レシピエント比率が高い。

 

 

腎臓提供者(ドナー)の健康・心理状態

当サイト注:腎臓提供者の健康・心理状態が健常人と有意差なしとする論文もある。以下では、問題例を掲載した。

  1. Brian Vastag :生体臓器移植 ドナーのリスク大きく、長期転帰も不明、JAMA日本語版、24(9)、21−23、2003
     1999年以降、手術直後に提供者が死亡したケースが少なくとも6例ある(1例は肝提供者)。腎提供者のうち2人は塞栓症で、1人は急性出血で、もう1人は呼吸不全で死亡した。残り1人の死因については不明だ、とEllison(OPTN:臓器調達移植ネットワーク代表)は説明した。さらに、腎提供者7人と肝提供者3人が「手術後かなりたってから」死亡した。
     

  2. Madhav Goyal:インドにおける腎臓売買がドナーの経済、健康状態に及ぼす影響、JAMA(Journal of American Medical Association=米国医師会誌)、288(13)、1589−1593、2002(JAMA日本語版では23(12)、28、2002)

    調査参加者の属性

    年齢 平均35歳(20〜55歳)
    中間値35歳
    女性比率 71%
    教育期間 平均2.7年(0〜12年)
    中間値0年
    年間世帯収入 平均収入420ドル(0〜1,730)
    中間値381ドル
    貧困ライン以下の
    世帯比率
    71%
    腎摘出術後の期間 平均6年(2週間〜19年)
    中間値6.4年
    世帯員数 平均4.2人(1〜8人)
    中間値4.0人

     インド・チェンナイで腎臓を売った305人を対象に、2001年2月に実施した。臓器売買は秘密裡に行なわれ記録が残されないことが多いため、現地で聞きこみ調査を行い、腎摘出術による傷跡などで腎臓提供が特定できた人に面談調査した。

    腎臓を売った理由:人(%)
    複数の理由と複数の借金のため
    %の合計は100%にならない

    借金の返済 292人(96)
       食費/家計費 160人(55)
       貸借料 71人(24)
       結婚費用 65人(22)
       医療費 54人(18)
       葬式費用 23人( 8)
       営業費用 23人( 8)
       その他の借金 49人(17)
    娘の将来の結婚費用 10人( 3)
    余裕資金 4人( 1)
    起業資金 2人( 1)
    その他の理由 3人( 1)

     腎臓を売った女性の60%と男性の95%は、労働者か露天商人だった。70%は仲買人を介して、30%は直接、病院に腎臓を売った。

     96%は借金返済目的に腎臓を売っていた(左表)。95%の人は、「腎臓病に苦しんでいる人を助けたいとの気持ちは、腎臓を提供することを決めた主な理由ではない」と答えた。

     45%は配偶者も腎臓を売っていた。2名の女性が「夫から腎臓を売れ、と強要された」と答えたが、現地の調査補助員(8人)が女性の家族とも接触のあることが多いため、強要の事実を話すことを嫌がったこともあると見ている。

     腎臓売買で受け取った金額は平均1,070ドル(450〜2,660ドル)であったが、仲買人や病院が約束した金額より3分の1少なかった。

     受け取った金の大部分は借金返済、衣食に使われていた。わずか11%の人だけが、現金等(現金、宝石、銀行預金、その他の投資)に使った。

    腎摘出術前後の健康状態:人

      摘出後

    摘出前

    Excellent

    Very good

     Good   Fair   Poor 
    Excellent 11

    16

    15 58 50
    Very good 14 16 53 39
    Good 10
    Fair
    Poor

     Tamil Nadu州では過去10年間に経済状態が改善されたが、腎臓を売った人々の所帯平均収入は660ドルから420ドルへ3分の1下がり(P<0.001)、貧困基準を下回る世帯は54%から71%に増加。調査時点で74%は、まだ借金が残っていた。

     腎臓摘出後の健康状態を、excellentからpoorまで5‐point Likert scaleで評価した(右表)。14人(13%)が悪化しなかったが、117人(38%)は1〜2ポイント低下、147人は3〜4ポイント低下した。50%は「手術跡がいつまでも痛む」、33%は「長い間背中が痛む」と苦痛を訴えた。

     「これから腎臓を提供する人へのアドバイスはあるか」との質問に264人が回答し、79%は「腎臓の提供は勧められない」、21%は「勧める」と答えた。 

    結論

     インドでは、報酬を受け取ったドナーにとって、腎臓を売ったことは長期的な経済的利益につながらず、健康を悪化させると考えられた。医師および政策決定者は、移植用臓器の供給を増やすために報奨金を利用する価値について再検討すべきである。


     

  3. 細木 俊宏:移植医療の精神医学、最新精神医学、7(5)、421−429、2002
     1999年3月から2000年6月の期間に、新潟大学医学部附属病院で施行された生体腎移植ドナー14例のなかで、術前から精神科診断のついた症例が4例あった。63歳の母親は「不安を伴なう適応障害」だったが、術後に消失した。しかし、3例(下記の1,2,3)は移植が決定する以前から精神疾患に罹患しており、術前・術後を通じて精神症状の変化は認められなかった。

