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2004年11月15日 脳死判定前からドナー管理は常識!表向きは公式手順を装う
ドナーの家族は舞台裏を知らない 神戸大副院長が内部告発
2004年11月12日 腎移植術がもっとも手術の材料費小・収益大 新潟大
2004年11月11日 豊見城中央病院、入院全患者の意思表示カードを確認
ポテンシャルドナー情報が院内コーディネーターに
角膜提供を提示、次に臓器提供の話をして承諾誘発?
2004年11月10日 心臓移植の必要性を半減。メッシュ状の心臓補助デバイスで
北米29施設の共同試験 第77回米国心臓協会学術総会
2004年11月 8日 臓器移植法の見直しは
@情報公開A心停止後臓器・組織提供の中止
B脳死判定・臓器摘出例を検証する法的機関の常設、が不可欠。
脳死・臓器移植の推進理由は、医療費削減と人体の資源的利用
「世界」12月号で守田 憲二氏が指摘
2004年11月 4日 法的脳死22例目の遺族 川崎医科大を「医療ミスで脳死に」と提訴
冠動脈狭窄なし確認後、頭痛が増強、頭部CT検査まで4時間以上
2004年11月 2日 12月2日まで「臓器提供意思表示カードの取扱い」に意見募集
岡山で臓器提供意思がない20代男性をドナー管理・臓器摘出
十分な情報提供後の意志決定と厳格な提供意思表示・登録制に
2004年11月 1日 ドナー・レシピエントの年齢マッチングにより2年半以上生着延長
12年間に6,850腎を節約できたはず Meier-Kriesche 助教授

20041115

脳死判定前からドナー管理は常識!表向きは公式手順を装う
ドナーの家族は舞台裏を知らない 神戸大副院長が内部告発

 神戸大学医学部附属病院の副院長・看護部長である鶴田 早苗氏は、2004年から季刊誌「綜合看護」で〔マトロンの眼〕を連載している。第39巻第4号p47〜p50では「高度先進医療と看護」を取り上げた。
 
 書き出しの3行は「今回は大学病院が抱えている『高度先進医療』と『患者中心の医療』が両立することの困難や矛盾、そしてそれらに伴う看護のあり方について考えたいと思います。今でこそどのような医療施設においても、『患者中心の医療』は当たり前の基本的なコンセプトですが、その言わんとする患者・家族の意思に添ったインフォームドコンセント(以下ICとする)や倫理的配慮が行き届いた医療が日常実践されているかどうかを考えますと、『絵に描いたもち』ではないかと思うときがしばしばあります。これは大学病院の医療内容を考えたとき、その程度の差はあれ、質的にはまだまだ不十分であるということです」。

 “臓器移植の明暗”の段落では「筆者は以前勤めていた大学病院で20年前も死亡後の死体臓器移植(主に腎臓移植)にかかわっていました(集中治療室、手術室において)。もちろん「脳死による臓器移植」法のできるずっと前のことです。この時、ドナー側の治療に当たる救急医や脳外科医とレシピエント側の移植医の考え方の違いや移植の進め方に倫理的な問題を感じていました。今は現場の細かなことに直接関与はしていませんが、伝わってくる臨床現場の話のなかで“根本的に今も変わっていないなあ”と思うことがあります。・・・(中略)・・・脳死移植医療においては、例外はあっても、移植医にとっては実績を積んでいくことは重要であるし、一方で脳死判定を受けるドナー側は納得のいく尊厳死のプロセスをとりたいと考えます。移植医にとっては移植できる可能性があれば、脳死判定前からその準備(循環動態のコントロール等)をしていくのは常識であり、そうしなければ成功しません。数日前から情報は飛び交います。しかし表向きはプロトコールにそった移植の流れで進められます。ドナーやレシピエントの家族は、当然このような舞台裏は知る由もありません。・・・(中略)・・・生体移植移植に至る動機もさまざまで、医療者にはドナーとレシピエント間の奥にある心理状態はなかなかつかみきれません。基本的にはドナーの善意による心から助けたいという気持ちですが、最近は周囲からの外圧からと思われるような風潮も感じます。そこに倫理的な問題を感じます。看護が介入でき、ICができればいいのですが……重い課題です」と患者中心の医療が実現できていないことを書いている (注:脳死判定前からのドナー管理について詳細記述はない)。

 


