「脳死」移植容認派10%減少 10歳若く女性も増えると
小児の意思表明尊重する医師は増加 小児科学会会員
日本小児科学会は、「代議員の意見だけで小児脳死臓器移植について意思表示をした」と問題視されていたことに関連して小児脳死臓器移植に関するインターネットによる一般会員からのアンケート結果を、30日、同会Webページ上で公表した。
回答した一般会員はわずか98名、回答率0.6%(代議員の回答率は63%)ときわめて少数。「この98人は基本的に代議員は含まれていないはずです」と回答者が本来の一般会員に限定されて実施されたのか、アンケート主催者さえも正確に把握していない。近畿圏都市部在住者の回答が多いなど、相当の偏りが予想される。
考察では、「回答があまりにもすくないので、十分な比較はできない」と断りながら、主な相違点は以下を掲げた。
- 回答年齢が代議員アンケートよりも10年以上若い層であった。殆ど男性の意見に対して、1/4が女性の意見であった。
- 専門性や所属は大きな差はないが、近畿地方都市部の回答が多かった。
- 脳死を死とみとめるかは、70%が容認であり、代議員の80%と差があり、同様に小児の脳死からの移植の必要性の質問でも代議員が73%に対して63%と同じ差がでた。これは同じ小児科医でも年齢により意見が異なる可能性を示唆し、代議員層より若い層の方がより脳死による臓器提供に慎重である可能性も伺えた。
- 町野案への意見でも、反対が65%で、代議員の50%とは大きな差が見られた。賛成は21%対34%であった。
- 意見表明可能年齢でも、代議員の結果は13歳以上から低年齢の選択肢へ順に減少したが、アンケート結果は13歳以上と6歳未満がほぼ同率であり、6歳未満で可能とする回答が多くみられた。
臓器移植議員アンケート 回答率19%で「認識深まっている」?
生命倫理研究議員連盟(中山 太郎会長)による「臓器移植に関する国会議員アンケート」の中間報告がまとまった。
78%が15歳未満の子供の脳死臓器提供を「できるようにすべきだ(できるようにすべきだ35%+どちらかというとできるようにすべきだ43%)」との意見だったことから、中山会長は「多くの子供が海外で移植を受けている現状を踏まえ、移植について議員の認識が深まっている証拠。次の国会の開会直後に議論を始めるための資料にしたい」と共同通信の取材にコメントした。しかし、このアンケート(記名式)に回答したのは衆議院78人、参議院61人の合計139人、回答率は19%と極めて低率だった。
事前の新聞報道(7月2日付朝日新聞東京本社版・朝刊)では「臓器提供に本人の生前意思表示は必要か」という現行法の根幹に関わる設問が盛り込まれるはずだったが、5つの設問には登場していない。替わりに「法整備で臓器提供を増やすべきだ」の設問がなされ81%(増やすべきだ50%+どちらかというと増やすべきだ31%)が賛同した。河野 太郎議員はメールマガジンごまめの歯ぎしり7月24日号で「臓器移植問題にご関心のあるみなさま、どうぞ地元選出議員にアンケートに回答するように働きかけて下さい。よろしく。」と呼びかけていた。
Q1 臓器移植法の施行後五年以上が経過して、脳死下での臓器提供が23件という数字について、どう思いますか。
- 脳死下での臓器提供件数が少ない =45%
- どちらかというと脳死下での臓器提供件数が少ない=45%
- このぐらいの数字でよい
= 3%
- どちらかというと脳死下での臓器提供件数が多い
= 0%
- 脳死下での臓器提供件数が多い =
4%
無回答
= 3%
Q2 現在の臓器移植法では、15歳未満の者からの臓器提供ができず、外国で、臓器提供を待つ子供が増えています。15歳未満の者からの臓器提供について、どう思いますか。
- 臓器提供ができないのはやむを得ない
=12%
- どちらかというと臓器提供ができないのはやむをえない= 7%
- どちらかというと臓器提供ができるようにするべきだ =43%
- 臓器提供ができるようにするべきだ =35%
無回答 =
2%
