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研究紀要「女子学園におけるジェンダー及びセクシュアリティに関る課題
新聞報道等に現れた「性」にまつわる意識と問題第
U部 女子学園と性暴力」より抜粋
ProjectG/記事紹介 N333&N173 教師(校長)のセクハラ特集

3-1 新聞記事からうかがえるスクール・セクハラ 教師による犯罪

マスメディアによるセクハラ防止キャンペーンがしげく行われている中でも、なおセクシュアル・ハラスメントやドメスティック・バイオレンスを「犯罪」として認識することができない人々が多数いる。また、教育の現場におけるセクシュアル・ハラスメントについては、その存在自体が否定されたり無視されたりすることさえある。しかし、教職員が関与する猥褻行為については、新聞紙上でも何度も大きく取り上げられてきた。

1998年の秋には朝日新聞でもスクール・セクハラが特集され、大阪市の教員や弁護士で作る「子ども性虐待防止市民ネットワーク・大阪」の取り組みや、兵庫県川西市教育委員会が「子どもの人権オンブズパーソン」の設置に向けて準備を進めていることが紹介されている。スクール・セクハラの「増加」は他のセクハラや性暴力被害と同様に実数が増えているのではなく、社会の中で子どもへの「いたずら」が性虐待であり「犯罪」として認識されるにつれ、表ざたになった件数が増えたに過ぎないというのが実態であろう。被害の実態が社会的に知られるところとなったにもかかわらず、1998年度の被害は更に深刻となったことは、次の新聞報道にも現れている。

1999年12月28日付読売新聞朝刊1面

見出し 「わいせつ教員処分最多76人」「『心の病』で休職1707人」

1999年12月28日付京都新聞朝刊1面

見出し 「わいせつ処分最悪76人にも 公立小中高などの教員 目立つ悪質化」

記事概略 「児童・生徒らに対するわいせつ行為を理由に、1998年度に処分を受けた公立の小中高などの教員は76人に達し、最悪だった96年度(67人)を上回った。減給や戒告にとどまらず免職処分となった教員は53人と過去最多で、教え子が被害に遭うなど悪質なケースが多かった。わいせつ行為による処分の内訳は懲戒免職34人、諭旨免職19人。停職は10人、減給4人、戒告2人、訓告などの注意処分は7人だった。猥褻行為の対象は、34人が自校の児童・生徒、5人が卒業生で計39人が教え子だった。」

小・中・高校生や大学生が、学校と関わりのあるところで被害にあった性暴力、またその職場における性暴力や性的被害に関する1998年から2000年にかけての新聞報道を列挙したのが、次の【表2】である。

【表2】

小・中・高でのスクール・セクシュアル・ハラスメント

月日

新聞

地域

「見出し」と記事の概略

罪・処分

1998.
9

朝日

神戸

「教諭、部員にわいせつ行為 市教委、処分せず」神戸市立中学校で、38歳の柔道部顧問の教員が柔道部員だった3年の女子生徒をTシャツやブルマーを着用しないよう指示した上で練習場に呼び出し、胸などを触った。さらに、大会予選前には「全国大会に出られなかったら俺の女になれ」などと何度も話した。

処分なし

1999.
2.23

朝日

大阪

「教え子救え 先生支援 人権申し立て『養護学校でセクハラ』」大阪の養護学校の48歳の教諭が車で自宅に送る際、手を握ったり抱き付いたり、同級生や上級生もキスを求められるなどした。

処分なし

1999.
3.9

朝日

大阪

「わいせつ行為教諭に有罪」44歳の高校教員が顧問をする柔道部員を体育教官室に呼び付け抱き付いて、無理矢理自分の身体を触らせるなどした。また別の女子部員にスポーツマッサ−ジをするとだまして体を触った。

条例違反懲役9月

1999.
5.8

朝日

大阪

「『生徒にセクハラ』認定 大阪弁護士会元府立高生申し立てで」54歳の数学担当の高校教員から、ドライブに誘われた際無理矢理胸を触られキスをされた。別の一人は数学準備室などで「抱いたる」「いっしょに寝たるわ」などと言われたり体を触られた。

処分なし

1999.
8.21

朝日

新潟

「中3の教え子妊娠させ免職」28歳の中学教師が教え子の中3生徒と付き合い妊娠させていたのは、県青少年健全育成条例に抵触する行為である。

懲戒免職

1999.
9.1

京都

愛知

「女子高生とみだらな行為 愛知で容疑の教諭逮捕」41歳の小学校教師がわいせつビデオに興味を持ち、女子高校生徒のみだらな行為をビデオ撮影していたうえ、ビデオショップに持ち込まれていた疑い。

