*東 健一郎:遷延性植物状態を脱却した症例の検討 とくにL-DOPAの効果について、脳と神経、30(1)、27−35、1978
われわれは1973年から、中国、四国、九州16県における植物状態患者130名について臨床調査を行い、その後3年間にわたる追跡調査を行なった。3年間に81名(62.3%)が死亡、一方で意思疎通が可能となって植物状態を脱却したと考えられる患者が6名あった。この6例のうちに、L−DOPAの投与が有効であったと思われるものが2例あった。
L−DOPAの投与が有効と思われた脳アノキシアの23歳男性は、投与開始時期6.5ヵ月、投与期間118日、投与量118g、脱却までの期間が10ヵ月。脱却後は言語了解はほぼ完全、会話可能であり自発的発語も多いが、構音障害のため発語が聞き取りにくい。自力でベッドから下り、車椅子で移動する。
L−DOPAの投与が有効と思われたクモ膜下出血の38歳女性は、脱却までの期間が2年。脱却後は言語了解は良好、話しかけると応答はするが自発的発語はない。自力で移動不能。
クモ膜下出血の60歳女性は脱却まで3年、脱却後は言語了解は完全、会話はスムース、自力で歩行可能。
頭部外傷の42歳女性は脱却まで1年5ヶ月、脱却後は言語了解はほぼ完全、会話可能であるが自発的発語は少ない。自力で移動可能。
頭部外傷の26歳男性は脱却まで2年、脱却後は言語了解はほぼ完全、話しかけると応答はすが自発的発語はない。左上肢のみ動かすが両下肢の関節拘縮のため臥床のまま。
脳幹出血の46歳男性は脱却まで1年7ヵ月、脱却後は言語了解は良好、失語症あり問いかけにはうなづきで答える。自力で移動不能。
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