Q3 C型肝炎などの原因により、肝臓移植を必要とする者が日本国内で年々増えていますが、脳死からの臓器提供が極めて少ないため、圧倒的多数は、健康な家族の肝臓の一部を切り取って移植する生体肝移植を受けています。また今年に入って生体肝移植のドナーが亡くなるというできごとが起きています。日本国内の肝臓移植の圧倒的多数が生体肝移植であることをどう思いますか。
- 生体肝移植が多数でもやむを得ない =11%
- どちらかというと生体肝移植が多数でもやむを得ない=21%
- どちらかというと脳死移植を多数にするべきだ =35%
- 脳死移植を多数にするべきだ =27%
無回答 = 6%
Q4 脳死からの臓器提供にあたって、生前に意思を明確にしておくことにより、
脳死になった者の親族に優先的に臓器を提供することができるようにすべきだという意見があります。
このことについてはどう思いますか。
- 親族が優先的に臓器提供を受けられるべきだ
=25%
- どちらかというと親族が優先的に臓器提供を受けられるべき
=35%
- どちらかというと親族が優先的に臓器提供を受けられるのはおかしい=20%
- 親族が優先的に臓器提供を受けられるのはおかしい
=14%
無回答
= 6%
Q5 臓器移植法の法整備を進め、日本国内で脳死からの臓器提供が増えるようにするべきだと思いますか。
- 脳死からの臓器提供を増やすべきだ =50%
- どちらかというと脳死からの臓器提供を増やすべきだ =31%
- 現行のままでよい =
6%
- どちらかというと脳死からの臓器提供を増やすべきではない=
2%
- 脳死からの臓器提供を増やすべきではない =
6%
無回答 =
5%
臨床的脳死判定をやめ、法的脳死確定以前からレシピエント選定
厚労省が運用改悪提案 情報公開も臓器摘出終了後に遅らせたい
7月26日付の日本医事新報は、厚生労働省が18日、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会に対して、臓器移植見直しの検討課題のうち
「効果的・安定的、効率的なあっせんの確保」について論点(下記枠内)を提示したことを報じた。
「効果的・安定的・効率的なあっせんの確保」の論点
- 臨床的脳死の判断(診断)
【指摘事項】 臨床的な脳死の判断(診断)の手続は不要ではないか。
【論点】 現行の臓器移植法は、法的脳死判定は、本人の書面による意思表示があり、家族が拒まない又は家族がないときに限って行うことができるとしている(法第6条第3項)。実際には、本人の生前意思は、臨床的脳死の判断より前に、臓器提供意思表示カー
ドなどによって確認されることがあるが、日本臓器移植ネットワークのコーディネーターに連絡が入り、@家族に対して脳死下臓器提供についての説明、A本人の書面の意思表示の確認、B家族より脳死判定実施の承諾書取得 といった手続が行われる必要がある。こうした手続に人るタイミングとして、どのような段階にあることが適当と考えられるか。
- 移植実施施設への意思確認時期
【指摘事項】 移植実施施設(レシピエント)への意思確認実施時を、第2回目の法的脳死判定終了後から、第1回目の法的脳死判定終了後に早められないか。
【論点】 第2回法的脳死判定が終了するまでは患者は法的に死亡している者ではなく、生存している者である。生存している者の死後の臓器提供を前提として、第3者に情報を提供することが妥当と言えるか。
- 情報公開の時期
【指摘事項】 臓器提供事例に係る情報公開の時期を第2回法的脳死判定終了時から臓器摘出終了後に遅らせることはできないか。
【論点】 現在の臓器移植ネットワークによる情報公開の時期・内容は、平成11年に初期事例の検証と併せて検討され―定の評価を得たものであるが、現段階でこれを変更することが適当か。
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これらの臓器移植法を運用面から改悪しようとの実質的な提案に、移植医は歓迎。委員の北村 惣一朗国立循環器病センター総長は「第1回判定終了の段階で、あくまでも(臓器提供の)可能性があるということで連絡すべき」、松田 暉阪大病院長は「ぜひこの点を進めていただきたい」などの賛成。上智大法学部教授の町野 朔委員は「レシピエント側に話すと、後に戻れない(=不可逆的な死とされた)と多くの人は思う。
