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自然治癒、自然寛解文献メモ
H13y
百井 亨(日本赤十字社和歌山医療センター):【内分泌
興味ある症例】 視床下部下垂体門脈血流の残存もしくは再交通を示した下垂体柄断裂症例、ホルモンと臨床、47(冬季増刊)、12−16、1999
骨盤位分娩の既往を有しMRIにより下垂体柄の断裂が確認された特発性成長ホルモン(GH)分泌不全性低身長症は34例あり、このなかで現在までに思春期が自然に発来した男子3例についてMRIの再検査を実施し、一部症例では下垂体機能の再評価を行った。
- GH単独欠損を示した症例1はダイナミックMRIによって明らかに視床下部-下垂体門脈血流の存在が確認された。
- 13歳時に思春期が発来(睾丸容量4ml)した症例2は、8歳8ヵ月のMRIでは下垂体柄も異所性後葉は描出されなかったが、15歳児のMRIでは一部途絶がみられるものの下垂体柄が描出され、異所性後葉も認められた。TRHに対するTSHの反応は、ほぼ正常の値を示している。
- 症例3は6歳10ヵ月のMRIでは下垂体柄は描出されず異所性後葉が認められた。15歳児のMRIで異所性後葉直下で下垂体柄は途絶しており、その下方に下垂体柄が確認されたが途絶部が症例2と比較して長かった。
菊池 清(島根医科大学小児科):特発性下垂体性小人症と下垂体茎切断病変、ホルモンと臨床、36(7)、625−629、1988
特発性下垂体性小人症11名と頭部外傷後の下垂体性小人症1名につき、磁気共鳴像法(MRI)検査を行った。12名すべてに下垂体茎の切断病変と、下垂体後葉に特徴的な高信号の消失が認められた。うち9例には下垂体茎の中枢側切断端と考えられる部位に特徴的な高信号が認められ、異所性後葉が形成されたものと思われた。異所性後葉が形成された症例には尿崩症はなかった。
下垂体茎が切れているにもかかわらず、12例中7例が正常の甲状腺・副腎機能を持っていた。高プロラクチン血症がわずか2例にしか認められなかった。MRIでは確認できないが、下垂体門脈の再交通が起こったのかもしれない。
近藤 彰(若葉会近藤内科病院):肝癌の自然消退を示した末期肝癌の2症例、四国医学雑誌、62(5―6)、263、2006
症例1:75歳男性は1995年、C型慢性肝炎。HCV抗体陽性、HBs抗原・抗体陰性、Child分類A。2001年9月肝癌発症、TAE(肝動脈塞栓術)。2004年12月再発。2005年2月から10月まで8回のTAEを追加。しかし、10月AFP86840、腫瘍内に出血し、22日入院。腹痛、食欲低下が強く、AFP422800と急速に上昇。症状のコントロールができ12月退院。AFPは1月21180、5月65。CTでは両葉の多数の腫瘍は縮小し、肝癌が自然消退した。
症例2:67歳女性は1993年C型慢性肝炎。2003年4月、肝癌を発症、数回のTAE.。HCV陽性、HBs抗原・抗体陰性、Child分類A。2005年、腫瘍は肝全体に広がりTAEの効果なく、門脈腫瘍塞栓、腹水をきたし、AFP115、345と著増。7月緩和ケアの目的にて当院に紹介された。肝腫瘍4横指触知、腹水を認めた。8月から食欲不振が回復、AFP1198、2006年1月AFP26に減少した。画像でも腫瘍は縮小している。
C型肝癌の自然消退の報告は少なからずあるが、原因は明らかでない。本症例も原因がわからない。このように末期癌が改善することは驚きで、今後原因の解明を要すると考える。
D8m
石原 俊秀(山梨医科大学小児科):MRI上下垂体後葉の高信号の回復を確認した一過性中枢性尿崩症の一例、日本内分泌学会雑誌、71(6)、826、1995
13歳2ヵ月男児は多飲、多尿、口渇により1993年5月入院、MRIT1強調画像により下垂体後葉の高信号が消失しており、中枢性尿崩症と診断。DDAVP(10μg)の補充療法を開始。
1994年1月より尿量が1000ml/日以下のため、DDAVP投与を漸時減量、同年6月より中止しても臨床症状はなく尿量も1000ml/日に安定している。同年8月施行したMRI上、下垂体後葉の高信号は広範囲に正常範囲に回復し水制限試験も正常化している。
