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法的「脳死」臓器移植レシピエントの死亡は累計42人
肺移植患者と肝臓移植患者の計2人死亡
日本臓器移植ネットワークは、11月24日更新の脳死での臓器提供ページで死亡した臓器移植患者数は累計4
2名になったことを表示した。肺移植患者と肝臓移植患者の死亡者が各1名増加した。
臓器別の法的「脳死」移植レシピエントの死亡年月日、レシピエントの年齢(主に移植時)←提供者(年月)、臓器(移植施設名)は以下のとおり。
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2005年 3月 7日 50代男性←bP2ドナー(20010121) 心臓(国立循環器病センター)
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2005年 3月21日 40代男性←bR2ドナー(20041120) 心臓(大阪大)
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2002年 2月 3日 43歳男性←bP1ドナー(20010108) 右肺(東北大)
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2002年 3月20日 46歳女性←bP6ドナー(20010726) 右肺(大阪大)
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2002年 6月10日 38歳女性←a@5ドナー(20000329) 右肺(東北大)
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2002年12月 5日 20代女性←bQ2ドナー(20021110) 両肺(岡山大)
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2004年 6月 7日 50代男性←bR0ドナー(20040520) 両肺(東北大)
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2005年 3月10日 50代男性←bR6ドナー(20050310) 両肺(京都大)
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2006年 5月初旬 40代男性←bP9ドナー(20040102) 右肺(岡山大)
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2006年 5月27日 40代女性←bS6ドナー(20060526) 両肺(岡山大)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肺(施設名不明)
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2006年10月24日 30代女性←bS3ドナー(20060321) 両肺(京都大)
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2007年 7月? 32歳男性←bS9ドナー(20061027) 左肺(福岡大)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肺(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肺(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肺(施設名不明)
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2000年11月20日 47歳女性←bP0ドナー(20001105) 肝臓(京都大)
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2001年 5月25日 10代女性←bP4ドナー(20010319) 肝臓(京都大)
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2001年12月11日 20代女性←bP8ドナー(20011103) 肝臓(北大)
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2002年 9月10日 20代男性←bQ1ドナー(20020830) 肝臓(京都大)
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2005年12月26日 50代女性←bS1ドナー(20051126) 肝臓(北海道大)
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死亡年月日不明 20代男性←bQ9ドナー(20040205) 肝臓(大阪大)
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死亡年月日不明 60代男性←bR6ドナー(20050310) 肝臓(京都大)
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死亡年月日不明 40代男性←bQ2ドナー(20021111) 肝臓(北大)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 膵臓・腎臓(施設名不明)
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2004年 6月頃 50代女性←bP5ドナー(20010701) 腎臓(東京女子医科大学腎臓総合医療センター)
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死亡年月日不明 50代男性←a@5ドナー(20000329) 腎臓(千葉大)
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死亡年月日不明 30代男性←bP4ドナー(20010319) 腎臓(大阪医科大)
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死亡年月日不明 50代男性←bP6ドナー(20010726) 腎臓(奈良県立医科大)
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死亡年月日不明 50代男性←a@2ドナー(19990512) 腎臓(東京大学医科学研究所附属病院)
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死亡年月日不明 女性←bQ6ドナー(20031007) 腎臓(名古屋市立大)
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死亡年月日不明 50代男性←bR6ドナー(20050310) 腎臓(国立病院機構千葉東病院)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 腎臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 腎臓(施設名不明)
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2001年9月11日 7歳女児←bP2ドナー(20010121) 小腸(京都大)
「脳死」患者の思いを、汲み取れなかったのではないか?
