フリー・クライミングのあれこれをお届けする独断と偏見のページです
フリー・クライミングは安全だとよくいわれます。 しかし、やり方を間違えれば、怪我や致命的な結果をまねいてしまうということが、これまで実際にあった事故からわかります。 クライミング・ジムや岩場で「よくそれで今まで生きてるなあ」と思われる人を見かけることもあります。 正しい知識と技術を早く身につけ、自分の安全は自分で守り、楽しくクライミングしましょう。
私なりの答をまとめました。 ほかの人にたずねれば別の答が返ってくるかもしれません。 たいして登れないくせにエラソーなことも書きましたけれど、楽しみながら上達する助けになれば幸いです。
(問) フリー・クライミングやボルダリングとはどのようなものか一度試してみたいと思います。どうすればいいでしょう?
(答) 最近はクライミング・ジムがいろいろな場所に増えたので、一度出かけてみるといいでしょう。
靴などの必要な道具を貸してくれるジムも多いので、
運動のできる服装とお金を持っていけばフリー・クライミングやボルダリングが体験できます。
登録料(初回のみ)が2000円、使用料が一日2000円程度です。
初心者対象の無料講習会を開いているジムも多いです。
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(問) フリー・クライミングを始めたいのですが、どうしたらいいでしょう。
(答) 独習する、山岳会に入る、などの方法も考えられますが、安全性と上達の早さから、
私はクライミング・スクールや講習会に参加することを勧めます。
『Rock & Snow』や『山と溪谷』などに募集広告がでています。
当然お金がかかりますけれど、よほどの人格者か下心のある人でない限り、まったくの初心者にタダでクライミングの手ほどきをしてくれる人はほとんどいないと思います。
(近くにそういう人を見つけられれば幸運です。)
いろいろなスクールがあるので、できればそのスクールに参加したことがある複数人の意見を聞くとよいでしょう。
中にはヘンな所もあるようなので慎重に選びましょう。
スクールに入る目的は早く「一人立ち」することです。 岩場へ行き、ルートを選び、リードし、ヌンチャクなどを回収するという一連のことが自分でできるようになることです。 スクールの卒業生で作っているクラブなどがある場合もあります。 そういう所では、以後の仲間も見つけやすいでしょう。
スクールや講習会に参加するだけでうまく登れるようになると勘違いしている人もいます。
しかし、自分なりに努力しなければ上達は望めません。
お客さん状態になって講師の言う通りに登っているだけでは、財布は軽くなるでしょうが、登れるようにはならないでしょう。
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(問) フリー・クライミングの入門書を紹介してください。
(答) まったくの初心者の方には
「フリークライミングのススメ」
を勧めます。
最新の情報にもとづいて書かれた本格的な教科書としては
「ヤマケイ・テクニカルブックF フリークライミング」があります。
安全なクライミングのためには
「生と死の分岐点」
も読んだほうがいいでしょう。
そのほかのクライミング関係の本については
「本の紹介」
をご覧ください。
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(問) ボルダリングに必要な道具などについて教えてください。
(答) まず、クライミング用の靴、滑り止めのチョーク(体操選手が使う白い粉)、チョークを入れるチョーク・バッグが必要です。 これだけあればボルダリングできます。 靴については「クライミング・シューズはどれがいいの」をご覧ください。
外へ行って実際に岩を登るには、さらに、歯ブラシと、地面にひく雑巾やカーペットの切れはしもあった方がいいでしょう。
歯ブラシはホールドを掃除したり、岩につけたチョークを落とすために使います。
登る前には、毎回、必ず、クライミング・シューズの底をきれいに掃除しましょう。
泥や砂がついているとフリクションが極端に悪くなってしまいます。
課題のスタート地点に雑巾やカーペットをひき、靴底が汚れないようにして登りはじめます。
