東大:心臓移植待機患者以外への補助人工心臓装着を議論すべき
阪大:植込み型補助人工心臓で高いQOL 「治療」というより「生活」
阪大:心移植後に機能低下 植込み型補助人工心臓で再移植待機
第49回日本人工臓器学会大会
第49回日本人工臓器学会大会が2011年11月25日から27日まで、東京都千代田区の都市センターホテルを会場に開催された。以下は、人工臓器40巻2号より注目される発表の要旨(タイトルに続くS・・・は掲載ページ)。
*小野 稔(東京大学心臓外科):わが国において植え込み型補助人工心臓を最大限に生かすには何が必要か?、S18
2011年4月に2種の植込み型VADが保険収載され、今後さらに新たな機種が承認される見込みである。体外式VADの治療体系で運用されてきたわが国の重症心不全治療は大きく方向を変えるべき時を迎えている。
2002年4月以来80例(女性25例、平均年齢39.1歳)に対してVADの治療を行なってきた。最近の植込み型16例の術前状態はすべてprofile2以下であった。全症例の予後は、1、3、5年で78.0%、67.2%、60.5%であった。profile1群は70.1%、61.0%、51.2%。profile2以上群は89.2%、76.0%、76.0%であった。
VAD装着タイミングはINTERMACS報告と同様にわが国でも早くなりつつある。術前状態の改善はVAD装着成績の向上、ひいては患者のQOL改善をもたらす。植え込み型は、体外式VADや薬物治療などによる長期入院による多くの問題を解決する。実施施設の適切な拡大は必須であり、そのためのトレーニングシステムや安全性評価基準の確立は重要である。心臓移植施設は植え込み型基幹病院として機能するが、遠方居住の患者の管理・安全の向上を目的とした病院間ネットワークの構築や遠隔安全モニタリングの導入は早期に不可欠となる。また移植適応年齢の制限は厳しく、社会で活躍する60〜70歳代の重症心不全患者の福音としてDT治療の導入を真剣に議論する必要がある。さらに、植込み型の適応とならない重症患者に対するBridge
to decisionとしての体外式VAD治療の役割を再認識する必要がある。
当Web注:DT治療=Destination
Therapy=補助人工心臓による在宅療法、現在の補助人工心臓を装着できる対象患者は、心臓移植待機患者にのみ限定されている。
*齋藤 俊輔(大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科):「治療」から「生活」へ 植込み型補助人工心臓を用いた在宅治療の現状と展望、S34
2005年10月から2011年7月までに当院では34例の定常流式植込み型補助人工心臓の装着を行なった。現在、術後急性期の5例を除く29例で退院指導を完了し、うち26例で在宅管理を行なった。初回退院までに要した期間は平均108±61(55〜264)日で、身体的回復よりも介護者の指導や在宅環境の整備に多くの時間を要した。平均補助期間573±363(84〜1607)日のうち61±25(11〜93)%を在宅で過ごすことが可能であった。退院後の平均再入院回数は1.7±2.0(0〜8)回で、再入院を要した主な原因はデバイス関連のトラブル、脳血管合併症、感染、心臓関連合併症、検査入院などであった。10例が心臓移植に到達、2例が感染および脳梗塞で死亡、ほかは全例がongoingである。退院に至らなかった3例中2例は、自宅が当院から遠隔地にあり十分な退院後の管理体制が構築できなかった症例であった。
1例で心移植の代替治療(Destination Therapy)としてLVAD在宅治療を行い、脳梗塞で死亡するまでの424日の間に趣味の買い物や音楽会に出かけたり、職業である文筆業を再開されたりと充実した生活を送られた。またLVAD在宅期間中に就職、結婚、配偶者の出産を経て心臓移植に至った症例も経験した。
定常流植込み型LVAD患者のQOLは非常に高く、在宅「治療」というよりは「生活」していると言っても過言ではない症例を多く経験した。遠隔地における安全な在宅管理体制の構築は大きな課題であり、今後は日本全国の患者が安全な在宅管理を受けられる体制の整備が望まれる。
*齋藤 哲也(大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科):心臓移植後慢性拒絶反応によるgraft dysfunctionに対し、再移植待機目的にDuralHeart
LVAD植込みを行なった1例、S159
