八千代病院 法的脳死判定手続きをせず10代男性に
生前からカテーテル挿入、死亡確認後2分で脱血
呼吸器設定の変更、カテーテル洗浄が死を早めた?
八千代病院は2007年5月22日、法的脳死判定手続きを行わずに小脳出血の10代男性に臓器摘出目的でカテーテルを挿入。5月24日1時14分に死亡確認してから2分後に死体内灌流を開始し、両腎、両眼、骨を摘出した。
この10代男性は2005年10月25日に小脳出血を発症しA病院で緊急手術を受け、2006年7月11日に呼吸器装着のままB病院に転院した。2006年9月11日には、意識レベルの変化がないまま八千代病院に転院した。2007年1月19日に呼吸器を離脱しリハビリを開始したが、5月4日朝に心肺停止となった。5月12日に脳死判定の説明と臓器提供オプションが提示され、両親が承諾した。
5月14日、血圧100台。
5月16日、血圧80台。
5月22日、血圧60台前後となり摘出医へ連絡、7時5分家族へ連絡、カニュレーション処置の確認、7時22分カニュレーション留置。
5月23日、7時15分血圧60台、摘出医来院、留置カニュレーション洗浄。20時10分、県コーディネーター主治医にて呼吸器設定の検討、21時10分家族同意のもと呼吸器設定を変更、23時時点で血圧60台、徐々に低下。
5月24日、1時14分死亡確認、1時16分死体内灌流開始、5時50分両腎、両眼、骨の摘出終了。
摘出された腎臓は、愛知県在住の49歳男性と65歳男性に移植、角膜は82歳女性と72歳男性に移植され、骨は冷凍保存中である。
出典=中村 秀子、内田 初子〈八千代病院看護部院内コーディネーター):臓器・骨・角膜提供症例報告、八千代病院紀要、28(1)、76−77、2008
当Web注:血圧が60〜50台になると腎臓の血流が低下し、その状態が継続すると腎臓の機能不全が決定的になるため、死戦期を短縮して早く死なせるために人工呼吸器の設定(酸素供給を止めたり、呼吸回数を減らすなど)変更が行われた可能性が高い。
5月23日に動脈・静脈に留置した腎臓冷却用カテーテルを洗浄している。抗血栓剤を投与し、脱血しながら、灌流液を少量流すなどの方法で洗浄したのであれば、この処置も患者の死を早めた行為になる。
心静止が数分間継続しても、自然に心臓の拍動が再開し、後遺症がないケースもある。心室細動が20分間継続しても社会復帰したケースがある。死亡確認から2分後の死体内灌流(静脈から脱血し、動脈から冷却液を注入する)開始は、脳死前提の行為である。
「臓器搬送容器の撮影禁止」や「ドナー家族の匿名化」は
移植ネットの既定方針 ドナー家族インタビューで判明
脳波に混入する筋電図活動 低感度頭皮上脳波で検討 帝京大
心停止下献腎と「一般の脳死判定」に関する脳外科医の認識調査
日本脳死・脳蘇生学会機関誌「脳死・脳蘇生」第19巻第2号が、5月23日発行された。以下は注目される3論文の要旨・記述(タイトルに続くp・・・は掲載貢)。
*高山 裕喜枝(福井大学医学部附属病院):脳死下臓器提供選択後のドナー家族の心理に関する研究 他者からの介入による心理、p123〜p130
本研究は、脳死下臓器提供選択後のドナー家族と他者との相互作用における家族の心理を分析し、他者からの介入による心理の内容を明らかにしたものである。子どもの脳死下臓器提供を行ったドナーの母親4名に、自発的な語りを中心とした面接を行った。母親の他者との相互作用における心理としては、以下の9つのカテゴリーが抽出された。カテゴリーは(1)【気持ちの一致と支持による安心】(2)【子どもを自慢したい】(3)【現実認識ができ冷静】(4)【話すことで楽】(5)【質的な永遠時間への願い】(6)【自分を納得させる】(7)【気遣って欲しい】(8)【底なしの悲しみ】(9)【うらはらな言動に疑問を含んだ怒り】である。母親の心理としては、他者からの介入により安定する心理と不安定になる心理が明らかになった。【気持ちの一致と支持による安心】などの安定の心理を引き出す介入には、「病院が一丸となり対応」「自分の家族のように接する」などがあった。【うらはらな言動に疑問を含めた怒り】などの不安定の心理を引き出す介入には、「死を待つ言い方で声をかける」「決まりきった言葉で説明」などがあった。臓器提供を行う家族の複雑な思いを医療者が支持・共感することは、慰めと安心感に繋がり、危機的状況の中で家族が、厳しい現実を認識する際にも効果的であった。医療者は、常に家族の立場に立ち本音で関わることが大切である。(以上は抄録の部分)
表2には「他者の介入による心理」として、安定する心理と不安定の心理の双方が掲載されている。以下は、ドナーの母親の心理を不安定にした関係者の言動。
心理 |
介入 |
他者 |
<自分を納得させる> |
担当者でないと言われる
時間がないと言われる
言動
「私は1人で困っているんですが。そう、その連絡もいただけなかったのね。ショックでしたよ。・・・(移植COは)『自分はAさんのCOだから、タイムリミット』って言って帰られたんですよ。(間4秒)むなしかったですね。」 |
移植CO |
手紙を出しても返事がない
言動
「けれども電話は来ない。私は、やっぱり関わりたくないのかな。と正直思った。」 |
移植CO |
<うらはらな言動に疑問を含んだ怒り> |
死を待つ言い方で声をかける
言動
「病院の○○やったンだけど、その人が入ってきた時に、ドナーカードとか持っていないですよね。と一言、言われたんです。うーん、で、その一言がすごく嫌やったんです。・・・待っているみたいにね、どうしてもね、なんかね、死を待っているみたいな、どうしてもその時は、受け取れるのね、意地でも提供するかっていう思いが湧きあがってきたんです。その時はね。」 |
医療者 |
突然知らない人が入ってくる
突然、話を切り出す
決まりきった言葉で説明する
言動
「私は、そこの先生がしてくださると思っていたんです。脳死を。そこからちょっと矛盾が出てきたのよ。(移植COが)突然とお話しだして、どういう風にしたらいいか、臓器を見せない方がいいですね、名前は出さない方がいいですねと。(淡々と早口で)こう何か、何か、もう、何か、決まった言葉、臓器を、臓器を移植する、臓器を移植したその入れ物は出さない方がいいですね、って、皆さんそうしてます。・・・こんなことまでしなきゃならないのかと。」 |
