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*渡邉 未知:老年痴呆と誤認された高齢者下垂体性副腎機能低下症の1例、内科、94(2)、386−388、2004
71歳女性の主訴は食欲低下、体重減少。2001年3月までは自宅でADLは自立していたが、4月より食欲低下し、半年で13kgの体重減少を認め、10月17日近医に入院した。上部消化管内視鏡検査にて胃体部前壁と後壁に潰瘍を認め、プロトンポンプ阻害薬の内服を開始したが食欲は改善しなかった。入院時より発語はほとんどなく、寝たきりの状態で、処置時には看護師に噛みつくなどの行為があり老年痴呆と診断されていた。家族および本人の希望で当院受診し、高K血症、腎機能障害を指摘され、精査加療目的に転入院となった。
一般検査で判明した低血糖および電解質異常を手がかりに診断。内分泌学的検査では、血中コルチゾール、尿中コルチゾール、尿中17−OHCSすべて低値であった。LHが低値、ACTHは代償性の上昇を認めず、GHは年齢を考慮すると正常と考えられた。FSHは正常、プロラクチンは高値を示し、コルチゾール低値の影響が示唆された。甲状腺ホルモンは正常であった。頭部MRIでは、下垂体の萎縮を認め、後葉のみ同定可能であった。大脳皮質の萎縮は認めなかった。負荷試験による詳細な検査は、患者の同意が得られず施行できなかったが、MRI所見・内分泌学的所見より下垂体性副腎機能低下症と診断した。
下垂体性副腎機能低下症の治療のため、2日間hydrocortisone
50mg/dayの投与を開始したところ、血清K値低下、Na値上昇および食前血糖の上昇を認めた。その後は30mg/dayの投与を行い、治療開始10日目ごろより徐々に食欲が回復し、倦怠感も消失した。寝たきりで意味不明な言葉を発する状態から、理解可能な発言をするようになり、看護師に対する暴力は認められなくなった。食欲増加に伴い自力で食事摂取が可能となり、2週間後には介助にて起立可能となった。その後もリハビリにて歩行器使用での歩行ができるまでADLは拡大し退院となった。
質問に対する応答が可能となったのちに行った長谷川式痴呆スケール(HDS-R)の結果は30点(満点)であり、老年痴呆はないと考えられた。
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