群馬大とテンプル大 人為的心停止後の心臓摘出
心停止前に大量アデノシン投与 人工呼吸器停止
第109回日本外科学会定期学術集会が2009年4月2日から4日まで福岡市内で開催され、群馬大学の茂原氏とテンプル大学のFisher氏らは、心停止後の心臓摘出において、人工呼吸を停止する前にVerapamilおよびAdenosineを投与する動物実験を行なったことを発表した。
ラットの呼吸停止導入15分前に、Verapamilを体重1kgあたり4mg、あるいはVerapamilを体重1kgあたり4mgとAdenosinelを体重1kgあたり1mg投与した。呼吸停止から心停止を誘導し、呼吸停止30分後に心臓を摘出した。
出典=茂原 淳(群馬大学臓器病態外科):心停止ドナー心保護の実験的検討 VerapamilおよびAdenosineの前投与で、虚血障害抑制は可能か、
日本外科学会雑誌、110(臨増2)、726、2009(この資料はhttp://ci.nii.ac.jp/vol_issue/nels/AN00188218/ISS0000436681_ja.htmlにPDFファイルhttp://ci.nii.ac.jp/els/110007165922.pdf?id=ART0009126025&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1273026476&cp=で公開されている)
当Web注
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臓器を摘出する目的で薬物を投与することは、傷害罪に相当する。法的に脳死と判定された後でなければ、合法性を装えない。
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verapamil
=ベラパルは血管拡張作用がある。頭蓋内出血で止血が完成していないと推定される患者や脳卒中急性期で頭蓋内圧が更新している患者には禁忌。
Adenosine=アデノシンは血管拡張作用がある。脳血管障害の副作用が頻度不明で報告されている。致死的不整脈を起こして心停止させる場合がある。山口大学医学部からは、100ccあたり5ミリモルのアデノシンを含むUW液によって、「腎移植術中に一過性の完全房室ブロックを起こした1症例」が麻酔51巻p663〜666に報告されている。アデノシンの致死量は、「ラットを用いた単回経口投与毒性試験では2g/kg以上と推定されている」という。
それぞれの薬剤の血管拡張作用に加えて、大量のアデノシン投与により心停止を惹起するのではないか?
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日本医学館が2003年に発行した「小児の心臓移植・肺移植」の「PART6 .ドナー不足解消のための実験的検討 2.Non-heart
beating donor
の心臓移植」(p103〜p106)において、岡山大学大学院医歯学総合研究科心臓血管外科の末廣 晃太郎、佐野 俊二の両氏は、「すべてのNHBDに付きまとう問題であるが、―度自然停止した心臓がつぎに拍動を開始した時に、どの程度の機能を持っているか、やはり予想しがたく再灌流後の心機能評価をすることが望ましい。問題はむしろ倫理的なもので、死亡宣告に先立って移植を前提とした前処置をはじめることが許されるのかどうかという点である。良好な心拍動が再開することがわかっていながら、心臓を摘出する目的で心停止を待つといった状況が、果たして許容されるのかどうかという点は十分議論されるべきであろう。NHBDすなわち移植適応基準ぎりぎりの
marginal donor
といった発想は間違っており、良好な心機能を維持しているものを選択して利用すれば脳死移植と同様の移植が可能である」と指摘している。