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小児脳死判定後の脳死否定例(5歳児)

脳死否定例の定義は小児脳死判定後の脳死否定例(概要および自然治癒例)を参照


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臨床的脳死例

北九州市立八幡病院:82日間生存

松石 豊次郎:小児の脳死、小児科、42(5)、880−887、2001

 北九州市立八幡病院において喘息重積状態により脳死判定された5.7歳児は死亡まで82日。

 

 上記と同症例とみられる、市川 光太郎:脳死と思われた小児10例の検討、小児科診療、62(3)、428−432、1999によると男児。自発呼吸・対光反射・角膜反射・人形の眼現象がなく、脳波測定・聴性脳幹反応での無反応所見(48時間以上の間隔で3度施行)による脳死症例。脊髄反射と思われる体動が周期的にみられた。

 家族の現状に対する受容態度は「普通」。「可能性を求めて積極的に加療してほしい」との意思表示がみられた。(当サイト注:最終的には?)「私が1人で生きていく自信がつくまで頑張ってくれたのだと思います(母子家庭)」。

 

 

 

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脳死判定例

大阪府立病院:竹内基準満たしても視床下部ホルモン分泌、脳血流17日後も確認

池内 尚司:脳死判定に困難を極めた1小児例、日本救急医学会雑誌、4、655、1993

 交通事故で5歳11ヶ月男児は第8病日に 血圧が低下し、瞳孔は散大固定、対光反射と体動が消失、脳波とABRは平坦、アトロピンテストと無呼吸テストにも無反応で竹内基準を満たした。ADHは第13病日まで分泌されていた。脳血流は、第14病日にTCDでto-and-fro が観察されたが、第25病日でも造影CTで脳実質への血流の存在が確認された。小児における脳実質への完全な血流途絶の証明は、検査方法により精度が異なるため、判定日時に誤りが生じると思われた。

 

 

 

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脳死判定例

総合病院社会保険徳山中央病院:一般病棟転棟後、30日間生存

宮内 善豊:家族との対応に問題のあった小児脳死例、日本救急医学会雑誌、4、440、1993

 急性脳症で入院中の5歳男児、意識消失と呼吸・心停止をきたした。約10分後に心拍は再開した。ICUで治療したが、神経学的検査等から脳死と判断した。家族は脳死の理解と認識に乏しく、また心停止=個体死とする立場から積極的治療を希望した。一般病棟への転棟は死期を早めると拒否された。その後、49日目に転棟し、78日目に死亡した。

 

 

 

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脳死判定例

新潟大学:脊髄は生き生きとして15日間生存

「脳死」の神経病理学、神経研究の進歩、.36(2)、322−344、1992

 「脳死」の15日後に心停止を来たし剖検した5歳男児の第4腰髄前角部。神経細胞も生き生きとして、赤血球もすべて充実し濃染している。

 

 

 

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脳死判定例

広島大学医学部附属病院:12日間生存

有田 有徳:6歳未満の小児の脳死判定、救急医学、16、1484−1488、1992

 頭部外傷の5歳男児は、厚生省竹内基準判定基準で脳死と判定し心停止までの期間は12日間。

 

 

 

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脳死判定例

金沢医科大学医学部:75日間生存

柿沼 宏明:脳死の小児の2例、脳と発達、31(4)、383、1999

 溺水で心肺停止状態で搬送され、蘇生には成功したが、平坦脳波から脳死と考えられた。入院4日と5日に小児脳死判定の暫定基準に基づいて脳死判定を行なった。家族の希望により支持療法を継続したが、入院79日に死亡した。

当サイト注:年齢の記載が無いため、後日の調査に便利なように同施設の報告(下記)と隣接して掲載した。

 

 

 

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脳死判定例

金沢医科大学医学部:脊髄反射に加え四肢の屈曲・伸展、ミオクローヌス様運動、249日間生存

石瀬 淳:脳死患者の頸髄剖検所見−脊髄反射・自動運動の起源−、ICCとCCU、14(臨増春)、112、1990

 全身麻酔後に低酸素脳症に陥った5歳10月女児。厚生省脳死判定基準(成人)を満たし、発症後254日目に心臓死となった。脳死判定後に脊髄反射に加えて四肢の屈曲・伸展、あるいはミオクローヌス様運動が見られた。

 剖検では大脳は完全に壊死に陥っており、脳幹の神経構造は完全に消失しており、かつ頸部の神経細胞及び神経線維が残存し、神経根が保たれていることから、脊髄反射はもとより上肢および頸部の自動運動も脊髄由来であると考えられた。

小川 純:脳死状態で長期間生存した1小児例、救急医学、13(9)、S609−S610、1989、
石瀬 淳:脳死患者の頸髄剖検所見−脊髄反射・自動運動の起源−、ICUとCCU 、14(臨増秋)、68、1990、
石瀬 淳:脳死をめぐる諸問題、臨床麻酔、16(6)、669−674、1992、
石瀬 淳:脳死患者の頸髄剖検所見−脊髄反射の起源−、第49回日本脳神経学会総会第3日抄録集、62、1990、も同症例の報告とみられる。

 「救急医学」によると、輸液とバソプレシンの投与のみ行なっていたが、結局、呼吸不全、肝不全、腎不全が進行した。「臨床麻酔」によると脊髄反射の内容は、深部腱反射+皮膚表在反射+Marie-Foix reflex(マリー・フォア徴候:足根への横圧もしくは足指に強制屈曲に際しての下腿の引っ込み。脚が随意運動不能のときでも起こる)、除脳硬直様運動、上下肢の早い屈曲伸展。「第49回日本脳神経学会総会第3日抄録集」によると、脳死から心臓死までの期間は249日。

 

 

 

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臨床的脳死例

徳島大学・国立療養所香川小児病院:頭部皮膚温低下より24日間 生存、
前額部と前胸部の体温差が変動(ABRは無反応だが脳血流は復活した?)

