・『エトランゼ』神戸公演初日の感想。

    2/16〜22、新神戸オリエンタル劇場での公演。
    2/16=初日を観てきました。
    M列(5列目)17番(センターブロック真ん中あたり)席での観劇。
 
    ……いろいろ考えました。
    まだ少しまとまらないところもあるので、とりあえずアンケートに
   書いたことをもとにして、進めていきます。
    (最初に言っておきますが、かなり辛い評価になってます。今回の
   作品でめちゃめちゃ感動した! という人は読むのをやめておいた方
   がいいかも知れません)
 
   1:セットが『MIRAGE』と全体的なイメージが似ている
   2:ほとんどのシーンでセットが全面使われるので、場所がどこだか
    すぐには分かりにくい時も多い
   3:ダンスの振りが最近マンネリ化している感じがする
   4:坂口さん=「ななえ」のキャラクターが根本的に、今までの真柴
    さん脚本の時と変わりないように思える
   5:「ななえ」が子供の頃に持っていたコンプレックスというか屈折
    感というか、そういったものがあまり見えてこない
   6:岡内さん=「里奈」が抱えているはずの苦しみが伝わってこない
   7:青山さんの出番が、他の役者さんに比べて極端に少ない
   8:坂口さんと西川さん=「八木沢」、岡内さん・藤岡さん=「開」・
    中村さん=「かずみ」たち家族、二つの物語のまとめ方がいきなり
    すぎる感じがして納得いかない
   9:大内さんがカーテンコールの挨拶でやたらととちっていた
   10:近江谷さんの挨拶になんだかいつもの元気がない
   11:「エトランゼ」がタイトルとして生きていないように感じる
   12:アンケートはお願いして書いてもらうものではないと思う
 
    1はセットを最初に見た時、連想しちゃいました。
    大きめの机、ソファ、階段というアイテムのせいでしょう。
 
    2。書いてから思いましたが、分かりにくいのは「ななえ」が自宅
   とスタジオの場面転換の時にいることが多いから、かな。なんか混乱
   する。
 
    3……なーんかどこかで見たようなダンス、と思った。
    同じ人が考えてるんだから似たような振りになるのはある程度仕方
   ないと思うんですが(うちのダンス教室の先生もそうだし)、それを
   別にしても、なんか目新しさが感じられなくて。キャラメルのダンス
   シーンはもともと好きなのに、最近ピンと来ない。
 
    4は、真柴さん脚本の坂口さんヒロインと聞いた時から、漠然とは
   予測していたことです。だって今までのそういったケースにおいて、
   あんまり変わりはない(と思った)から。大抵、バリバリ働く女性で、
   言葉遣いも(役によってはガサツなくらいに)はきはきしている、と
   いうキャラクター。今回もやっぱりそうだったな。
 
    5。「ななえ」は姉のようには両親に期待されなくて、小さい頃は
   一人で祖父母の家に預けられていて、自分だけが家族じゃないような
   思いを長いこと持ち続けていて。子供にとってそれは相当重い気持ち
   だと思うし、大人になって家を出てもそう簡単に払拭されるものでは
   ないんじゃないでしょうか。
    だけど劇中では、そういった思いがほとんど、最初の取材シーンで
   語られるだけで後は放置されている。お姉さん=「かずみ」に対して
   ある種の屈折感がありそうなものなのに、それが感じられなかったし。
 
    6。「里奈」はこの話のキーパーソンだろうと思うんですけど。
    家を出ようと決めるまでには、かなり悩んだり苦しんだりしたはず
   なのに、そういうのが見えてこなかったなぁ……普段がやけに明るい・
   元気なのは悩みや苦しみの反動と受け取れなくもないけど。
    でも「かずみ」と言い争う時の口調に、あんまり真実味が感じられ
   なかったかな……怒鳴ってるばかりで、気持ちをぶつけていない感じ。
 
    さて7。「開」を好きな元同級生の「磐梯」という役ですが。
    今回の登場人物の中でキャラクターとして成立しているのは近江谷
   さん=「ななえ」たちの元師匠「檜原」とこの役くらいじゃないかと
   思います。他の役は、なんだか中途半端。まだ公演の始めだから馴染
   みきっていないということもあるかもしれませんが、その時期に1回
   しか観られない人にとってはその時が全てだから、本来は言いわけに
   使えることではないですよね。
    で、「磐梯」さんがちゃんと出てくるのは1シーンだけなんですよ。
   まぁ役としてはそこしか出しどころがないのかも知れないけど、でも
   結構良かっただけにもったいなかった。他の人物は均等に全体に出て
   いるのに。
 