お金に余裕があるなら、ボルダリング・マット(クラッシュパッドとも言う)があると安全性が高まります。
落ちたら危険な所にあらかじめ置いておき、墜落したときの衝撃を吸収するためのマットです。
ジムには大きなマットがありますが、岩の下にはマットはありませんからね。
マットの置き場所には気を使いましょう。
マットがあれば安全というものではありません。
マットの上に落ちても、落ち方が悪いと骨折することもあります。
ギリギリまで自分の力を出しきることは大切ですけれど、それは落ちても安全な場合に限られます。
ボルダリングでの死亡事故の話はほとんど聞きませんが、人気エリアやジムでの捻挫や骨折などは日常茶飯事です。
上に登れば登るほど落ちた時のダメージが大きくなることを忘れず、自分をコントロールしながら怪我のないボルダリングを楽しみましょう。
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(問) ルートを登るのに必要な道具について教えてください。
(答) 最初に言っておきたいことは、道具をそろえるだけでは安全は保証されないということです。 どんなによい道具を買ってきても、使い方を知らなかったり、間違った使い方をすれば、致命的な事故になります。 特に、岩場に行ってルートを登る場合には、自分なりに安全を確保したうえでクライミングするようにしてください。
「ボルダリングに必要なもの」
と同じく、まず、クライミング用の靴、滑り止めのチョーク、チョークを入れるチョーク・バッグが必要です。
ジムのトップ・ロープを借りて壁のルートを登るにはさらにハーネス(安全ベルト)が必要です。
ハーネスを正しく着け、安全に確保してくれる経験者にビレイしてもらえば、トップ・ロープのクライミングができます。
ジムのルートをリードで登るには、自分用のロープも必要です。
信頼できる人にビレイをお願いしてルートをリードします。
他の人が登るのを確保するには、ATC などの確保器、確保器と一緒に使う安全環付きのカラビナが必要です。 ATC を買っても正しい使い方を習得しなければ意味がありません。 危険な確保をしている人はたくさんいます。 他人の命を預かっているわけですから、講習会に参加するなどして、早く正しい使い方を学んでください。
外の岩場に行って登るには、さらにヌンチャク(丈夫な紐の両側にカラビナをつけたもの)なども必要になります。
クラックを登るなら、カムやチョックなどの色々なデバイスも必要でしょう。
クライミング用品の安全性については
「生と死の分岐点」
をぜひとも読んでください。
◇ 質問一覧へ
(問) 基本的な確保のしかたについて教えてください。 また、危険な確保の実例も紹介してください。
(答) クライミング・ジムで ATC を使って確保する場合について、登り始めからロワー・ダウンするまでの基本的な注意点について説明します。 まず、クライミング・ジムなどでよく見かける危険な確保の例をあげます。
ATC にロープを通しているだけでグリップ・ビレイのようにしている人がいます。
これでは ATC を使っていないのと同じです。
ATC を有効に使うためには、登っている人(クライマー)に伸びているのとは反対のロープの使い方が大切です。
登っている人が落ちたら、ロープを持つ手を腰の後ろの方に回し、ロープと ATC の摩擦を大きくして墜落を止めます。
ロープを引っ張る必要はありません。
あくまでも ATC との摩擦で止めるのです。
いつ落ちられてもいいように、クライマーに伸びているのとは反対のロープを持つ手は決して放してはいけません。
登り始めはクライマーの横で壁に近づいて確保しましょう。 真後ろにいると、クライマーが落ちたときに股の間にロープが挟まりやすく、頭から墜落する危険があります。 また、壁から離れていると地面まで墜落(グランド・フォール)する危険が増えます。
最初のボルトの上で墜落すると、かなりの衝撃が確保者にもきます。 「おっとっと」と確保者が引っ張られて前にでると、そのぶん墜落距離が長くなってしまいます。 登り始めはグランド・フォールの危険がある一番あぶないところなので、必要以上にロープを出さないように気をつけましょう。