 橋本 俊顕:発育期脳障害による人工呼吸管理を要する児の中枢神経機能及び発生要因  脳死状態における皮膚温のモニタリングについて、 厚生省精神・神経疾患研究平成元年度研究報告書  発育期脳障害の発生予防と成因に関する研究、141−145、1990

 高アンモニア血症の5歳男児は、脳死状態に至り前額部と前胸部皮膚温を同時測定を開始。2日後に最大温度差3.8℃となった。ABRは無反応、温度差に変動を認めた。頭部皮膚温低下より心臓死に至る期間は24日間。

 

 

 

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臨床的脳死例

徳島大学・国立療養所香川小児病院:頭部皮膚温低下より18日間 生存、
前額部と前胸部の体温差が変動(ABRは無反応だが脳血流は復活した?)

 橋本 俊顕:発育期脳障害による人工呼吸管理を要する児の中枢神経機能及び発生要因  脳死状態における皮膚温のモニタリングについて、 厚生省精神・神経疾患研究平成元年度研究報告書  発育期脳障害の発生予防と成因に関する研究、141−145、1990

 ライ症候群の5歳女児は、脳死状態に至り前額部と前胸部皮膚温を同時測定を開始。11日後に最大温度差6.4℃となった。ABRは無反応、温度差に変動を認めた。尿崩症を合併した。頭部皮膚温低下より心臓死に至る期間は18日間。

 福田 邦明:小児脳死症例の臨床的検討および頭部皮膚温のモニタリングについて、日本救急医学会雑誌、1(2)、128、1990は、上記と同症例とみられる患者について、ABRのV、X波消失直後の頭部皮膚温の低下を報告している。

 

 

 

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臨床的脳死例

徳島大学・国立療養所香川小児病院:聴性脳幹反応の全波形消失より45日間生存

 橋本俊顕:発育期脳障害による人工呼吸管理を要する児の中枢神経機能及び発生要因  平坦脳波を呈し人工呼吸管理を要した5例、厚生省精神・神経疾患研究62年度研究報告書 発育期脳障害の発生予防と成因に関する研究、57−61、1988

 溺水の5歳3ヶ月男児は、第1病日に自発呼吸停止、他の脳幹症状は第3病日に出現した。第14病日に平坦脳波、聴性脳幹反応は第1病日にV〜X波の潜時延長、第4病日にU〜Xの潜時延長、第6病日に全波形消失した。

 尿崩症が第4病日に発症、尿崩症の治療はDDAVPの点鼻と輸液により脳死状態の患者においても可能であった。第50病日に心停止となった。

 

 

 

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脳死判定例

群馬大学医学部集中治療部:9日間生存

藤田 達士:脳死患者管理の医療費、蘇生、8、19−23、1990

 溺水でICU入室の5歳男児は、脳死判定後死亡まで9日間。

 脳死判定はPittsburg Codeに加えて、聴性脳幹反応のV、X波の消去、CT像で脳室や大脳皺壁の消失、123I-N-isopropyl-iodo-amphetamine による放射性アイソトープ脳シンチグラムを行なっている。中枢神経抑制剤の影響を排除する目的で、ICU入室後5日間のWashing Out 期間をおいた(判定前のWashing Out 期間を6日間)。第1回の脳死判定後、24時間後に第2回の脳死判定を行なったが、第2回終了までは脳死でない患者と同様の治療を行なった。

 この論文は「健康保険による医療費は全症例で3024万円余である。脳死判定前期が平均255±55万円、後期が187±12万円であったが両期の医療費に統計上有意差はなかった。なお、脳死判定費用は7万円弱であった」としている。脳死判定前期、後期の定義は記載が無いが、3024万円を9症例で割ると平均336万円になる。

 APPCHE-Uスコアによる重症度と予測死亡率は、ICU入室時、28.4±1.4点、60%の死亡率を示したが、第1回脳死判定時では23.2±1.9点、45%と最も低い値を示した(P<0.005)。「9症例中1症例のみが、脳死判定日に12点、予測死亡率13%を示し臓器移植の良い提供者になり得たと考えられる」としている。

 

 

 

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臨床的脳死例

東京都立府中病院:12日間生存

 水口 雅:オリジナルな業績の原点をたずねて 新しい疾病概念・治療法の発見の経緯とその後の展開 急性壊死性脳症、小児科臨床、58(2)、247−253、2005

 1981年4月27日、5歳女児は微熱と頭痛。28日、昏睡状態。29日、除皮質硬直肢位。高度の肝機能障害、急性脳症(臨床的Reye症候群)と診断、人工呼吸開始。血圧低下と乏尿のエピソードが繰り返された。5月1日、頭部CTでは、びまん性脳浮腫は軽減したが、両側対称性の低吸収域が視床のほか、大脳・小脳の髄質にも出現。5月2日以降は弛緩性麻痺・散瞳・聴性脳幹反応の消失をきたし、事実上の脳死状態に陥り5月13日に死亡。

 


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