ホーム ] 回復例(2000年代) ] 回復例(1990年代) ] 回復例(1980年代) ] 回復例(1970年代) ] 参考 ] [ 閉じ込め症候群(参考) ] 認知症 ]

閉じ込め症候群・無動無言からの回復例(参考)

 このページには、閉じ込め症候群や無動無言の持続期間が3ヵ月未満の回復例で有益な情報を含むもの、その他リハビリテーションに有益な情報などを掲載する。


長町病院
リハビリテーション科

慢性期の嚥下リハビリテーション、少量の嚥下が可能となった

*金成 建太郎:Classical locked-in症候群に対する嚥下リハビリテーション,日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌、13(3)、295、2009

 58歳男性は2005年4月に脳幹梗塞、閉じ込め症候群の状態になった。S病院にて保存的治療を受け、気管切開、胃瘻造設。リハビリ目的にM病院に転院となったが、肺炎を繰り返しリハビリ治療は困難であった。その後、全身状態安定し、2008年3月T病院(療養型病棟)に転院。文字盤を利用した意思疎通が可能となり、御本人から嚥下リハの希望があって、当院に転院として嚥下リハを実施した。
 初期評価では経口摂取不能と思われたが、介入により少量のとろみを嚥下可能となった。間接訓練(咽頭および唾液腺のアイスマッサージ等)が嚥下反射の誘発や唾液量の減少に貢献したと思われるが、とにかく介入したことに意義があったと思われる。御本人・ご家族の喜びは大きく、嚥下がQOLに与える影響を再認識した。
 御本人からいただいた俳句を紹介する。「やっと飲めたジュースの味を忘れない」
 

 

滋賀県立成人病センター
脳神経外科

経皮的電気神経刺激と理学療法の併用、四肢運動機能回復を促進する可能性

*佐藤 岳史:経皮的電気神経刺激は閉じ込め症候群における四肢運動機能回復を促進する、脳卒中、31(4)、211−216、2009

 脳底動脈閉塞症による閉じ込め症候群3例に経皮的電気神経刺激(TENS)を施行し、通常の理学療法と併用することで早期に四肢の運動機能回復が認められた。

 症例1、64歳男性、理学療法開始後1週間でも四肢運動機能の改善なく、TENS開始日に四肢の自発運動が出現し、両上肢を肩のあたりまで挙上できるようになった。発症後4ヵ月の時点で左上下肢はMMT4/5、右上下肢はMMT3/5までに麻痺の改善を認めた。

 症例2、65歳男性、TENS開始3日後に右上肢以外の自発運動が出現し、左手での離握手も可能となった。発症後2ヵ月の時点で右上肢はMMT2/5、それ以外はMMT4/5にまで改善した。

 症例3、77歳男性、理学療法開始3日でも四肢麻痺の改善を認めず、TENSを併用したところ、その日に左上肢が胸部まで挙上できるまでに改善した。発症後2ヵ月の時点で左上肢はMMT4/5、左下肢はMMT3/5、右上下肢はMMT2/5に麻痺の改善を認めた。

 3症例の転帰に関しては、全例で全介助の状態でADLの改善までには至らなかった。今後も長期の理学療法継続による経過観察が必要であると考えられる。

 


総合病院国保旭中央病院

千葉県旭市

早期からの継続的リハビリで、介助すれば筆記、俳句を読むまで回復

*高木 松乃:閉じ込め症候群例の臨床徴候と経時的変化、旭中央病院医報、30、35−38、2008

 73歳女性、外出先でめまい、気分不快で発症し、脳梗塞(心原性脳底動脈塞栓症)で、翌日、意志疎通は瞬目レベルまで低下、完全四肢麻痺となった。医学的全身管理と並行して早期離床を考慮し、発症6日後よりベッドサイドにて抗重力肢位を取り入れた積極的かつ継続的なリハビリテーションを行った。

 1週目   :首振り・頷きによる意思表示の明確化。音声が出現
 1週半程度:セッティングにて右膝立て保持軽度可能
 2週以降  :口頭指示にて右手指でグー、チョキ、パーなどの模倣が可能
 4週以降  :右上肢にて抗重力運動、頭部伸展保持がわずかに可能
 6週目ごろ :あいさつなどを中心として聴き手が予想すれば聴取可能な発話が可能
 8週頃    :座位の安定性を確保した状態で右手にペンを固定すれば筆記でも一部伝達可能
         両下肢は支持性なく起立は重介助のままであった。
12週頃から:右手にてナースコールを押し、聴き手側の予測が必要だが言語にて体交、吸引などの意思伝達が可能
        聴き手が介助すれば、発話にて本人の趣味であった俳句を読むことも可能となりQOLの向上が得られた。
 4ヵ月   :経口摂取が可能となる可能性が示唆された。