何個かのヌンシャクにクリップし、グランド・フォールの危険がなくなったら、クライマーを見やすい位置に移動してもかまいません。 しかし、目を放さないように気をつけましょう。
「はってー」とか「テンション」とか言われたら、真っすぐ後ろにさがれば、すぐにロープを張れます。
クリップする時には、前にでるか、すばやくロープを出します。
終了点に到着し、登っている人からコールがあったらロープを張ります。
まず最初のボルトの真下まで歩いて行き、その後でロープを出します。
ここに書いたのは基本的なことです。
さまざまな状況でうまく確保できるようになるには、やはり、経験が必要です。
自分自身がリードしているつもりになって確保することです。
信頼できるしっかりした確保者がいるからこそ、クライマーは思い切った動作ができるのです。
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(問) ずっと人工壁育ちで自然の岩場へ行ったことがありません。 岩場にも行ってみたいのですけれど仲間がいません。
(答) 自然の岩場は人工壁と違って危険なこともありますから、最初は経験者につれて行ってもらうのがよいのですれけど、そういう人が簡単に見つかるとは限りませんよね。 よくでかけるジムで同じような人に勇気を出して声をかけてみましょう。 私も最初はそうして仲間を見つけました。 山岳会に入ったり、講習会に参加したりして、仲間を探すのもいいかもしれません。 インターネットのSNSなどを活用するのも一つの方法です。
フリー・クライミングを中心に活動している人は無所属の人も多いです。 正しく他人を確保でき、人工壁で 5.10 程度がリードできるようになれば、一緒につきあってくれる人も比較的簡単にみつかるのではないでしょうか。 できれば、クライミング中の事故をカバーできる傷害保険に加入しておいた方がいいでしょう。
私も思うようにパートナーが得られなくて苦労することがあります(パートナー難民といったりします)。
楽しいクライミング・ライフを送るためには気の合う仲間がいるといいですね。
私も仲間の輪を広げたいといつも思っています。
よろしければ、まずはメールしてみてください。
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(問) 岩場でも人口壁でも時々事故の話を耳にします。 死なないためにはどうしたらいいでしょう?
(答) クライミングは本質的に危険なものです。 地面を離れて高い所へ登るわけですから、地面にたたきつけられる可能性は常にあります。 実際、多くの人がクライミング中に死亡したり怪我をしたりしています。 よくある事故の例をあげておきますので、お互い気をつけて長生きしましょう。
ロープを結んでいる最中に誰かに話しかけられたりしてロープを結ぶのを中断し、話に気を取られてしまい、話が終わった時にはロープを結んだ気になって登ってしまうというのがよくあるパターンです。 本人はロープを結んでいるつもりなのですから、これではフリーソロより危険です。 ビレイヤー共々注意しましょう。
グランドアップで拓かれたルートはボルトの間隔が遠いことが多く、また打ち変えも行われないことが多いです。 小川山などでそういう格調高いルートを登るのはある意味非常に楽しいことですが、同時に危険なことです。 精神的にも肉体的にも自信がついてから自分のリスクで挑戦してください。 また、キャメロットやナッツなどが使える場所では積極的に使いましょう。 持っているだけでは何の役にもたちません。
支点、下降器のセット、ハーネスの折り返しなどを確認しましょう。 私は声を出して指差し確認しています。 「支点ヨーシ。下降器ヨーシ。折り返しヨーシ。」 セルフビレイをはずす前に、ロープに体重をあずけて最終確認しましょう。 慎重すぎるくらいでちょうどいいと思います。
日本フリークライミング協会が
『クライミングの事故から身を守るために』
という無料の雑誌を発行しています。
クライミング・ジムなどにおいてありますので、ぜひ一度読んでみてください。
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(問) 「チッピングは絶対しないでください」とかって聞きますが、そもそも「チッピング」ってどういうことですか? なぜ絶対してはいけないのですか?
