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20010930

心臓移植待機患者が移植不要に 内科的治療が成功
1年超のカテコラミンから離脱 川崎病・急性心筋梗塞

 2000年6月12日から心臓移植待機患者となっていた26歳男性が、内科的治療が成功して2001年9月心臓移植は不適応になった。

 この男性は、1歳時検診にて発育不良を指摘され、久留米大学にて冠動脈瘤を認めたため川崎病と診断された。2歳時の血管造影では冠動脈瘤は消失していた。7歳時、小倉記念病院にて再び血管造影が行われたが、異常所見を認めなかったため投薬は中止。外来通院も行われず、小、中、高校と自覚症状もなく経過した。

 1999年12月3日、飲酒中に数回嘔吐し、突然激しい胸痛を自覚した。安静にて軽快しないため、飯塚病院を受診したところ心電図により急性心筋梗塞と診断された。緊急血管造影で左主幹部(LMT)に100%閉塞を認めたため血栓溶解療法が施行され、左主幹部は50%まで開大した。しかし,広範囲梗塞で残存血栓を認めたため、IABPが挿入されカテコラミンが開始された。12月18日には、IABPから離脱できたがカテコラミン減量困難となったため九州大学附属病院へ転院。左室駆出率(LVEF)は15%と著明に低下し、カテコラミンの減量で心不全が増悪するため日本循環器学会より心臓移植の適応と判定された。2000年6月12日、心臓移植待機、心不全加療目的にて国立循環器病センターへ転院した。

 国立循環器病センターでは、まずエナラプリルを増量し、カテコラミンを少量づつ減量し2001年1月、カテコラミンからの離脱に成功。2月中旬よりカルベジロール導入後、BNPは上昇したが、明らかな心不全の増悪を認めず、2001年3月退院となった。2001年6月、心機能・心臓移植適応の再評価を行い、2001年9月、心臓移植不適応と判定された。以降も定期的に心機能評価を行っているが、心機能、心不全の悪化を認めず経過している。川崎病で冠動脈瘤が消退した患者も医療機関フォローアップし、全国規模でデータを集積する必要がある。


 出典:花谷 彰久(国立循環器病センター心臓内科):幼少期冠動脈瘤の退縮後に心筋梗塞を発症し、虚血性心筋症となった1例、Progress in Medicine、24(7)、1694―1697、2004

 


20010924

「私物化」「独裁」報道は、中山衆議院議員や日本移植学会の意趣返しだ!
小紫臓器移植ネットワーク会長が、移植ネット内部の主導権争いを公然化

 日経ビジネス9月24日号は、小紫 芳夫・日本臓器移植ネットワーク会長、吉田 学・厚生労働省 臓器移植対策室長、太田 和夫・日本移植学会元理事長へのインタビュー記事を掲載した。各氏の発言要旨は、下記の一覧表を参照。

 このなかで小紫氏は「(私物化、独裁体制などの)報道が出てきたのも、(日本臓器移植ネットワークの)理事長ポストを狙った代議士や、理事長就任を拒まれた太田さんが、マスコミを通じて意趣返しをしたんだと思います」と述べ、中山 太郎衆議院議員や太田 和夫氏ら日本移植学会と、小紫一族との間に日本臓器移植ネットワークの主導権争いがあることを公然化させた。

小紫 芳夫
日本臓器移植ネットワーク会長

  1. 立入検査について
    厚労省は検査なんかやりたくなかった。だってこれまで見てきているわけですから、内実は知っています。もし問題があれば、厚労省にも責任がある。国会で質問されたから、嫌々検査に来たのでしょう。
     
  2. トンネル寄付について
    トンネル寄付は問題だとは思えない。強いて言えば「善意のミス」。寄付金を受け取って、学会に渡すにも、事務経費は結構かかる。臓器移植ネットワークに残ったカネも臓器移植の目的に沿って使い切っている。飲み食いに消えているわけではない。それでも税がかかるものなんでしょうか。
     
  3. 助成先団体の役員兼務について
    私は私財を投じて臓器移植を広めてきた。利益供与まがいのことをする必要はないし、経済的に困っていないのです。
     
  4. 機関誌作成業者の選定について
    甥に頼んでいるが普通に頼めばかなりの金額が必要になる。「ボランティアのつもりで安く請け負います」と言ってくれた。
     
  5. 移植ネットの役員構成について
    95年、日本腎臓移植ネットワークスタート時に日本移植学会の太田 和夫理事長は入れなかった。医者は命が絶たれそうな人の横で、メスを持って待ち構えているから、患者や家族に嫌がられます。そうすると臓器移植に対して国民的な理解が得られなくなる恐れがあります。
    2年後、日本臓器移植ネットワークに替える時に厚生省が、ある代議士を理事長に据えるように要求してきた。立派に職務を果たしている筧 榮一理事長をなぜ代えなければならないのか。そこで、私は緊急の理事会を開いて、厚生省案を満場一致で否決した。

