フリー・クライミングのあれこれをお届けする独断と偏見のページです
私が読んだクライミング関係の本について紹介します。
出版された順番に並べてあります。
値段は税金を含みません。
★(面白さの程度)は私の独断と偏見で付けています。
三つ星が最高です。
ロイヤル=ロビンス著、新島義昭訳、森林書房、1977年、ISBN4-915194-05-1、1300円 ★
初版が発行されたのが1977年なので、もう20年以上も前の本です。 クライミングに関するあらゆることを幅広く扱っています。 「倫理とスタイル」、「チョック技術」、「登攀の価値」などについての解説は今読んでも十分な説得力を持っています。 図書館などで見つけたら読んでみると面白いかも。
ロッククライミングを志したからには、岩と限りなく親しむことを旨とすべきで、岩の特性に逆らうような行動は慎まなくてはいけない。 ロッククライミングは今や、ただ単に体を激しく使って頂上に達するための一手段にとどまらず、実際の登攀行動に劣らぬエネルギーを、危険防止システムの創造という論理的ゲームにも注ぐことも含めた、豊かな体験を味わうスポーツになってきているのである。
と言われると、クラックを登りたくなるかも?
小西政継著、白水社、1978年、ISBNの記載無し、1500円
アルピニストを目指す人に向けて、故小西政継さんが書いた本です。 内容的には古くなってしまった部分もありますけど、氏の気合いが伝わってきます。
ザイルは最も重要な用具なので、たとえ親しい仲間でも借りたり、貸したりするものではない。 登攀中知らないうちに落石があったり、岩壁との摩擦でザイルの強度が落ちている場合もあるからだ。 ザイルは命を支える我が友ぐらいの気持ちで、大切に扱おう。 登山靴でザイルをふむことは最悪のマナーだ。
マイクル=ロフマン著、平田紀之・戸田直樹共訳、山と溪谷社、1984年、ISBN4-635-16804-2、1900円 ★
1984年に発行された本です。
(1)用具の操作手順よりも、クライミング動作の熟達のほうが常に重視されるべきだということ。 (中略) (2)私は複雑な、また特殊な用具や方法は好まない。 シンプルで応用の効くものが好きだ。
という著者の二つの「哲学的偏見」に基づいて書かれた本なので、クライミングの動作について丁寧に解説されています。
「カウンターバランス」、「アウト・オブ・バランス」という言葉が初めて使われたのもこの本だと思います。
(そういえば、小川山に「アウト・オブ・バランス」という名前のルートがありますね。)
当時はフリーといえばクラックを登ることだったようで、チョックを使ったプロテクションの取り方についてもくわしく書かれています。
また安全についての著者の考え方には多いに教えられました。
自分はやさしいルートにしか行かないし、用具は充分に持っていくし、準備も入念に整えているから安全だと思っているクライマーがいる。 だが、そういうことは何の保証にもならない。 (中略) 安全なクライミングは、装備によって保証されるものではなく、技術によって支えられるものでもない。 それは何よりも、良質の知性ときびしい修練を経た人間の思想によるものなのである。
少し古いですが、クライミングの入門書としては今でもなかなか良い本だと思います。
パット=アメント著、平田紀之訳、森林書房、1984年、ISBN4-915194-28-0、1800円 ★★★
ボルダリングが好きな人には一度は読んでもらいたい本です。 私も、ヘタッピーですが、ボルダリングが好きです。 この本を読み終わった後には片腕懸垂にあこがれることうけあいです。
体操的(ジムナスチック)でアクロバチックであり、さらには空中曲芸的(エアロバチック)でなければならない。 そういうテクニックを要求するルートこそが、良いボルダリング・ルートなのだ。
とジョン=ギルは言っています。 米国では改訂版が出たようです。
W=ギュリッヒ・A=クービン著、池上玲・福永輝雄訳、山と溪谷社、1988年、ISBN4-635-16805-0、1800円 ★★★
私が今までに読んだクライミング関係の本の中で最も感動した本です。 クライミングの技術・戦術・トレーニングについてくわしく書いてあります。 「デッド・ポイント」、「クライミングの戦術」、「身体張力」などの言葉は、この本で初めて知りました。 「ムーブ」という観点からは少し古くなってしまった気もしますけれど、それをおぎなって余りあるものがこの本にはあります。 自分でルートをリードできる初級者以上の人には絶対にお勧めです。 「あとがき」から一部を引用します。