20041112

腎移植術がもっとも手術の材料費小・収益大 新潟大

 第26回日本手術医学会総会が11月11日、12日の2日間、名古屋国際会議場(名古屋市熱田区)で開催。新潟大学医歯学総合病院手術部の石井 裕子氏らは「術式消耗品コストとその分析」を発表した。

 分析対象は頻度の高い17術式、手術操作に限定した非償還医療材料の総費用、内訳を調査した。計算式は「診療報酬点数−医療材料費(特定材料費は除く)」、人件費や光熱費は算出困難なため考慮しなかった。

 その結果、収支バランスは腎移植術、鼓室形成術の順に効率が良く、白内障手術、内視鏡下手術が不良だった。費用内訳では全症例でシーツ類、縫合糸、ガーゼ類が高額。内視鏡下手術で使用されるディスポーザブル手術器械と眼内レンズの占める割合が大きかった。

 石井氏らは「経費率の悪い手術があり手術件数増加が必ずしも収益増加につながらない。医師、看護師の経費節減に対する意識の向上、医療材料の標準化や積極的価格交渉、内視鏡下手術点数の見直しが必要」とまとめた。

 「DPC導入と独立行政法人化を機に、手術部でもこれまで以上に病院経営を意識した対応が望まれるようになった。有効な経費削減方法を検討する目的」の調査という。

出典:日本手術医学会誌 第26回総会プログラム・抄録集p91

 


20041111

豊見城中央病院、入院全患者の意思表示カードを確認
ポテンシャルドナー情報が院内コーディネーターに
角膜提供を提示、次に臓器提供の話をして承諾誘発?

 第56回日本泌尿器科学会西日本総会が11月11日〜13日の3日間、大分市内で開催された。11日のイブニングセッションは、最近の腎移植をめぐる諸問題(会場:大分全日空ホテルオアシスタワー)。

 このなかで豊見城中央病院(沖縄県豊見城市字上田25)の島添 春枝氏らは「沖縄県における Donor Action Program(DAP)の取り組み」を発表した。以下は西日本泌尿器科第66巻西日本総会特集号p112より要旨。

 脳死下臓器提供の4類型病院にも属していないが、昨年ドナーアクションプログラムを導入。今年4月からは入院全患者の意思表示カードの所持の有無の確認が開始され、ポテンシャルドナーに関する情報が院内コーディネーターに寄せられるようになった。臓器提供へのオプション提示をよりスムースに行えるように、ポテンシャルドナーがより多い角膜提供へのオプション提示を積極的に行うことが院内コーディネーターの発案で行われている。行動力のある優秀な院内コーディネーターが実施の鍵であると思われる。

 


20041110

 心臓移植の必要性を半減。メッシュ状の心臓補助デバイスで
北米29施設の共同試験 第77回米国心臓協会学術総会

 第77回米国心臓協会学術総会が11月7日〜10日の4日間、ルイジアナ州ニューオリンズで開催。ベイラー医科大学(テキサス州ヒューストン)のDouglas L. Mann氏は、北米29施設の共同試験により、メッシュ状の心臓補助デバイスが心臓移植や左室補助人工心臓などの必要性を半減させたことを報告した。

 循環器トライアルデータベースおよび12月2日付のMedical Tribune によると、進行性の心不全において左室の拡大にともない、心臓の形状が楕円形から球形に近くなっていく。心臓補助デバイス(cardiac support device:CSD)は、心臓の周りをメッシュで包んで支え、力学的・強制的に心拡大を抑制し、拡大した心臓の形状、機能を改善することによって、心不全の進展の抑制または維持を図るもの。Dr. Mannは「心臓の形状はCSDによりバスケットボール(拡大した状態)からアメリカンフットボール(正常な状態)へと変わった」と述べた。

 多施設共同試験は、北米29施設でNYHA分類III〜IV度の心不全患者300例(平均年齢52.5歳)を、
僧帽弁置換/修復術を要した193例は、対照群102例:CSD群91例に、
僧帽弁置換/修復術を要さない薬物治療107例は、薬物治療単独対照群50例:CSD併用群57例にランダムに割付け、中央値で22ヶ月の追跡が行われた。

 患者を「改善」「変化なし」「悪化」に評価した。一次複合評価項目(死亡+心不全の進展を示す主要な心手術+NYHAの変化)は、改善例がCSD群で対照群より多く(38%:27%)、悪化例が少なかった(37%:45%)。

 CSD群は対照群に比べ主要な心臓手技が少なく、心臓移植は7例:16例、左室補助人工心臓は3例:8例、両心室ペーシングは10例:14例、僧帽弁置換/修復術は1例:3例だった。ただし死亡率は両群間で差はなかった。