    1. 70歳父親=特定不能の痴呆
    2. 57歳母親=特定不能のうつ病性障害
    3. 68歳父親=特定不能の認知障害

     術後では、46歳妻が術後18日目頃より抑うつ状態になった。
     

  4. 松田 香:生体腎ドナーに経験した肺梗塞の2例、移植、37(2)、113−114、2002
     55歳女性、実娘に対する腎提供のため左腎摘術施行、術後第1病日の歩行開始直後に呼吸困難、血圧低下出現。ICU管理下にウロキナーゼ12万単位、ヘパリン1万単位の投与を開始した。術後第8病日の肺血流シンチでは血流の改善を認めた。
     68歳女性、実娘に対する腎提供のため右腎摘術施行。術後第2病日の歩行後に呼吸困難出現。ウロキナーゼ、ヘパリン療法で術後第15病日の肺血流シンチでは血流の改善を認めた。
     ドナーに対しては侵襲性の高い腎動脈造影にかわり3D-CT等の利用、また術中は下肢弾性包帯を使用、術後も硬膜外麻酔を併用し早期の離床をすすめるなど留意が必要である(東京女子医科大学)
     
     
  5. 浅野 学:生体腎移植ドナーの残腎に発生した腎細胞癌の1例、移植、30(1)、65、1995
     52歳男性、1978年7月、妹に対するドナーとして左腎を摘出されている。1993年5月、右腎細胞癌と診断した。腎保存術を検討したが、糖尿病性腎症の合併と腫瘍の大きさから判断し、7月15日に根治的腎摘出術を行なった。現在、週3回の血液透析を行なっている。移植後のドナーの経過観察は生涯にわたり行なう必要があると痛感した(社会保険埼玉中央病院)。
     
     
  6. 管 幸太:腎提供者の術後経過について、移植、30(1)、65−66、1995
     術後10年以上経過した76例、術後早期の合併症は17例(22.4%)に19疾患を認めた。すべて軽症であり後遺症はなかった。血清クレアチニンは、術後2週間目から5年目までは術前と比較して有意に高値であり、10年目に改善を認めた。クレアチニンクリアランスは、術後2週間目に術前値の63%まで低下したが、10年目には術前値の90%まで改善した。術後3例が死亡し、23例(56.1%)が何らかの疾患で治療を受けていた。QOLはおおむね良好だったが、3例で10年以上創痛が続き、1例で仕事に復帰できなかった。また5例で受腎者の腎機能喪失に関して不満を訴えた(金沢医大)。
     
     
  7. 菊地 早苗:アンケートによる腎提供者への意識調査、移植、30(1)、101、1995
     ドナー38名にアンケートし回収率97.4%。78.4%のドナーが自らの希望で腎提供をしていたが、不安や緊張をもち手術に臨み、退院後の健康に不安を感じていた。生活に変化があった人は37.8%で、「疲れやすい」「創が時々痛む」など体調に変化があると答えた人は56.8%であった。また同胞への提供者2名は、腎提供したことを「良かった」「仕方がない」の両方に答えており、複雑なドナーの心境が推測される(岩手医大附属病院)。
     
     
  8. 鈴木 恵:生体腎移植ドナーの心理、移植、30(1)、105、1995
     アンケートはドナー64名中52名から回収された(回収率81%)。術後レシピエントの状態を心配した者は39名75%、痛みに対応するのが精一杯だった者は7名13%であった。今回、アンケートに解答した52例の術後の経過は良好で、全例が現在も術前となんら変わらない生活を送っている。なお、現在腎臓を提供したことを後悔しているドナーは1人もいなかった(浜松医大)。
     
     
  9. 竹内 宣伸久:生体腎移植ドナーの長期予後についての検討、移植、28(総会臨時号)、321、1993
     腎摘出日より10年以上経過した82例(腎摘時平均年齢50.7歳)。生存68例、腎疾患以外での他因死7例(術後1年〜12年)、不明7例。手術後、腎炎が2例にみられ、1例は術後6年IgA腎症を発症し、現在S-Cr 2.1mg/dl、別の1例は術後7年IgA腎症を発症し、術後13年血液透析へ導入した。
     腎機能の推移についてはS-Cr値(mg/dl)は術前0.73±0.17(n=82)、術後10年1.08±0.31(n=46)。これを年齢別に検討すると、若年ほど術後腎機能が代償される傾向があるが、60歳以上ではほとんど代償が認められず術後10年では軽度の腎機能低下が認められた。血圧の変動については術後年数を経るに従って徐々に上昇傾向が見られた。尿蛋白量については、術後10年ではいずれの年齢においても微量の蛋白尿が高頻度に認められた(社保中京)

 