臓器提供選択肢提示時、用語の理解に大きな隔たりあり
脳死患者家族は、解決できない悲嘆と葛藤を抱える傾向
患者家族の心理的ストレス 日本医科大の吉野氏ら報告
2009年11月14日、15日の2日間、第25回日本精神衛生学会大会が国立看護大学校(東京都清瀬市)で開催され、吉野 美緒氏(日本医科大学武蔵小杉病院)、重村 朋子氏(日本医科大学)、奥田 良子(中央大学学生相談室)、上淵 真理江氏(共立女子短期大学)は、脳死患者家族にインタビューした結果を3題、ポスター発表した。以下は「こころの健康」25巻2号(2010年)p104〜p105より部分。
*脳死患者家族の心理的ストレス(T)脳死期間における家族の心理状態
[調査協力者]死別後2年以上経過した脳死患者家族。
[方法]半構造化面接によるインタビュー調査を行い、そのうち一事例について質的帰納的に分析した。
[結果・考察]調査協力者は、死別後2年を経過してもなお、強い<自責の念>を抱いていた。この背景には、脳死期間中に<患者は“思い”を伝えていたが、私は汲みとれなかったのではないか>と感じていたことがあり、これは、<患者は“思い”のある存在>と認識していたことに由来していた。脳死患者家族の心理的ストレスを軽減するために@「脳死」に関する知識の普及、A脳死期間における医療関係者の働きかけ、B死別後の患者家族のフォローアップが有用と示唆した。
当Web注:「脳死」に関する知識に、臓器摘出時に脳死ではないことが判ったケースや臓器摘出時の麻酔管理例さらに人工呼吸の停止後に脳死ではないことが判ったケースなども含まれるのか?については不明。
*脳死患者家族の心理的ストレス(U)オプション提示に関して
[方法]主治医から「臨床的脳死」と説明を受けた患者家族に対しLong
Interview法に基づく半構造的面接を行った。インタビュー記録とカルテ記載からのデータを一般的なコーディングパラダイムにのっとった質的研究で分析した。
[結果]家族の状態が予期せぬ死別を前にして急性心的ストレス下にある上に、患者脳死という状態は専門性の高い医療という異文化の中に家族が突然入り込まざるをえないというストレス状態であった。医療サイドにとって自明のことでも家族にとってはまったく新しいことであり、同じ言葉を使ってもその意味するところ、了解するところは大きな隔たりがあることが見出された。医療サイドと家族サイド間の異文化を埋める取り組みが今後必要であることが示唆された。
*脳死患者家族の心理的ストレス(V)喪失に関する心理的負荷の比較研究
[目的]患者脳死下での家族の心情を把握することは、脳死患者家族のケアを行うにあたり重要である。本研究では、脳死患者家族の心理的負荷を明らかにするために、脳死患者家族と、闘病期間を経て患者を失った家族、予期せず死を迎えた患者の家族との比較研究を行う。
[方法]脳死患者家族9名、長期の闘病期間を経て患者を失った家族5名、心疾患、脳疾患等により予期せず患者を失った家族5名をを対象として質問紙調査を実施した。質問紙は、@IES-R(改訂出来事インパクト尺度日本版)、AGRS(悲嘆反応尺度)、BGHQ28(日本版精神健康調査票・短縮版)を用いた。
[結果・考察]脳死群は、他群に比べて、IES-R「回避」「過覚醒」およびGSR「解決できない悲嘆と葛藤」が有意に高かった。脳死患者家族においては、他の患者家族とは異なる心理的ストレスがあることが考えられる。
東京医科大学八王子医療センター 心停止1分で死亡確認
61歳男性から腎臓摘出開始2分前まで心臓マッサージ継続
2009年11月12日、東京医科大学八王子医療センターで第395回東京医科大学臨床懇話会が開催され、外科学第五講座の岩本氏らは61歳男性の心停止1分で死亡確認を行い、ただちに心臓マッサージを再開し、その後、人工心肺蘇生装置=自動心臓マッサージ器を装着して腎臓を摘出したことを発表した。以下の出典は、岩本 整(東京医科大学外科学第五講座)ほか:人工心肺蘇生装置を使用した後に腎摘出し献腎移植に至った症例、東京医科大学雑誌68巻2号p261−p272(2010年)より。
第1病日=61歳男性は飲食店で突然心肺停止となり、東京医科大学八王子医療センターに救急搬送。心拍は再開したが、自発呼吸は再開せず蘇生後脳症と診断。
第3病日=発症より第3病日に臨床的「脳死」と判定、その後、家族の臓器提供の申し出があった。
19時
:救急センター医師より臓器提供希望の第一報がコーディネーターに届く
19時30分:コーディネーターと救急医により情報交換があり、検視検案の依頼を警察に報告
19時35分:移植医に対し、摘出準備依頼、急変の可能性を考慮し手術室に連絡
19時40分:一般的脳死判定
21時50分:移植コーディネーターより家族にインフォームドコンセントの後、腎臓、角膜の承諾を得る
22時03分:承諾書を作成していた時、突然血圧が低下
22時05分:心停止
22時06分:死亡確認し、心臓マッサージを直ちに再開
22時10分:Auto Pulse(胸郭圧迫自動心臓マッサージ器)を装着、使用開始
22時18分:救急医および移植コーディネーターより家族へカニュレーション、ヘパリン等の同意を得る
22時35分:カニュレーション開始
22時52分:灌流開始、温阻血時間=心停止から灌流開始までの時間は47分
23時34分:検視検案が終了
23時35分:手術室入室
23時40分:Auto Pulse(胸郭圧迫自動心臓マッサージ器)を終了
23時42分:摘出手術を開始
レシピエントとなった膜性増殖性糸球体腎炎の31歳男性には、総阻血時間=(ドナー体内で腎臓の)灌流をしてから移植、血流再開までのトータルの時間が21時間47分、術後透析離脱までに透析10回が行なわれ25日間を要した。他施設に搬送された対側腎は53歳男性に移植され、総阻血時間は20時間47分、術後透析離脱までに透析15回が行われた。
