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考えるヒントのお蔵  教育と性の棚  第2番
教師の性暴力−スクール・セクシュアル・ハラスメント
守り育てられるべき子供達が、性暴力の対象になっています。
 「指導」や「親愛の情」の名を借りたセクハラ。未成年者と知りながらの児童買春。

2000年度、わいせつ行為を理由に懲戒などの処分を受けた公立小中高校の教員は141人。1990年度は22人だったのが10年間で6倍になりました。
しかも教え子が被害者というケースが増え、過半数をしめています。

数の上では、児童買春元教諭猶予付き判決 京都地裁のような、校外での児童買春、児童ポルノ禁止法違反や迷惑行為防止条例違反、青少年健全育成条例違反、児童福祉法違反によるもの多くあげられますが、教え子に対する性犯罪=スクールセクハラも後を絶ちません。

その中で目立つのは京都の中学教諭/生徒更衣室盗撮/市教委処分へのような校内での盗撮ですが、教師という地位を利用した暴力性の高い犯罪も少なくありません。

その根っこには、体罰や理不尽な校則をも「当たり前」にしてしまう、閉鎖的かつ排他的な学校の構造と、教師や管理職の低い人権意識があるのかもしれません。

その典型的な例は、1998年から2000年にかけて繰り返されていたセクハラ教諭立ち入り制限/被害女生徒の校舎/豊中の高校 体育祭は自宅待機/体罰も 減給1か月事件です。

同様の事件は1999年の香川の中学教諭/宿題を忘れた罰/ブルマー姿撮影/発覚後辞職、処分なし事件や、2000年10月熊本県の小学校で起きた女児の全裸体罰/教諭「見ていた」/熊本 学校調査偽る事件、2001年6月埼玉県で起きた裸の写真を生徒に要求/埼玉の中学校教諭事件、2001年11月大阪府立高校の体育科の男性教諭(44)による女子高生「電車で痴漢」/先生「下着が派手、見せろ」/大阪府教委が減給処分事件などがあります。

また中学・高校では、クラブ顧問による被害が目立ちます。顧問と生徒との主従関係がもとにある女生徒に「服、脱いでみろ!」/男性教諭、懲戒免職/千葉の中学事件がその典型ですが、文化系クラブの合宿中の大阪府立高/男性教諭/セクハラで諭旨免事件などもあります。

ただ、わいせつ行為や体罰にまつわる処分の件数が急増しているのは、教員のモラルの低下が原因だとばかりはいえません。むしろ、この10年間に様々な性にまつわる法律が制定されてきた中で、被害者である子どもたちや保護者の意識が変化し、問題が「顕在化」したことによるのではないでしょうか。

こうした状況に対し、文部省や各教育委員会も教師  生徒の性意識  課題/テレクラからむ事件続発/わいせつ行為  過半数、子ども相手/電話経験「ある」 中学女子10%以上のように教師と生徒双方の性意識を分析して対応策を検討したり、スクールセクハラ許さない/専用の相談窓口設置の動き/2次被害への恐れ残るのように、それなりの対応をすすめています。

さらに日本陸上競技絵連盟は2002年9月3日、スポーツ競技団体としては初めてをセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)や暴力行為防止のための「倫理に関するガイドライン」を発表しました。そこには「愛撫、つねる、キス」とならんで「恩着せがましい態度や、えこひいき」「性、またはホモセクシュアルに対する落書き」などもセクシュアル・ハラスメントの具体例として示されています。ただガイドラインの内容や相談窓口のあり方、セクハラを生む日本のスポーツ界の“風土”については多々問題があることがセクハラ 課題多いスポーツ界/日本陸連「ガイドライン」発表から4ヶ月でも指摘されています。


また、 2001年4月愛知県の生徒にわいせつ容疑/元高校教師書類送検へ事件や、2002年6月石川県の12年前のセクハラで高校側に賠償命令事件(よみうり教育メール抜粋教師のセクハラ関連記事特集)のように、関係を持った生徒から卒業後告訴されたケースもあります。

こうした在学中は伏せられていた事件が卒業後に発覚し、告訴されるケースも出てきていることは、現状でも「指導」されている立場の生徒が訴えることの難しさをあらわしているといえるでしょう。

そうした中で、担任に相談に行った際、密室で体を触られ、「泣き寝入りしていたら、先生はまた同じ事をする」と思って提訴した13歳の被害生徒が、裁判所でも直接意見陳述をした事件学校に黒いオーラ感じる/被害少女が意見陳述/担任のわいせつ事件、25日判決/直接言いたかったは画期的な出来事だといえましょう。これに対し、大阪地裁堺支部は2003年2月25日、強制わいせつ罪により懲役2年6カ月執行猶予3年(求刑懲役2年6カ月)を言い渡しました。


さて、もう一つ教師と生徒とのかかわりで問題になるのは、「指導」の過程における恋愛感情でしょう。成人である教師が、未成年である生徒と性的な関係を持った場合、青少年健全育成愛護条例等の青少年 健全・愛護・育成 条例の「淫行」に関する条項で罪に問われます。
その典型的な例は1999年の新潟県の中学校で起こった中3の教え子妊娠させ免職事件です。(この顛末は、当事者の元教師が『空を見上げたくて ある青年教師による教育実践記録』に綴っています。)

またそれとは罪をことにしますが、中3教え子と一緒にH写真/札幌の教諭懲戒免のような不可解な事件もいくつかあります。

成人である教師と未成年の生徒との「恋愛」を単純に否定することはできません。しかし、当人の意識がどうあれ教師と生徒の関係は非対等な関係です。そうであればこそ、大人である教師の冷静な判断力が問われるのでしょう。

こうした教師の「性的な不祥事」を校内で公然と問題にし、人権意識を高めるための法的学習をすることすら、多くの学校ではきわめて困難でしょう。それをどう乗り越えていくのかを考える上で、現職校長玻名城英介氏が沖縄の高校の事例をもとに著した『教師の不祥事は防げるか  教師のための不祥事防止マニュアル』は、おおいに参考になると思います。また宮淑子氏のルポルタージュ『黙りこくる少女たち  教室の「性」と「聖」』は、教師の性犯罪の構造解明に迫った力作です。

最後に忘れてならないのは、学校における生徒同士のセクハラです。それは時に同性間においてもいじめ≠フ形をとってなされますが、より直接的な異性間による性暴力も起きています。それを教師がつかむことは極めてまれではないでしょうか。

だからこそ「私、負けへんから」 性行為強要の上級生を強姦罪で告訴/関西の中1女子生徒のような事件がおきたときには、教師は学校組織を挙げて、その人権を守り抜く姿勢を示さねばならないでしょう。

(2003/08/10改訂)
図書紹介
  • B173 & B333 スクール・セクシュアルハラスメント
    • 黙りこくる少女たち    教室の中の「性」と「聖」    宮淑子  
    • 白書  スクール・セクシュアルハラスメント   実態・防止・解決
    • スクール・セクハラ防止マニュアル
    • SPACE A BOOKS〈3〉  性被害のふせぎ方 家庭と学校
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