D17d
山口 由美子(取手協同病院産婦人科):子癇発作後、一過性中枢性尿崩症を発症した1例、茨城県農村医学会雑誌、15、41−45、2002
37歳2回経産婦、妊娠35週より妊娠中毒症が発症していた。妊娠36週1日、気分不快、頭痛、意識消失発作が生じ、高血圧、痙攣発作が認められた。1790gの女児を分娩後、再び痙攣発作を認め、頭部CT・MRIにて精査を行い子癇発作と診断した。産後3日目より一日尿量が3L以上に増加、中枢性尿崩症と診断し、デスモプレシン(DDAVP)による加療を行ったが、産後17日目には自然軽快し、DDAVP投与を中止しても尿量は2L前後にコントロールされた。
子癇発作による脳血管攣縮により一時的に視床下部が虚血状態となり、抗利尿ホルモン(ADH)分泌が低下して中枢性尿崩症を発症したが、脳血管攣縮の解除に伴い視床下部機能が回復し、ADH再分泌がみられたため自然軽快したと考えられる。
L10m
古荘 純一(公立昭和病院):脳底動脈の解離性動脈瘤によりLocked-in syndromeを呈した7歳男児例 MRI検査の有用性について、
日本小児科学会雑誌、101(11)、1608−1611、1997
突然発症した頭痛、意識混濁、四肢麻痺の7歳男児。第4病日のMRIでは橋、小脳の広範囲に梗塞像を認め、脳血管造影では脳底動脈が起始部から造影されなかった。集中治療およびペントバルビタールの持続点滴静注を中止した6病日に意識レベルは回復したが、眼球運動はあるものの無言無動状態。脳底動脈の閉塞によるlocked-in
syndromeと考えられた。
発症4週後よりリハビリ開始し、徐々に開口、嚥下、顔面筋の運動が可能となり、発症10ヵ月経過後、介助により経口摂取、座位の保持が可能となり、発語はないが、頸の前後屈や手指を用いて意志表示が可能となった。発症10ヵ月後の血管造影にて血流の再開通が確認された。
注:遷延性意識障害からの回復例は、治療による回復例が多いが遷延性意識障害からの回復例も参照。
T37d
若本 寛起(平塚市民病院):再開通した脳皮質静脈血栓症の1例、脳神経外科、27(5)、469−473、1999
51歳女性は1997年10月20日、起床時に右半身麻痺に気づき他院を受診、脳梗塞との診断にて治療を受けていたがCTにて小出血が認められ11月4日に当院に転院。脳血流SPECTでは左前頭、頭頂葉に血流低下した部位が認められた。左頸動脈写側面像の早期静脈相にて、3本の皮質静脈が上矢状洞流入部手前で閉塞している所見が認められ、後期静脈相では同部位に限局した循環遅延と、sylvian
vein
ならびに前頭部の皮質静脈に側副血行路が形成されていた。上矢洞は先端部より明瞭に描出されていた。発症より2週間経過し、臨床症状も固定していたため、保存的に経過観察した。
転院後もまったく右半身麻痺は改善せず、上肢は徐々に拘縮していたが、1997年11月26日の朝より、突然右上下肢が動くようになり、翌日には介助にて歩行するようになった。その後、2週間にて麻痺は完全に回復し、日常生活を元通り行うようになった。
1998年2月3日の脳血管撮影では、左頸動脈写の側面像にて、転院時に閉塞していた皮質静脈の再開通が確認され、循環遅延も改善していた。脳血流SPECTでも、発症時見られた病巣部の血流低下は、ほぼ改善していた。
T2d
石原 健司(昭和大学医学部神経内科):大脳深部静脈・静脈洞血栓症を呈した抗カルジオリピン抗体陽性例、脳と神経、55(1)、71−76、2003
大脳深部静脈・静脈洞血栓症の62歳男性、アルコール多飲歴があり、脱水および炎症を契機として急性の意識障害を発症したものと考えられる。ヘパリンによる抗凝固療法を施行せずに、維持輸液主体の補液のみにて大脳深部静脈が再開通し約2日後に意識は回復した。ワ―ファリン内服により再発予防の治療を開始し転科1ヵ月後に退院した。
発症早期より血栓形成の原因(本例では脱水)を補正する治療により、良好な予後が得られる可能性も示唆される。
SH2d
中島 芳博(平野総合病院小児科):特異な経過を示した急性硬膜下血腫の1乳児例、岐阜大学医学部紀要、46(6)、243、1998
1歳5ヵ月男児は椅子から転落、頭部CTでmiddle
