法的脳死移植レシピエントの死亡8例目、11日間と最も短命
8月30日の21例目法的脳死判定・20例目臓器摘出で、京都大病院で肝臓移植手術を受けた20歳代の男性患者が、10日午前10時55分、敗血症のため死亡した。臓器移植法施行後に、法的手続きをした脳死移植で死亡は8例目。ドナーからの臓器摘出後11日後に死亡したのは、15日後に死亡した死亡1例目よりも早く、最も短命だった。
京大病院によると、「移植手術後、明らかな拒絶反応はなく肝機能も次第に回復していたが、8日になって肺炎を発症。10日未明から血圧が低下するなど容体が悪化し、死亡した」という。
今回の20例目臓器摘出ドナーからの肝臓移植第一候補者は東北大の20代歳男性患者であると発表されていたが、最終的に京大病院で移植手術が行われた。
法的「脳死」移植レシピエントの死亡年月日、レシピエントの年齢(主に移植時)←提供者(年月)、臓器(移植施設名)は以下のとおり。
- 2000年11月20日 47歳女性←bP0ドナー(20001105) 肝臓(京都大)
- 2001年 5月25日 10代女性←bP4ドナー(20010319) 肝臓(京都大)
- 2001年 9月11日 7歳女児←bP2ドナー(20010121) 小腸(京都大)
- 2001年12月11日 20代女性←bP8ドナー(20011103) 肝臓(北大)
- 2002年 2月 3日 43歳男性←bP1ドナー(20010108) 右肺(東北大)
- 2002年 3月20日 46歳女性←bP6ドナー(20010726) 右肺(大阪大)
- 2002年 6月10日 38歳女性←a@5ドナー(20000329) 右肺(東北大)
- 2002年 9月10日 20代男性←bQ1ドナー(20020830) 肝臓(京都大)
日経メディカルが「再考を迫られる脳死判定基準」、とラザロ徴候を紹介
野倉助教授は「脳死患者の延髄が機能していた可能性は否定できない」
日経メディカル2002年9月号の“今月のキーワード”は「ラザロ徴候」、大滝 隆行氏の署名記事でサブタイトルは「脳死状態になって両腕が挙上 再考を迫られる脳死判定基準」とした(A4判1ページ)。
始めに第6例目法的脳死判定の直後に「ラザロ徴候」が起きていたことを書き、次にラザロ徴候の命名者のA.ロッパーが「人工呼吸器を最終的に外す時は、家族に過度の恐怖とストレスを与えないためにも、家族が病室の脳死患者のそばに残ることを思いとどまらせるべきだ」と述べていること、これに対して大阪府立大の森岡 正博教授が「医師の配慮としては理解できるが、脳死患者がそのような動きをするという情報自体を、一般市民から隔離してはならないのではないか。正確な事実を広く共有した上で、脳死を人の死とするか否かを、私たち一人ひとりが考え議論を深めていく必要がある」と述べていることを紹介。
大滝氏は「そもそもラザロ徴候などの(脳死患者の)自動運動に脳幹が全く関与していないと言い切れるのか」と疑問を投げかけ、藤田保健衛生大・神経内科助教授の野倉 一也氏の見解を紹介している。
野倉助教授は「脊髄だけで説明できる現象だと立証した研究はない。脳死状態で四肢の運動が誘発された3人の患者の神経病理学的所見を検討したところ、自動運動を起こした筋を支配する脊髄前角細胞は良く保たれていた。延髄より上位レベルの中枢神経には高度の虚血が見られたが、延髄の一部が機能していた可能性は否定できない。脳死の研究にもっと力を入れる必要があり、脳死判定基準もその進歩に合わせて当然、見直すべきだ」と述べた。
野倉氏らは、日本神経学会誌「臨床神経学」第37巻第10号(1997年10月)でも、上記とは別の脳幹死に近い患者への電気刺激で、脊髄反射で測定される場合よりも長潜時=約70msecの誘発筋電図波形を導出したことから、延髄網様体などが関与した反射である可能性を報告している。
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