 QOLは、対照群に比べCSD群で有意に改善した。再入院、有害イベントにおいて両群間に違いはみられなかった。

 


20041108

臓器移植法の見直しは
@情報公開A心停止後臓器・組織提供の中止
B脳死判定・臓器摘出例を検証する法的機関の常設、が不可欠。
脳死・臓器移植の推進理由は、医療費削減と人体の資源的利用
「世界」12月号で守田氏が指摘

 岩波書店発行の月刊誌・世界12月号は、p62〜p70に死体からの早期摘出に麻酔?の作者=守田 憲二氏による「脳死誤診率一〇〇%〜〇%の間にあるもの」を掲載する。前文は以下。

 「本人の生前同意がある場合に限り脳死を人の死とする」臓器移植法は、日本人の「脳死」および臓器移植に対する理解や態度にもとづき、三〇年を超える論議の末に生まれた。

 この法律を全面的に否定し「脳死は人の死、脳死判定は拒否できず判定されたら医療打ち切り」「脳死の小児から臓器摘出」「生前の提供意思表示は不要、家族の承諾のみで提供」「親族を指定した臓器移植」等を目指す改定案が、日本移植学会や一部議員により検討されている。日本小児科学会は「小児の生前提供意思表示は不可欠」としつつも、脳死小児からの臓器摘出を容認する方向で条件整備を検討している。

 また六月、厚生労働省の終末期医療に関する調査等検討会は「延命治療の不開始および中止の具体的手順を示すガイドラインを専門医学会が作るべき」とする報告書をまとめた。遷延性意識障害(持続的植物状態)の患者を対象としてなされる医療にも、制限を加えられる可能性が出てきた。

 私たちは「脳死、遷延性意識障害、臓器・組織移植医療、終末期医療、自己決定、医療資源の適正配分、人体資源化」などの事情を考慮し、判断に迫られる時期を再び迎える。

 本稿では、曖昧な結果しか得られない脳死判定、そして遷延性意識障害からの回復例から、法律やガイドラインによる強制は決して行われてはならないこと。そして、脳死判定は「脳不全の重症度判定」などに改称すべき理由を述べる。

 また臓器移植法の見直しは@情報公開A心停止後臓器・組織提供の中止B脳死判定・臓器摘出例を検証する法的機関の常設、が不可欠であること。日本の貧弱な医療システムで、医療資源を大量消費する臓器移植を本格的に強行すると、医療水準全般が低下する構造的問題があるため、「脳不全患者の救命と臓器移植の両立」「死生観の尊重」「納得のいく終末期医療」は医療の充実で実現されるべきことを述べる。

 このほか「ドナーカードと終末期医療ガイドライン」の段落では、
「『脳死』患者のうち臓器提供に適した状態は二五%以下、家族承諾率二〜五割を考慮すれば最大限でも、すべての腎移植希望登録者に移植するのに三〇年〜七〇年かかる。常設機関による厳密な検証に耐えられる臓器提供はさらに少なく、小児ドナーは年間に一人も発生しない可能性がある。移植以外の外科的、内科的治療法を主流にすべきことは明らかだ。にもかかわらず厚労省が脳死・臓器移植を推進する理由は『脳死判定や終末期医療ガイドラインによる医療費削減、治療打ち切り後の人体の資源的利用促進』が主目標と思われる」と、「命のリレー」など美しい言葉で喧伝されている移植医療が、社会に対して本当にもたらすものは違うことを指摘し た。

 参考文献は「世界」・2004年12月号参考文献に掲載されている。

 


 

20041104

法的脳死22例目の遺族 川崎医科大を「医療ミスで脳死に」と提訴
冠動脈狭窄なし確認後、頭痛が増強、頭部CT検査まで4時間以上

 2002年11月10日に川崎医科大病院(岡山県倉敷市)で、クモ膜下出血によって脳死と判定された50代女性の遺族が4日、「脳死になったのは病院が適切な処置を怠ったため」として、同病院に約6200万円の損害賠償を求める民事訴訟を岡山地裁に起こした。川崎医科大病院は、訴状を見た上で対応を検討する方針。法的脳死判定手続きをおこなった事例で医療ミスがあったとして病院が訴えられるのは初めて。

 厚生労働省検証会議の報告書によると、女性は2002年10月28日10時頃、歯科治療中に意識障害が出現し、10時39分、川崎医科大病院救急部に搬入された。搬入時JCS10、血圧測定不能、胸部不快感を訴えた。

