法的「脳死」移植レシピエントの死亡は累計8例?9例?
厚生労働省に続いて日本臓器移植ネットワークも誤記?
日本臓器移植ネットワークは、11月13日までの「脳死」下臓器提供を記載したData
Fileページで、2000年3月39日に法的脳死判定5例目ドナーからの右腎臓移植手術を千葉大で受けた50代男性が死亡と記載している。
マスメディア等が認識している法的「脳死」移植レシピエントの死亡年月日、レシピエントの年齢(主に移植時)←提供者(年月)、臓器(移植施設名)は以下のとおり。
- 2000年11月20日 47歳女性←bP0ドナー(20001105) 肝臓(京都大)
- 2001年 5月25日 10代女性←bP4ドナー(20010319) 肝臓(京都大)
- 2001年 9月11日 7歳女児←bP2ドナー(20010121) 小腸(京都大)
- 2001年12月11日 20代女性←bP8ドナー(20011103) 肝臓(北大)
- 2002年 2月 3日 43歳男性←bP1ドナー(20010108) 右肺(東北大)
- 2002年 3月20日 46歳女性←bP6ドナー(20010726) 右肺(大阪大)
- 2002年 6月10日 38歳女性←a@5ドナー(20000329) 右肺(東北大)
- 2002年 9月10日 20代男性←bQ1ドナー(20020830) 肝臓(京都大)
このページでは法的「脳死」判定21例目ドナー(2002年8月30日)からの心臓移植を受けたレシピエントについても30歳代男性としているが、日本臓器移植ネットワークの発表資料では30歳代女性と性転換しており、死亡・性別とも誤記の可能性もある。
厚生労働省も法的「脳死」移植レシピエントの死亡については誤記の前例があり、4月14日現在でまとめた「脳死下での臓器提供事例について」資料では、2001年1月8日に大阪大学で膵腎同時移植を受けた30代男性患者は死亡と記載していた。しかし、11月11日付発行のICUとCCUで大阪大学第一外科の伊藤 壽樹氏が「術後1週目にグラフト門脈血栓症にて移植膵の摘出を余儀なくされた。なお、患者は完全社会復帰し・・・」と生存が確認されたばかり(厚生労働省は移植した膵臓の摘出をもって、資料には「死亡」と誤記したと見られる)。
法的手続き下では「脳死」判定23例目、臓器摘出22例目
12日、和歌山県立医大病院(和歌山市)で30歳代男性が「脳死」と判定された。1回目の法的脳死判定は平坦脳波ではなかったためやり直しになった。
11日午後11時7分に1回目の脳死判定を始めたが、平坦脳波ではなく、わずかな波形を確認したため12日午前0時半に判定作業を中止した。約3時間後に1回目の判定作業を最初からやり直し、平坦脳波を確認。聴性脳幹反応検査を加えて作業を進め、午後1時13分に2回目の判定を終え、最終的に脳死と確認した。これまでに法的手続きをした脳死判定としては23例目、臓器移植は22例目になる。以下は日本臓器移植ネットワークの発表資料。
平成14年11月12日
社団法人 日本臓器移植ネットワーク
[第23例目の脳死下での臓器提供事例について]
☆最終的には各摘出チームの評価の結果を待って決定。
法的手続き下では「脳死」判定22例目、臓器摘出21例目
10日朝、川崎医科大付属病院(岡山県倉敷市)に10月28日からクモ膜下出血で入院していた50代女性が、臓器移植法に基づいて「脳死」と判定された。これまでに法的手続きをした脳死判定としては22例目、臓器移植は21例目になる。川崎医科大付属病院は、騒音対策から運用時間が制限されるがドクターヘリの利用で知られる。今回は11日午前6時30分、心臓が大阪に向けてヘリコプターが離陸した。
以下は日本臓器移植ネットワークの発表資料。小腸についてのドナー提供意思があり、また「小腸移植は登録者がいないため見送り」報道もあったが、下記資料では家族が同意した臓器に小腸は含まれていない。
平成14年11月10日
社団法人 日本臓器移植ネットワーク
