大阪府立急性期・総合医療センターの心停止後腎臓移植
全例が「脳死」で摘出、3.4分で腎臓冷却、12歳ドナーも
大阪府立急性期・総合医療センターにおいて、1985年12月より2002年12月までに実施された心停止後腎臓移植58例は、温阻血時間(おんそけつじかん)
が平均3.4分(標準偏差:±6.5分)と、ほとんどが3徴候死の形式的な確認も行われない「脳死」臓器移植であり、さらに「脳死」小児からの臓器摘出も行なわれたことがわかった。
奥見 雅由(大阪府立急性期・総合医療センター泌尿器科):献腎移植長期生着に影響を及ぼす因子の検討、移植、39(2)、191−196、2004によると、ドナーの年齢は12歳〜64歳(平均39.9歳)、男性42名、女性16名。奥見氏らは「全例脳死判定を経て心臓が停止した死後に摘出された」としているが、温阻血時間の平均は3.4分。なかでも6ヶ月以上生着した6例は1.5分(標準偏差:±0.83分)ときわめて短い。
温阻血時間:Warm ischemic Time( WIT)は、心臓の拍動停止または臓器への血流遮断に始まり、その臓器の冷却灌流開始までの時間を示すため、3徴候死の不可逆性をどれだけの時間にわたり観察したかも示す情報だ。
人工呼吸器を止めてから心臓停止までに、10分間〜50分間かかる。その後の3徴候死の形式的確認でも5分間かかるが、臓器摘出も容認され得る状態は意識・人格が失われることが不可欠で、さらに長時間観察する必要がある。そして病室から手術室までの搬送に数分間、そして冷却灌流用のカテーテル挿入・灌流開始までさらに10〜20分間を要する(手術室における死亡宣告、その後のカテーテル挿入を家族が容認するケースでは、所要時間は短縮される)。
温阻血時間が1.5分という、きわめて早期から腎臓を冷却灌流する臓器摘出法は、福島医科大方式(腹部臓器に対する人工心肺装置をベッド下に隠し心臓拍動中から運転する)、または東京医科大方式(心臓拍動中に腎臓の冷却灌流を開始すると同時に下大靜脈から脱血する)などの方法によると考えられる。