・『エトランゼ』神戸公演全体の感想。

    2/16〜22、新神戸オリエンタル劇場での公演。
    初日の後は、2/21の夜に観てきました。
    E列(13列目)23番(センターブロック右端)席での観劇。
 
    結果的に2回観たわけですが。
    3月には東京まで1度観に行く予定なのですが。
 
    大半の印象は初日と変わりませんでした。
    そのへんは前の感想でかなり書いちゃったので、今回は書くことが
   あまりないようなそうでもないような(結局どっち?)
    とりあえず、初日の感想に書いてなかった(書きそびれた)こと。
 
    音楽が記憶に残らないんですよね。
    『TRUTH』『クローズ・ユア・アイズ』に続き、全曲オリジナルも
   3回目。……でも今回のオリジナル挑戦は最初からあんまりいい印象
   ありませんでした。前回(『クローズ・ユア・アイズ』)がそうだっ
   たし、今公演初日までの時間が短かったので、なんとなく不安でした。
   いや加藤さんって、曲作りを始めるとそっちに没頭しちゃうところが
   あるし。個人的には、そっちにかまけるよりもやらなくちゃいけない
   ことが他にあるように思ってしまうんですが。
    結局、神戸初日にまたCD間に合わなかったし。それはまぁいいと
   しても、肝心の音楽が観る側の印象に残りにくいんじゃなぁ……意味
   ないじゃん。キャラメルで使われる曲は単なるBGMではないと思っ
   ているので、1回観て1曲も印象に残った曲がないというのはなんか
   違う感じがします。テーマ曲さえ覚えてなかったし。2回観た今でも、
   ほとんど思い出せない……
 
    岡内さん……大事なシーンのセリフが全部怒ってるように聞こえる。
    アル中の父親や自分たちを守ってくれない(少なくとも彼女はそう
   思っている)母親に耐えられなくて、自分と弟だけで生きていこうと
   考えた「里奈」。
    もちろん怒りの気持ちはあるだろうけど、絶対にそればっかりでは
   ないと思うんですよね……もっと悩んだり、苦しんだり、泣いたり、
   たくさん気持ちの葛藤をしてきているはずだから、そういうのが全然
   セリフにあらわれてこないのはおかしい。今のままでは、単なる考え
   の甘い生意気な女子高生にしか見えない。内面の悩みを押し隠すため
   に不必要なくらい明るくしている、と思えないことはないけど、それ
   なら余計に、母親「かずみ」とのシーンで、「里奈」自身の悲しみや
   苦しみがこちらに感じられるようでないとまずいと思う。
    『クローズ・ユア・アイズ』の「琴江」も、絶望感を味わった人間
   としての深みには欠けていたしなぁ……家族を亡くした辛さが、彼女
   自身のものとしては感じ取りにくかった。
    こういったキーポイントのある役は荷が重いんじゃないか、とまで
   言ったらひどい? でもなんだかそう思ってしまう今日この頃。
 
 
    その他の役者さんとその役柄について。
 
    坂口さん=「ななえ」。
    普段の坂口さんっぽい、「クールで不機嫌そうな」役柄にしたらしい
   です。たしかにクール(と言えばクール)ではありますが、根本的には
   これまでの、真柴さん脚本におけるヒロインのキャラクターの大筋から
   外れていないように思いました。これは初日の感想にも書きましたが。
    仕事が好きで、それに一生懸命で、言いたいことをはっきり言う。
    そういう女性像自体は別に嫌いじゃないですが、坂口さんがヒロイン
   をやると、たいがいこういう人になっちゃうんですよね。特に、今回と
   昨年春の『MIRAGE』は、男勝りで言葉遣いもそういう感じ、という点も
   同じで。坂口さんが男っぽい言葉で台詞をしゃべると、何故だかガサツ
   に聞こえてしまうので、私は好きじゃないんです。
    脇役の時は大変いい味を出す(ことが多い)役者さんなので、もっと
   いろんな女性を演じていただきたいなと思います。
 
    それと。この作品のストーリーが、あまり「ななえ」中心に展開して
   いない感じがするのも気になりました。オープニングシーンで、物語が
   「ななえ」中心に動くことを暗示させるような演出をしながら、実際は
   それほどでもない。「ななえ」自身の問題も扱われているけど、彼女の
   姉・「かずみ」の家庭の問題もかなりの比率で物語に入ってくる。でも、
   その問題と「ななえ」自身は基本的に「関係ない」んですよね。「里奈」
   たちを預かったり「かずみ」の話を聞いたりはするけど、なんていうか、
   彼女たちの相談者というよりは、物語を進めるための「狂言回し」的な
   役割という印象の方が強いんですよ。話と話の間の「つなぎ」というか。
 
