西内科神経内科クリニック 本文へジャンプ


生活習慣病における最近のニュース

  糖尿病に新薬誕生!


糖尿病の治療に昨年暮れからDPP-4阻害剤とよばれる新薬が登場しました。

この新薬は確実な血糖降下作用に加えて、副作用がほとんどないというクスリに

しては珍しい特徴があります。特に糖尿病の治療で一番怖い「低血糖」を心配し

なくてよいのは特筆すべきです。糖尿病患者さんは800万人近くいると推定さ

れていますが、多くは未治療で、本人も気づいていないのが現状です。

糖尿病は初期のうちは自覚症状がありませんが、長期間放置していると細い血管

の障害による合併症をひきおこし、網膜症、腎症、末梢神経障害の原因となりま

すまた、太い血管の障害により、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症の原因と

もなります。対策としては早期発見と適切な治療によって血糖値をコントロール

し、これらの合併症を未然に防ぐことが大切です。糖尿病の治療は食事・運動療

法と薬物療法が基本とされています。

ここで、新薬のDPP-4阻害剤について簡単に説明します。

食事をすると、口から入った炭水化物は消化管から吸収されて血糖値を上昇させ

ますが、これに対応してインスリンというホルモンが膵臓から分泌されて血糖値

を下げます。この場合、糖を口から摂取したほうが静脈から直接入れるよりも

インスリンの反応が高いことが知られていました。これは消化管からもインスリ

ン分泌を刺激する物質が出るためと考えられ、この物質はインクレチンと呼ばれ

てきました。現在、インクレチンとしてはGIPとGLP-1の2種類が知られています

が、医薬品として使われているのはGLP-1の方で
GLP-1は血糖値の上昇に応じ

てインスリン分泌を促進しますが、半減期が数分ときわめて短く、DPP-4という

物質によって分解されます。糖尿病薬として開発されているのはGLP-1と同じよ

うな働きをする物質、あるいはGLP-1の分解を阻害する物質ですが、現在、日本

で発売されているのは後者です。これはDPP-4を阻害して、GLP-1の活性が長期間

維持されるようにしたもので、DPP-4阻害剤と呼ばれています。

日本ではメルク(商品名:ジヤヌビア)とノバルティス(商品名:エクア)から

発売になっています。当院でも発売開始以来このクスリを使用していますが、

確実な血糖降下作用に加えて、ほとんど副作用もなく、優れた治療効果を得て

います。

この薬が使えるようになったのは2型糖尿病の患者さんにとって大きな福音と

いえるでしょう。なお、GLP-1はインスリン分泌を促す以外にも、インスリン

分泌する膵のランゲルハンス島のb(ベータ)細胞増殖作用、血糖値を上げる

ホルモンのグルカゴン分泌抑制作用、胃排泄抑制作用、中枢性食欲抑制作用を

有しています。