県青少年条例違反

1999.
9.1

京都

滋賀

「京の中学教諭逮捕 女子中学生にわいせつ行為の疑い」49歳の補導主任をしている数学担当の中学教師が、テレホンクラブで知り合った滋賀県内の中学生二人にみだらな行為をした。

条例違反

懲戒免職

1999.
9.20

朝日

浜松

「更衣室前にビデオ 浜松高校教諭、自宅待機に」36歳の保健体育科教員が校内の合宿所の女子更衣室前にビデオカメラをポリ袋に包んで設置していた。

自宅待機

1999.
11.2

京都

福岡

「野球部が寮で少女集団暴行 容疑で4人逮捕 西日本短大附属高」19歳の野球部OB、20歳の寮監と18歳の現役野球部員二人が少女二人を校内の寮で暴行した。

婦女暴行容疑

1999.
11.3

京都

熊本

「クレー射撃協会今度は役員セクハラ熊本国体、女子中生に」熊本国体で役員二人が手伝いの女子中学生に「胸が大きい」などと言ったり、体を触ったりした。(2000.1.7理事全員が辞任。同協会は3年前の神奈川国体でもセクハラ騒動を起こした。)

辞任

1999.
11.16

朝日

大阪

「女生徒に教諭わいせつ容疑」46歳の生活指導主事で保健体育科の中学教師が相談室に相談にやってきた中学二年の生徒の服の中に手を入れるなどの猥褻行為をした。

強制猥褻

懲戒免職

1999.
12.2

読売

奈良

「奈良県立高校セクハラ訴訟『県は1100万円支払え』地裁判決」36歳の奈良県立高校演劇部顧問を部員四人に三年間に渡り演技指導と称して暴行や体を触るなどセクハラ行為を繰り返した。

1100万円の損害賠償

1999.
12.21

朝日

富山

「教え子の下着盗む 容疑の高校教諭を逮捕」38歳の教員がこの5年間に約30人の自分が勤務する高校の女子生徒宅に忍び込んで約300点の制服や下着を盗む。盗品の画像をパソコンで管理。

窃盗

大学におけるキャンパス・セクシュアル・ハラスメント

1999.
2.9

京都

広島

「スカートの中手鏡でのぞき見県立広島女子大卒論指導の助教授」44歳の生活科学部助教授が女子学生数人に対し、論文指導の際ズボンのポケットに忍ばせた手鏡を使って机の下からスカートの中を数回覗き見した。

論旨免職

1999.
5.25

朝日

仙台

「セクハラ賠償750万円 仙台地裁東北大助教授に命じる」45歳の助教授は修士課程在学中の女性に対し、論文指導時に性的な冗談を言うとともに、君に恋愛感情を持っている。指導教官を降りたいなどと発言。距離を置いてほしいと大学院生が言うと論文の評価を一変させ書き直しを命じた。

損害賠償

1999.
7.23

朝日

「三重大女子学生4人に乱暴医学部の5人退学処分」1999年5月に集団で女子学生4人に対して乱暴をした医学部生5人を退学、4人を無期停学、4人を厳重注意の処分にした。

退学等

1999.
7.24

朝日

徳島

「セクハラ教授停職一ヶ月に徳島大」40歳代の総合科学部の教授が女子学生二人に研究室などで胸に触ったり、膝の上に座らせたりしたとした。徳島大学評議会は停職一ヶ月の処分を決めた。

停職

1999.
7.31

朝日

東京

「慶応大生 女子学生を集団乱暴 婦女暴行容疑 医学部の5人逮捕」慶応大学医学部の23歳の四年生から18歳の1年生までの5人が都内の大学に通う女子一人を集団で乱暴した。

婦女暴行

全員退学

1999.
8.6

朝日

北海道

「セクハラなどで教授懲戒免職北海道教育大」57歳の英語科教授が女子学生に対するセクハラや単位を認定しないと迫るなどした問題で、同大の代議委員会は懲戒免職を決定した。

懲戒免職

1999.
10.23

朝日

東京

「セクハラ学生無期停学 早大、ガイドライン適用」盗撮行為をしていた社会科学部の学生を学内のセクシュアル・ハラスメント防止ガイドラインを適用し、無期停学処分とした。