    これは結構、その他のシーンでも感じる時があったかな。「ななえ」
   自身の問題、「八木沢」とのことや写真に関することでも。
    なんでか……と考えてみて、「ななえ」自身の内面や心情を表す台詞
   やシーンがどうも少なかったんじゃないか、と思いました。彼女がその
   時々でどう考えているのか、がこちらに分かる時があまり無い。
    写真に対する熱意はオープニングとエンディングで語られているので
   まだなんとなく分かりますけど(それだって表し方自体はなんか不足を
   感じますけれど)、「八木沢」への気持ちはよく分からないし(本当に
   好きなのかな? とまで思ってしまう)、「かずみ」に対してはもっと
   複雑な気持ちがありそうなのに、そういうふうには感じられなかったし
   (まぁこれは、どこかで振っ切っている部分があると考えられるのかも
   しれませんが)
 
 
    大内さん=「高柴」。
    「ななえ」の同僚で彼女のことを好き、という設定。
    ……悪いけど、ただそれだけのキャラクターに見えてしまいました。
   彼の言動が「ななえ」に何らかの作用を及ぼしたりはしてないもんな、
   全然。少なくとも私にはそう思えた。
    チラシではずいぶん重要な役柄っぽかったのに。いやまぁ、チラシ
   は台本が出来上がる前に作ってるんだから、台本を書く過程で設定が
   違ってきちゃうのはあり得ることですけど。それにしたって違いすぎ
   という気がします。なんか、「高柴」が存在するはっきりした意義は
   無いように思えてしまう。単に「ななえ」に片思いしている人物って
   いうふうにしか見えなくて。もったいない。
    (「ななえ」にもまるっきり意識されてないしなー……告白しよう
   とするたびに邪魔が入る彼はなんか哀れでさえあります……)
 
    もったいないと言えば、西川さん=「八木沢」。
    「ななえ」の大学時代の先輩、現在はいちおう恋人。
    西川さんには珍しく、良くも悪くも完全に「脇」の役どころ(だと
   私は思います)
    これまでの西川さんの役って、メインではないにしても、何かしら
   その場を締める雰囲気とか、そういった台詞とかが必ずあったんです
   よね。……でも今回は、少なくとも見える範囲においては、そういう
   ものはなかった。だから、と言うのは厳密にはダメなのかもしれませ
   んが、個人的には淋しく感じてしまいました。
 
    「ななえ」と「八木沢」ってどういうきっかけで付き合い始めたん
   でしょうね? 大学時代(12年前)からの知り合いだけど、いわゆる
   恋人同士としては3年前から。まぁそういうカップルもいますけど、
   ちょっと不思議。「八木沢」が「ななえ」のことを好きな(気持ちが
   ある)のはまだ分かるんですけど、「ななえ」の方は……上にも書き
   ましたけど、好きなのかどうかさえ疑ってしまうくらい、分からない。
   (だから上に書いたように、「いちおう」と付けたくなってしまう)
   プロポーズの返事もとにかく避けて避けて、それで済ませられるもの
   ならそうしようとしてるし。まだ結婚する気がないのなら、はっきり
   と早く本人に言わなきゃいかんでしょう。
    ま、「八木沢」もなりゆきでプロポーズしてきたり、転勤するかも
   なんて嘘をついたりしてるから、全然問題がないとは言えないけど。
   良くも悪くも女性に対して保守的な考えがあるようだし。
    でもちゃんと答えを返さないこと自体は「ななえ」が悪いですよね。
   彼女の生い立ち上、結婚すること、ひいては家庭を作ることに意味を
   感じていないのでは、という意見をどこかで見ましたが(知人に聞い
   たのかも)……確かにそういう考えも成り立ちますが、そうすると、
   「八木沢」に「僕と結婚する気はあるのか」と聞かれた時に「ある」
   と答えたことが少し矛盾するような……
    とにかく、この二人はもっとゆっくり時間をかけて話し合った方が
   いいですね。3年も付き合ってるわりには、お互いに対する理解度が
   低いのではないかと思えます。結婚の件に関してはどっちもどっちと
   いう感じですしねぇ。
 