第1回判定終了の段階でレシピエント側に話して意思確認することまで必要なのか」と慎重意見を示した。相川 直樹慶大医学部教授は「死を前提として行動をとったから不謹慎ということはない」と発言した。
厚労省は同日の臓器移植委員会に、昨年1月10日から腎臓移植レシピエ
ント選択基準を、移植後の成績向上を図るためにドナー発生地と同一県内の患者や待機日数の長い患者を優先する見直しを行なったにもかかわらず、移植3ヶ月後の患者生存率が97.2%から88.7%に低下したことも報告した。委員からは@見直し後のデータの母数が110例と少ないA見直し後に移植時の平均待機日数や平均年齢が上がり、リスクの高い患者に移植するケースが多くなっている、ことから慎重に扱うべきとの意見が相次いだという。
臓器提供該当施設の3分の1が提供に及び腰
ドナーカード配布数が1億枚突破 厚生労働省
厚生労働省・臓器移植対策室は17日、「臓器移植の実施状況に関する報告書」をまとめた。
臓器提供施設:7月10日現在で臓器提供施設に該当する457施設のうち、厚生労働省の照会に対して臓器提供施設としての必要な体制を整えていると回答したのは306施設だった。
臓器提供意思表示カード等の配布数は、1997年10月16日(臓器移植法施行日)から2003年6月30日までに、1億313万1127枚。内訳は下記。
- 臓器提供意思表示カード =8573万9801枚
- 運転免許証用シール = 334万3236枚
- 医療保険の被保険者用シール=1404万8090枚
臓器別の生存率、生着率は以下のとおり(当Webページ注:腎臓の生存率・生着率算出は、「心停止」+「脳死」の移植総数を母数としているとみられる)。
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生存率 |
生着率 |
1年生存率 |
2年生存率 |
1年生着率 |
2年生着率 |
心臓 |
100.0% |
100.0% |
100.0% |
100.0% |
肺 |
83.1% |
73.8% |
83.1% |
73.8% |
肝臓 |
81.0% |
81.0% |
81.0% |
81.0% |
腎臓(単独) |
94.9% |
93.2% |
85.2% |
81.4% |
膵腎同時移植術 |
100.0% |
100.0%
|
腎臓100.0%
膵臓88.9%
|
腎臓100.0%
膵臓88.9%
|
膵臓(単独) |
100.0% |
100.0% |
100.0% |
100.0% |
小腸 |
0.0% |
――― |
0.0% |
――― |
(注1)心臓、肺、肝臓、膵腎同時移植術に係る腎臓および膵臓、膵臓単独並びに小腸の移植:2003年3月31日までに実施されたもの。腎臓単独の移植:2002年12月31日までに実施されたもの。
(注2)膵腎同時移植術を受けた患者については、腎臓単独の移植術の生存率及び生着率の数値には反映されていない。
上記のほかに移植実施施設数、臓器別の移植希望登録者数、移植実施数、臓器あっせん機関の現状(日本臓器移植ネットワークと全国52の眼球あっせん機関)、脳死下での臓器提供に係る検証、腎臓移植および角膜・強膜移植の推進、移植を通じたウェストナイル熱等への感染の防止対策を、A4・5ページにまとめている。臓器移植実施数など日本臓器移植ネットワークのWebページ掲載と同じのため、掲載は省略した。
眼球は、2002年度提供者数942名(臓器移植法施行以来の累計5,419名)、2002年度「脳死」提供2名(累計5名)、2002年度移植実施1,509件(累計8,954件)、2002年度「脳死」移植4件(累計10件)。
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