 

 


清仁会シミズ病院

京都府

言葉カード → 文字ボード → 綿棒くわえ →手で文字ボード使用、とコミュニケーション拡大

*尾谷 綾:閉じ込め症候群患者の看護について コミュニケーションの工夫、第43回京都病院学会集録、142、2008

 60代男性は2007年12月11日入院、12月25日頃に「うなづき・首振り」ができるようになってきたので、《言葉カード》と《50音文字ボード》を作成した。

 《言葉カード》は5cm×25cmの型紙に入院生活に必要な最低限の簡単な単語や文章をカードに書き、1枚1枚めくり伝えたい言葉があると「うなづき・首振り・まばたき」といった仕草で表現してもらうようにした。例えば「痛い」「かゆい」「ベッドを下げる」などである。これは看護者に早く伝えたい時効果があった。また、カードの内容は身体面のことからだんだん「車イスに乗る」「テレビをつける」「電気を消す」などの環境に関したものに広がっていった。

 次に《50音文字ボード》を使い、「うなづき・首振り」などで伝えてもらい、その一文字一文字をホワイトボードに書いていき、言いたいことを文章にしていった。この方法では時間がかかるため自分で文字を示すことができないか考え、口に消毒用綿棒をくわえてボードの文字を示す方法を試みた。しばらくは綿棒をくわえることが難しく、指す文字にばらつきがみられた。上手く伝えられない事や理解してもらえない事などから、怒りや苛立ちを顔に出すようになった。このような状態がしばらく続いたが、リハビリを続けていくうちに綿棒もしっかりくわえられるようになり、少しずつだが四肢も動くようになってきた。リハビリで使用しているアーム・スリングをベッドの横に設置し、右手を吊り上げ固定することでオーバーテーブルに置いた《50音文字ボード》を上手く右手で指すことができ、自分の思いを伝えることができた。

 その結果、言葉を発する事はできないが会話ができるようになった事で患者様だけではなく、家族も同様に喜ぶ事ができた。また、右上肢がやや上がり、示指がかすかに動くようになってきていたのでパジャマにナースコールを貼り付けると、かろうじて押すことができたが、貼り付けただけなので簡単に外れたり、位置がずれたりしていた。そこで右手にコールを握ってもらい、包帯で固定した。固定したことで安定し押すことが可能となり、昼も夜も問わず患者様自身でスタッフを呼ぶ事ができるようになった。

 

 


西宮協立リハビリテーション病院
リハビリテーション科

Locked-in syndromeの運動麻痺も、早期から長期間集中リハビリテーションで改善

*寺山 修史:長期にわたり回復を示したLocked-in syndrome(LIS)の1例、リハビリテーション医学、43(12)、843、2006

 22歳女性は2004年4月意識消失、頭部CTにて中脳〜橋にかけて出血、中脳水道穿波。2週間後、意識は清明、四肢の弛緩性麻痺、左瞬目だけで意思疎通が可能なLocked-in syndromeの状態を呈していた。

 集中的なリハビリテーションを2005年12月まで行い自宅退院。外来リハ継続中。四肢の弛緩性麻痺は改善、ベッドから車椅子への移乗、車椅子駆動は自立。嚥下機能も改善し3食経口摂取可能となった。

 Locked-in syndromeでは一般的に運動麻痺の回復は困難といわれるが、本症例のように早期から長期間にわたり集中的なリハを行うことにより改善を示す例もある。

 

 


神鋼病院

Locked-in症候群患者は不快な感覚異常に苦しみつつ、誰にもそのことを理解してもらえない
 

*小林 修一:Locked-in患者支援システム ワードプロセッサー試作による感覚異常へのアプローチ、日本外科宝函、60(3)、212、1991
.

 脳動脈起始部の閉塞によりLocked-in状態になった49歳男性。発症から11ヵ月経過した頃より右手第1指で何とかナースコールを押せるようになったため、ナースコールからの信号により作動する特殊なワードプロセッシングシステムを試作して使用した。

 その結果、通常の眼球運動による意思表示や文字盤の使用では知ることのできない、不快な感覚異常(知覚異常、悪心)などがあり、およそ1年間、誰にもそのことを理解して貰えないままに経過してきたことが判明した。

 Locked-in症候群の患者の場合、内側毛帯がspareされるため、一般的には知覚は正常と言われており、単に金縛りにあったような状態と考えがちである。しかし実際には種々の不快な感覚異常に苦しみつつ、誰にもそのことを理解してもらえないという状況に置かれている可能性もあるのではないかと思われた。

