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2005年8月30日 特発性拡張型心筋症患者の一部も移植回避可能
補助人工心臓で移植回避 最長10年生存
薬物の副作用がない利点も ドイツ心臓センター
2005年8月27日 今年度から臓器移植と組織移植ネットのコーディネーターが同行説明
東京歯科大市川総合病院は全死亡例の情報収集、組織獲得15例
第4回日本組織移植学会学術集会
2005年8月20日 「脳死」を経ない心臓死ドナー 摘出目的で待機したが生存
摘出断念 愛媛県立中央、四万十市民、西条済生会病院
2005年8月10日 腎臓移植患者の3分の1は生死不明、判明率低下
自殺率・ガン死率が上昇 腎移植臨床登録集計報告

20050830

特発性拡張型心筋症患者の一部も移植回避可能
補助人工心臓で移植回避 最長10年生存
薬物の副作用がない利点も ドイツ心臓センター

 ドイツ心臓センター(ベルリン)のMichael Dandel准教授らは、補助人工心臓により特発性拡張型心筋症患者の心機能が回復して心臓移植を回避、3人の患者は補助人工心臓を離脱して10年経過後も無症候で心臓に変化が見られないことをAmerican Heart Associationが発行するCirculation第112巻第9号、I−37〜I−45に“Long Term Results in Patients With Idiopathic Dilated Cardiomyopathy After Weaning From Left Ventricular Assist Devices” のタイトルで報告した。英文要旨はhttp://circ.ahajournals.org/cgi/content/abstract/112/9_suppl/I-37、日本語ではメディカルトリビューン10月27日付にも紹介されている。

 同教授らは1995年3月に初めて、左室補助人工心臓を装着して160日経過した39歳男性患者の心機能が回復したと判断して取り外した。それ以来2004年3月までに、さらに31人の患者から補助人工心臓を取り外した。

  1. 補助人工心臓離脱患者32人の5年生存率は78.3%、6人は離脱後3年以内に死亡したが、このうち4人の死因は心不全や心疾患とは無関係だった。
     
  2. 3年間生存した離脱患者の69.4%と5年間生存した離脱患者の58.2%には心不全の再発が認められなかった。
     
  3. 3年以上心機能の安定した患者の状態は、心臓移植から3年以上経過したレシピエントと変わらないが、薬物治療の副作用がきわめて少ない利点が認められた。
     
  4. 3年以上心機能が安定した患者15人のうち12人は仕事に復帰した。
     
  5. 離脱患者32人中14人は心不全が再発し、そのうち10人の再発は離脱後3年以内だった。14人中11人は心臓移植を受けた。
     
  6. 離脱後3年以内に心不全が再発した患者は高齢で、補助人工心臓植え込み前に心不全だった期間が長く、心不全が再発しなかった患者より補助人工心臓の装着期間が長かった。

当Web注:埼玉医科大学心臓血管外科においても補助人工心臓を離脱した特発性拡張型心筋症の13歳男性は5年以上長期生存している。

 


20050827

今年度から臓器移植と組織移植ネットのコーディネーターが同行説明
東京歯科大市川総合病院は全死亡例の情報収集、組織獲得15例
第4回日本組織移植学会学術集会

 第4回日本組織移植学会学術集会が8月27日、大阪市のスイスホテル南海大阪において開催された。以下はMedical Tribune 9月22日付より。

 シンポジウム「組織移植コーディネーションの活性化における諸問題」において日本臓器移植ネットワークの菊地 耕三理事は、今年3月末までの臓器提供意思表示カード・シール所持者の情報は927件あり、うち578件(62.4%)に脳死下臓器提供の意思表示があり、脳死下臓器提供にいたったのは36件(3.9%)。これに対して意思表示カード・シール所持者からの組織提供は927件中404人505件であること、今年度から臓器移植コーディネーターが家族に臓器提供の説明を行なう際に、組織提供の意思ありと確認されたら組織移植ネットワークに連絡、そこから組織移植コーディネーターが組織提供までコーディネーションするシステムが構築されていることを報告した。臓器移植ネットワークと組織移植ネットワークの連携図により、ドナー情報の連絡を受けた後は、臓器移植ネットワークと組織移植ネットワークのコーディネーターが同行して訪問することを示した。