 脳死下での臓器提供に係る経過表によると、胸部不快感の訴え、エコー図検査、心電図より虚血性心疾患を疑った。12時30分 緊急冠動脈造影を施行したところ、左室壁運動低下を認めたが、冠動脈狭窄はなかった。15時頃から頭痛を訴え始め、その後、頭痛が増強。17時頃の頭部CT検査で、くも膜下出血と水頭症の所見を認めた。17時25分、ICUにて気管内挿管し、人工呼吸を開始した。

 原告側は「患者に意識障害があったのに、心臓の検査を優先し、初期の段階で、頭部のCT検査など必要な措置を取らなかった」と主張している。

 検証会議は診断の妥当性について「搬入時には心原性ショックを疑わせる循環動態で、患者も胸部不快感を訴え、心臓カテーテル検査が優先されたことは理解できる・・・」としているが、12時30分の緊急冠動脈造影で冠動脈狭窄はなかった。この後、患者は頭痛を訴え増強し、頭部CT検査まで4時間以上経過していることについて判断がない。

 家族は臓器提供前から病院の治療には不満を持っていた。ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証結果によると、11月9日の移植コーディネーターによる説明時に、家族から病院の治療に不満があるとの発言があったため、一度面談をうち切った。最終的には法的脳死判定手続きにのっとり、家族の総意を確認して臓器提供にいたった。

 


20041102

12月2日まで「臓器提供意思表示カードの取扱い」に意見募集
岡山で臓器提供意思がない20代男性をドナー管理・臓器摘出
十分な情報提供後の意志決定と厳格な提供意思表示・登録制に

 厚生労働省・臓器移植対策室は「臓器提供意思表示カードの記載不備事例の取扱いに関するご意見」を11月2日(火)から12月2日(木)まで、電子メール、FAXまたは郵送にて受け付ける。

 このパブリックコメントは、記載不備事例も提供意思表示をしていると見なす方向で検討されていることから募集されるもの。しかし、下記のように臓器提供意思もないのに救命に反するドナー管理を開始し「心停止後」と称して臓器・組織摘出した事例。家族が「カードが必要なら、いまから書こうか」と言い出した事例。臓器提供施設の医療情報管理者が、ドナーカードの真正性を確信していない現実がある。腎臓移植普及会の小紫会長も「遺書と同じ」と厳格な登録を支持していた。

 現行の臓器移植法の枠組みのもとでは、脳死判定の曖昧さ・臓器摘出時の麻酔投与・移植医療関係者さえも臓器提供意思表示に躊躇する実態などを踏まえて、十分な情報提供後の意志決定と厳格な臓器提供意思表示・登録制度にすることが求められよう。また医療提供水準の引下げを誘発しないよう、必要もないのに提供意志を医療機関に把握されたり、登録情報を検索されない仕組みが求められる。

 ドナー候補者本人が、脳死判定・臓器提供の実態を正確に理解し提供意思を生前に示していない場合は、ドナー管理が必要な臓器・組織摘出は行われないようにすべきこと、またドナー管理が必要な臓器・組織摘出は法的脳死判定・臓器提供手続きにより行われるべきことは、いうまでもない。

 

「カードが必要なら、いまから書こうか」と家族が言い出した
 提供意志もなくドナー管理開始、「心停止後」臓器組織提供

 ドナーは20代男性。原付バイクにて車と衝突、外傷性クモ膜下出血。3人兄弟の末っ子で、父母と3人暮らし。大学を中退し、介護福祉士を目指し専門学校に通っていた。ボランティア活動や、障害者との関わりも持っていた。そんな本人の生き方からも、家族・親戚が脳死からの全臓器提供を希望された。

 第1病日:夕方、家族から「カードはないが、本人のことを考えれば、臓器提供を」と申し出。

 第2病日:主治医よりコーディネーターに連絡。「頭の先から爪の先まで可能なものはすべて提供したい。夢の途中だったので、1人でも多くの人のなかで役に立って、夢をかなえさせてやりたい。カードが必要なら、いまから書こうか」。提供承諾書を作成。

 非常に強い提供希望は、長引いてくると“提供できなくなるかもしれない”という不安に影響され、それをなんとかしてやりたい、つまり“人工呼吸器の中止”という形で表出された。

 