肝臓提供者(ドナー)の健康・心理状態、レシピエントとの関係

  1. Brian Vastag :生体臓器移植 ドナーのリスク大きく、長期転帰も不明、JAMA日本語版、24(9)、21−23、2003
     1999年以降、手術直後に提供者が死亡したケースが少なくとも6例ある。(肝臓の右葉を兄弟に提供した)ニューヨークの肝提供者は、ウェルシュ菌の院内感染で死亡。(腎提供者5人死亡)、とEllison(OPTN:臓器調達移植ネットワーク代表)は説明した。さらに、腎提供者7人と肝提供者3人が「手術後かなりたってから」死亡した。・・・・・・医師らは肝臓提供者の回復に思った以上に時間がかかることに気づきはじめた、完全に回復するには病院で7〜10日、退院後さらに6〜8週間要するという。・・・・・・Lahey クリニックで肝提供者23人のうち、22人はもう一度受けてもよいと答えた。手術を後悔している1人は19歳の少女。
     
     
  2. 近藤 知史:生体肝移植ドナー手術における周術期および術後合併症の検討、移植、37(総会臨時号)、231、2002
     名古屋市立大学病院における生体肝移植ドナー手術後合併症のうち比較的重要なものは、全38例中10件みられた。内訳は肝断端のリークが3件、胆管狭窄2件、創部MRSA感染によるTSS1件、腹壁瘢痕ヘルニア2件、biloma(胆汁嚢)形成が2件であった。
     
     
  3. 小倉 靖弘:生体肝移植ドナーにおける肺塞栓症の考察、移植、37(総会臨時号)、232、2002
     京都大学医学部附属病院で施行された1990年6月から2002年3月末までの生体肝移植ドナー全789例のうち3名のドナーで、術後(1日目、3日目)に呼吸苦を訴え、肺塞栓症と診断された。肺動脈撮影、抗血栓療法、抗凝固療法などで徐々に軽快、退院となった。このほか術前よりハイリスクと考えられた2名の患者では、予防的にTemporary IVC Filterを挿入し、肺塞栓症を回避することができた。
     
     
  4. 細木 俊宏:移植医療の精神医学、最新精神医学、7(5)、421−429、2002
     移植前後でドナーに精神科的問題が認められたのは、肝移植が12例中7例(58.3%)、腎移植が14例中2例(14.3%)であり、肝移植ドナーに精神症状の発現する頻度が明らかに高かった。子から親への移植では8例中4例に、兄弟間移植では3例全例に発現した。術前は2例(44歳長女:退行状態と嘔吐、27歳長男:一過性に回避行動、術後に円形脱毛症)、術後は6例に発現した。
     
     
  5. 福西 勇夫 (東京都精神医学総合研究所):モルヒネを必要とするほどの激しい心の痛みを呈したドナー、薬局、53(8)、2285−2289、2002
     レシピエントは肝硬変の61歳男性、家族は妻・長男・長女の4人。奥さんも長男(結婚が決まっており相手方の家族が移植に同意してくれない)も提供を躊躇し、未婚の長女がドナーになった。手術は無事終了しレシピエントの回復は順調で、提供した長女の経過も問題なし。10日ほど経過したとき、長女は全身の激しい痛みを訴え、退行状態を呈した。抜糸は終わり身体面の異常所見はなく、鎮痛剤の効果はなくモルヒネを使わざるを得なかったが、それも全然効果がなかった。精神科の対応で痛みは軽減したが、人院は1週間ほど長引いた。それでも無事退院し、ごく普通の鎮痛剤で彼女の痛みはなんとか持ちこたえていた。退院から最初の外来で手術の痕を見せ、怒りの感情を表出した。彼女はドナーになったが、「家族の誰かがもっと父親のことを考えるべきではなかったの?」 という怒りの感情を激しく持っていた可能性がある。「自分がドナーになると言っておきながら、今さらこんなことを言うのはおかしいかもしれないが・・・」と思いながらも、やり場のない怒りの感情を抑え切れなかったのかもしれない。怒りの感情を「言葉」という 道具を使って、自由に表現できるような性格であったならば、今回の激しい痛みは生じなかったでしょう。
     
     
  6. 北 嘉昭:海外渡航脳死臓器移植患者の生と死及び健康文化に関する研究、第6回「健康文化」研究助成論文集、41−49、2000
     東大で生体部分肝移植を受けたレシピエント56例(男性27例・女性29例、平均年齢15.5±19.5歳=生後10ヶ月〜62歳)。小児生体部分間移植では、レシピエントは移植前が0%、移植後は5%に精神症状が出現。ドナーは移植前後ともに0%。両親の情緒状態は患児の身体状況に相関するので、移植前後の精神医学的対応はそう多くを必要としないかもしれないが、・・・就学や就労そして小児慢性疾患と類似の心理社会的問題である。
     成人生体間移植では、レシピエントは移植前が18.8%(すべて肝性脳症による)、移植後が68.8%に精神症状が出現。ドナーは移植前6.3%、移植後25%に出現した。レシピエントの移植後68.8%(11例)のうち43.8%は、移植後の術後せん妄であり向精神薬で対処可能だった。25%(4例)はドナーに対する罪責感に関連した心因性の精神症状で、・・・・・・拒絶反応や重篤な身体合併症がないにもかかわらず精神症状を呈し、幸いなことに向精神薬と精神療法の併用にて軽快した。・・・・・・成人間生体部分肝移植では、移植前の段階でレシピエントやドナーを含めた家族内力動の把握に留意する必要を示唆している。