「フリー・クライミング」の世界の体験は、グレードという数字の枠内だけでとらえられるべきものではないと我々は考える。 (中略) クライミングの真骨頂は、新しいルートを求め、未知の課題に取り組み、そこで繰り返し自分自身の創造力を検証することにある。 (中略) 一つの目標を発見し、それに到達した瞬間に私たちの頭にはもう次の目標が浮かんでいる。 私たちの最終目標となるような登攀旅行など決してないだろう。 ありがたいことだ! 仮に最終目標のルートを発見し、登攀してしまったら、何をしたらいいのだろう? ほかのスポーツにでも移るしかないのだろうか..... クライミングは究極的にはきわめてロマンチックな人生観である。 そこでは、自分の体験の無限の可能性の前に、スポーツとしての業績や個々のグレードの価値は突然色あせてしまうのだ。
シュテファン=グロバッツ・ウリ=ヴィースマイアー、山と溪谷社、1988年、ISBN4-635-53807-9、4500円 ★★
フランス、イギリス、アメリカ、日本(城ガ崎、小川山)、オーストラリア、旧東ドイツ、旧西ドイツでのクライミングが載っているキレイな写真集。 各国でのクライミングの印象を綴った文章からは、グロバッツさんのクライミングに対する姿勢がうかがえて興味深い。
大岩純一・大岩あき子編、山と溪谷社、1989年、ISBN4-635-15007-0、1942円
前半が入門編、後半はガイド(ルート図集)という本です。 1989年に出版された本なので、ガイド編は内容が古くなっています。 前半の入門編も、今となっては、北山さんの 『フリークライミング』 の方が優れています。
北山真編、山と溪谷社、1995年、ISBN4-635-18002-6、2427円
通称「赤本」です。 カラー写真も豊富で見やすい大型のルート図集です。 でも、私はあまりこの本は好きではありません。 理由は次の通りです。
『岩と雪』の「日本100岩場」を元にしている部分も多いようですけれど、初登者の名前などの情報は削られています。 同じ題名の「日本100岩場」という本が編集中らしいです。 私はそちらの方に期待したいと思います。
北山真著、山と溪谷社、1996年、ISBN4-635-04187-5、1456円 ★★★
1997年2月現在で、(フリー・)クライミングに関する最良の入門書だと思います。 すべてのクライマーに勧められる本でしょう。 クライミングの基本から、キア、ムーブ、トレーニング、ルート開拓にいたるまで、現在の最新の情報に基づいてやさしく解説されています。 ルート開拓(特にボルト打ち)についての説明は、著者の面目躍如というところでしょうか。 ページの下がコラムになっていて、いろいろと興味深い話や、有名クライマーの記事なども載っています。
保科雅則著、山と溪谷社、1996年、ISBN4-635-04188-3、1456円 ★
私はいわゆる「アルパイン・クライミング」を実践している人ではないので、この本についてあれこれ述べる資格がないかもしれないということをあらかじめお断りしておきます。
私は「岩と雪」に発表された保科さんの記録をいつも楽しく読んできました。 日本での高難度のフリー・ルートの初登、イギリスやオーストラリアでのクライミングの記録、トランゴの記録、ヨセミテでのビッグ・ウォール・クライミングなどなど。 その一部は本書にも収録されています。
私がこの本を読んで一番残念に思ったことは、もっと「アルパイン・クライミング」やビック・ウォール・クライミングに特有のことについて書いてほしかったということです。 基本的なことについては、例えば同じシリーズの 『フリークライミング』 に完全に任せてしまえばよかったのではないでしょうか。 ともあれ、短いルートでのフリー・クライミングしか経験したことのない(私のような)人には、新しい世界への扉を開ける一冊になるかも知れません。
杉野保・杉守千晶著、山と溪谷社、1996年、ISBN4-635-04281-2、1200円 ★