当Web注:心停止に至っても、数分以内であれば、自然に心臓の拍動が再開し、その後、意識を回復したり後遺症無く生存可能な人のいることも報告されている(参照=心臓が停止した後に、いつまで蘇生が可能か)。心臓マッサージを継続するならば、ドナーの心臓は拍動を再開する可能性があり、死亡宣告を行なった心停止の実体もない。救命救急部の新井 隆男氏は、Auto
Pulseについて「血液循環、心臓が動いているときに近い形で保つことができます」と発言した(p266)。第3病日22時35分のカテーテル挿入(直前にヘパリン投与と見込まれる)は、血液循環が維持された生体に対する、臓器摘出目的の傷害となった可能性が高い。さらに、脳死判定検査は6時間以上の間隔をおいて2回行うこととなっているが、上記で一般的脳死判定検査は、19時40分時点で1回しか終了していないと見込まれる。
「心停止」ドナーへの心臓マッサージは、「死体」腎移植の草創期から行なわれている(参照=1966年10月10日32歳男性ドナー例)。自動心臓マッサージ器の使用も、園田 孝夫らが1970年に執筆した「腎移植臨床の実際(協同医書出版社)」で紹介している。
心臓移植は他人の命をいただくわけである
ドナー管理は81件中67件を私が行なった
大阪大学医学部附属病院 福嶌氏が講演
2009年11月8日、大阪府医師会館で第33回大阪府医師会医学会総会と第41回医療近代化シンポジウムが開催され、福嶌 教偉氏(大阪大学医学部附属病院移植医療部)が「臓器移植の現況と今後の展望 心臓移植」を講演した。大阪府医師会医学会雑誌「大阪医学」43巻1号p23〜p33に掲載された、福嶌氏の注目発言は以下のとおり。
心臓ドナーに関しては
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心臓移植は、他の人が死亡して、その心臓をいただくわけである。つまり、その、心臓を大事にしてくれるということが一番の条件になる。自己管理のできない患者や、患者によっては、「そんなん、自分の人生だからいいじゃないか」という患者がいると思うが、そのような患者に移植を受けてもらったら困るのである。他の人の命をいただくわけであるから、その心臓を大事にしてくれるということが一番大事である。(p25)
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海外渡航の問題点は、しばしば費用や随行者など、マスコミで問題視されるが、一番重要なところは異なる。つまり、他の国に行って、他の国の人の命をいただくということがもっとも重大な問題なのである。(p28)
ドナー管理に関しては
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日本には特殊な制度がある。メディカルコンサルタント制度といって、提供の病院に出かけていってドナーの方の評価をして、どの臓器を移植するのか、あるいはその臓器が傷んでいたらその治療をして臓器移植に結びつけるという者を派遣する制度がある。ほとんどの症例を私が行なっている。今までの81件につき67件、現場に行って、提供臓器を増やすことを実施してきた。(p31)
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アメリカで提供率が低いが、約5%が移植した移植心不全でレシピエントが早期に死亡している。23例目から必ず私が赴くようにしたが、1人の方から6個の臓器を提供するところまできている。腎臓が2つ、肝臓が1つ、肺が2つ、膵臓が1つ、心臓が1つという数え方で、マキシムが8になるが、日本はほぼマキシムまできている。アメリカの平均値は3である。つまり、いかに日本で提供数が多いかということがわかる。(p32)
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心臓の提供率でも、3割を超えている国はほとんどないが、日本は8割である。アメリカに比べて心臓が2倍半、膵臓が3倍、肺に至っては4倍が移植に至っている。これで成績が悪かったら問題であるが、どの臓器もアメリカの成績に遜色ない。(p32)
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メディカルコンサルタントは、東大の小野教授と2人で行なっている・・・。(p32)
当Web注
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西垣 和彦氏(日本循環器学会心臓移植委員会幹事)も、「ドナー家族とは,レシピエントに生きるための'セカンド・チャンスを贈り,自分の生の代わりに,生命の贈り物をされた方たちの家族である」と、心臓の摘出によってドナーが死亡することを前提とする表現を繰り返している。
a.脳死判定基準を満たしても心停止に至るとは限らない実態が、小児では当初からあり、成人でも1980年代後半から強まった。
b.「脳死」臓器ドナーは、「脳死」患者のなかでも全身状態が良好な患者から選択される。
c.心臓移植に用いる心臓は、ドナーの体内で良好に拍動しており、移植後もレシピエントの体内で良好に拍動し続ける心臓でなければならない。
これらの生物学的・医学的事実から、「心臓移植は他の人の命をいただくわけである」という認識は当たり前のことだが、臓器移植法は殺人臓器摘出は前提としていない。
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ドナー管理について、福嶋は日本移植学会雑誌「移植」46巻4・5号掲載の「わが国における脳死臓器提供におけるドナー評価・管理 メディカルコンサルタントについて」において、法的脳死による死亡宣告以前からドナー管理を開始し、移植用臓器獲得に成果をあげていることを報告するとともに、臓器提供施設の医師にメディカルコンサルタントの到着前からドナー評価・管理を行なう技術習得まで推奨した。
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