     海外に渡航して脳死肝移植を受けたレシピエント25例(男性15例、女性10例、移植時平均年齢42.3歳、移植後平均2年8ヶ月経過)は、国内生体部分肝移植患者の回答と比較した結果、質問番号9(職場や学校の人間関係はどうですか?)のみ有意差が見られ、海外渡航肝移植患者は「職場や学校での対人関係が良い」と答える人は28%で有意に少なかった。・・・・・・総じて、海外渡航脳死移植を受けた患者は、海外で移植を受けたことを職場や同僚に話したがらない傾向が強い。おそらくどこかに罪悪感めいたものが生じ、開放的な態度を示すことに抵抗を感じていると推測される。

 

 

兄弟姉妹間の腎臓提供でも「圧力」や「臓器提供を受け入れる事情」「報酬のやりとり」

 非血縁者生体間臓器移植において、臓器授受の範囲を拡大すると臓器売買が懸念されるという。しかし、兄弟姉妹間(同胞)移植においても、さまざまな圧力や報酬の授受がすでに行なわれてきた。以下、春木 繁―:腎移植医療を通 してみる人間模様−精神科医の眼から−39、今月の移植、15(6)、675−678.2002が、事情をよく説明しているので要旨を紹介する。

 同胞間生体腎移植では,どうしてもドナ―(候補者)に周囲からの有言(?)無言の圧力がかかりやすい。実の親からのはっきりとした言葉による「懇願」や「依頼」,さらには有無を言わせない形での「命令」までの,白から黒の間のいわば灰色と表現すべきさまざまな形での「圧力」がかけられていると思われるケースが少なくない。それに,年長の姉や兄からの親への応援も加わる。これも一種の「圧力」である。

 そうでなければ,親の高齢(老齢)や病気など親が提供しようとしていたのになんらかの事情(事故,急病,突然の死亡など)で腎移植が予定どおりに行えなくなった場合などがある。これも圧力ではないと家族はいうが,ドナー候補者にとっては「圧力」になってしまう。

 ドナー候補者自身のそれまでの生活歴で,家族全員に「相当に迷惑をかけてきた歴史」があることに,彼(彼女)自身が候補者に選ばれる理由が隠されていることがある。すなわちドナー候補者が家族全員に対して「負い目」をずっと背負ってきたという歴史である。珍しかったのは,よくよく聞いていてはじめて語られる(移植後である)ことがらに, ドナーの刑務所暮らしがあったことである。これは極端な例であるが,似たような構造に,少・青年時代の非行歴,家出(の繰り返し),借金,負債(を返済してもらったこと)。そのほか―家の恥になるようなことをかつて引き起こしたことなどがあげられる。まれに,精神疾患で長年にわたり親が苦労したことが,ドナー候補にされる遠因になったりもする。

 これらはすべて―家の暗黙の了解であって,けっして移植前にこれらの裏の事情がスタッフに語られはしない。負債感がその心理の核心であるし,その感情をその後の人生でずっと背負っていくことへの重い気持ちがこの行動(腎臓提供)を取らせるのであろう。腎臓提供によって,負債(感)を一気に返そうとする(なしにしようとする)ドナーの気持ちが痛々しいくらいにこちらに伝わってくる。失点挽回,九回裏の逆転ホームラン,ヒーローになりたい(なっておきたい)気持ちなど,いろいろな表現ができるが,けっしてレシピエントへの純粋な愛情のみからではないとわかるのである。が,こういうことでもないと同胞からは提供したい気持ちにはならないだろうとも思わされる裏の事情ではある。「ヒロイズムの感情による提供」とまとめられるであろう。

 腎臓を提供するが,見返りになんらかの「報酬要求」,「補償要求」の心理がある場合も案外多い。心理のみならず,実際,医療者の知らないところで(移植前だったり,移植後だったりするが)金銭的,経済的な「物」の取り引きが行われているケースも存在する。はっきりした同胞間の「腎臓売買」ではなくても,親の遺産相続権をレシピエントが放棄する約束や書類ができているケースもある。あるいは,レシピエントの有する不動産を譲り渡す契約が成立していることもある。逆に,こういった話のほうが先行したために話がこじれてしまい,腎臓提供の話(約束)そのものが壊れてしまう結果になった ということも起きる。このような話は移植医療の現場よりも透析医療の現場で直接患者やその家族から聞かされることが多い。

 以上述べてきたことでわかるように,同胞のドナーには,不本意な感情での腎臓提供があるゆえに,どうしてもレシピエントに対して,知らず知らずのうちに隠された敵意,攻撃的感情が湧いていることがしばしばある。この感情を隠しつつ入院しているのだということを医療者は知っておいたほうがいいであろう。時折とんでもないところで爆発して,ドナーの精神医学的問題になってしまう場合がある。移植医や医療スタッフヘ直接向けられる場合もないとは限らない。ことに,移植医療そのものがうまくいかなかったときに(術後,移植後に),これらが一気に顕在化してくる可能性に注意したい。