テクニックという観点からはあまり目新しいものは見あたらない。 「テクニック以外の大事なこと」での「良いルートとは」や「良いスタイルとは」などで書かれている著者たちのクライミングに対する姿勢や考え方が興味深い。 一部を引用します。
グランドフォールが恐いからといってむやみにスティック・クリップするのは、そのように設定されているルートでないかぎり、フリークライミングというスポーツほんらいのおもしろさを排除してしまうことになる。 1本目にたどりつくまでにそのルートに取り付く資格があるかどうかをためされていると考えれば、スタイルにこだわった内容の濃いクライミングになるだろう。
むしろ壁がクリーンな状態でオンサイトトライできることを幸いと思うくらいのほうが良い。
ニコラス・オコネル著、手塚勲訳、山と溪谷社、1996年、ISBN4-635-17808-0、3000円
クライマーへのインタビュー集です。 登場するクライマーは次の17人です。 ラインホルト=メスナー、リカルド=カシン、エドマンド=ヒラリー、 クルト=ディームベルガー、ヴァルテル=ボナッティ、ロイヤル=ロビンズ、 ウォレン=ハーディング、クリス=ボニントン、ダグ=スコット、 ヴォイテク=クルティカ、ジャン=クロード=ドロワイエ、ジェフ=ロウ、 ヴォルフガング=ギュリッヒ、カトリーヌ=デスティヴェル、リン=ヒル、 ピーター=クロフト、トモ=チェセン。
これらの人達が何をしたのかを知っている人には楽しめる本だと思います。 個人的には、ジャン=クロード=ドロワイエ、ヴォルフガング=ギュリッヒ、ピーター=クロフトの話が面白かったです。 ヴォルフガング=ギュリッヒは次のように話しています。
私としてはだれが 5.11 を登ろうと、あるいは 5.14 を登ろうとどうでもいいんです。 (中略) なかにはとても傲慢になる人がいますが、私は大嫌いです。 (中略) だれが 5.14 を登ろうとたいしたことではなくて、個人的に満足するだけなのに。
自分の趣味の奴隷になっているクライマーがたくさんいます。 趣味がくそまじめな仕事になってしまうのですね。 (中略) 大事なのはこのスポーツを楽しむことであって、結果を気にすることではありません。 (中略) 何かをやってみて、それがうまくいかないと、どなり散らして壁を蹴飛ばす若いクライマーをたくさん見かけます。 彼らはすぐれたクライマーになりたいのですが、目標を達成できないとやめてしまうのです。
ピーター=クロフトはフリー・ソロの魅力を次のように語っています。
邪魔が入らないことです。 (中略) どっちへどう進むか決めるのは自分と周囲の状況だけです。
長いルートでは、あるリズムが出てきます。 そうなると体が反応しているだけで、判断はほとんど無意識のうちにしています。 「フレークをこうつかんで、脚をこう伸ばせばうまくいく」なんて考えていません。 すべて瞬時のことです。 ただ流れていくだけです。
ただ、「BEYOND RISK」という本の日本語訳の題名を「ビヨンド・リスク」としたのは好きになれません。 日本語を母語とする多くの人には分からないと思います。 日本語訳の本をせっかく出版するのなら、多くの人にとってもっと内容が想像できる題名にしたほうがいいと思います。
ピット=シューベルト著、黒沢孝夫訳、山と溪谷社、1997年、ISBN4-635-17809-9、2600円 ★★★
ドイツ山岳会での25年にわたる安全問題研究に関する成果を集大成した本。 すべて実際にあった事故の話なので説得力がある。 例えば次のことが書かれています。
この他にも、天候悪化、落雷、クレバス、などについても書いてあります。 すべてのクライマーが一度は読んでみることを勧めます。
飯山健治著、山と溪谷社、1998年、ISBN4-635-53608-4、3800円 ★
平山さんの華麗な登りが満載の写真集です。 アメリカ、日本、ヨーロッパ、コンペでの彼のクライミングが納められています。 個人的には、それぞれのルートや岩場に対する彼の印象・感想・思い出などをもっと書いて欲しかった。 写真もすばらしいけど、生で見る彼のクライミングはもっとすばらしい。 星を一つしか付けなかったのはパンプ2で何回も彼のクライミングを見ているからかもしれません。
ところで「スフィンクス・クラック(5.13b/c)」をオン・サイトした彼の左足はレーザーで右足はバンバだったのはなぜでしょう?