36歳男性、拡張型心筋症による重症心不全に対し2005年(30歳時)に心移植を施行した。2007年から2009年にかけ心機能低下と慢性腎不全を認め外来通院加療を行なっていた。2011年4月に右冠動脈#2に75%の狭窄、5月に心不全の急性増悪を認め緊急入院、PCIを施行したが冠動脈血流の改善は認めず、PCPS、IABPを装着し腎機能を含めた全身状態の改善を認めたがPCPSの離脱により血行動態は再度悪化した。慢性拒絶反応による移植後心不全に対し、再移植の適応と判断し、Bridge
to transplantation目的にDuralHeart LVAD植込みを行なった。術後経過は良好で現在、再移植待機中である。
臓器移植法施行後10年以上が経過し、今後、本邦においても移植心の機能不全を呈する症例は増加することが見込まれる。しかしながら、初回移植時と同様、再移植にも長期間の待機を要することは明らかである。このような症例に対し、植込み型LVADはBridge
to transplantationとして有用であると考えられる。
法的「脳死」臓器移植患者の死亡は累計71名
日本臓器移植ネットワークは、11月16日に更新した移植に関するデータページhttp://www.jotnw.or.jp/datafile/offer_brain.htmlにおいて、法的
「脳死」判定手続にもとづき肝臓移植を受けた後に死亡した患者数が1名増加し、11月22日に更新した同ページで、さらに肝臓移植患者1名が死亡したことを表示した。法的「脳死」臓器移植患者の死亡は、心臓4名、肺25名、肝臓24名、膵腎同時6名、腎臓11名、小腸1名の累計71名に達した。
これまでの臓器別の法的「脳死」移植レシピエントの死亡情報は、臓器移植死ページに掲載。
脳死ではない69歳女性外傷患者に 死亡宣告直後から蘇生処置
禁忌のヘパリン投与、臓器摘出 大阪府三島救命救急センター
2011年11月20日付で発行された「脳神経外科ジャーナル」20巻11号http://ci.nii.ac.jp/vol_issue/nels/AN10380506/ISS0000474988_ja.htmlは、p828〜p831に大阪府三島救命救急センター脳神経外科の頼經 英倫那氏、杉江 亮氏、小畑 仁司氏による「心停止後に臓器移植を施行した1例」を掲載した。PDFファイル(724キロバイト)で公開されている。
ドナーは脳死に至らなかった69歳女性、この女性は59歳時に未破裂動脈瘤にコイル塞栓術を施行され、以後、ワルファリンカリウム、アスピリンを内服していた。一人暮らしで最終目撃は2日前、室内で倒れており左側に急性硬膜下血腫、脳幹にも挫傷があった。
第6病日に本人のドナーカード提示、エンディングノートに延命治療拒否の記載あり。第10病日23時59分に永眠、家族に死亡時刻を伝えた直後にヘパリン2万単位を投与し、胸骨圧迫を開始、0時10分より腎臓・角膜の摘出を開始した。検視は、事件性が極めて低いとの判断で臓器摘出後に行われた。
当Web注
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死亡宣告の不適切さ=心停止後の自然蘇生・社会復帰例は心停止の数分後、心臓の拍動のみの自然再開は12時間経過後も報告されており、心臓の機能の不可逆的停止を観察するには長時間を要する。長時間観察していると、臓器内部で血液が凝固して移植用に使えなくなる。血液を凝固させないための薬剤を投与し、その薬剤を効かせるためには血流が必要になる。従って、そもそも「心停止後の臓器提供」は、心臓死の死亡宣告を不適切に行なう場合に可能で、しかも血流存在下で開始するしかない、という虚構がある。
今回の「心停止」ドナーは、第10病日23時59分に心臓死の死亡を宣告した直後に心臓マッサージをするのであれば、第11病日には心臓の蘇生ないし内的意識は復活していた可能性があり、心臓死の死亡宣告は無効と見込まれる。
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生体解剖の恐れ=この女性は、急性硬膜下血腫・脳幹挫傷の出血性疾患患者だった。出血性疾患に原則禁忌の抗血液凝固剤(抗血栓剤)ヘパリンを投与することで、女性は再出血した恐れがある。脳死ではないのだから、心臓マッサージをされることで脳は蘇生し、延命となり、断末魔の苦しみを与えられ、生体解剖に等しい扱いを受けた可能性がある。