 同胞のドナーに限らないが,ことに同胞のドナーに対しては,精神医学的にいうと生体腎移植のドナーという「患者」として,それなりに彼ら(彼女ら)の精神的健康にも配慮をしてあげたい。ややもすると,移植医療では,レシピエントのみに,みんなの(医療スタッフのみならず家族も)関心が集中して,ドナーは,移植後は「ご用済み」として注目されなくなる。ここに一つの盲点がある。大変なことをやってくれた「勇者,ヒーロー」としての気持ち と,ある意味では同じく手術を受けた「患者」としてのいたわりをこちら側(医療者側)が示し,誠意をもって医療,看護にあたりたい。ことに同胞のドナーに面接しているとその思いを強くする。

  ドナーは「傷口」だけが痛いのではなくて,「心」も痛いのである。同胞間移植をみていると,そういう思いが強い。

親子間の移植でも報酬の授受

 春木 繁―(東京女子医科大学腎臓病総合医療センター精神科コンサルテーション講師):腎移植後の精神医学的アプローチ、小児看護、20(6)、756−760、1997は、移植後に小児レシピエントを縛り、悩ますドナー(主として母親、父親)の本音として「腎臓を提供することで離婚の慰謝料がわりにする約束だった」も示している。

 

血縁者間移植に擬装した非血縁者間移植・臓器売買

 春木 繁―(東京女子医科大学腎臓病総合医療センター精神科コンサルテーション):腎移植医療を通 してみる人間模様−精神科医の眼から−51、今月の移植、17(6)、837−840、2004は、「毎日のように来ている家族が、レシピエントの病室には行くが、ドナーの病室にあまり顔を出さない」ことから精神科医の直感が働いたこと、ドナーに行なわれたロールシャッハテストで他のドナーよりも一層強い不安が表現されていたこと、臨床心理士が「先生、ひょっとするとあの時のお兄さんは、実は“他人”だったかもしれませんね」とロールシャッハテストの記録を点検しながらつぶやいた実例を紹介。
 「2人とも当時は気づかなかったが、その後の経験から“同胞”と称して実は“にわか仕立ての同胞”がいる場合があると知ることになったからであった」と報告している(にわか仕立ての同胞について詳細の記載はない)。

 

 

利潤追求の透析療法が、本来は必要ない腎移植希望患者を量産

 廣瀬 輝夫:米国の営利医療組織の現状と問題点、日本医事新報、4092、55−57、2002は、営利システムの医療分野への浸透により、米国で患者が犠牲にされている医療分野として人工透析をとりあげた。「人工透析センターは、メディケアから支払われる身障者介護の対象であるため、早くから営利企業が参入、1980年の始めに既に半数が営利であった。そして、現在では70%近くが営利で運営されており、人工透析装置の再利用や透析時間の短縮、コメディカルの透析士を中心とした治療が行われている。このためその臨床成績は年々悪化し、わが国の人工透析の生存率よりはるかに劣っている。また、メディケアの医療費抑制政策のため、支払い制限が頻繁に行われたことも成績低下の要因となっている」という。

 このほか、「在宅介護は介護状態の規制強化で営利組織の撤退」「営利マルチ病院が病床数16万床(15%を占める)、収入が減少しているので、今後、急性期部門への参入増加は考えにくい」「営利組織の進出による社長年収35億円(Oxford HMO)などが保険料増額に」「マネジドケア方式による医療費削減効果はあまり認められない」「利潤を上げるために極端な制限医療と支払い制限を行っている」「営利HMOは、非営利のHMOより予防接種受診率やガン検診受診率は16%前後低く、心筋梗塞に対するβブロッカーの使用や糖尿病患者に対しての低血糖剤および眼底検査による網膜病変の検査も10%以上低い」と報告。

 廣瀬氏は「営利組織は『医は仁術であるより以前に算術である』との考え方が強いため、医師にとっても患者にとっても権利の蹂躙が起こりがちで、わが国への導入は避けるべきであろう。国民皆保険を守るためにも私は反対である」と結んでいる。

 Mike Mitka :血液透析 高死亡率の抑制策を模索する米国、JAMA日本語版、23(7)、29−30、2002は、AAKP(米国腎臓病患者協会)によると、米国内の透析患者死亡率は約23%、それに対して欧州では死亡率が約15%、日本では約9%と低い、と紹介している。

 糖尿病患者に必要な投薬・検査の制限を行うならば、人工透析が必要な容態まで悪化する患者も増える。人工透析センターで日本の2倍以上もの死亡率にさらされるならば、腎臓移植を希望する患者も増えるのは当然だ。米国の腎臓移植数は年間約13,000例、待機患者は約30,000名。

