「静脈経腸栄養」誌の“PEG最前線”特集 2012年に10.6%減
胃瘻バッシングに懸念・反論、診療報酬改定の利点と欠点
「終末期と判断された患者が胃瘻で食べられるようになった」
「静脈経腸栄養」29巻4号は“PEG最前線”を特集し、2014年8月20日付でhttps://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjspen/29/4/_contents/-char/ja/に公開された。「胃瘻バッシング」に対して、専門職からの懸念や反論、平成26年度診療報酬改定の利点と欠点などをまとめてある。以下は注目される部分(タイトルに続くp・・・は掲載ページ)。
*玉森 豊(大阪市立総合医療センター):PEGの造設・交換法の現状、p959〜p963 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/29/4/29_959/_pdf
PEG造設が2012年に前年比10.6%減となった統計を掲載している。
*西脇 伸二(岐阜県厚生連西美濃厚生病院内科):急性期病院でのPEGの現状、965〜p970 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/29/4/29_965/_pdf
p968〜p969の「平成26年診療報酬改定とその問題点」において、
“果たして、経口摂取の回復だけがPEGの目的なのだろうか?PEGの本質は症状の緩和にあるのではないだろうか?十分に経口摂取できない人の栄養補助として、長期の経鼻胃管による苦痛からの解放、必要な投薬や水分補給としてのルート、悪性消化管閉塞などに対する減圧など終末期の緩和医療など、PEGを行うことによって得られる患者のメリットは、どのように診療報酬に評価されるのだろうか?PEGを生かすも殺すも、造設手技ではなくその管理にかかってくる。良質なPEGの管理のための診療報酬を算定すべきではないかと考えている”
*小川 滋彦(小川医院):在宅診療からみたPEGの現状、p971〜p974 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/29/4/29_971/_pdf
p972の「在宅医療におけるPEGの意義」(p972)において、
“昨今の『胃瘻バッシング』は、医療的問題と倫理的問題を混同した医療者が、『胃瘻の是非』といった白黒決着を扇動したきらいがなきにしもあらずで、当事者である患者家族にとっては迷惑千万と言わざるを得ない。水岡らは、(中略)高齢者医療が『延命治療』か『自然な看取り』かの二項で括られることによって、本来目指すべき『高齢者と過ごす家族の穏やかな日常』という視点を見失っている状況や、治療方針の決定のみに終始してしまいがちな医療現場のインフォームドコンセントを問い直す必要性を述べている”
*宮澤 靖(近森病院臨床栄養部):栄養剤から見たPEG、p975〜p980 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/29/4/29_975/_pdf
p975の著者抄録そしてp979〜p980の「さいごに」において
“医療従事者のマンパワー不足や食材費最優先主義が横暴化してきて「人がいないから」という理由で加水バッグ製品の使用や1日1回ないし2回投与という非人道的な投与法を施行している施設がある。本来、経腸栄養法は「患者に対して生理的」な投与法であったが最近では「職員に整理的」なものになってしまっている”
*三原 千恵(安田女子大学家政学部管理栄養学科):摂食・嚥下訓練からみたPEG、p995〜p1001 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/29/4/29_995/_pdf
p995の著者抄録において
“最近、マスコミなどでPEGの是非が問われ症例が減少した。安易なPEGの防止に役立った一方、「PEGは非人道的」という嫌悪感を煽ったことも否めない”
p999〜p1000の「平成26年度診療報酬改定の利点と欠点」では、
利点として、
“これまで評価が不明確だった胃瘻抜去術に対して技術料が新設された”
“経口摂取の回復が見込まれる症例に対するPEGに加算が親切されたことは、「食べるためのPEG」を重視しており意義が大きい”
“安全な経口摂取を目指した努力が認められる形となる”
“胃瘻抜去のタイミングを客観的に考慮する機会が増えることが期待できる”
欠点として、
“嚥下機能評価を行うと加算されるが、嚥下造影検査あるいは嚥下内視鏡検査ができる検査に限定されるが、経口摂取の可能性を調べるだけならベッドサイドでも十分可能である”
“1年以内に経口摂取への回復が35%未満だと減産されるが、施設によっては経口移行がむずかしい重症の神経疾患患者の割合が多く入院している場合があり、少数の経口摂取可能症例に対して積極的に関わるスタッフの意欲が減退する可能性が懸念される”