吉田 学
厚生労働省 臓器移植対策室長

  1. 立入検査について
    立入検査の背景にはマスコミ報道、衆院厚生労働委員会の指摘があった。立入検査、改善勧告などという事態は私が知る限り極めてまれなことで、つまり見直すべき点もいくつかある団体ということです。
     
  2. トンネル寄付について
    本来、受け取った寄付金をどこに助成するかは移植ネット自らの判断によるべきです。しかし助成先それぞれに専用の銀行口座まで設けていた。特定公益増進法人に対する寄付金は税制の優遇措置の対象となる。こうした寄付・助成を厚労省は問題視し指導してきた。
     
  3. 助成先団体の役員兼務について
    助成先12団体のうち9つは移植ネット役員も兼務している。兼務する個人に特別な利益の供与とならないよう求めた。
     
  4. 機関誌作成業者の選定について
    作成業者の選定手続きが移植ネットの事務処理規程に違反していた。契約が理事長、理事会の決裁を受けていない。
     
  5. 移植ネットの役員構成について
    移植ネットの役員に、会長の関係者がいる。小紫会長と森理事は親族関係、小紫氏が代表取締役を務める会社の顧問弁護士3人と社外監査役1人も移植ネットの役員です。移植ネットの定款に定職するとはいえませんが公益法人として公平で適正な事業運営への信頼性の確保を求めたところです。

太田 和夫
日本移植学会元理事長

  1. 移植ネットの役員構成について
     
    日本臓器移植ネットワークは、会長の小紫氏が私物化する“小紫商店”と世間に言われているようですが、これは成り立ちの経緯に下地があったように思えてなりません。
     
     (臓器移植コーディネイト組織)を、どんな組織にすべきか、実にいろんな議論があった。
     92年頃、日本移植学会の理事長だった私の元に、厚生省から相談もあった。厚生省は、腎移植普及会とは別に組織を作り、臓器提供の斡旋をする考えを学会に示してきました。その後、既存の移植普及会を母体にせざるをえない状況に陥ったのですが、厚生省はこうつけ加えました。「組織は使うが、人事など中身は換骨奪胎する」。学会は人身一新を前提に了承した経緯があります。
     移植医である私が副理事長として組織に入り、専門家の見地から貢献してほしいと厚生省から依頼もされた。
     
     しかし小紫氏は「臓器移植の普及が(移植先進国の)米国並みになるまでは移植医は招かない」との理屈で私を排除しました。
     
     私は、自分の考えをはっきり言うタイプの人間です。小紫氏は、組織を運営していくうえで、何かと都合が悪いと思ったのではないでしょうか。
     
     以来、移植ネットは小紫氏を頂点に組織化され続け最初から小骨一本抜かれてはいません。
     
     日本の臓器移植はまだ未成熟な段階です。そのうえ国民が臓器移植の世界はなんだかきなくさい、妙な雰囲気をまとってるとのイメージを抱いたのでは、さらに普及を遅らせる。一刻も早く移植ネットは襟を正し、臓器移植が当たり前になる状況を作っていくべきだと思います。

 日経ビジネス誌が小紫氏の記事を掲載したのは「敗軍の将、兵を語る」のコーナー。倒産企業や社会的に非難される重大事件を引き起こした企業・団体のトップを登場させて、当事者の口から失敗に到る経過を語らせ、教訓を引き出すという内容が好評を得ている。記事は「このままだと、組織が倒れてしまいます。そして、これまでの努力が水泡に帰してしまう。本当に無念です」と語る小紫氏のコメントで締めくくった。

 


20010911

臓器移植法施行後、3例目のレシピエント死亡

 2001年1月21日、法的脳死判定12例目ドナーから国内初の小腸の提供を受け、京大付属病院で移植手術を受けた関東地方の女児(7歳)が11日午前7時26分、敗血症のため死亡した。臓器移植法施行後、脳死臓器移植を受けたレシピエントの死亡は3例目。

 これまでの死亡例はいずれも京大付属病院で生体移植(1、2例目は肝臓移植)を受けた後に、容態が悪化して「脳死」ドナーから臓器提供を受けた患者ばかり。京大付属病院が実施した4例の生体小腸移植のうち、死亡は3例目。

 女児は腸が短くて栄養を十分に吸収できない短腸症候群のため、1998年8月に母親から国内2例目の生体小腸移植手術を受けたが、慢性拒絶反応のため昨年5月に移植した小腸を摘出した。今年1月21日に移植手術を受けた後に退院したが、今月に入って敗血症を併発し、8日から集中治療室で治療を受けていた。

 


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