 河合 達郎氏:米国における非血縁間腎移植の現況と新しい試み、移植、37(総会臨時号)、129、2002は、「米国の死体腎移植は1995年以降、年間5,000例前後で頭打ち、2000年には4,786例の死体腎移植に対して(生体腎移植が)5,109例と初めて過半数を超えた。非血縁間の生体腎移植が増加し、生体腎移植の約20%を占める。非血縁ドナーの構成は、約40%が友人、40%が夫婦、残りが非血縁の親戚。非血縁間移植は善行としておおむね容認されているが、臓器売買につながる可能性も一部で危惧されている。ドナーに対する金銭的な謝礼は禁じられているが、入院中の生活保障は国家公務員と一部の州の公務員には30日の有給休暇が保障されている。レシピエントを特定しない善意による生体腎ドナー( non-directional donor )による非血縁間移植も増えており、その対応もUNOSを中心として確立されつつある」としている。これらの何割かが、本来は不必要な透析導入と透析による高死亡率にさらされ、行なう必要の無い腎臓提供・移植を選択したことになる。

 

 日本でも患者や家族の体験記に「透析が不要な患者にも透析導入、患者の家族用にまで不要な薬剤を出す」など、医療保険を食い物にする施設が登場する(文献名は後日、追記)。医学雑誌でも栃木県腎臓バンク 透析・移植委員会:栃木県の腎不全医療の現況と導入時調査、日本透析医会雑誌、14(1)、72−82、1998は「(p79)導入時年齢は、30才未満では(血清クレアチニン値が)17.44±7.803mg/dl 。・・・・・・若年者ではクレアチニンの数値のみで透析導入するのではなく、臨床症状を重視し安易な導入は慎むべきである。・・・・・・(p81)クレアチニン低値導入で臨床症状の記載が不十分な症例が多かった」としている。

 

 

移植が本当にQOLを向上させているのか

 「小児期に受ける腎臓移植療法は、腹膜透析療法や血液透析療法に比べて本当にQOLを向上させているのかどうか」に関する日本初の全国調査結果、SF−36による小児腎不全患者のQOL評価が、神戸大学医学部紀要 第63巻第3・4号 p39〜44(2003年)に掲載された。

 この調査は神戸大学大学院医学系研究科成育医学講座小児科・小林 朋子、久留米大学医学部小児科学講座・伊藤 雄平、東京都立清瀬小児病院腎臓内科・本田 雅敬、原泌尿器科病院腎臓内科・吉矢 邦彦の各氏がまとめた。

 対象は15歳以下で透析療法あるいは腎移植療法を導入され、現在16歳以上29歳以下の慢性腎不全患者528名と約180施設。郵送自己記入法による調査で回収率は35%、有効回答数156名(男性91名、女性61名、記入なし5名)。調査時の治療方法により、患者を腹膜透析治療群34名、血液透析治療群43名、移植腎生着群79名の3群に分類した。

  • 血清クレアチニン、尿素窒素、ヘマトクリット、インタクトPHTで、腹膜透析治療群、血液透析治療群と移植腎生着群間に有意差を認めたが、腹膜透析治療群と血液透析治療群の間に有意差はなかった。
     
  • QOLを客観的に評価する指標 MOS 36-itemShort-Form Health Survey(SF-36)では、移植腎生着群は、腹膜透析治療群および血液透析治療群よりもQOLが高かった。
     
  • しかし、移植腎生着群のなかには全体的健康感が100点満点のうち7例が約50点〜15点の間に分布するなど、非常に低値なものが存在した。移植腎生着群の3パーセンタイル値以下をとる一群は、すべての項目で腹膜透析治療群の50パーセンタイル値より低得点であった。
     
  • 腹膜透析治療群と血液透析治療群では、血液透析治療群のほうがQOLが高く、特に腹膜透析治療群男 性のOOLが低い。

 小林氏らは「移植腎生着群のQOLの良さは、多くの同様の調査をさらに裏付けする結果であったが、低QOL群の存在についてはさらなる調査が必要と思われた。・・・(略)・・・移植をしてもQOLが向上しない、もしくはむしろ低下した患者がいる可能性は否定できない。・・・『移植をすれば必ずQOLが向上する、透析患者にとっては移植が常に最善の方法である』とは結論づけられない。・・・(略)・・・小児では腹膜透析が広く用いられており、今回の結果からは、治療法の選択を再考する必要があると考え、・・・(略)・・・その原因は身体機能を低下させる合併症の可能性と、母親の過千渉の結果、児が抑うつ的になり、それが身体化している可能性も否定できない。今後の課題としたい」としている。

当サイト注:次項目にあるとおり、腎不全医療に詳しいコ・メディカルのなかには「QOLは透析の方が高い」とする評価や移植施設のほうが移植希望が少ない実態があり、移植が最善の選択ではなかった患者の存在を示している。
 この調査は、移植手術後に死亡(移植医療が死因を構成)した患者は対象としていない。移植した腎臓が生着せずに、現在は血液透析治療を受けている患者を区別して検討していない。すべての移植手術を受けた患者の全経過、QOL史も含めて、移植医療を評価する調査手法の開発・実施が期待される。

 

