・『MIRAGE』東京で観た感想。(ネタばれ有り)

    3/22のマチネ(昼の回)を観てきました。
    11列目(実質9列目)29番(右端に近い位置の)席での観劇。
    ……実は当初はマチネ・ソワレの2ステージを観るつもりでしたが、諸事情
   によりソワレは諦めることに……せっかく初めての最前列センター席だったの
   になぁ……(←いいかげん忘れなさい)
 
    あらすじ……は、こちらです。(キャスト付・ラスト近くまで書いています)
    同じページに載せるつもりでしたが、長〜くなってしまったので (^^;
 
    さて、本題。
    今回は当初「女の子の活劇」と聞いていたのですが……できあがってみたら
   全然違っていたそうです(わー)……たしかに、「活劇」とは言えないですね。
   でも加藤さん曰く「心の活劇」だそうです。なるほど。
    チラシのイメージとも少々違う感じになりましたね。坂口さん・岡田さつき
   さん・中村亮子さんがメインっぽい写真なのですが、実際はそうじゃなかった
   し(坂口さん・中村亮子さんはともかく、さつきさんが……今回は確実に脇で
   すよね、あれは)
 
    実は今回、東京に行く前に家で一度観ました。
    どういうことかというと、インターネット生中継。世界初の試みで、しかも
   動画・音声付き。Quick Timeというアプリケーションがあれば、家のパソコン
   でキャラメルの舞台が観られちゃうわけです(まぁ、接続速度などの関係で、
   誰でも画像をクリアに観られるわけではなかったのですが、それでも画期的な
   ことですよね)
    3/14〜4/9の全ステージが放送されると聞いて、行く前に観るべきかどうか、
   だいぶ迷いました。当然、基本的には初見が一番面白いし余韻も残るのですが、
   あまり余韻が残りすぎると、大阪までの一ヶ月を我慢しきれなくなる危険性が
   あったので(あくまで個人的に)…………結局は観ました。ストーリーをとり
   あえず把握しておけば、それを追うのに必死にならずに済むし、ある程度客観
   的にも観られるかと思いまして。
    結果、その目論み自体は成功したんですが……反面、全く観ずに行った方が
   もっとおもしろかっただろうなーと、やはりちょっと後悔も。好みのタイプの
   作品でしたので、余計そう思ってしまったみたいです。
 
 
    真柴さん+成井さんの共作シリーズと言える、「アコースティックシアター」
   でも「時代劇」でもない、「次世代の新作」。
    最初に発表された時、『MIRAGE』はそういう作品だと聞きました。
    個人的には、真柴さんと成井さんが書くものだから、「アコースティック」
   から大きく隔たったりはしないだろうな〜(主にあんまり良くない意味で)、
   と思っていました。
    で、実際に観て。その予想自体は外れていませんでしたが、思っていたより
   も良い方向に「アコースティック」の色が生きていたように思います。
 
    今回のストーリーは、展開が読めすぎるとよく言われてます。
    先読みが不得意な私でも、キャラメル作品の傾向を知っていれば、結末自体
   は分かっちゃうだろうな〜という気分にはなります。
    でも内包しているものは、結構ハードな面もあるんじゃないかなと。
 
    おそらく今回の核になっているのは、「大切な誰かへの気持ち」ですね。
    (それが全てではないかも知れませんけど、その一つとして)
    自分のためじゃなくて他の誰かのために、その人のことを思って行動する。
    その気持ち自体は、素敵なものです。でも。
    …………気持ちが大きくなりすぎると、時として違う方向に向かってしまう
   ことも。
 
    愛する人を思い続けること、それ自体はすばらしいこと。
    けれど、その気持ちが強すぎると、かえって残酷な場合もある。
    亡くなった奥さんを思い続ける「新庄先生」。早く奥さんのそばへ行きたい
   とばかり考えるほどに、彼の気持ちは強くて、大きかった。
    奥さんが亡くなった時、自分の魂も一緒に持っていかれてしまったような、
   そんな気持ちになったのかも知れない。
    あまりにも強く想いすぎると、それに囚われて身動きができなくなる。
    亡くなった人に囚われて生きること、または死を思うことは、ある意味本人
   は幸せかも知れないけれど、でもやっぱり哀しいことだと思う。
    想われる方も、その気持ち自体は嬉しくても、やはりやりきれない思いがす
   るのではないだろうか。
    忘れないでいることと、気持ちにがんじがらめになることとは、違うはず。
 