 

 


鳥取大学
脳神経内科

意思疎通不可能なlocked-in症候群患者が、音を数える課題を遂行

*日笠 親績:閉じ込め状態における知的活動と事象関連電位(P3)、臨床神経学、28巻7号 Page742-745 、1988

 閉じ込め状態にある重度運動機能障害患者の知的活動、精神心理活動を検討する目的で重症期ALS 2例、locked-in症候群1例に事象関連電位(P3)を施行した。

 事象関連電位(P3)のoddball課題は、出現頻度の異なる2種類の音をランダムに提示し、そのうちの低頻度出現の音を数えさせることよって初めて出現し、さらに目標となる低頻度の音に対して明瞭に出現することが知られている。

 対面文字盤などにより文章作成が可能なALS 1例(経過9年)と、意思疎通が不可能なlocked-in症候群の1例(経過4ヵ月)においては明瞭なP3成分を認めた。CT scan、脳波の所見より痴呆の存在が疑われたALSの1例(経過4年)ではP3の出現をみなかった。

 

 


東京大学
物理療法内科

全身性エリテマトーデスで無動無言状態、ステロイド大量長期投与により後遺症なく回復

*広畑 俊成:無動無言を主徴とした重篤な中枢神経障害より完全に回復した全身性エリテマトーデスの1例、日本内科学会雑誌、76(11)、1710-1713、1987

 入院時18歳の男子高校生、1982年11月全身性エリテマトーデス(SLE)と診断されステロイド薬が投与されたが、徐々に言語・動作の自発性が低下し1983年1月10日頃より発語が少なくなり、無動無言の状態となった。

 1983年2月1日、当科入院当初、ステロイドを減量したが、中枢神経症状は改善せず、髄液蛋白が上昇したので、3月ステロイドを増量・パルス療法を重ねて施行した。患者は徐々に言語・動作の自発性を取り戻し、1984年3月21日に退院。1986年4月東京大学理科1類に入学するに至った。

 SLEにおいては、重篤な中枢神経障害を呈していても、ステロイドの大量、長期投与により後遺症を残さない回復が期待できることを示した。

 

 


このページの上へ

回復例(2000年代) ] 回復例(1990年代) ] 回復例(1980年代) ] 回復例(1970年代) ] 参考 ] [ 閉じ込め症候群(参考) ] 認知症 ]

ホーム ] 総目次 ] 脳死判定廃止論 ] 臓器摘出時に脳死ではないことが判ったケース ] 臓器摘出時の麻酔管理例 ] 人工呼吸の停止後に脳死ではないことが判ったケース ] 自殺企図ドナー ] 生命維持装置停止時の断末魔、死ななかった患者たち ] 小児脳死判定後の脳死否定例 ] 脳死判定をしてはいけない患者 ] 脳死になる前から始められたドナー管理 ] 脳死前提の人体実験 ] 脊髄反射?それとも脳死ではない? ] 脊髄反射でも問題は解決しない ] 「脳死」例の剖検所見 ] 視床下部機能例を脳死とする危険 ] 間脳を検査しない脳死判定、ヒトの死は理論的に誤り ] 脳死判定5日後に鼻腔脳波 ] 脳波がある脳幹死、重症脳幹障害患者 ] 脳波がある無脳児ドナー ] 頭皮上脳波は判定に役立たない ] 補助検査のウソ、ホント ] 炭酸ガス刺激だけの無呼吸テスト ] 脳死作成法としての無呼吸テスト ] 遷延性脳死・社会的脳死 ] 死者の出産!死人が生まれる? ] 医師・医療スタッフの脳死・移植に対する態度 ] 有権者の脳死認識、臓器移植法の基盤が崩壊した ] 「脳死概念の崩壊」に替わる、「社会の規律として強要される与死(よし)」の登場 ] 「脳死」小児からの臓器摘出例 ] 「心停止後」と偽った「脳死」臓器摘出(成人例) ] 「心停止後臓器提供」の終焉 ] 臓器移植を推進する医学的根拠は少ない ] 組織摘出も法的規制が必要 ] レシピエント指定移植 ] 非血縁生体間移植 倫理無き「倫理指針」改定 ] 医療経済と脳死・臓器移植 ] 遷延性意識障害からの回復例(2010年代) ] 意識不明とされていた時期に意識があったケース ] 終末期医療 ] 死体・臨死患者の各種利用 ] News ] 「季刊 福祉労働」 127号参考文献 ] 「世界」・2004年12月号参考文献 ]