移植施設のほうが移植希望少ない、腎不全医療コ・メディカルのドナーカード所持率27%

 腎移植に携わるコ・メディカル研究会(佐藤 久光会長)と製薬メーカー・ノバルティスファーマ鰍ヘ2001年8月28日、名古屋市の毎日ビル内国際サロン『ホワイトハウス』で第4回腎移植勉強会を開催。愛知県下で腎不全医療に携わるコ・メディカルスタッフ1030名の「腎移植についての意識アンケート」結果が発表された。

  • 調査方法   :郵送による質問紙法

  • 調査期間   :1999年8月〜9月

  • 調査対象   :愛知県における腎不全医療に携わるコ・メディカル132施設(うち移植施設11)

  • 回答総数   :1030名(85施設=64.4%・愛知県下で腎不全医療に携わるコ・メディカルスタッフはおよそ2000名強)

  • 回答者の職種:看護士39%、準看護士33%、臨床工学技師17%、その他11%

  • 対照アンケート:1999年10月の名城大学祭参加者565名(学生は473名83.7%)

 主なアンケート結果を紹介すると、腎移植を必要と考えるコ・メディカルは80%を超え、臓器移植を必要と考える学生数より数%上回った。移植が必要な理由は「患者のQOLを考えて」と回答したコ・メディカルが最多の30%を超えたのに対して、学生は約2%と大差がついた。「移植が最良の治療手段」としたコ・メディカルは20%を下回るのに対して、学生は40%を超えた。「合併症の予防と治療」としたコメディカルが20%を超えたが、学生は約10%だった。

 「移植希望者の増加」としたコ・メディカルは約1割なのに対して、学生は4分の1を超えた。また「海外移植の問題生ずる」としたコ・メディカルが2%程度しかないのに対して、学生は「合併症の予防と治療」の回答よりも多いなど、マスメディアの影響が想定された(当サイト注:質問がコ・メディカルには腎移植について、学生には臓器移植を質問していること。また腎臓移植は不成功でも透析に戻る選択肢のあることが、回答にも影響したと考えられる)。

 移植に反対の理由は、学生は「情報不足でわからない」が5割を超え、さらに「移植手術に不安」「他人の臓器をもらってまで」の回答で大部分を占めた。コ・メディカルの回答は「情報不足でわからない」は筆頭だが約2割、「移植手術に不安」「合併症が透析の方が少ない」「QOLは透析の方が高い」「他人の臓器をもらってまで」などに回答が分散し、「医療不信」と回答したコ・メディカルも1割弱存在することが注目される。腎移植について学びたくないと強い忌避感を持つコ・メディカルも、非移植施設がほとんどだが8%いた。

 ドナーカードを持っているコ・メディカルは1030名のうち27%、移植施設のコ・メディカルは4割近い所持率で学生の約2倍だったが、非移植施設のコ・メディカルは学生よりも数%高い程度だった。

 コ・メディカルに対する「自分が腎不全になったらどの治療法を選択しますか」には、40%が腎移植、33%が血液透析、16%が腹膜透析だった。この質問を所属施設別に見ると移植施設のほうが腎移植を選択するコ・メディカルが少なかった。移植医療に日常的に接し実態をよく知る人々と、知らない一般人との情報格差が現れている。

 

 

移植を受けた患者の2〜4割が透析再導入

 日本透析医学会統計調査委員会:わが国慢性透析療法の現況(2001年12月31日現在)、日本透析医学会雑誌、36(1)、1−31、2003によると、透析人口は219,183人、60歳以上の透析人口は121,059人(55.2%)、透析人口の平均年齢は61.6歳。2001年に透析療法に導入された患者の平均年齢も64.2歳と、高齢化が進んだ。

 透析人口の増加を取上げて腎臓移植の必要性がPRされているが、2001年末の腎臓移植登録患者数13,057名のうち61歳以上は993人(7.6%)。合併症などからレシピエントには選ばれない高齢の透析人口が増加していると見込まれ、厚生労働省・日本移植学会・日本臓器移植ネットワークには、より正確な広報が求められる。

 腎臓移植後に腎臓が機能しなくなり、2001年1年間に透析療法が再導入された患者は167人だった。これは過去20年間に毎年400〜800例行なわれてきた腎臓移植手術数の2〜4割に達する。透析人口全体のうち、腎臓移植後に透析に戻った患者は1,301人。

調査年 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
透析人口 154,413人 167,192人 175,988人 185,322人 197,213人 206,134人 219,183人
人口100万人当たり
透析人口
1229.7人 1328.4人 1394.9人 1465.2人 1556.7人 1624.1人 1,721.9人
粗死亡率 9.7% 9.4% 9.4% 9.2% 9.7% 9.4% 9.3%
最長透析歴 29年0ヶ月
(46歳・男性)
30年0ヶ月
(47歳・男性)
31年0ヶ月
(48歳・男性)
32年0ヶ月
(49歳・男性)
33年0ヶ月
(58歳・女性)
34年0ヶ月
(59歳・女性)
35年10ヶ月
患者の平均年齢 58.0歳 58.6歳 59.2歳 59.9歳 60.6歳 61.2歳 61.6歳
調査年導入患者の平均年齢 61.0歳 61.5歳 62.2歳 62.7歳 63.4歳 63.8歳 64.2歳
移植後再導入患者
(原疾患記載患者数)
記載なし 記載なし 記載なし 記載なし 601人
(96,618)