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ドナー候補者家族に対する不適切な説明=日本臓器移植ネットワークのドナー候補者家族に対する説明文書「ご家族の皆様方にご確認いただきたいこと」http://www.jotnw.or.jp/studying/pdf/setsumei.pdfは、ヘパリンの投与が血液凝固を阻止する目的であることは説明しているが、ドナーに不利益となることは一切記載していない。群馬大学医学部付属病院の脳外科医は、第28回群馬移植研究会学術講演会で、出血性疾患へのヘパリン投与と不適切なコーディネートから「移植には係りたくない」と発表した。
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不十分な記述、不適切なタイトル=脳幹にも挫傷のある外傷例だが、事件性が低い・検視を臓器摘出後とした根拠の記載がない。この症例報告のタイトルは「心停止後に臓器移植を施行・・・」としているが、ドナー側の報告であり、心停止した患者に臓器を移植することはないため、「心停止後に臓器を提供した1例」が正しいと見込まれる。
京大病院 透析機器の誤使用で肝移植患者が死亡
法的「脳死」臓器移植患者 死亡は累計70名
11月5日に法的脳死152例目ドナーからの肝臓移植は、分割肝移植として2例とも京都大学医学部附属病院で行なわれ、30歳代男性患者と50歳代男性患者に移植されたが、このうち50歳代男性患者は、手術後の血液透析中に誤った機材を使用された結果、13日午前10時50分に死亡した。
報道によると、患者は肝臓移植手術後の経過は良好だったため一般病棟に移った。もともと腎不全で透析を受けており、12日夜に当直医2人が透析用ろ過装置(フィルター)を交換した。そのフィルターが血液ろ過用ではなく、肝不全の患者などに使う目の粗い別のフィルター(血液中の老廃物を取り除く本来の装置ではなく、血液の成分を分離するための別の装置)だった。当直医の指示で看護師が装置を取りに行き、保管場所の隣にあった別の装置を誤って持ってきた。当直医も確認を怠って装着した。装置は形は似ているが、色や大きさは違う。50歳代男性患者約3時間後、12日深夜に血圧が低下、13日朝に意識不明となり、13日午前10時50分に死亡した。
これまでの臓器別の法的「脳死」移植レシピエントの死亡情報は、臓器移植死ページに掲載。
星田氏:法的脳死判定の場で当たり前のことが実際にできているか
浅居氏:臓器提供家族の申し出理由の一部に「報道で見聞きした」
第41回日本臨床神経生理学会学術大会
2011年11月10日から12日まで第41回日本臨床神経生理学会学術大会が静岡市のグランシップを会場に開催され、12日はシンポジウム「脳死判定をめぐって」が行なわれた。以下は臨床神経生理学39巻5号より、注目される発表の部分(タイトルに続くp・・・は掲載ページ)。
*星田 徹(国立病院機構奈良医療センター):法的脳死判定時の脳波検証、p360
今までに法的脳死判定の経験1例、法的脳死脳波判定時の助言4例、法的脳死判定の医学的検証作業班員として脳波検証11例の経験から、法的脳死判定の問題点について述べる。
法的脳死判定者や脳波記録者が、「法的脳死」であると納得することが求められているのではない。非医療者を含めた他者からみて、「法的脳死」判定基準を満たしていると認められることが、最も重要なことである。「誰が見ても『脳死』と思うでしょう?そうでしょう?」と、勘違いしているのではないかと、検証時の関係者の言動から感じることがある。脳波測定時間の記載不十分さは、現実に30分以上の記録時間を確保することの失念につながる恐れがある。
臨床医の立場から見ると、咋年7月に施行された改正臓器移植法、さらに法的脳死判定基準や脳死脳波記録にかかる手順の問題点は今後も引き続き、議論されなければならないと考えている。いざ実際の記録時には、くれぐれも、わが国における「法的脳死」の位置付けを十分に理解し、法的脳死判定にかかる脳波記録だという認識の下に、求められている基本的事項を最低限遵守して実施しなければならない。乳幼児・小児なら・もっと脳波判定に困ることになる。ふだんから乳児・小児の脳死に近い状態の脳波を記録・判読しなれていないと、判断・評価に困ることになる。
病院管理者の考え方は、脳波記録の管理を確実に行うことと、検証作業に臨む姿勢に、如実に示されていると実感する。法的脳死検証のために近畿、四国地方に参加するたぴに認識することである。基準電極記録と双極導出記録とを同時記録するのは問題ないが、紙べ一スで基準電極記録と双極導出記録をそれぞれ資料提供が
