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2009年9月18日 第45回日本移植学会総会
東京医科大学八王子医療センター:心停止ドナーに人工蘇生装置を使用
藤田保健衛生大学:心停止ドナー129例、臨床的脳死から摘出まで4.1日
神鋼加古川病院:硬膜外麻酔を中止、生体ドナー「拳銃で撃たれたような痛み」
市立砺波総合病院:外来初診患者の3.3%が各種意思表示カードを所持
北里大学病院:三次救急外来受診患者の約3%が意思表示カードを所持率
   

20090918

第45回日本移植学会総会
東京医科大学八王子医療センター:心停止ドナーに人工蘇生装置を使用
藤田保健衛生大学:心停止ドナー129例、臨床的脳死から摘出まで4.1日
神鋼加古川病院:硬膜外麻酔を中止、生体ドナー「拳銃で撃たれたような痛み」
市立砺波総合病院:外来初診患者の3.3%が各種意思表示カードを所持
北里大学病院:三次救急外来受診患者の約3%が意思表示カードを所持率

 2009年9月16日から18日までの3日間、第45回日本移植学会総会が京王プラザホテル(東京都新宿区)で開催された。以下は「移植」44巻総会臨時号より、注目される発表の要旨(各タイトル末尾のp・・・は掲載ページ)。

 

*中村 有紀(東京医科大学八王子医療センター第5外科)、岩本 整、浜 耕一郎、木原 優、城島 嘉麿、今野 理、葦沢 龍人、長尾桓、松野 直徒(板橋中央王総合病院): ドナーの意志を尊重するために 人工蘇生装置の可能性、p194

 2008年の9例のドナーのうち、心停止後心臓マッサージの代替としてのオートパルス人工蘇生システムモデル100を使用した2例(腎移植患者4例)を経験した。人工蘇生群のドナーは平均年齢59歳、温阻血時間は40分、非人工蘇生群の温阻血時間は4.6分。

当Web注:人工蘇生群の腎臓は温阻血時間40分であることから、心停止による死亡宣告から40分近くにわたり人工蘇生処置が続けられ、そのまま死体として臓器摘出が敢行されたと見込まれる。61歳男性ドナーへの人工蘇生装置の使用は、2009年11月開催の第395回東京医科大学臨床懇話会で経過が報告された。

 

*杉谷 篤、岡部 安博(藤田保健衛生大学臓器移植再生医学)、日下 守、 佐々木 ひと美、石川 清仁、星長 清隆(藤田保健衛生大学腎泌尿器外科):心停止ドナー(NHBD)からの腎移植の特殊性 海外例と比較して、p296

 1983年から2008年まで、当院と近縁の提供病院において220例のNHBDから411腎を摘出した。このうち、死戦期の状況が確認できるドナー129例の内訳は男性75例、女性54歳、平均年齢47.7歳±15.8歳、死因が脳血管障害は88例、入院期間は9.4±9.9日、臨床的脳死から摘出までの期間は4.1±3.1日、心停止から灌流開始までの温阻血時間は13.5±13.4分。

 

*山田 恭子(神鋼加古川病院):成人間生体肝移植におけるドナーの経験 術後の痛みに着目して、p329

 研究参加者は、生体肝移植手術のドナーで術後6ヵ月経過している7名(女性2名、男性5名)。今回、調査した病院は硬膜外麻酔の使用を中止していた。そのため、ドナーが手術後体験した痛みは、「拳銃で撃たれたら、こんな風に痛いんじゃないかと思うような痛み」「痛み止めを、ひたすら飲み続けても痛い」と語るほど尋常ではない耐え難い痛みを経験していた。また「過呼吸になった」「何を見ても泣けてきた」という精神的不安が手術後露呈された。
 ドナーは元来健康であり、入院した経験が無い人がほとんどである。また、今回のような手術は初めて経験する身体的侵襲の大きな手術である。したがって、たとえ術前に術後の痛みや状態について説明を受けていても、そのことをイメージすることは難しい。健康が条件であるドナーは入院、手術、麻酔、術後の痛みなどを始めて体験し、それらの要因がドナーをさらにストレスフルにし、痛みを増強させたとも考えられ、今後ドナーに対しての疼痛コントロールの必要性が示唆された。

 

*鍋谷 涼子、有馬 陽子、坂次 順子、鈴木 洋子、木下 ひとみ、大田 妙子(市立砺波総合病院):外来初診患者における各種意思表示カードの所持率調査、p336

 2008年7月、1ヵ月間の外来初診患者から収集した院内共通問診表のうち、15歳未満の人数を除外した1479名分を調査。各種意思表示カード所持率は有が49名(3.3%)、無が1277名(86.3%)、未記入153名(10.4%)。カード内訳(複数回答可)は、臓器提供意思表示カード38名、アイ・バンクカード5名、献腎カード2名、尊厳死カード・終末期宣言書各1名、輸血拒否宣言書0名、未記入6名。

 

*高橋 恵、榑松 久美子、端山 和美、岩村 貴美、中島 節子、鈴木 美枝子(北里大学病院看護部)、吉田 一成(北里大学病院泌尿器科学)、北原 孝雄(北里大学病院救命救急医学)、p339

 2008年3月〜2009年3月まで三次救急外来受診患者を対象に、意思表示カード所持に関する調査票を配布、配布率64%、回収率62%、意思表示カードの所持率は約3%、状況に応じて臓器提供に関する専門職員からの介入希望は約10%で、このうちドナー適応となる症例は3%であった。2008年度の潜在的ドナー情報は、この3件を含め52件であり、前年比の1.5倍である。調査票配布により救急外来死亡症例の潜在的ドナー抽出は増し、臓器提供につながった。

 


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