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2013年7月31日 米国の小児集中治療医 心停止ドナー経験者160名のうち
8%の医師 臓器摘出時に痛み、苦痛を感じていると懸念
心臓死時刻の決定に自信あり63.3%、自信なし19.6%
2013年7月 5日 熊本大学:予測余命が3ヶ月〜6ヶ月以内の肝臓移植登録者
平均621日間待機、候補になるも2回辞退、精神安定剤内服
   

20130731

米国の小児集中治療医 心停止ドナー経験者160名のうち
8%の医師 臓器摘出時に痛み、苦痛を感じていると懸念
心臓死時刻の決定に自信あり63.3%、自信なし19.6%

 Critical Care Medicine 41巻7号はp1733〜p1744に、Wayne州立医科大学ミシガン小児病院のAjit A. Sarnaik氏らによる“Views of Pediatric Intensive Care Physicians on the Ethics of Organ Donation After Cardiac Death(心臓死後の臓器提供における小児集中治療医の見解)”を掲載した。

 Sarnaik氏らは、アメリカ小児科学会の救命救急医598名に電子メールを送り、264名(44.1%)が調査に回答した。回答者のうち193名(73.4%)は移植センターで勤務し、160名(60.6%)は心臓死後の臓器提供の少なくとも1例に参加していた。
 220名(83.4%)は心臓死後の臓器提供について、親が子どもの最大の利益にもとづいて決断できることに同意した。222名(84.1%)は、デッド・ドナー・ルールと一致する死亡宣告の前に、子どもからの臓器摘出は認められないことに同意した。しかしながら、155名(59.1%)だけが、心臓死後の臓器提供での死亡時刻を確実に決定できることに同意した。29名(11.0%)は、小児の心臓死ドナーからの臓器摘出術中に痛みまたは苦痛を感じるかもしれないことに同意した。

 Sarnaik氏らは、「心臓死後の臓器提供では、臓器提供の目的で死亡時刻を決定する能力、およびドナーの痛みおよび苦痛を増加させる可能性に対する懸念」が存在することを指摘している。

 この調査は、心臓死ドナーの経験の別による回答も掲載している。死亡時刻が決定できるとする医師は、心臓死ドナーの経験医師160名のうち100名(63.3%)、未経験医師は104名のうち55名(52.9%)。できないと回答した医師は心臓死ドナーの経験医師では31名(19.6%)、未経験医師では30名(28.8%)だった。心臓死ドナーからの臓器摘出術中に痛みまたは苦痛を感じるかもしれないと回答した医師は、心臓死ドナーの経験医師が13名(8.1%)、未経験医師が16名(15.4%)だった。

 以下は16設問のうち、6問への全医師の回答を抜粋した。

Item Strongly
Disagree
n(%)
Disagree
n(%)
Neutral
n(%)
Agree
n(%)
Strongly
Agree
n(%)
脳死の子供からの臓器摘出は容認できる 5(1.9) 0(0) 2(0.8) 46(17.4) 211(79.9)
死亡宣告前の子どもからの臓器摘出は容認できない 6(2.3) 19(7.2) 17(6.4) 57(21.6) 165(62.5)
子どもの臓器ドナーが死んでいるべきとすれば、ドナーが臓器摘出のために解放されるべき死亡時刻および時間は、確実に決定できる。 10(3.8) 51(19.5) 46(17.6) 112(42.7) 43(16.4)
臓器摘出術中に、一般的に麻酔は投与されていないが、子どもの心臓死ドナーは痛みや苦痛を感じるかもしれない 108(40.9) 90(34.1) 37(14.0) 23(8.7) 6(2.3)
子どもの心臓死ドナーにおいて、臓器保存目的の投薬や処置は容認できる(例えばヘパリン、脱血、そしてカテーテル挿入など) 10(3.8) 36(13.7) 48(18.3) 118(44.9) 51(19.5)
心臓死ドナーは、嚢胞性線維症の末期患者のような、神経学的に荒廃した患者ではなくとも、生命維持療法の停止が行なわれる患者/家族すべてに提案されるべきである。 19(7.2) 45(17.0) 49(18.6) 117(44.3) 34(12.9)
子どもが心臓死ドナーとして臓器摘出が許される、心電図上のサイレンスおよび無脈の経過時間は 0分
16(6.1)
2分
60(22.7)
5分
99(37.5)
10分
14(5.3)
15分
8(3.0)

 


20130705

熊本大学:予測余命が3ヶ月〜6ヶ月以内の肝臓移植登録者
平均621日間待機、候補になるも2回辞退、精神安定剤内服
 

 第31回日本肝移植研究会が2013年7 月4日、5日に熊本全日空ホテルニュースカイで開催され、熊本大学医学部附属病院移植医療センターの西島 真知子氏らは「脳死肝移植待機患者の問題点と移植コーディネーターのかかわり」を発表した。以下の枠内は「移植」49巻1号p140〜p141掲載の抄録。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jst/49/1/49_065/_pdf

 【目的】臓器移植法改正に伴い、脳死肝移植登録者は増加しているが、いまだに待機期間は長くその間の状態把握は必須である。精神的負担を抱えている方もおり、その問題点と移植コーディネーターのかかわりを考える。

(対象と方法)当院が脳死肝移植実施施設となった2010年7月〜2013年2月末までの登録者41名中、現在登録をしている14名を対象とした。外来受診時の面談を通して問題点を抽出し、その際のかかわりについて検討した。

(結果)当院の現在の脳死肝移植登録者数は6点8名、3点6名の計14名である。現時点での6点の平均待機期間は621(37〜1,550)日であり、3点は438(80〜1,039)日であった。6点の登録者のうち2名は待機期間1,000日を越えており、2回候補になりながらも「突然過ぎて、気持ちの準備ができない」と辞退されたり、「いつ移植ができるのか」と不安を表出し精神安定剤を内服している方もいた。また、「待っている間に移植をして生きたいという気持ちがなくなった」と本人は取り下げを希望され、家族は何とか登録を続けてほしいと願っている方もいた。3点登録者の中には、肝臓癌の進行による適応からの逸脱を心配する方もいた。

【考察】現状では6点、3点で待機している方での脳死移植実現は可能性が低く、今後も長い待機期間を強いられる。そのため待機中の精神的フォローは重要である。待機中の患者は長くなればなるほど、突然やってくる手術に対する不安や手術が実現しない不安、と各個人によって感じ方がさまざまにあることが示唆された。コーディネーターとして登録者の病状のみならず、気持ちの変化を把握していくことは安全で適切な脳死移植に繋がっていく。

 

当Web注:肝臓移植希望者(レシピエント)選択基準http://www.jotnw.or.jp/jotnw/law_manual/pdf/rec-liver.pdf は、医学的緊急性について以下の点数を定めている。、
予測余命が1ヶ月以内            =10点
予測余命が1ヶ月〜3ヶ月以内 = 8点
予測余命が3ヶ月〜6ヶ月以内 = 6点
予測余命が6ヶ月〜1年以内    =  3点
予測余命が1年を超えるもの    =  1点

 


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