記載なし

1,301人
(206,257)
調査年に移植後再導入
原疾患記載数/導入患者数
0人
(1,224/26,398)
0人
(1,513/28,409)
0人
(1,655/28,870)
記載なし 記載なし 記載なし 167人
(31,999/33,243)

※粗死亡率とは、前年末患者数と当年末患者数の平均に対する、当年の年間死亡患者数の比のこと。

以上は下記の資料より作成した。

日本透析医学会統計調査委員会:わが国慢性透析療法の現況(1995年12月31日現在)、日本透析医学会雑誌、30(1)、1−25、1997
日本透析医学会統計調査委員会:わが国慢性透析療法の現況(1996年12月31日現在)、日本透析医学会雑誌、31(1)、1−24、1998
日本透析医学会統計調査委員会:わが国慢性透析療法の現況(1997年12月31日現在)、日本透析医学会雑誌、32(1)、1−17、1999
日本透析医学会統計調査委員会:わが国慢性透析療法の現況(1998年12月31日現在)、日本透析医学会雑誌、33(1)、1−27、2000
日本透析医学会統計調査委員会:わが国慢性透析療法の現況(1999年12月31日現在)、日本透析医学会雑誌、34(1)、1−31、2001
日本透析医学会統計調査委員会:わが国慢性透析療法の現況(2000年12月31日現在)、日本透析医学会雑誌、35(1)、1−25、2002
日本透析医学会統計調査委員会:わが国慢性透析療法の現況(2001年12月31日現在)、日本透析医学会雑誌、36(1)、1−31、2003

 

倫理指針のなし崩し運用

座談会 肝移植の最新の進歩と問題点、肝・胆・膵、50(1)、173―191、2005

市田 隆文(順天堂大学消化器内科):次は黙っていてもしようがない話しだし、また、こういうこともきちんとしなくてはいけないと思うのですが、この前の日本移植学会で理事会として認めたある施設からの unrelated donor の生体肝移植の認定に関して報告がありました。あのときに清澤先生が安全対策委員のみなさんにアンケートを採ったら致し方ない、時期的にそういう時期だろうという意見も結構あったと思うのですが、この非血縁者からの移植、ドナーに関してご意見がありますでしょうか。・・・(中略)・・・日本移植学会できちんとしたドナーの選択基準をつくらなくてはいけないですね。もう一度、親族に準じるというあたりをはっきりしないと。

清澤 研道(信州大学第2内科):日本移植学会の倫理指針だと親族に準じるというのは例えば、内縁関係とか生計を共にしているとか家計を共にしているという説明はあるのですが、全くindependent な related については今回が初めてのケースですね。

市田:ですからおっしゃるとおり、なし崩しにしてはいけないと思います。けれども、逆に一番最初に行うべき脳死肝移植が進まない段階で結局こういうことが起こってきて、しかも保険診療となってきたら生体肝移植がどんどん増えた場合にドナーがいない。そうしたら unrelated という問題は出て来ざるを得ない。そこをどう対処するかですけれども、これは本当に走りながら、対処しながらですけれども、なし崩しにはやらないでいこうということだと思います。それぞれきちんとしたルールを作るべきだと考えます。

 

当サイト注:藤原 研司(埼玉医科大学第3内科):【臓器移植の最前線】 社会編 臓器移植の社会資源の整備に向けて 臓器不全と移植希望登録の実状 肝、医学のあゆみ、196(13)、1105―1110、2001は「我が国で1996年に肝疾患を原因として死亡した患者数は5万3千人あまりで、このうち脳死肝移植適応基準からみた肝移植適応者数は約3万〜3万6千人と推測された。一方、脳死肝移植を希望して2001年2月1日迄に適応評価委員会に申請された症例数は174例である」としている。

 藤原氏らは、肝疾患で死亡する人口のうち、悪性新生物など臓器移植をしても免疫抑制により一層病状を悪化させる可能性の高い患者、全身状態が悪化してから診察を受ける患者、臓器移植をしても予測余命が短い、あるいはQOLが悪いと推定される、などの患者数を除いて「年間の肝移植適応者数は約3万〜3万6千人と推測」している模様だ。
 日本移植学会の臓器移植ファクトブック2006http://www.asas.or.jp/jst/factbook/2006/fact06_02.htmlも肝移植適応患者数の概算(年間)を発生数を4万1640人、適応者数を約2,200人としている。

 これに対して年間の「脳死」ドナー発生数は最大でも250と推定される。真に臓器不全患者の治療を考える医師ならば、臓器移植以外の内科的・外科的治療法を検討するだろう。

 移植医から「ドナー不足!ドナー不足!」と煽り立てられるままに体制整備を進めるならば、行き着くところは毎年数万人に、なんらかの理屈をつけて与死を強いる社会だ。

 


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