(答) もともとは「岩を削ること」を意味します。 多くの場合、既成ルートの岩を削って新たにホールドを作ったり、 既存のホールドを大きくしたりすることを言います。 時にはガバをたたき落として難しくしたりすることもあるようです。
自然の岩場のルートは開拓者によって作られたものです。 ボルトは岩から生えてくるわけではないし、 最初から苔や岩茸の生えていないきれいな壁だったわけでもありません。 開拓者は壁を掃除し、必要なボルト等を設置し、ルートを作るわけです。 ルートが初登され公開された時点からルートには公共性が生まれ、誰でもそのルートに挑戦できるようになります。
次のような状況を想像してみてください。 あなたはあるルートに挑戦しました。難しくてその日は登れませんでした。 数カ月後、少しはうまくなったと思ったあなたは再びそのルートを登りに行きました。 すると核心部には何者かにより大きなホールドが刻まれていました。 あなたならどう思いますか?
既成ルートの岩を削る人は、そのルートを私物化しています。 ルートはみんなのものです。自宅の庭の岩を削るのとはわけが違います。 開拓者を冒涜する最低の堕落した行為といっても過言ではありません。 既成ルートのチッピング禁止というのはクライマーとしての最低限の倫理です。
ここから先に書くことは開拓時のことなので興味のない方は飛ばしてください。
チッピングの話になると私のようなオヤジは昔の「ナイル事件」のことを思い出します。
昔、小川山でSさんは岩を削ってルートを作り発表しました。
これに怒ったKさんはこのルートのハンガーを撤去し、雑誌『岩と雪』でさまざまな論争になりました。
私が指摘したいのは、「ナイル事件」は開拓時のチッピングの話であり、
Sさんは既成ルートをチッピングしたわけではないということです。
したがって既成ルートのチッピングの文脈で「ナイル事件」のことを持ち出しSさんを非難するのは間違っています。
開拓時のチッピングについては他にも次の事実があります。
次のような疑問がうかんできます。
もちろん簡単には答えられないでしょう。でも既成ルートのチッピングだけは止めましょう!
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(問) 意気ごんでルートに取りついたけれど墜落し、何度やってもその部分が登れない。 こんなときはどのようにしてヌンチャクを回収したらいいのでしょう?
(答) 一般的には次の方法が考えられます。
パートナーや同じルートを登る人に丁寧に頼んで回収してもらいましょう。 望ましいことではありませんが、クライミングを始めた頃は私もよく回収していただきました。
やっぱりこれが基本ですよね。早く、自分のことは自分でできるようになりましょう。 次のような方法を使って終了点まで行きましょう。
どうしても終了点まで到達できないなら、途中で降りるしかありません。
私はクライミングに行く時は、捨ててもよいカラビナを二つは持っていきます。
最後の手段がきまっていれば、心配なく好きなルートに挑戦できますからね。
でも分不相応の人気ルートに取り付いて顰蹙を買ってばかりということにならないように気をつけましょう(^_^)。
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(問) かぶった壁でヌンチャクを回収する時の注意点について教えてください。
(答) 傾斜のない壁とちがい、かぶった壁でのヌンチャクの回収には苦労することが多いです。 また、一歩間違うと、地面や岩に激突して怪我をすることもあります。 基本的な手順を書いておきますので、なぜそうする必要があるのかを自分なりによく理解したうえで、安全な回収方法を習得してください。
先に2本目を回収するのは、かぶった壁では、1本目を最後に回収してロープにぶら下がると地面に衝突する危険があるためです。 1本目のボルトが地面より十分高いルートではこの限りではありません。 また、鳳来の鬼石のようなところでは、2本目ではなく3本目や4本目より下を先に回収しないと危険な場合もあります。 要は、回収が終わってロープにぶら下がったときに岩や地面に衝突する危険があるかどうかを正しく判断できなくてはなりません。
傾斜の強い長いルートでは、ルートの途中に回収用のカラビナが残置されていることもあります。 支点からクライマーに降りているロープをこのカラビナに通すことで、このカラビナから下のヌンチャクが回収しやすくなります。
ルーフ部分が長いようなルートではロワー・ダウンによる回収は困難です。
こういう場合には、トップロープで登れる状態にしていったん地面まで降り、
ロープの反対側をハーネスに結びトップロープ状態で登り返しながらヌンチャクを回収するほうが安全です。
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(問) 先日、あるエリアに初めて出かけました。 あるルートにトライ中に、地元の常連クライマーらしき人から「そのホールドは限定だよ」と言われました。 「限定」ってなんですか?