移植CO |
当Web注:1993年の大阪府立千里救命救急センター事件でも、「家族の強い希望で臓器提供」と報道されたが、臓器摘出医らのウソであることがドナー家族へのインタビューで判明している。
*園生
雅弘(帝京大学医学部神経内科):他の脳死判定基準を満たす患者の脳波上に見られる筋電図活動 その本態と扱いについて、p93〜99
脳死状態の脳波に混入するEMG活動は、単なるアーチファクトとみなすのが通例だが、その本態については十分検討されていない。我々は、臨床的脳死診断・法的脳死判定の過程で脳波上にEMG活動がみられた2症例を経験した。観察されたEMG活動は2種類に分けられた。第一のタイプは、10〜30Hzで単一ないし少数の運動単位電位(MUP)が半規則的に発火するもので、随意収縮MUPに類似しており、脳幹内脳神経核の細胞体レベルでの発火と推測された。これに対し、第二のタイプは、単一MUPの数発の連続発射からなるバーストが2Hz前後で繰り返すもので、ミオキミー放電もしくはテタニーの多重放電に類似しており、脳幹外末梢神経軸索由来の可能性が高いが、髄内根由来の可能性も完全には否定できない。
既存の米国ガイドラインや多くの教科書ではEMG混入を問題視していないが、脳神経領域の運動は脳死を否定する根拠とされることを考えると、このようなEMG活動の意味付けは単純ではない。日米の脳死の定義では"全脳の不可逆的な機能喪失"が要求されるが、この"機能"とは個々の細胞の"活動"ではなく、細胞活動が組織化され方向性を有している時に"機能"しているのだと規定されている。そうすると脳波上のEMG活動は、孤立した細胞活動に過ぎず、"機能"の定義にあてはまらないと解釈するのは妥当である。しかし、EMG活動の消失を待ってから脳死判定を開始するのも慎重な方針として考慮されよう(以上は抄録)。
当Web注:園生氏らは、感度の低い頭皮上脳波にみられる現象を検討した。感度の高い頭蓋内脳波または鼻腔脳波で測定すると、明らかな脳機能が測定されるケースのあることを無視した。
*山田 素行(静岡赤十字病院脳神経外科):心停止下献腎移植と「一般の脳死判定」に関する脳神経外科医の認識調査、p104〜109
心停止下献腎移植における「一般の脳死判定」には具体的な規定がないため、その解釈は混乱している。混乱の原因は法的整備不足や医学的エビデンス不足だけでなく、脳神経外科医の心停止下献腎移植に対する経験や認識の不足が関与していると考え、脳神経外科医にアンケートを施行した。
結果:脳神経外科医106人中57人(平均42.9歳)から回答を得た。経験調査では、心停止下献腎移植に関わった経験がある医師は40%で、「一般の脳死判定」を施行して心停止前処置を経験した医師は19%と、経験不足が判明した。また「一般の脳死判定」に関する院内合意事項がある病院にいる医師は40%だけで、準備体制も不充分であると判明した。現状に関する認識調査では、心停止下献腎移植は「家族の同意のみで施行できる」ことを知っていた医師は56%で、特に献腎未経験者では32%しかいなかった。「一般の脳死判定」の存在を知っていた医師はわずか19%に過ぎず、認識不足が判明した。今後のための意識調査では、「一般の脳死判定」に対しガイドライン策定を希望する医師は90%存在したが、その内容に関しては意見が分かれた。
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全体 |
経験者 |
未経験者 |
脳幹反射消失の項目を緩和する。(前庭反射など) |
20% |
28% |
17% |
脳波などの検査精度条件を緩和する。 |
34% |
24% |
39% |
判定医や判定観察時間などの制限を緩和する。 |
22% |
24% |
20% |
血圧や不整脈などの生命徴候の条件を緩和する。 |
14% |
4% |
19% |
その他 |
10% |
20% |
6% |
考察:この混乱を軽減するためには、各病院では心停止下献腎移植における「一般の脳死判定」の院内合意事項を策定すること、各脳神経外科医は心停止下献腎移植に対する知識を充実させることが重要であると考えられたので、検討を加え報告する(以上は抄録)。
山田氏らは「もし簡略化された新しい『一般の脳死判定』を規定するなら、無呼吸テストは行わないとして(複数回答可)」という設問もしている。結果は左記のとおり。
当Web注:「心臓が停止した死後の臓器提供」や「心停止下の臓器提供」と称する行為が始まった1960年代から、麻酔剤を投与して臓器摘出がなされたり、凍死させ心停止させての臓器獲得さらには血液循環下=非心停止状態におけるドナー管理も行われてきた。
「脳死」臓器摘出と異なる扱いをすべきでなく、組織摘出も含めて法的に規制されるべき行為である。「一般の脳死判定」「心停止下」などの
一般人の誤解を誘い、混乱させる用語が医師不信の先延ばしであることは
、古くから臓器摘出した脳外科医自身からも指摘されている。
法的「脳死」臓器移植レシピエントの死亡は累計31人
肝臓移植を受けた患者、生存期間・施設名とも秘匿
日本臓器移植ネットワークは5月1日更新の脳死
臓器移植Data Fileにおいて、肝臓移植を受けた患者がさらに1名死亡していることを表示した。法的脳死判定手続下の臓器移植でレシピエントの死亡が判明したのは31例目。
臓器別の法的「脳死」移植レシピエントの死亡年月日、レシピエントの年齢(主に移植時)←提供者(年月)、臓器(移植施設名)は以下のとおり。
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2005年 3月 7日 50代男性←bP2ドナー(20010121) 心臓(国立循環器病センター)
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2005年 3月21日 40代男性←bR2ドナー(20041120) 心臓(大阪大)