 また東京歯科大学市川総合病院角膜センターの浅水 健志氏は、昨年10月から院内コーディネーターが全死亡例において臓器・組織提供の意思確認を行なうためのRoutine Referral System(RRS)を本格稼動させたこと、院内コーディネーターには死亡196例中118例(60.2%)の連絡があり、意識(原文のママ)確認を行なえた人が62例、うち15例(24.2%)が組織提供にいたったこと、15人とも臓器提供意思表示カード・シールは所持していなかったことを報告した。

 東京歯科大学市川総合病院の篠崎 尚史角膜センター長は、米国ワシントン州ではRRSシステムにより年間約19,000件の全死亡例の情報がトリアージセンター(TC)に提供され、全例で臓器・組織提供の意思が確認され、約8,000件が斡旋機関に紹介されて1,520件(19%)が臓器組織提供に至っていると「病院開発における最終目標」を述べた。

 

当Web注:組織移植と称して、心臓全体を死亡宣告15分後に摘出したり、人工呼吸器を停止して膵臓全体を摘出するなどが行なわれている。

 


20050820

「脳死」を経ない心臓死ドナー 摘出目的で待機したが生存
摘出断念 愛媛県立中央、四万十市民、西条済生会病院

 2005年8月20日、第23回中国四国臨床臓器移植研究会がホテルグランヴィア広島で開催された。以下は「移植」40巻6号p548より注目される発表の要旨。

 

*岡本賢二郎、笹森健介、藤方史郎、二宮郁、山師定、管政治、大岡啓二(愛媛県立中央病院泌尿器科)、山口邦久(四万十市民病院泌尿器科)、柳垣孝広、越智達正(西条済生会病院泌尿器科):提供にいたらなかった心臓死カテゴリー3の2症例

 愛媛県において心臓死カテゴリー3(入院中の患者が脳死を経ずして心臓死となった場合)で結果的に腎提供にいたらなかた2症例を経験した。その過程において生じた問題点につき報告する。

【症例1】63歳女性、うつ病あり自殺企図、低酸素脳症となりICUに入院。主治医より予後不良との説明がなされた後、家族より腎提供の申し出がありコーディネーション開始。院内で常時の待機態勢をとったが、結果的には2ヵ月後無尿状態となり移植は中止となった。現在は腎機能良好で生存中である。

【症例2】71歳女性、小脳出血のため他院入院。主治医より予後不良と診断され、腎提供についても説明後家族が了承しコーディネーション開始。摘出チームが編成され、常時病院にて待機したが心停止にいたらず2週間で病院待機を中止した。2ヵ月後正式に中止となった。

 

当Web注:心臓死ドナーの分類( Categories of non-heart-beating donors )=マーストリヒトカテゴリー

  1. Dead on arrival         =病院に運び込まれた時には、既に心臓死の状態であった場合
  2. Unsuccessful resuscitation    =救命救急室で救命措置を受けるも、蘇生できなかった場合
  3. Awaiting cardiac arrest       =入院中の患者が脳死を経ずして心臓死となった場合
  4. Cardiac arrest while brain dead =脳死となり、脳死判定後に心停止を待って摘出する場合

 

*安田 和弘(岡山県臓器バンク)、心停止下腎提供における脳死診断

 心停止下の腎提供においては、一般的脳死診断の有無が、カニュレーション、WIT(温阻血時間)などの、腎摘出時の状況に影響を与える。しかし、法的脳死判定などと違い、この脳死診断は公的な基準はなく、提供側医療機関の責任の下に行われており、提供医師への負担も大きい。