    そんな「新庄先生」=父親を、ずっと見続けてきた「たまき」。
    母親が亡くなってからの半年以上、彼女がどれだけ辛くて、淋しかったのか。
    お互い、たった一人の家族のはずなのに、父親は自分を見てくれない。
    いつまでも、もういない母親だけに心を占められて、自分の気持ちは考えて
   もくれない……
    「もう子供じゃないから」と言われるたびに心が苦しかった。
    子供じゃなくても、父親を想う気持ちに変わりはないのに。たった一人の、
   大事な家族に見てもらえないことがどれだけ淋しいのか。それは子供でも大人
   でも同じなのに。
    それでも「たまき」は、生きていてくれればいいと、自分を納得させてきた。
    なのに、父親がずっと死ぬことを考えてきたと、そう知った時の彼女の衝撃
   は、察するに余りあるものを感じます。
 
    この家族3人を演じるのが、客演の粟根さん・大森さん・中村亮子さん。
    粟根さんは『天国から北へ3キロ』(加藤昌史プロデュース・1991年上演)、
   「シアターエクスプレス`96」に出演した時の印象が強いので、なんとなく今回
   も「インパクトのある型破りな役」っぽい出演を考えていました(笑)
    ……まぁある意味では、型破りではあるし、インパクトもあります。
    普段の粟根さんは、なんか「普通じゃない」役が多いみたいなので (^^;
    今回の役ははっきり言って「普通」の真面目な人だし、粟根さん個人に限れ
   ば型破りと言えるかも。でもすごく似合ってるんですよー。というか、この役
   は完全に粟根さんに「当て書き」されてますね。もともとキャラメルは、初演
   の段階では「当て書き」の役が多いのですが、この「新庄先生」はいかにも、
   「粟根さんだからこうなった」という感じで。粟根さんじゃなかったら、こう
   いう先生には絶対なってないだろうなぁと思わされるくらいです。キャラメル
   好きな人に分かりやすく例を挙げるなら、『ケンジ先生』の山田さんみたいに、
   「この人じゃないとできない」役だなと思います。
    真面目で几帳面で、静かだけど大きな、教育と生徒への情熱を持っていて。
   卒業式に生徒に言う言葉をくり返すシーンは、自分が卒業式の日に言われてる
   気がしてきて、じーんとします。淡々と、決して力を込めて言うわけではない
   のですが、だからこそ、その言葉を言う「先生」の気持ちが自然と伝わってく
   るといいますか……言う人本人の「中身」が十分にあるから、「重み」も感じ
   られるんですよね、きっと。
    ……で、ところどころ可愛い面も見せてくれりしまして。ギャグをやる時の
   さりげなさとか、動きのキレの良さとか、そのあたりは「普段」の粟根さん的
   なのかも?(笑)
 
    大森さんは、「新庄先生の中に生きている奥さん」の役とでもいいますか。
    幽霊というのとは、また違う感じのようです。
    でも一概に、全てが「新庄先生の空想」とも言えない気が、私はします。
    都合のいい見方かも知れませんけど、奥さん=「優子」さん本人の気持ちは、
   「新庄先生」のそばに、何かしらの形で「残って」いたように思えます。
    最後に去っていく時の、「新庄先生」と「たまき」を見つめる優しい微笑み
   は、「優子」さん本人の気持ちがあるからこそだと思うのです。
    役の設定上、出番は少ないです。3シーンだけです。
    でもそれだけの出番で、すごい存在感があります。さすが大森さん……
    ……もうほんとに、最後の笑顔は、見たら泣くしかないです…… (T_T)
    今回、『銀河旋律』の「はるか」さんや『広くてすてきな宇宙じゃないか』
   の「おばあちゃん」的な役だという感想もどこかで読みましたが……そうです
   ね、どちらかと言うと「おばあちゃん」に近いでしょうか? 「恋愛感情」で
   はない「愛情」を持っているあたりとか。
 
    中村亮子さん、東京公演の間にだいぶ痩せたらしいです(観た人情報)
    「たまき」はハードな役ですからね……
    しかし、インターネット生中継で初めて観た時(3/14)は、かなり「うるっ」
   と来たんですが、生で観た時(3/22)は何だかそうでもなかったです。おや?
    クライマックスの「叫び」がポイントだと思いますが、3/22はそこのところ
   がもうひとつ、「心からの叫び」でない感じが……
    でも4/8に生中継で観た際には、かなり感情が出ているように聞こえました。
   (うちの接続速度だと画面はほとんど動かないので、台詞だけが頼りなのです)
    台詞がこの日に聞こえた通りの感じで、あと表情が伴っていれば、生で観て
   も相当「泣ける」場面だろうと思います。
    ……さて、大阪公演時には、どうなってるかな〜。
 
