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杏林大学医学部附属病院、妊娠15週から深昏睡の女性が出産
国立病院機構呉医療センター:妊娠12週で「脳死」、14週に流産
第45回日本周産期・新生児学会総会学術集会
第45回日本周産期・新生児学会総会および学術集会が、2009年7月12日から14日までの3日間、名古屋国際会議場(名古屋市)で開催された。以下は
日本周産期・新生児医学会雑誌45巻2号より、注目される発表の要旨(タイトルに続くp・・・は掲載ページ)。
*上原 彩子(杏林大学医学部附属病院産婦人科):妊娠15週より深昏睡にある母体より健児を得た一例、p469、2009
22歳、0経妊0経産、妊娠15週、左側頭部痛を訴え自ら救急車を要請。救急車内で意識低下し、来院時JCS300、小脳出血を認め同日、緊急血種除去術を施行した。術後、脳波、聴性脳幹反応検査を行い深昏睡(重度植物状態)で、回復の可能性は少ないと診断された。夫の強い妊娠継続希望があり、倫理委員会にて母体の治療・生命維持を最優先とするも妊娠継続の方針となった。
栄養は、母体の基礎代謝のみ必要と考え1,500calとし、脂肪製剤は胎盤への塞栓の危険性から用いなかった。分娩方式は、自発的に怒責をかけることが不可能なため帝王切開とした。妊娠27週2日3,094gの児を出産。児は生後日異常なく退院したが、高サイトカイン血症の児への影響や深昏睡の母との母子関係の確立という問題が残る。
*熊谷 正俊(国立病院機構呉医療センター産婦人科):臨床的脳死状態に陥った脳腫瘍合併妊娠の1例、p678
32歳、1回経産婦、妊娠12週4日に妊娠悪阻、うつ病の疑いで当科へ紹介初診となった。入院日の夜、心肺停止、蘇生開始1時間後に自己心拍が再開、胎児心拍は蘇生中に一時徐脈になっていたが以後は通常どおり確認できた。蘇生後撮影したCTにて右小脳半球に嚢胞性腫瘤と高度の脳浮腫、閉塞性水頭症の併発を認め、脳幹、呼吸中枢への圧迫により呼吸停止したものと考えられた。また、右小脳腫瘍は画像所見から神経膠腫の可能性が高いと考えられた。蘇生後脳症を併発し、外科的治療の適応なしと判断されたため、臨床的脳死状態であることを家族に説明して理解を得た上で、家族の希望に従い、人工呼吸器による呼吸のサポート、循環サポート、尿崩症に対するホルモン治療など保存的治療を行なった。
入院17日目(妊娠14週6日)に胎児心拍が消失し自然流産した。その後、尿路感染症から敗血症状態となり、入院38日目に死亡された。本症例では臨床的脳死状態に陥った時期が妊娠12週であり、現在までの報告では脳死状態の継続した治療の期間は1〜107日間(平均57日間)であることから、発症時から胎児救命は困難と考えられた。
臓器移植法改定 日本移植学会の「祝賀会」に厚生労働省職員が参加
2009年7月13日、臓器の移植に関する法律が改定された当日、日本移植学会の「祝賀会」に厚生労働省のスタッフが参加していた。奈良県立医科大学付属病院透析部の吉田 克法氏が、2010年1月31日付発行の奈良県立医師会透析部会誌15巻1号の巻頭言(p3〜p4)で報告した。以下の枠内は、巻頭言の冒頭部分
〔巻頭言〕 臓器移植の復活
奈良県立医科大学付属病院透析部
吉 田 克 法
2009年7月31日の夕刻、ともに臓器移植法改正にむけて頑張ってきた移植学会の仲間からメールが入ってきました。「今日、臓器移植法改正A案が参議院で可決成立した。よって急遽祝賀会を開催するので参加してほしい」との内容でした。日常業務を済ませて、開催場所である東京神楽坂の小さなレストランに着いたのは、夜10時を過ぎていました。月曜日の深夜にもかかわらず、席が30ほどしかないこの小さなレストランに日本移植学会理事長をはじめとした幹部、移植関連患者団体幹部、日本臓器移植ネットワークの移植コーディネーター、この改正法案の成立に当初より関わってきた厚生労働省のスタッフ、また各地方で活動した移植関係者などが集まり、乾杯を繰り返していました。この間にも日本全国より急遽駆けつけた仲間たちが次々と到着し、法案可決までの遠かった道のりを時がたつのも忘れて語り明かし、気がつくと夜中の2時を過ぎていました。(後略) |
当Web注:
日本臓器生物保存医学会誌「Organ Biology」16巻3号(2009年)p371〜p375掲載の福嶌 教偉氏(大阪大学医学部附属病院移植医療部 副部長)による“声の広場 「臓器の移植に関する法律」の改正活動を通じて”は、7月13日に神楽坂ピアースポテトで打ち上げ会を開催したことを記載している。
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