求められ、A4の大きさで提出という当たり前のことが守られていない現実を見ると、法的脳死判定の場で当たり前のことが実際にできているのであろうかという危惧が持ち上がり、時に驚きの念を禁じえないことがある。特に規模の大きな「立派な」病院で感じられることであった。「法的脳死判定マニュアル」や「臓器提供施設の手順書」、「脳死臓器移植に関する検証資料フォーマット」などが現場のスタッフまでいきわたっているのか、病院の方針が現場まで伝わっていないのではないか、誰かがしてくれるという安易な気持ちが「共有」されているのではないかと、検証時に感じている。検証をいつまで続けるのかとい
う意見もよく聞くことであるが、検証する立場からすると、法的脳死判定にかかる研修と脳波記録の実習は間断なく必要であると実感している。
*浅居 朋子(日本臓器移植ネットワーク中日本支部):脳死下臓器提供の現状
、p359
改正法施行後から2011年7月19日までに、55例の脳死臓器提供が行なわれ、そのうち、本人の書面による意思表示があった事例が6例、家族の承諾による提供事例が49例であった。また、家族からの申し出が過半数を占めており、家族の申し出理由としては「人の役に立ってほしい」「どこかで一部でも生きてほしい」「口頭で希望していた」が主であるが、「報道で見聞きした」というものもあった。
法的「脳死」臓器移植患者の死亡は累計69名
膵腎同時移植患者が1名死亡
日本臓器移植ネットワークは、11月7日に更新した移植に関するデータページhttp://www.jotnw.or.jp/datafile/offer_brain.htmlにおいて、法的脳死判定手続にもとづき臓器移植を受けた後に死亡した患者数が、累計6
9名に達したことを表示した。膵腎同時移植患者の死亡が1名増加し、膵腎同時移植患者の死亡は累計6名になった。
これまでの臓器別の法的「脳死」移植レシピエントの死亡情報は、臓器移植死ページに掲載。
立川総合病院 脳出血患者にヘパリン投与 心停止後臓器摘出
新潟大学総合病院 心停止直後から心臓マッサージ 臓器摘出
第24回新潟移植再生研究会で発表
第24回新潟移植再生研究会が2011年11月7日、新潟大学医学部有壬記念館で開催された。以下は、日本医学館発行の「今日の移植」25巻2号に掲載された、立川総合病院と新潟大学医歯学総合病院における臓器提供の経緯(タイトルに続くp・・・は掲載ページ)。
*青柳 竜治(立川メディカルセンター中越診療所腎臓内科)
、三浦 隆義(立川総合病院腎臓内科)、村山 慎一郎、武田 啓介、上原 徹(同泌尿器科)、加茂谷 邦麿(同臨床検査科):立川総合病院における臓器提供の現況、p155〜p160
立川総合病院では、心停止後の腎臓・眼球の提供が2004年から2011年までに、ドナー11人(男性9人・女性2人、29歳〜80歳)から16腎・8眼あった。臓器・組織提供のきっかけは、病院側のオプション提示7例、家族からの申し出4例。腎臓の8ドナーのうち、6ドナーにダブルバルーンカテーテル使用。入院から臓器提供のオプション提示・申し出までは平均1.3日(1日〜137日)、オプション提示・申し出から摘出日まで平均3日(0日〜36日)。青柳氏はドナーについて、「一番多いのは脳血管障害です。脳出血、脳梗塞、事故による脳挫傷など、ほとんどが重篤な頭の障害で、当院に来たときにはほとんど臨床的脳死に近い人が多かったです」と発言している。
2011年の54歳男性ドナー
入院当日 4時35分に脳出血発症、同院に搬送中に意識レベル低下、呼吸停止、挿管、昇圧剤開始、JCS300、対光反射なし。脳外科に入院し「広範囲の出血で救命は難しい」と説明
1病日 午前 脳外科担当医より臓器提供のオプション提示がなされた
2病日 10時 院内コーディネーター面談、引き続き県コーディネーター面談、同意書にサイン
3病日 16時 摘出チーム到着、腎エコー
17時 ミーティング Dr(脳外、移植医、腎臓内科、麻酔科)、Ns(手術室、脳外科)、県コーディネーター
4病日 9時 摘出チーム到着
10時 カニュレーション
12時 昇圧剤オフ
13時40分 血圧40mmHg台、ヘパリン30ml注入
14時26分 死亡確認、家人いったん退室、灌流開始、家人再入室
16時30分 お見送り
*柳川 貴央(新潟大学医歯学総合病院高次救命災害治療センター):新潟大学医歯学総合病院で発生した臓器提供の経験、p161〜168