綿引英俊著、東京新聞出版局、1998年、ISBN4-8083-0625-5、1400円 ★
初心者に向けて書かれた意欲的な本です。 「第3章 クライミングでの動き」での「対角線のバランス」や「立体的な動き」としての「フリ」の説明、「第4章 ムーブ(動き)を読む」、および「第5章 スタンスに立つということ」は一度読んでみると面白いと思います。
クライミングに限らず、あらゆるスポーツの上級者は、動作をするさいの動作感覚を細かく正確に表現できるものです。 また目標としている正しい動作からのズレをすばやく認識し修正していくことができます。 初心者は、どのような動作が正しい動作なのか分からないし、また感覚を通して認識することもできないでしょう。 この本は正しい動作をするための手がかりを与えてくれるでしょう。 「第4章 ムーブ(動き)を読む」の終わりには次のように書いてあります。
クライミングの上達には、ムーブを読み、それを実践しながら、できた・できない、できたけれどつらい・もっと楽にできないだろうか、というような現実のふるいにかけられて、いま自分が持っているイメージが必然的に修正あるいは洗練され、「自分のクライミング」という形をなしていく過程が不可欠なのです。
ただし、精神的な細かい微妙な問題を扱っている部分が多く、面度臭くて面白くないと感じる人もいると思います。
遠藤由加著、山と溪谷社、1998年、ISBN4-635-04286-3、1200円
フリー・クライミングのコンペからビッグ・ウォールそしてヒマラヤでの高所登山まで、真の意味でのオール・ラウンドなクライミングを実戦している著者による本です。「アルパインクライミング」、「フリークライミング」、「ギア・トレーニング・メンタリティ」の三つの章からなる Q&A 方式の技術書です。
「まえがき」に書かれているように初心者向きの本ではありませんが、かといって上級者向きというわけでもなく、クライミングの基本を理解している初級者に向けて書かれた本といえるでしょう。
私にとっては、「お、これは!」と思えるような所はありませんでした。
デイル=ゴダード・ウド=ノイマン著、森尾直康訳、山と溪谷社、1999年、ISBN4-635-16807-7、1800円 ★★★
クライミングに必要な技術・筋力・心理を分析し、クライミングがうまくなるためのさまざまなトレーニング方法について書いてあります。 ヴォルフガング=ギュリッヒにささげられていることからも分かる通り、 「フリー・クライミング上達法」 の内容を新しい知見にもとづいて、さらに深めた本と言えるでしょう。 ただし、技術解説書ではないので、具体的なトレーニング・メニューとかは出てきません。
いちばん得意な強い分野で大きく上達しても、それはパフォーマンス全体には小さな影響しかない。 しかし、いちばん弱い部分で少しでも上達するなら、非常に大きな影響を及ぼす。 つまり、飛躍的な上達をめざすには、自分の弱点を見つけ、それをトレーニングの優先課題とすることが必要なのである。
第1章「最も弱い環の原則」に上のように書いてあります。 しかし、自分の弱点を見つけ、それに対するトレーニング・メニューを作るのは個々のクライマーの仕事です。 つまり、トレーニングを個別化し、特異化し、自分が上達するための具体的なメニューを作るのはクライマー自身なのです。 この本は自分で自分をコーチするための本です。
菊池敏之編、白山書房、1999年、ISBN4-89475-022-8、1900円
