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考えるヒントのお蔵 明日の教育の棚 第 1 番
少女たちの学ぶ意欲

2001年9月11日の米国同時テロは、世界最強・最富裕国であるアメリカが、初めて「本土」を攻撃された衝撃的な事件として、日本の世界史の教科書にもやがて記載されるでしょう。

その一方で、1919年にイギリスの植民地から独立した後も、旧ソ連軍によりの侵攻を受け、その後の内戦で疲弊しきったアフガニスタンの人々のことを、日本の学校で学ぶことは難しいでしょう。

21世紀幕開けの年の日本は、不況と先の見えない構造改革で、倒産やリストラが相次ぎ、狂牛病の不安にさらされていながらも、80円のハンバーガーや280円の牛丼が街にあふれる奇妙な豊かさに満ちている一方、幼い命を奪う残虐非道の殺人事件が毎日のように起きています。

財団法人日本青少年研究所などが実施した「新千年生活と意識に関する国際比較調査」の結果では、学校生活で重要なこととして「勉強」と答えた中高校性はパリの29%に対して東京は19%。

また、「21世紀は人類にとって希望に満ちた社会になる」と思う割合は、ニューヨーク・パリ・ソウルの中高校生は60〜80%だったのに対し、東京の中高校生は33.8%と悲観派が目立ちました。

そして、人生でもっとも大切な目標を7つの選択肢から一つ選ぶ問いでは、地位や名誉、社会貢献より「楽しんで生きること」を一番にした回答者が、ニューヨーク4.0%、パリ6.3%、ソウル34.7%であったのに対して、東京は61.5%でした。

不登校・いじめ・学級崩壊・学力低下etc.日本の学校では、学ぶことの難しさばかりが目に付き、学ぶことの喜びや目的が見えにくくなっています。

互いが抱える大変さやつらさを共有することが難しく、すべての解決を「一人一人の心がけ」「一人一人のがんばり」という耳に優しい言葉で済ませがちで、結果的に人と人との絡み合いを遠ざけ、あらゆる問題の解決を阻んでいるのかもしれません。

「一人一人はそれほど強い存在ではない」「誰であれ、手助けなしには生きられない」という当たり前の事実からスタートした時、初めて解決への道が開けてくるのではないでしょうか。生きる意味も勉強の目的も、一人の閉じた世界の中では見出せないでしょう。

勉強する意味や目的について、多くの母親や父親は「勉強はあなたの将来のため」と言って励まします。しかし、「競争」から「共生」へと移り変わりつつある時代にあっては、そうした言葉は子どもたちの学ぶ目的を余計に見えにくくさせてしまっているのではないでしょうか。

「誰と手を携え、何を変革するために、どんな力が要るのか」、「人とのかかわりの中で自分をどう役立たせることができるのか」という視点が定まった時、学ぶことへの大きな意欲が生み出されてくるのだと思います。

下の記事紹介にあるアジア・アフリカ諸国の少女たちは、厳しい抑圧や戦禍の中で必死に学ぼうとし、学ぶ喜びを得ています。一方、アメリカの一人の少女は、アフガニスタンを攻撃する米軍の姿をテレビで見て「反戦クラブ」を作ろうとし、停学処分となりました。

自分の生きる意味や将来の夢や学ぶ意味を見つけられない日本の少女たちが、そうした地球の片隅で生きているたくさんの少女たちの姿から、何かを見つけてくれれば、幸いです。

お時間があれば米国同時多発テロ 9月11日の悲劇から学ぶこともご覧ください。

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  • 米少女の叫び、世界が共感/子らの将来盗まないで/連日メール数十通   2003/03/27
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  • 「反戦クラブ」計画女子高生停学処分/米国/裁判官も支持  2001/11/02
「アフガニスタンのぞき窓」へもどうぞ
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