無期停学

1999.
10.28

朝日

西宮

「関学元教授のセクハラ認定学内調査委」42歳の法学部元教授が、6人の女子学生に対し学内外でキスや飲酒を強要する7件のセクハラ行為を重ねていた。学内に設置した調査委員会はセクハラと認定した。

依願退職

1999.
11.12

京都

徳島

「鳴門教育大のセクハラ教授の上告棄却賠償命令が確定」64歳の心理学ゼミを担当した教授が、暗に愛人関係を求めたり女子の異性関係を詮索する手紙を多数出したことで大学院を休み勝ちになり博士課程への進学を断念した女性が損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は210万円の支払いを命じた一、二審を支持

損害賠償

1999.
12.22

朝日

広島

「セクハラ容疑教授を解雇に広島修道大、本人反論」60歳の人文学部教授が三人の女子学生の髪や体に触るなどのセクハラ行為をしたとして懲戒解雇にした。

懲戒解雇

2000.
1.8

朝日

仙台

「セクハラ敗訴教官懲戒免へ東北大学」セクシュアル・ハラスメントをめぐる民事訴訟で、仙台地裁から750万円の支払いを命じられた48歳の助教授について、懲戒免職処分が決定された。

懲戒免職

学校職場における職員間のセクシュアル・ハラスメント

1999.
6.4

朝日

仙台

「東北生活文化大セクハラ訴訟『教授は700万円払え』仙台地裁元職員の主張認める」50代の元指導教官が大学職員になった女子に対し交際中の男性と別れるように迫った上、お前が大学で働けるのは俺が推薦してやったからだと怒鳴り無理矢理性的関係を持ったことに対し、仙台地裁は「職員に対する教授の立場を利用した行為」として700万円の損害賠償を認めた。

損害賠償

1999.
6.22

朝日

千葉

「指導教官からセクハラ 大学院生、提訴へ 千葉大医学部」指導教官だった講師が大学院生に対し、学会に参加した際ホテルの自室に呼ばれ抱き付かれたりベッドに押し倒されたりしたことにより、指導を受ける自信を無くし精神的な苦痛を受けたとして880万円の損害賠償を求めっる訴訟を起こす。

1999.
10.20

朝日

京都

「高校教諭がセクハラ女性講師の体触る府教委へ報告せず」30代の数学教師が歓送迎会の席で20代の女性講師の体に何度も触ったとして、府教委は「府立学校セクシュアル・ハラスメントの防止に関する要項」を策定していたが、同校は府教委に事実を報告していなかった。

文書訓告処分

1999.
11.1

朝日

奈良

「セクハラで校長を処分奈良県教委、減給に」57歳の小学校校長が女性教諭二人に宴会の席で胸を触ったり腕を引っ張って隣に座るように言ったとして、奈良県教委は減給10分の1、三ヶ月間の処分をした。

減給

1999.
12.15

朝日

佐賀

「同僚教師を隠し撮り佐賀で諭旨免」30代の中学教員が20代の同僚教師の机の下にビデオカメラを仕掛け隠し撮りをしていたとして、県教委は論旨免職の処分をした。

論旨免職

1999.
12.29

読売

横浜

「セクハラ校長停職一ヶ月横浜市教委」56歳の小学校校長が職員に対して帰りに橋の下でまってるよとか、職員のカバンを見てお医者さんごっこをしてるんじゃないのなどと少なくとも9回のセクハラ発言をしていたことに対して、市教委は停職一ヶ月の懲戒処分にした。

停職

大学生による中学生への性暴力

1999.
10.28

京都

神奈川

「中大法学部生ら逮捕 女子中生を集団暴行」中央大学法学部三年生の二人を含む5人が、海水浴場で知り合った女子中学生をアパートに連れ込み集団で暴行した。

婦女暴行容疑

退学処分

これまで性暴力の加害者と言えば、性欲に駆られた異常者や性的衝動を抑えられない変質者、つまりは特別な人間の仕業として描かれ、また性的暴力を他愛のない悪戯や冗談で済ませてきがちであった。しかし、こうした新聞報道からうかがえることは、加害者が、若い男性に限ったものでも見知らぬ人でもなく、常に身近にいて社会的な信用を受けているはずの経験豊かな教員に多いと言うことである。そして、意識をしていようといまいと、「立場を利用した性的な嫌がらせ」は犯罪であると言うことである。