2005年ベストもの
読書は新刊旧刊問わず、2005年中に年読んだもの。映画は2005年中に公開されていたものです。
*読書編*
《総合》
1.『本格小説(上、下)』水村美苗
2.『余白の美 酒井柿右衛門』一四代目酒井柿右衛門
3.『対岸の彼女』角田光代
4.『シリウスの道』藤原伊織
5.『河岸亡日抄』堀江敏幸
6.『コーネルの箱』チャールズ・シミック
7.『いつかパラソルの下で』森絵都
8.『ゴットハルト鉄道』多和田葉子
9.『黄色い雨』フリオ・リャマサーレス
10.『犬猫 36才・女性・映画監督が出来るまで』井口奈巳1は正に本格小説とでも言うべき力作。2は外部からはよくわからない伝統工芸の世界を垣間見ることが出来、大変興味深かった。3は直木賞受賞作。『空中庭園』に続き、作家の成長を感じた。女性として生きていくことの困難さが身に染みる。4は著者待望の新刊。本来ならミステリ・ハードボイルド部門に入れるべきなのだろうが、むしろ業界小説として面白かったので。5は文章が美しく私の好み。誘発されてクロツフの『樽』を読んでしまった。6はこの作品はもちろん、ジョセフ・コーネルというアーティストをこよなく愛しているので。7は著者の新境地とでも言うべき作品。8は地下世界にずるずる引き込まれるような異様な引力がある。9は死に向いつつある視線を淡々と描いている。10は映画製作を目指す人だけでなく、働く女性に読んでほしい映画製作日誌。
《ミステリ・ハードボイルド》
●国内編●
1.『蚊トンボ白髭の冒険(上、下)』藤原伊織
2.『神様ゲーム』麻耶雄嵩
3.『死神の精度』伊坂幸太郎
4.『硝子のハンマー』貴志祐介
5.『イノセンス After The Long Goodbye』山田正紀1はぶっちぎりで面白くかっこいい。ハードボイルド魂を感じます藤原先生!2はあまりの黒さに入れずにはいられなかった。対照的に3は読後感さわやか。死神「千葉」の天然ぶりもかわいい。4は途中まですっごく本格なのに後半は・・・。バランスが悪くてかえって記憶に残った。5は映画からのスピンアウト小説。センチメンタルかつハードボイルド。
●海外編●
1.『荊の城』サラ・ウォーターズ
2.『死者との対話』レジナルド・ヒル
3.『樽』F.W.クロツフ
4.『報復』ジリアン・ホフマン
5.『マラソン・マン』ウィリアム・ゴールドマン1はストーリーが二転三転して、読み出したら止められなかった。ワクワク度高し。2は文学作品からの引用に満ち溢れているが、決して堅苦しくはなくユーモアに満ちている。『樽』はアリバイ破りものの元祖。新訳が読みやすかった。4はノンストップサスペンス。続編も出たがやはり1作目が面白い。5はサスペンス小説かつ青春小説。兄弟愛にも泣かされる。
映画編
●洋画●
1.『ある子供』
2.『ミリオン・ダラー・ベイビー』
3.『そして、ひと粒のひかり』
4.『ベルヴィル・ランデヴー』
5.『エターナルサンシャイン』1と2はどちらも自らのスタイルに対する確信をもった監督による映画だと思う。どちらを1位にするか迷ったが、より時代に即した方を1位とした。3は初監督作品とは思えない完成度と面白さ。4はレトロかつ独創的な映像が魅力的だったアニメーション。音楽も秀越。5は幸せかつ切ない気持ちになった。次点で『クレールの刺繍』、『ティム・バートンのコープスブライド』、『イン・ハー・シューズ』もよかった。
●邦画●
1.『リンダリンダリンダ』
2.『空中庭園』
3.『メゾン・ド・ヒミコ』
4.『フライ・ダディ・フライ』
5.『隣人13号』1はどうということない高校生活をとても魅力的に撮っている。ジェイムス・イハによる音楽もよかった。2は原作を十分に咀嚼して映像化されたという印象を受けた。3は大人のファンタジーになりきらない所が良心的でもあると思う。4は父・息子映画の変化球。爽快だった。そして爽快の真逆にあるような5だが、エグさが突き抜けた爽快さはある。次点で『カナリア』『運命じゃない人』。『カナリア』はラストさえ違えばベスト入りだった。