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2002年 2月 3日 43歳男性←bP1ドナー(20010108) 右肺(東北大)
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2002年 3月20日 46歳女性←bP6ドナー(20010726) 右肺(大阪大)
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2002年 6月10日 38歳女性←a@5ドナー(20000329) 右肺(東北大)
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2002年12月 5日 20代女性←bQ2ドナー(20021110) 両肺(岡山大)
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2004年 6月 7日 50代男性←bR0ドナー(20040520) 両肺(東北大)
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2005年 3月10日 50代男性←bR6ドナー(20050310) 両肺(京都大)
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2006年 5月初旬 40代男性←bP9ドナー(20040102) 右肺(岡山大)
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2006年 5月27日 40代女性←bS6ドナー(20060526) 両肺(岡山大)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肺(施設名不明)
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2006年10月24日 30代女性←bS3ドナー(20060321) 両肺(京都大)
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2000年11月20日 47歳女性←bP0ドナー(20001105) 肝臓(京都大)
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2001年 5月25日 10代女性←bP4ドナー(20010319) 肝臓(京都大)
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2001年12月11日 20代女性←bP8ドナー(20011103) 肝臓(北大)
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2002年 9月10日 20代男性←bQ1ドナー(20020830) 肝臓(京都大)
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2005年12月26日 50代女性←bS1ドナー(20051126) 肝臓(北海道大)
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死亡年月日不明 20代男性←bQ9ドナー(20040205) 肝臓(大阪大)
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死亡年月日不明 60代男性←bR6ドナー(20050310) 肝臓(京都大)
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死亡年月日不明 40代男性←bQ2ドナー(20021111) 肝臓(北大)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 肝臓(施設名不明)
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2004年 6月頃 50代女性←bP5ドナー(20010701) 腎臓(東京女子医科大学腎臓総合医療センター)
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死亡年月日不明 50代男性←a@5ドナー(20000329) 腎臓(千葉大)
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死亡年月日不明 30代男性←bP4ドナー(20010319) 腎臓(大阪医科大)
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死亡年月日不明 50代男性←bP6ドナー(20010726) 腎臓(奈良県立医科大)
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死亡年月日不明 50代男性←a@2ドナー(19990512) 腎臓(東京大学医科学研究所附属病院)
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死亡年月日不明 女性←bQ6ドナー(20031007) 腎臓(名古屋市立大)
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死亡年月日不明 50代男性←bR6ドナー(20050310) 腎臓(国立病院機構千葉東病院)
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死亡年月日不明 レシピエント不明←ドナー不明 腎臓(施設名不明)
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2001年9月11日 7歳女児←bP2ドナー(20010121) 小腸(京都大)
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