岡山大学第一外科学教室 44歳女性と61歳男性
ドナーが生存中に臓器摘出目的でカテーテル挿入
岡山大学医学部第一外科学教室の阪上 賢一氏らは
1989年1月15日、頭蓋内動脈瘤の44歳女性(血液型O型+)の生存中に、右股動脈から臓器摘出目的でダブルバルーンカテーテルを挿入しておき、心停止から10分で乳酸リンゲル液(摂氏4度)で灌流を開始した。摘出した腎臓は35歳男性のT.T氏(A型+)と31歳男性のS.T氏(O型+)に移植した。
1988年10月14日には、頭部外傷の61歳男性(A型+)の生存中に、やはり右股動脈から臓器摘出目的でダブルバルーンカテーテルを挿入しておき、心停止から5分で乳酸リンゲル液で灌流を開始した。摘出した腎臓は33
歳男性のT.H氏(A型+)と39歳男性のH.T氏(A型+)に移植した。
同教室では1977年2月より1989年2月までに58例の死体腎移植を経験している。
出典=坂上 賢一(岡山大学医学部第一外科学教室):死体腎移植におけるUW solutionの使用経験 EC
solutionとの比較、今日の移植、2(2)、171−、174、1989
これより以前に、岡山大学医学部第一外科学教室からは死体腎移植について、下記の報告がなされている。
*阪上 賢一(岡山大学医学部第一外科)::死体腎の機能的生着に影響を及ぼす諸因子の検討、日本外科学会雑誌、83(2)、231−238、1982
*阪上 賢一(岡山大学医学部第一外科):単純冷却保存法による:死体腎移植の経験、外科、40(7)、657−663、1978
日本外科学会雑誌83巻2号では、1981年8月までの死体腎移植が26例であること、ドナーが全例救命不能な急性頭蓋内疾患であること、温阻血時間は平均17.4分±7.7分であることを記載している。このうち1979年10月6日、急性クモ膜下出血で死亡した54歳男性からの腎臓摘出は、温阻血時間17分で行った。そして「今後は温阻血時間を可及的に短くし、かつ充分な灌流量をうるためには、藤田らのダブルバルーンカテーテルの使用や、本多・薄場らの死体内灌流装置の使用が有効であろう」と書いている。
外科40巻7号では、ドナーは入院直後より全例意識消失を認め、脳波もフラットで自発呼吸停止後はレスピレーターを装着したこと、そして「ドナーの両腎摘出は千葉大学第二外科方式に準じて行った」として、ドナー・レシピエントの情報は下記を記載してある。
表1、表2、表3の主要部分 |
ドナー番号 |
年齢・性 |
死因 |
収縮期血圧
80mmHg
以下〜死亡
までの時間 |
温阻血時間 |
移植年月日 |
レシピエント
年齢・性 |
透析
期間
(月) |
移植後経過 |
1L |
53・男 |
脳出血 |
4時間20分 |
18分間 |
77. 2. 2 |
28・男 |
9 |
117日目死亡 |
2L |
17・男 |
頭部外傷 |
8時間50分 |
30分間 |
77. 4.26 |
25・男 |
48 |
10ヵ月生着中 |
2R |
18・女 |
12 |
10ヵ月生着中 |
3L |
54・女 |
脳出血 |
80時間30分 |
20分間 |
77. 9. 8 |
28・男 |
24 |
5ヵ月生着中 |
3R |
20・女 |
11 |
5ヵ月生着中 |
4L |
23・男 |
頭部外傷 |
2時間45分 |
25分間 |
77.11. 2 |
21・男 |
18 |
71日目移植腎摘出 |
4R |
24・男 |
30 |
3ヵ月生着中 |
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