 
    近江谷さん=「檜原」。「ななえ」たちの写真の師匠。
    私がこの舞台においてキャラクターがきちんと成立していると感じ
   られた、数少ない役。
    一見すると、とにかく自信家で、理不尽なくらい厳しくて、嫌味も
   すごい「イヤな奴」。でも心の奥では弟子のことを気にかけている。
   その表し方も決して素直とは言えないけれど、「師匠」なんだな、と
   思わされる。
    昨年夏の『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』ではどうもテンション
   が低いように感じてしまったんですが、今回はそうでもなかったかな。
   でもカーテンコールの挨拶に元気がなかったな……(ちょっと問題が
   違う?)まぁ、役柄自体もギャグ的なテンションはそんなに必要では
   なかったですけどね。
 
    小川さん=「エミ」。「ななえ」の同僚、というより後輩。
    それを言うなら「高柴」もそうですね。「ななえ」はアシスタント
   歴8年、「高柴」は5年、「エミ」は……せいぜい2・3年?
    「ななえ」たちと一緒にアシスタントを辞めてスタジオを設立した
   のはいいけど、自分の経験の無さや後ろ盾を急になくした不安に耐え
   られなくなって、結局はまたアシスタントに戻ってしまう。独立する
   ためにがんばっている「ななえ」たち側から見れば裏切り行為だけど、
   例えば「ななえ」ほどに強い決意も写真の経験も持たないことを自覚
   してしまったら、そうするしかないのかも知れない。誰だって、少し
   でも意志をくずされたら、どうしようもなく不安になることがある。
   時には「負ける」ことが必要な場合もある。「エミ」の行動がそれに
   当てはまるかどうかは、彼女の今後次第でしょうけど。
 
 
    中村恵子さん=「かずみ」。
    「ななえ」の8歳年上の姉で2児の母。
    恵子さんのお母さん役は今までのところ好きなんですが……この役
   はあんまり好きじゃないかなぁ。というか、「お母さん」ぽくはない
   ですね。「理想の家庭」を守りたくて、できるだけ周囲に波風を立て
   ないように事を収めようとしている一人の女性。
    彼女は彼女なりに確かに必死なのでしょうけど、子供(「里奈」・
   「開」)から見れば、「母親」として責任を果たしてくれていないと
   思ってしまうんだろうな。「かずみ」の「理想の家庭」は自分と夫と
   子供たち全員がいて成り立つものであり、離婚してほしいという子供
   の願いをききたくはない。でも子供たちは、自分たちを守ってくれる
   のが「母親」であって、そのために必要なら離婚してくれても当然、
   という考えなのだろうから。
    「かずみ」のように弱くなってしまう女性はいると思う。それまで
   の人生が順風満帆であった人ほど(女性でも男性でも)、大きな挫折
   に遭うと自分の人生全てが崩れていくような気持ちになるんだろう。
   そこでどんな行動を取るかは人それぞれだけど、「かずみ」は何とか
   して家庭を「昔のように」しようと考えた。そうすればきっと全部が
   またうまくいくようになると信じて。
    そういう彼女の気持ちは分かる。夫は入院してるし、子供たちは家
   を出てしまったし、自分が両方の橋渡しになって頑張らなきゃいけな
   いんだと思うのも頷ける。……それでも、なにか説得力に欠ける気分
   がしてしまう。それは多分、「かずみ」の夫、子供たちの父親が全く
   劇中に出てこないからだろうと思う。「かずみ」や「里奈」の話の中
   に出てくることだけでは、実在の人物としての彼のイメージが想像し
   きれなかった。せめて1シーン、回想シーンとかでもいいから、実際
   に登場させてほしかったと思う。……彼自身の口から、彼の気持ちを
   聞きたかったし。今のままじゃ存在感(夫・父親として存在している
   ということ)がほとんど感じられない。……そのせいか、「かずみ」
   たちが「家族」ということ自体、ちょっと嘘くさいように見えてしま
   いました。
 