63歳女性ドナー
2011年8月13日
21時30分 トイレで倒れているのを発見
21時50分 救急要請
救急隊が現場到着、心静止
22時43分 新潟大学医歯学総合病院到着
22時56分 自己心拍再開、ドパミン投与で収縮期血圧60mmHg、JCS300、GCS3、瞳孔は6/6mmの対光反射なし、心肺停止後2時間が経過しているという現状を考えると回復が困難であることをご家族に説明
8月14日
0時20分 ICUに入室
2時50分 再度ご家族とお話をしているところで、「患者の息子は慢性腎不全で6年前から血液透析を導入されている。まだレシピエントの登録はしていないが、患者の蘇生の見込みがないならば、息子に腎臓を提供してほしい」という申し出があり。泌尿器科へコンサルト、新潟県臓器移植コーディネーターへ連絡し検討することになった。
4時30分 中心静脈カテーテル留置、ノルアドレナリンおよびドブタミンを追加して収縮期血圧50〜60mmHg、意識レベル変化なし
7時 臓器移植コーディネーターより、臓器提供における問題点として死因の特定が必要との返答あり、全身CTを施行
9時 ご家族にクモ膜下出血による心肺停止との臨床診断、息子さんへの移植はレシピエント登録がないため不可能であることを再度説明。ご家族から「人の役に立つのであれば」と臓器提供の申し出があった。
12時17分 モニター上で再び心静止となり死亡を確認、速やかにヘパリン5万単位を静注および心臓マッサージを開始、検視を併行
12時30分 手術室へ出棟
腎臓および眼球を摘出(最初の心肺停止から15時間経過)
レシピエント選定が間に合わず、移植までに1日要した。移植された腎臓は機能し、レシピエントの1人は透析を離脱したが拒絶反応で無尿状態になった。もう1人のレシピエント(透析歴36年)も循環動態が悪く尿量は200cc前後。
当Web注:立川総合病院の54歳男性ドナーは脳出血、新潟大学医歯学総合病院の63歳女性ドナーはクモ膜下出血で、ともに出血性疾患だ。出血性疾患患者に抗血液凝固剤ヘパリンの投与は原則禁忌であり、
「広範囲の出血で救命は難しい」と診断された54歳男性ドナーの心停止にヘパリン投与が影響したのではないか、との疑いを生じる。
そもそも、移植目的=レシピエントの利益を図る投薬は、法的脳死の宣告後にしか許容されない行為ではないか?
日本臓器移植ネットワークのドナー候補者家族に対する説明文書「ご家族の皆様方にご確認いただきたいこと」http://www.jotnw.or.jp/studying/pdf/setsumei.pdf は以下
枠内のとおり、ヘパリンの投与が血液凝固を阻止する目的であることは説明しているが、ドナーに不利益となることは一切記載して
いない。ドナー候補者家族の承諾は無効と見込まれる。群馬大学の脳外科医は、不適切な説明から移植に関わりたくないと表明した。
新潟大学医歯学総合病院の63歳女性ドナーには、心静止直後からヘパリン投与とともに心臓マッサージも開始された。心臓マッサージは蘇生効果がある。心臓が再び拍動を開始し、死亡宣告を行なった根拠を覆す可能性がある。臓器摘出時に痛み、恐怖、絶望など感じるうる断末魔の状態に戻して、ドナーを生体解剖する恐れが生じる。
6.心臓が停止した死後の腎臓提供について
(1)術前処置(カテーテルの挿入とヘパリンの注入)について
@ カテーテルの挿入
心臓が停止した死後、腎臓に血液が流れない状態が続くと腎臓の機能は急激に悪化し、ご提供いただいても、移植ができなくなる場合があります。
そこで、脳死状態と診断された後、心臓が停止する前に大腿動脈および静脈(足のつけねの動脈と静脈)にカテーテルを留置しておき、心臓が停止した死後すぐに、このカテーテルから薬液を注入し、腎臓を内部から冷やすことにより、その機能を保護することが可能となります。
ご家族の承諾がいただければ、この処置をさせていただきます。なお、この処置は、心臓が停止する時期が近いと思われる時点で、主治医、摘出を行う医師、コーディネーター間で判断し、ご家族にお伝えした後に行います。処置に要する時間は通常1時間半程度です。
Aヘパリンの注入
心臓が停止し、血液の流れが止まってしまうと腎臓の中で血液が固まってしまい、移植ができなくなる場合があります。そのため、脳死状態と診断された後、心臓が停止する直前にヘパリンという薬剤を注入して血液が回まることを防ぎます。 |
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