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をとりあげていました。同市は「がん」による死亡率が日本一低く、高齢者 医療費も全国平均とくらべて20%も低い地域です。「がん」だけでなく、 心臓疾患、脳血管疾患で亡くなるヒトも県内の他の地域とくらべ、それぞれ 15%、30%少ないとのことです。簡単に言えばお年寄りが皆元気だと いうことですが、これはすごい数字です。 この掛川市民の健康の秘密はどうやら緑茶にあるらしいのです。 緑茶には色々な成分が含まれています。主な成分にはタンニン(渋み)、 カフェイン(苦み)、テアニン(旨味)、ビタミンC、ビタミンE、 ビタミンB2、葉緑素などがあります。タンニンの中にはポリフェノール の1種であるカテキンという成分が含まれます。カテキンの主要成分 エピガロカテキンガレート(EGCG)という物質はきわめて多様な生理活性 と健康増進効果をもつことが知られ、多くの研究対象となっています。 以下にカテキンの効用を挙げてみます。 (1)コレステロール減少作用。 血液中の悪玉コレステロール値が正常より高い状態が長年続くと、動脈硬化 が促進されて、心筋梗塞や脳梗塞をひきおこします。カテキンは悪玉コレス テロールを減らすことが知られています。 (2)血圧低下作用。 カテキンには降圧薬のアンジオテンシン変換阻害薬(ACE)と同様の働きがあ り、血圧を下げる効果があります。 (3)抗酸化作用。 人間の身体は、代謝により活性酸素がつくられますが、それが増えすぎると 組織や細胞に障害を与え、さまざまな病気の原因となり、老化を促進します。 したがって、活性酸素が増えすぎないようにすることが大切です。カテキン には、活性酸素を消去する抗酸化作用があります。緑茶はカテキン以外にも β-カロテン、ビタミンE、ビタミンCなどの抗酸化ビタミン類も多く含まれて おり、最も有効な抗酸化飲料といえます。 (4)肥満解消作用。 カテキンを食事とともに摂取すると、脂肪の吸収がおさえられます。これに より、体重減少だけでなく腹部の脂肪も減ることが知られています。 (5)免疫を高め、インフルエンザから身体を守る。 EGCGは腸内環境を改善し、善玉菌(ビフィズス菌、乳酸菌)の増加により免 疫活性を高めます。また、抗インフルエンザ作用があることも知られています。 (6)「がん」予防効果。 緑茶をたくさんのむヒトは「がん」にかかりにくいという疫学的統計がありま す。なぜ緑茶が「がん」予防に良いかという点については判っていません。 カテキンに抗がん作用があるかどうかも不明ですが、緑茶を多くのむ地域や、 緑茶の産地では「がん」になるヒトが少ないのも事実です。カテキンの抗酸 化作用、抗突然変異作用などの関与が考えられています。 (7)アルツハイマー病の予防。 EGCGはアルツハイマー病の原因と考えられているβセクレターゼを阻害して 脳のβアミロイドの蓄積を防ぎます。現在使われているアルツハイマー病の治 療薬は脳の神経伝達物質であるアセチルコリンの分解を抑えて増加させるこ とで一過性に認知機能の改善をはかるものですが、神経細胞が死んでいくの をふせぐことはできません。アルツハイマー病では長い年月をかけて脳にβア ミロイドが蓄積し、それが神経細胞を死に至らしめると考えられています。 βアミロイドの蓄積を阻止できればアルツハイマー病はおこらないというのが 研究者間の定説です。βセクレターゼはβアミロイドを作る酵素で、その活性 を抑えることが出来ればβアミロイドの蓄積を防ぐことができます。現在、世 界中でアルツハイマー病治療薬としてβセクレターゼ阻害剤の開発がおこなわ れています。EGCGはその効果があるので、認知症の予防の面からも期待さ れています(*)。 (8)緑茶をのむと死亡率が低下する。 冠動脈疾患や「がん」、脳卒中にかかっていない40歳以上の日本人4万人を 11年間追跡調査し、緑茶の摂取量と全死亡率または原因別の死亡率の関連を 調べた結果では、緑茶の摂取量と全死亡率の低下に有意な逆相関が認められ ました。緑茶の摂取量と冠動脈疾患による死亡率にも有意な逆相関が認めら れました。 ただし、この研究では緑茶の摂取量と癌による死亡率に有意な相関は認めら れませんでした(**)。 この他にも沢山の効果が報告されています。緑茶が健康維持と疾病予防に大 変有用なのは間違いないと思います。 それでは、どれくらいのめばいいのか? 掛川市民のお茶の飲み方は深蒸し といって長時間蒸すことで渋みを和らげる方法を取っています。この方法だ と、ふつうのお茶よりもβカロテン、ビタミンE、葉緑素が豊富になるようで す。ガッテンでは1日3杯(600ml)を推奨しています。 ふつうの緑茶でも、毎日のむことで健康増進につながると思います。 [参考] NHKためしてガッテン2011年1月12日放送「お茶!がん死亡率激減!?超健 康パワーの裏ワザ」。 *The Journal of Neuroscience, Volume 25, 2005, Pages 8807-8814. Phytotherapy Research, Volume18, 2004, Pages 624-627. ** JAMA, Volume 296, 2006, Pages 1255-1265. |
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