 今回、過去の症例を基に、どのような内容の一般的脳死診断が行われているかを分析した。臓器移植法の制定、関西医大の訴訟等の影響で、時期により若干の違いがあるものの、一般的脳死診断が行われた症例については、1)深昏睡、2)瞳孔散大・固定、3)脳幹反射の消失、4)脳波・ABR(聴性脳幹反応)等の客観的記録、5)判定記録の記載、をある程度の共通項目として見出すことができた。今後、公的機関からの、ある程度の基準が示されることで、提供側の負担が軽減されると推察する。

 

当Web注:関西医大事件判決は、臓器摘出目的の処置についてドナーの生前の同意が不可欠とした。関西医大事件の女性ドナーが脳死ではなかったことについて、原告・被告間に争いはない。この判決に反して、厚生省は心停止後の臓器提供においてはドナーが脳死状態と診断されていることを条件とした。
 「法的脳死、一般的脳死と、同じ脳死で医学的に異なる病態があるわけがない」という判断で、一般的脳死判定を否定する施設もある。
 愛媛県下の「脳死を経ない心臓死ドナー」からの臓器摘出においても、臓器摘出目的で「血液循環下の抗血栓剤投与」「臓器冷却目的のカニュレーション」「心停止後、臓器摘出までの心臓マッサージ」「人工呼吸器停止」など、脳死判定の不可欠な行為が予定されていたと見込まれる。

 


20050810

腎臓移植患者の3分の1は生死不明、判明率低下
自殺率・ガン死率が上昇 腎移植臨床登録集計報告

 日本移植学会と日本腎移植臨床研究会は、「移植」40巻4号p358〜368に2001年までの腎臓移植症例に関する「腎移植臨床登録集計報告(2005)−3 2003年追跡調査」を報告した。

 これまで腎移植を行なってきた611施設・総症例数11,463例を対象として調査票を送付し、2003年10月31日を期限としたが回収した症例数が少なかったため2005年2月まで期限を延長した。最終的に回収できたのは425施設から合計8,313例。未回収分と生死不明798例、生死の記入なし66例を合計して消息不明症例は4,014例。消息判明率はわずか65%だったが、献腎移植の1年生存率91%、15年生存率70.8%など算出している。

 「考察」では、レシピエントの死因に9例の自殺があったことから精神的なケアに、また悪性新生物による死亡が47例あり、免疫抑制を受けている移植レシピエントに過度な免疫抑制剤の投与を慎むように注意を喚起している。

下記は当Web作成 腎臓移植医療の消息判明率は低下傾向(ガン治療関係者からみると公表を控えよと勧告される低率)、一時は下がった自殺率が再び上昇している。

期間 1956年?〜1987年 1956年?〜1990年 1964年?〜2001年
出典「移植」の巻号

23巻3号

26巻5号 40巻5号
調査対象 122施設・5,328例 147施設・7,740例 611施設・11,463例
回答施設・回収症例数 ?施設・4,728例 ?施設・6,825例 425施設・8,313例
回収率 ?%・88.8% ?%・88.2% 69.6%・72.5%
消息不明症例数 600例 1,436例 4,014例
消息判明率 88.7% 81.5% 65.0%
死体腎移植
1年生存率/生着率
1976年以前 生存率は全例/生着率は86〜90 生存率は全例/生着率は92〜01
40.7%/31.7% 85.0%/82.5% 91.0%/85.7%
死体腎移植
15年生存率/生着率
1976年以前 生存率は全例/生着率は64〜75 生存率は全例/生着率は83〜91
20.6%/4.9% 62.0%/3.3% 70.8%/32.3%
レシピエントの
自殺症例数(率)
1980年以前 1981〜1987 11(1.6%) 9(2.5%)
8(5%)
レシピエントの
ガン死症例数(率)
1980年以前 1981〜1987 22(3.3%) 47(13.3%)
8(1.4%) 1(0.6%)

 


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