(答) 「限定」というのは、ある特定のホールドをないことにして、それを使わないで登ることです。 ガバを限定するというのは、そのガバを使わないで登ることです。 クラックを限定(クラックは使わない)したり、カンテを限定(カンテは使わない)したり、 クラックの向こうのフェイスを限定(クラックと、クラックまでのフェイスだけで登り、クラックの先のフェイスは使わない)したりします。 いずれにしろ、グレードを上げるために、岩のある部分をないことにして登るというものです。
「限定」の問題点は、トポに明記してない限り、初めてそのエリアへ行った人にはどういう限定があるのかわからないということです。
普通になんでもありで登ったらグレードがあまいように感じ、後日、あのホールドは限定なんだよと言われたりするとガッカリしてしまいます。
限定ルートほどではないにしろ、左右のルートの間隔が近い場合には、このホールドはどちらのルートのものなんだろうと悩むこともあります。
登りやすい合理的なラインを見つけることもクライミング能力の一つです。 また、クライミングの基本は、途中のボルトにクリップできる限り、どこをどう登ろうが勝手です。 したがって、このホールドを使ってもよいかとかいうような非生産的なことに悩むのはやめた方が精神衛生上よいです。
結局、そういうルートや課題はそれだけのものでしかないのです。
自分なりに登って決着をつけて、次に行きましょう。
そんなささいなことに悩む必要のないまともなルートを登ればよいのです。
競技会で登っている場合は別ですけれど、ルートを登れたかどうかを決めるのは自分自身であり、満足感をえるのも自分自身なのです。
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(問) ルート図を見ると、ルートに星印が付いているものがあります。 これはどういう意味ですか?
(答) これはルートの「面白さ」や「良さ」を表しています。 スター・グレードとかインタレスト(興味度)・グレードとか呼ばれています。 星の数は、三つが最高とか、五つが最高とか、ルート図によりまちまちです。 「面白さ」や「良さ」は主観的な基準なので、星がたくさんついているルートを完登しても、つまらないと感じることがあるかもしれません。 登るルートを選ぶ際の一つの判断材料と考えればいいでしょう。
最近の国内のルート図では、三つ星の評価に加え、「日本を代表するルート」を四つ星とした体系がよく使われています。 どんなルートにいくつ星を付けるかに関する基準は存在しません。 私は次のように考えています。 (でも四つ星を付ける自信はないので三つを最高にしています。)
★★★★ | 日本を代表するルート |
★★★ | その岩場やエリアを代表するルート |
★★ | ぜひ登ってほしいルート |
★ | 良いルート |
(なし) | 普通のルート、もしくは悪いルート |
どういうルートを「良い」とするかは主観的なものです。 次のような要素を考慮して評価されると思います。
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(問) ボルダリングのグレードについて教えてください。
(答) 最近の日本ではボルダリングのグレードとして「段/級式」が定着したようです。
以前は 4a とか 6b とかいうフランス原産の「フォンテーヌ・ブロー方式」も使われていました。
アメリカでは「Vグレード」が主流のようです。
主なものについて以下に説明します。
グレードというものの宿命かもしれませんが、ジムや設定者によって非常にばらつきがあるということを知っておいてください。
本来のフォンテーヌ・ブローのグレードは
...4、4+、5、5+、6a、6b、6c、6c+、7a、7a+、7b、7b+、7c、7c+、8a、8a+、8b...
という体系をしています。
ただ、日本のジムで使われているグレードは、5以下にも a、b、c をつける方式になっていて、
...4a、4b、4c、5a、5b、5c、6a、6b、6c...