 
    一応、表面的には坂口さんが主役っぽいですけど、ストーリー自体の中心は
   「新庄先生」なので、話の「主役」は「新庄先生」、ストーリー進行係として
   の「主役」が坂口さんの「真澄」かな、という感じですね。
    今回の「真澄」はかなり男言葉なんですよね。坂口さんが男言葉をやると、
   少々乱暴な感じがするので私はあまり好きではないです。今回はストーリーに
   おける役の占有率がアコースティック等よりも低いから、まだましな風に思い
   ましたけど。あれでもっと出番が多かったら……うーん、やっぱりちょっと。
    坂口さんのヒロインは、どうも「雑な」感じもしてしまうんですよね。偏見
   かも知れませんけど……なんていうか、どの作品でもあまり性格に違いがない
   ように見えるので。脇役の方が中身に幅があって、私は好きです。
    あ、『レインディア・エクスプレス』の「ナオさん」は別ですけど。
 
 
    えーと、それから……
 
    今回よく話題にされるのが、西川さんの「日替わりネタ」。
    途中の授業のシーンで、寝ぼけた「鶴岡」くんが、寝言を言う部分があるの
   ですが。
    その内容を49ステージ全部を違うものにする、という話が加藤さんの日記の
   中で出たので、インターネットキャラメルファンの多くが、その内容を覚えて
   キャラメルページの「ネタばれOK掲示板」に書こうと頑張っています(笑)
    ちなみに3/22の昼は、その前後の時期に多かった「史恵さんネタ」でした。
    遊園地にデートに行って、「史恵」さんにつき合って絶叫マシーンに乗って、
   叫びまくってるという内容でした(笑)
    この時期は「昔話っぽいネタ」と「史恵さんネタ」が多かったです。
    それ以後、格言ネタ・アニメネタが増えたようです。2ステージある日は、
   たまに、マチネ・ソワレで関連づけたネタの場合もあったみたいです。
 
    それと、大内さん演じる「尾花沢」さんの強烈なインパクト(笑)
    最初の登場(ダンスシーン除く)から爆笑されてますからね。なにせピンク
   のバスローブでの登場ですから(うわぁ)
    このところずっと「かっこいい」系の役でしたし、このような「オカマ」な
   役は初めてですから、ファンであってもなくても、観たらびっくりしますよね。
   それがまた、妙にはまってるもんですから……(爆笑)
    結構、『四月になれば彼女は』の上川さんの役を連想されて、「ポスト上川
   さん確立」と言われてもいますが、私個人はそこまでは思わないです。確かに、
   あの役に多少似てはいますけど、今回ほど「オカマ」じゃなかったし、役柄と
   しては上川さんの役の方がずっと重要だったと思いますし。そもそも「ポスト」
   という言い方、私は好きじゃないんです。イメージ的に似てるところがあるの
   は認めますけど、お二人は「違う」役者さんだと思ってますから。
 
 
    ………………うーん、あんまり書くことはないと思っていたのですが、いざ
   始めてみるといろんなこと思い出して、書いても書いても終わらない。
    とりあえず、役やストーリーの細かいことに関しては一旦中断して、作品の
   全体に関して思うことを書くことにします。
 
    今回の作品って、泣けた、っていう感想がすごく多いですね。
    私も、もっと泣き虫(笑)だったら、ボロボロ泣いていただろうな。
    で、考えたんですけど……登場人物の感情が「人間の持つ気持ちの根源」に
   近いのかなぁと、そんな感じが。すごく根本的な気持ちをクローズアップして
   るから、登場人物のせつなさが伝わってくるのかな、と。
    要するに、「気持ち」の見せ方がいい意味で「ストレート」なのかなと思い
   ました。キャラメルはもともとそういうやり方なんですけど、最近は伝わって
   くるものが「分かりやすく」ないように感じる時もありましたし。今回で少し、
   以前の「分かりやすいストレートさ」が戻ってきたように感じられました。
 
    そういうのが嫌いな人とか、肌に合わないと言う人はいますよね。
    展開が読めすぎて意外性がない、と言う人も。
    確かに結末はわかりやすいかもしれませんが……
    でもそこへ行き着くまでに、誰がどう考えてどう動くか、それをどう見せる
   か、がポイントになると思います。キャラメルの気持ちや動きの「見せ方」は
   ストレート、ある意味では「あたりまえ」すぎるかも知れませんが、「あたり
   まえ」なことほど人の心を動かす場合はたくさんありますよね。
 
    あと、「亡くなった人・残された人を思う気持ち」が大きく扱われていると
   いう点も……一概にはもちろん言えませんけど、そういう部分があると切ない
   雰囲気が増加しますね。
    下手に扱うとじめじめと湿っぽい、陳腐なものになってしまうのでしょうが。
    そうなっていないのは、演出と役者さん両方の実力だろうと思います。
 
 
    時間を見て、続きを書けたら書きます。
    ……もしかしたら大阪公演の感想に回すかも知れませんが (^^;
                                 (00.4.11)
 
 
                  →大阪公演初日の感想は、こちら。
                  →公演終了後の感想は、こちら
 
 


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