[第22例目の脳死下での臓器提供事例について]
[レシピエントの選択及び移植実施施設等について]
心臓移植実施施設及びレシピエントについて
心臓移植の第一候補者は国立循環器病センターで移植希望の30歳代の男性で、原疾患名は拡張型心筋症である。
肺移植実施施設及びレシピエントについて
肺移植の第一候補者は岡山大学医学部付属病院で移植希望の20歳代の女性で、原疾患名は原発性肺高血圧症である。
肝臓移植実施施設及びレシピエントについて
肝臓移植の第―候補者は北海道大学医学部附属病院で移植希望の40歳代の男性で、原疾患名は先天性代謝異常である。
腎臓移植実施施設及びレシビエントについて
腎臓移植のレシピエントについては現在、意思確認を行なっており、未定である。
☆最終的には各摘出チームの評価の結果を待って決定。
[提供臓器について]
膵臓腎臓同時移植について
医学的理由により膵臓・腎臓同時移植を断念
提供病院では、臓器提供に係る全ての摘出術が終わった時点で記者会見を予定しているので、それまでの取材・問い合わせはご遠慮願いたい。
日本の論点2003 小松氏「脳死・臓器移植からの勇気ある撤退を」
北村氏「脳死を死と一律に解釈すべき、脳死者への保険適用廃止を」
文芸春秋は8日、日本の論点2003を発売した。外交、経済、地方自治、地球環境、スポーツなど80の論点について、異なる意見の論客が2人づつ、各4ページにわたって意見を述べている。 論点51で「脳死移植はどうしても必要か」は、北村 惣一郎氏(国立循環器病センター)と小松 美彦氏(東京水産大学教授)が執筆した。
北村氏は喫緊の5つの課題を(1)小児への移植を可能に法の見直し(2)本人の意思表示を尊重し、単純な記載漏れはご家族の意思に固いものがあれば「諾」とすること(3)「脳死」患者の臓器提供施設への転院を認めるなり、派遣医師による「脳死」判定を認可する(4)医師、医療従事者が「意思表示」をし、国民に範を示せ(5)小〜高等学校教育で脳死、臓器提供を取上げよ、とした。
また、「脳死者への医療保険費年間200〜300億円になりうる。誰一人例外なく1ヶ月から1.5ヶ月の後、かならず心停止を迎える。一人として社会に戻るもののない「実りなき医療費」の使用といえる。必要に応じてすべての脳死判定を行なう機会を与え、その実施・診断を保険医療として認めるべきである。その結果、脳死≠ニ判定されれば、それ以後の医療にこそ選択性を認め、実りある移植医療には『保険』をみとめていくべきではなかろうか。そしてわが国では脳死を『死』と一律に解釈すべきであると考える。破綻に瀕しているからこそ、医療保険費の配分をただすべきではなかろうか」と書いている。
一方の小松氏は、臓器提供が増えない根本要因は、医療不信と慈愛精神の衰退にあるとした。「脳死者は生身の人間としてではなく、抽象的な生理状態としてかたづけられがちだ。慈愛精神の衰退を嘆く移植推進論者自身に、脳死者に対するその精神はどれだけ存在するのであろうか」と問いかける。また、推進論者の取った高等戦術=「自己決定権」を基盤にすえた法案が、慈愛精神の薄らいでいる日本で奏効しなかったという。
また、脳死者の脳から種々のホルモンが分泌されており、臓器摘出時に血圧が上昇し心拍が早まることも多いため、脳死と判定されても脳の機能は残存し、身体の機能を調節している。定義に反して実際の脳死者はまだ生きていることから、アメリカで脳死を人の死とする規定を廃棄しようとする動きが勃興。「移植臓器の獲得のためには、時には殺人も正当だと認められる必要がある」というR・トゥルオグ(ハーバード大学麻酔学教授)の主張も現れていることも紹介。「脳死者の実態と移植先進国アメリカの現実を見据えるならば、日本に必要なのは、法改定ではなく、また、従来通り自己決定権に任せることでもなく、脳死・臓器移植そのものからの勇気ある撤退ではないだろうか」と書いている。
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