 第4病日:主治医により臨床的脳死と診断。母親面接「長くなって移植もだめになったら・・・。早く楽にしてやって・・・」

  第5病日:家族が「カードがないと脳死提供できない法律はおかしい。人工呼吸器を外してほしい」、主治医は「気持ちはわかるができない」

  第6病日:人工呼吸器の設定変更、昇圧剤の中止などの条件下でのドナー管理。

  第9病日:心停止後、腎臓、角膜、心臓弁・血管の提供となる。

  1ヵ月後:お別れの会で、参列者の前で厚生大臣の感謝状を授与し、カード配布

 

 以上の出典は、安田 和広(岡山県臓器バンク移植コーディネーター):家族の希望と主治医の治療方針の違いで苦慮した症例、今日の移植、16(2)、173−174、2003

 1993年に発生した関西医大事件も同様の事例:看護師の女性(29歳)が生前意思がないにもかかわらず、心停止前に移植に備えて腎臓に灌流液を流すためカテーテルを挿入され腎臓を摘出された。1997年に大阪地裁は、その違法性を認める判決を下した(判例時報、1670号、44−57)

 

 法的脳死判定15例目で臓器提供に関与した病院職員が、カードの内容の真正性が保障されていないと指摘

 まとめ(p142〜p143)で「ご自由にお持ちくださいという姿勢で無造作に置かれている場合もあるドナーカード、どこの誰が所持しているのか誰も把握していない。そしてそのカードについて形式的な記載不備はチェック可能だが、確かに本人によって記載されたものであるのか、その後の意思に変わりはなかったのか、カードの内容の真正性を保障する基準は暖昧である。遺言に関しては厳しい条件が法的に定められていることと比較すると、自分の死は脳死をもって『死』としてよい、その段階で臓器を摘出して他人へ贈与してよいとする意思についての認定基準は重大な制度不備であると思う。また運用を誤ると人間の身体の資源化、臓器の売買という反倫理の流れを作りかれない危険もある」

 最後に(p143)「私は早い段階からドナーカードを所持し携帯してきた。自分がこの世に存在させてもらったことに対する感謝の気持ちを社会に還元できる形として臓器を提供しそれを待っている人の役に立てたらと思ったからである。だが今回この問題を考える機会を得、その気持ちが独り善がりではないか、それにより周辺に迷惑をかける場合もあり得るのではないかとの疑問が生じ、所持し続けることを自問自答しているところである。個人的な『気持ちの問題』の結論はまだ出せないでいる」

 

 以上の出典は、阿部 眞澄(聖路加国際病院・ヘルスインフォメーション科医療情報管理):法的脳死判定および臓器移植に関する病院経営上の視点からの考察、日本病院会雑誌、50(1号)、139−144、2003 PDFファイルhttp://www.hospital.or.jp/news-zassi/zassi/j200301.pdf(病院経営管理者養成課程通信教育・優秀卒業論文)

 

 腎臓移植普及会の小紫会長(現、日本臓器移植ネットワーク)も、遺言と同じ厳格なドナーカードを支持

 1979年、そのころ腎臓移植普及会のドナーカードは、現在のような自由に配布するものではなく、登録配布性を採用していた。住所、氏名、年齢をはがきでドナー希望者から連絡してもらい、その情報を登録していた。

  太田は、この登録制だと余分なはがき代や登録する手間がかかり、「無駄が多い。これでは普及しない」と指摘したのである。  だが、小紫は「ドナーカードはその人の遺書と同じだから、厳格にやらなければならない」と、太田の話を聞こうとはしなかった。

 

 以上の出典は、木村良一著:移植医療を築いた二人の男 その光と影 p257、2002年、産経新聞ニュースサービス発行

 


20041101

ドナー・レシピエントの年齢マッチングにより2年半以上生着延長
12年間に6,850腎を節約できたはず Meier-Kriesche 助教授

 10月27日〜11月1日、第37回米国腎臓学会議がミズーリ州セントルイスで開催。フロリダ大学の Herwig-Ulf Meier-Kriesche 助教授は、「腎臓ドナーとレシピエントの年齢をマッチングさせると、全レシピエントの余命が平均9ヶ月延長される。さらに若齢(15〜50歳)レシピエントの場合、若齢ドナーの腎臓を移植すると移植腎の寿命を2年半近く延長できる」と発表した。

 「1990年〜2002年に移植されて機能しなくなった74,000腎以上を検討したところ、年齢マッチングをしていれば9,250例が恩恵を受けられたかもしれない、この12年間で6,850腎を節約できたはず」という。こちらは要旨(英文PDFファイル)

 


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