siftを伴う左急性硬膜下血腫を認めた。血腫除去術の適応も念頭におき保存的に加療され、わずか2日間で血腫の自然消失を認めた。
また受傷4日後に明らかなエピソードなしに再び同部位に出血を起こしている。CT所見より血腫が左前側頭部より後頭窩へ再分布したと推測されること、また再出血をきたしたことはきわめてまれな経過である。
山本 隆充(日本大学脳神経外科):保存的治療を行ったthin
acute subdural hematomaにおける自然治癒例と慢性硬膜下血腫移行例との比較検討、日本脳神経外科学会46回総会抄録集、190、1987
頭部外傷後数日以内のinitial CTで、明らかなthin acute subdural hematomaを認め、保存的加療を行った10中5例が自然治癒例し、4例が慢性硬膜下血腫に移行した。
自然治癒例は、脳挫傷の存在ならびに著しい頭蓋内圧亢進が示唆された。これに対して慢性硬膜下血腫移行例は軽度の外傷例であり、半球が萎縮症であった例が含まれており、頭蓋内圧亢進も軽度であった。
E0d
坂本 郁子(八幡浜市立八幡浜総合病院放射線科):超急性期中大脳動脈塞栓症の自然再開通 FLAIR法が有用であった1例、日本医学放射線学会雑誌、65(1)、75、2005
69歳男性は昼食後立ち上がったところ倒れ、救急搬送された。意識レベル低下と右片麻痺、失語を認めた。発症1時間後のFLAIR像で左中大脳動脈M1から遠位での血管高信号を認めた。MRI撮影中に症状の改善がみられたため再度FLAIR像を撮影したところ、左中大脳動脈M1、M2近位部での血管高信号が消失していた。
血管の自然再開通と考え、保存的治療が選択された。発症3週間後のMRIで、梗塞はほぼ穿通枝領域にとどまっていた。
田中 厚生(九州大学臨床放射線科):自然再開通を画像にて観察し得た中大脳動脈塞栓症超急性期の1例、日本医学放射線学会雑誌、63(6)、344、2003
53歳男性は起立時に失語、気分不良、右片麻痺、意識障害が突然出現。MRI拡散強調画像にて左半球に淡い異常信号、MRAにて左中大脳動脈水平部以遠の描出途絶を認めた。また灌流画像にて中大脳動脈領域に相当して平均通過時間の遅延が認められた。この後直ちに血栓溶解目的に血管造影検査に写ったが、初回造影時に自然再開通を認め、発語等の神経症状も回復した。
その後撮影した灌流画像にて平均通過時間も正常化していた。
最勝寺 晶子(白十字病院放射線科):Diffusion
MRIにより虚血病巣の可逆性変化が認められた脳塞栓症自然再開通の1例、臨床放射線、44(12)、1569−1572、1999
64歳女性は1998年5月22日、午後1時20分頃、言語障害と右上下肢の運動障害を突発し、発症1時間後に緊急入院。発症2.5時間後の拡散強調画像で左側中大脳動脈灌流域の皮質、白質に新鮮な虚血病変を反映する明瞭な高信号域を認めた。発症3時間後より脳血管造影を施行した。しかし、患側と思われる左側の総頸動脈、内頸動脈、中大脳動脈水平部に閉塞や狭窄所見は認めず、また中大脳動脈の各皮質枝も描出されていた。この頃より神経症状は改善を示し、翌日には右上下肢麻痺の軽減に加え、運動失語の消失がみられた。
発症3日後の拡散強調画像では、入院時に認められた高信号域が縮小。また、複数の新たな高信号域が左側半卵円中心部に認められ、最終的に形成された梗塞巣と考えられた。超急性期虚血巣における拡散強調画像上の高信号域の中には、可逆性と不可逆性の虚血領域が混在すると思われ、両者の鑑別が臨床上極めて重要になると思われた。
鈴木 均(栃木県南病院):脳血管写の術中中大脳動脈の再開通を来したとおもわれるAcute
infantile hemiplegiaの1例、日本小児科学会雑誌、91(6)、1516、1987
2歳9ヵ月男児が、突然左片麻痺を来たした。右頸動脈造影を行ったところ、第1回めの造影で中大脳動脈の閉塞所見を認めた。次いで2度目の造影を行ったところ狭窄は認められたものの右中大脳動脈は造影された。
患者は14病日には歩行可能となり、臨床所見の改善は著しかった。
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