“経口摂取が目標量に達した時点で容易にPEGを抜去してしまう件数が増えるのではないか。とくに転院や退院を計画している場合に、経口摂取が全量可能になると在院中に抜去して加算を得ようとするとことがあるかもしれない。体調変化にそなえて、しばらく胃瘻を残しておくことを推奨する”
*塩澤 純一(昭和会病院内科):内視鏡治療と緩和医療 PEGの有効性と可能性、医師そして患者としての立場から、p1009〜p1015 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/29/4/29_1009/_pdf
消化器内視鏡を専門とする医師、塩澤氏自身(44歳)がCorhon病のために5回の外科手術を経験し、人工肛門と胃瘻を造設(ともに2009年)している。
“約300床の慢性期病院にて勤務し、(中略)経口摂食不能(場合によっては終末期として)と判断された症例が、1例また1例と食べられるようになる事が経験できている”
“PEGがあったからこそ食事が可能になったと思う症例も存在する”
“PEGのエンドユーザーの立場で考えると、一定期間の栄養療法を継続することが望ましい場合には、あきらかにPEGが最も優れていると実感している”
12月 オークランドこども病院で脳死判定された少女ジャハイさん
1月に体温調節機能が回復 その後、母親の指示した手を動かす
2013年12月12日、米国カリフォルニア州オークランドのこども病院で脳死と診断された13歳の少女Jahi
McMathさんについて
、2014年8月16日付のRiverheadLOCAL.comはDenise
Civiletti氏の記事‘Never, ever give up hope’
http://www.riverheadlocal.com/2014/08/16/never-ever-give-up-hope/
で、母親によるとジャハイさんは母親が命じた側の手を動かす“Some days I ask her to move her left hand, or
her right hand and she does…I’m her mom and I know that my daughter is in
there,”と報道した。
ジャハイさんは2013年12月、子ども病院で睡眠時無呼吸症候群の治療として扁桃腺切除術を受け、術後に重症の合併症を発症した。子ども病院は脳死判定して人工呼吸器を取り外そうとしたが、家族が提訴
した。裁判所から診断を求められた医師は全員がジャハイさんを脳死と診断し死亡が宣告された。裁判所の調停により、家族と子ども病院が合意し、ニュージャージー州内の病院に転院した。
Jahi McMathさんの裁判の経過については、米国の各紙が報道している。NYTimes.com
では
Judge Orders Girl Be Kept on Ventilator
December 21, 2013
A Brain Is Dead, a Heart Beats On
Jan. 3, 2014
California: Girl Declared Dead Is Transferred
Jan. 7, 2014
At Issue in 2 Wrenching Cases: What to Do After the Brain Dies
Jan. 9, 2014
など。
えりさんのブログ「これからどうしようか」はJahi
McMath 事件 メモで
裁判所に提出されたリポートへのリンクも示し、ジャハイさんの母親は脳死判定から間もなくのインタビューで、人工呼吸器の自発呼吸を示すライトが点滅したのを見たと話していたこと。母親の声に反応して身体を動かすと語り、それは脊髄反射だと医療者
が言っていたことなどを指摘している。
ジャハイさんは、2013年12月中は体温調節ができなかったが、2014年1月になってから自律的な体温調節が可能になり、
Paul A. Byrne, 医師は2014年2月18日に視床下部の活動の可能性を“Jahi McMath's functioning
hypothalamus: some social and scientific considerations”としてhttp://www.renewamerica.com/columns/byrne/140118に発表した。
Keep Jahi Mcmath on life supportのフェイスブックはhttps://www.facebook.com/keepJahiMcmathonlifesupport/
当Web注:日本国内の症例は小児脳死判定後の脳死否定例に掲載しています。
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