    8。「ななえ」と「八木沢」はラスト少し前で別れる寸前までいく
   し、「里奈」たち家族の問題もかなり深刻だと思う。
    そこまでこじれるのにかなり時間を費やしているわりには、収拾を
   つけるための時間が足りなくて、でも無理矢理まとめちゃったという
   印象が強かったんです。
    「八木沢」は、「ななえ」が結婚しても仕事を辞めるつもりのない
   ことに業を煮やしていたのに、その後「ななえ」の個展にはあっさり
   顔を出しているので、結局「八木沢」はその件をどうするつもりなの
   かが疑問。それまでの言動から判断する限りでは、考えを一転させて
   仕事のことを認めるってこともあまり予想できないし。別れかけてた
   時点から個展の間に、「ななえ」が「八木沢」に関して触れていない
   しなぁ。……というか、「ななえ」は「八木沢」をどんなふうに好き
   なのか、そこからしてまず分かりにくい。
    「里奈」たちは……うーん、いま考えると、家族って雰囲気がまず
   足りないように思える。なんでだろう? 状況が状況だから、会話が
   きつい調子であるのは当たり前なんだけど……それとは別に、以前は
   保たれていたはずの家族のつながり、みたいなものが分からなくて。
   大本の原因である父親が全然姿を見せないせいもあるのかな?
    で、まとまり方ですが……さっき試しに台本でその部分を見直して
   みたら、舞台で観るより台本でセリフだけ読んだ方がまだ納得はいく
   感じがしました。舞台では全然ダメだったのに、変な話だ。
 
    9。大内さんのカーテンコールでの挨拶を見るのはたぶん『竜馬』
   再々演に続き2回目。その時も思いましたけど……大内さんは挨拶に
   向いていないんじゃないかなぁ。いちいち話に詰まるんだもん。
    それはまだしも、今回、詰まるたびにいちいち言い訳をしていたの
   が気になりました。そんなことはしなくていいから(されると余計に
   いらつくので)もう少し落ち着いて話してください。
   
    10……なんでだか、近江谷さんは『カレッジ』再演の時から以前の
   ようなテンションの高さがない。演技の面では『カレッジ』の時より
   マシになってましたが、カーテンコールでの挨拶には元気がなかった
   です。時と場合によりますけど、基本的には昔みたいに弾けた近江谷
   さんが好きだなぁ。
 
    11。キャラメルはタイトルを劇中で使わないようにした方がいいん
   じゃないのか? なんかそう思います。『クローズ・ユア・アイズ』
   も『My Belle』もその点でコケてる(失敗してる)と思ったし。
    使わなかったとしても、今回はイメージそのものも弱いような印象。
   ……まぁ、チラシのイメージと比較しちゃ本当はいけないんでしょう
   けど、それにしてもずいぶん違ってしまったような。もっと、重たい
   感じでの用いられ方を予想してたんですけどね。チラシのコピー文章
   が「楽しいことなど何もなかった。早く大人になりたかった。」だし。
   だけどできあがったものは、その言葉やチラシの雰囲気が連想させる
   切実な重さというか、ある種の絶望感みたいなものは、それほど感じ
   させてないかも。それぞれのエピソードを自身で噛みくだいてみると、
   なんとなく理解できないこともないんですが、一度観ただけじゃ把握
   しにくいかも知れません。
 
    12。ある意味これが一番ひっかかる。
    『竜馬』再々演の神戸初日だったかな、初めて言われたのは。最近
   少ないから書いてくださいって。
    (もしかしたら『クローズ・ユア・アイズ』だったかも)
    最初に聞いた時には「へぇそうなんだ。じゃあできるだけ書くか」
   と思いました。自分自身、何回も行くうちの半分くらいは書かないで
   帰ってましたから。
    でもよく考えてみると、なんかおかしくないかな、と。
    だってアンケートって、観た人が書きたいと思った時に書くものだ
   と思うんですよね。良かったにしろ気に入らなかったにしろ、劇団や
   役者さんに伝えたいことがあるから書く。
    それが減っているというのは、なにかしら書いて伝えたいと思う人
   が少なくなっているということなのでは?
    そりゃあ、舞台をやる側としてはできるだけたくさんの意見や感想
   を聞きたいでしょうから、お願いしたいんでしょうけど。
    少なくとも私は、お願いする前に、減っているその理由をまじめに
   考えていますかと聞いてみたい。いや、全然考えてないとは言わない
   けど。……でもね、批判とか苦言とかは、かなりの確率で読み流され
   ちゃってる気がするんですよ、結構。
 
    あと、追加。
    今回は登場人物が10人と、最近のキャラメル作品としては少ない方
   ですが、そのわりに一人一人の存在感が薄いように思えました。
    上にも書きましたけど、初日の時点でキャラクターが成立していた
   (と思えた)のは近江谷さんと青山さんぐらいで、他は……うーん。
    坂口さんはヒロインというよりは狂言回しっぽいところがあるし、
   大内さんはメインに近いわりには作品中での役割が弱いし。西川さん
   はなんか芯が通り切ってないようなキャラで、かなり使われ方がもっ
   たいない気がしますし。岡内さんは上にも書いたように気持ちが出て
   いないし、藤岡さんはまあまあだけど『カレッジ』再演の延長のよう
   にも思えるし。小川さんと前田さんは、劇中での役割は果たせている
   けどそれだけかなって感じ。中村恵子さんもまだ、今一歩欠けている
   ところがありそうだし。
 
    正直な気持ちで総評して採点して、40点ぐらい。
    『怪傑三太丸』に匹敵する、消化不良な初日でした……
    予定ではあと2回観るんですけどね。どうなるでしょうね。
                             (01.2.19)
 

    神戸公演全体の感想は、こちらです。(ネタばれあり)(01.3.7)

    東京公演を観てきての感想は、こちら。(ネタばれあり)(01.3.21) 

 


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