という日本独特の体系になってしまっています。
次に説明する「Vグレード」と違って、課題の困難さだけでなく、着地が悪いとか、高くて恐いとかの精神的な要素もグレーディングに加味されます。
気をつけなければならないのは、同じグレードでもルートとボルダリングでは難しさがぜんぜん違うことです。
同じグレードならボルダリングのほうがはるかにきびしいです。
ルートの 7a はデシマル(アメリカ式のグレード)で 5.11c 程度でしょう。
ボルダリングの 7a というと有名な御岳の「忍者返し」程度でしょうか?
V1 とか V10 というように、V に数字を付けます。 V0、V1、...、V13、V14、...と数字が大きくなるほど難しくなります。 V0 よりもやさしい課題のために VB(Very Basic または Very Beginner)を追加することもあります。
Vグレードは、課題に成功するのに必要な技術やパワーや持久力などの物理的な難しさのみを考慮してつけられます。
着地が悪いとか、高くて恐そうというような精神的な要素は考慮されません。
したがって安全な V5 に成功しても、恐ろしげな V2 ができないということもあります。
Vグレードは米国のテキサス州フエコ・タンクスで始まり、今では米国でもっとも一般的に使われているボルダリングのグレードです。
米国以外の一部の国でも使われています。
それぞれのグレード間の対応はおよそ上の表のようになるでしょう。
(John Sherman『Stone Crusade』と室井登喜男編『小川山 御岳 三峰 ボルダー図集』による)
V | Y.D.S. | bleau | 級/段 |
---|---|---|---|
VB | 5.5-5.7 | 1 - 5+ 6a | 10級 : 4級 |
V0- V0 V0+ | 5.8 5.9 5.10- | ||
V1 | 5.10+ | ||
V2 | 5.11- | (6a) | 3級 |
V3 | 5.11+ | 6b | |
2級 | |||
V4 | 5.12- | 6c | |
V5 | 5.12 | 6c+ | 1級 |
V6 | 5.12+ | 7a | |
V7 | 5.13- | 7a+ | 初段 |
V8 | 5.13 | 7b | |
V9 | 5.13+ | 7b+ | 二段 |
V10 | 5.14- | 7c | |
7c+ | 三段 | ||
V11 | 5.14 | 8a | |
V12 | 8a+ | 四段 | |
V13 | 8b | ||
V14 | 8b+ | 五段 | |
V15 | 8c | ||
: | : | : | : |
日本オリジナルのグレードです。
...3級、2級、1級、初段、二段、... と難しくなります。
「この「段/級式」のグレイド・システムは草野俊達さんによって発案されたもので、
御岳の「忍者返し」と小川山の「エイハブ船長」がともに1級、というのが基準になって」おり、
「課題の危険度もグレードに反映されている」そうです
(室井登喜男編、『小川山 御岳 三峰 ボルダー図集』より引用)。
日本のボルダリングの課題はこの方式でグレイディングされることが多いです。
最近は初段以上の難易度については+や−をつけることもあるようです。
同じグレードでの難易度に差がありすぎるということへの対応策のようです。
ボルダリングの父であるジョン・ギルが考案したグレードです。 現実にはもう使われていないようです。 B1、B2、B3の順に難しくなり、三つのグレードしかありません。 「ジョン・ギルのスーパー・ボルダリング」には次のように書いてあります。
B3は、ぼくの今の感じでは、完全に客観的なグレードであるべきだと思っている。 B3とは、一度だけ登られ、その後何度もトライされながら再登されていないものにつけられる。 もしそれが再登されれば、自動的にB2に下がる。 それどころかB1に下がることもあるだろう。 B1とB2とは、ぼくに関するかぎり、たしかに多かれ少なかれ主観的な基準だ。 まあ、B1はかなり度外れたむずかしさ、B2はしんそこ度外れたむずかしさ、といったところかな!
Bグレードはその時代の標準的なレベルにあわせてスライドすることを意図していました。 ギルは B1 を1977年には5.11程度とし、1987年には5.12程度と定義しました。 このようにBグレードでは定期的な課題の評価のしなおしが必要になります。 しかし、多くのエリアでは評価のしなおしが適切におこなわれていないため、B2 が非常に幅広い難度をカバーするようになってしまっているようです。