    藤岡さん=「開」。「里奈」の弟。
    子供の頃に重い病気をして以来、他人の感情が「色」として見える
   ようになったという設定がありますが。
    そういうファンタジックな設定自体は別に嫌いではないです。ただ
   キャラメル限定で考えると、「特殊能力」は今までにも出てきていて
   (『四月になれば彼女は』『アローン・アゲイン』『TWO』等
   が分かりやすい例ですね)、ちょっと成井さん(+真柴さん)の恒例
   ものと思えなくもなかったりしまして。加えて、最近の作品は現実的
   でない設定が続いてますし(『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』とか
   『クローズ・ユア・アイズ』は幽霊とか天使とか出てきてましたから)。
    さらに今回は「手紙・電話の多用」という、成井さん(+真柴さん)
   のまさに「常套手段」を使わずに書くということをかなり早い段階に
   宣言されていました。確かに手紙や電話は普通の範囲でしか使われて
   いませんでしたが……「特殊能力」を出したことで、それらを使わず
   にいた意味が薄れていたような気が。言い方が悪いかもしれませんが、
   手紙・電話を使わなかった分、そっちの方向に「逃げた」感じがして。
   どうせならそういった手札は全部使わずに、あくまで現実的にストー
   リーを展開してほしかった。その方が、成井さんの追及する「リアリ
   ティ」がもっと普通の、自然な形で出てきたんじゃないかと思います。
 
    それに、扱い自体も中途半端だったような気がします。「八木沢」
   の嘘も「かずみ」や父親の気持ちも、全部「開」が「色」として見る
   んですよね。……日常的に他人の気持ちがそうやって「見えて」いる
   わけで。嘘をついても隠しても本心が分かる。大抵の場合、本心なん
   てものは良い方の気持ちじゃない。怒りとか悲しみとか憎しみとか、
   マイナスの気持ちが圧倒的に多いはず。そういうものを見ながら育っ
   てきたら、すごく後ろ向きになるか、徹底的にマイペースに生きるか、
   多分そのどちらかでしょう。……「開」はマイペースではあると思い
   ますが、徹底的に、とまではいってない感じがします。無愛想で無口
   ではあるけど。まだどこか、人間の善意の可能性を信じているように
   思える。……まぁそこまで人間不信になってなきゃおかしいとまでは
   言わないにしても。父親の件に関して絶望的であるのはむしろ「開」
   の方だと思うんですが(勘違いとはいえ「殺意」をビジュアルで見て
   いるわけだから)、あんまりそういう印象じゃなかったんですよね。
   そういった感情の吐露はほとんど「里奈」の方に偏っていますから、
   「開」自身がどう思ってるのかも少し分かりにくい。
    極端に言ってしまうと、なんか全体的に、「開」の存在の主体性が
   感じられないんですよね……一人の人間としてじゃなくて、ただ単に
   「物語中の役割」として存在しているような印象。「里奈」が意地を
   張るための存在、他人の気持ちを見破るための存在。でも別にそれは
   「開」でなくてもよかったんじゃないか。そんなふうに思えてしまう。
 
    『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』に続く藤岡さんの少年役。
    似合うとは思うし、それなりに好きです。……だけど、サポーター
   (観客)側が「ポスト伊藤ひろみさん」を期待しているのが気になる。
   個人的にそういう期待の仕方は嫌いなのです。伊藤さんは伊藤さん、
   藤岡さんは藤岡さん。違う役者さんじゃないですか。ねぇ?
 
 
    前田さん=「小名浜」。
    「ななえ」たちがアシスタント時代から馴染みの雑誌編集者。
    ……うーん、これも「役割」の面が強いキャラクターではあるかな。
   これはこれで成功しているかと思うけど。
    極端なキャラではないけど、元気ですがすがしくて、いいかなと。
    (……うーむ、これぐらいしか言うことがない (^^;)
 
    青山さん=「磐梯」。「開」の元クラスメイト。
    初日の感想にも書きましたが、1シーンしか出てないのがもったい
   ないぐらい、良かったと思いました。……まぁ、あのハイテンション
   なキャラクターが何回も出てきたら、実際にはうるさいでしょうけど
   ね(苦笑)
    でも、役割の点でもキャラの点でも、きちんと作られていたと思い
   ます。私がキャラクターが成立していると思った数少ない役、その2。
    ……初舞台以降のキャスティングを考えると、藤岡さんの方が買わ
   れているのでしょうかね? 青山さんはかなり脇のポジションが多い。
   一度、もう少し出番の多い役で観てみたいものですね。まだ2年目で
   すから、可能性を広げていってほしいです。
 
 
    書くことあまりないような、とか言いながら長いですね。
    またいつものパターンになってしまった……(爆)
 
    3/17に東京へ観に行きます。千秋楽直前。
    ……ま、過剰な期待はしないでおきましょう(おいおい)
                             (01.3.7)
 

     *神戸初日の感想に戻る→こちら。(ややネタばれあり)(01.2.19)

     *東京公演の感想を読む→こちら。(ネタばれあり)(01.3.21)

 


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