1989年に発売された『新版 関東の岩場』を大幅に改訂したガイドブックです。 題名通り、二子山、有笠山、城山、小川山、太刀岡山、甲府幕岩なども含まれています。 新しいエリアやルートが含まれているのはもちろんですが、従来からあるルートに関してもグレードの改訂が行われています。
間違った情報は時として危険をもたらす事にもなります。 後から来る者のためのインフォメーションという意味では、グレードは出来る限り妥当なものに変えてしかるべきだと考えます。
従来より2グレード以上の変更があるルートも少なくありません。 例えば城山では、 スナッチ 5.11+ → 5.12b、ポコチン大魔王 5.13a → 5.12c、白壁の微瑕 5.12d → 5.12b、 湯河原幕岩では、シャック・シャイン 5.10c → 5.11a、もうじきバカンス 5.11a → 5.11c、ゼルダ 5.11a → 5.10b、 カサメリでは、漁師の娘 5.11a/b → 5.11c などです。
「ポコチン大魔王」と「白壁の微瑕」以外は上に挙げたルートを私も登ったことがあります。 「スナッチ」以外は、確かにそのくらいかなとも思います。 でも「スナッチ」って 5.12b もあるのだろうか? それともどこか欠けたりしたのかな?
一部の岩場のルート図はあまりに簡略化されていて、初めて行ったら分かるんだろうかと心配になるのは私だけでしょうか? なんのコメントもないルートが多いのも残念です。 また、ルート名やグレードの誤植が多い気がします。 (城山のチューブ・ロックの部分はルート図の番号が二つずれています。)
『日本フリークライミング・ルート集』にも載っている「河又」が含まれていないのは不思議な気がします。
by yukio ozawa、フリークライマーズ沖縄監修、1999年、500円
オザーンこと小沢さんによる沖縄・具志頭村のボルダー図集です。 カラー・プリンタで印刷し、ホチキスでとめたシンプルな作りの20ページほどの本(?)です。 大判と小判があり、小判が500円でした。 課題はすべて写真に赤矢印で示されています。 沖縄のクライミング・ジム「やまあっちゃー」も紹介されています。
この作りで500円はちょっと高い気もするけれど、カラー印刷でなかなかきれいで、読んでいて楽しいです。 でも沖縄に行くことあるかなあ。
室井登喜男編、室井登喜男製作所、2001年、1200円 ★★★
題名通りのボルダー図集。 全部で約1231の課題が掲載されている。 課題の位置が正確に分かる懇切丁寧な見やすい図が沢山載っている。 かくエリアについて、「ボルダーの特徴」、「ボルダリングの歴史」、「シーズン」なども書かれている。 グレイド・システムは日本オリジナルの「級/段式」を採用していて、その理由も述べられている。 小川山、御岳、三峰、笠間でボルダリングする人にはバイブルと言える本になると思う。
1999年に自費出版されたボルダー図集の改訂版。 補足的に笠間のボルダーを掲載し、課題の総数は約819から約1231へと増加し、ページ数も67ページから84ページへと増え、値段も950円から1200円に上がった。 課題の表記の記号として 「NH=No Hand ノーハンドでも登られている課題」 と 「×=以前登られたが、水没、埋没などの理由により、現在は登れない課題」 も追加された。 一部グレイドの改定もされている。
この本を見ていると、小川山や御岳や三峰に行ってボルダリングしたくなる。 私はボルダリングもあまりうまくないけれど、この本にはやさしい課題もたくさん載っている。
リン=ヒル著、小西敦子訳、光文社、2002年、1800円
リン=ヒルが自らの半生を語った本。 個人的には、コンペの内幕をリン=ヒルの立場から見て書いてある11章が興味深かった。
7章で書かれている「空からひと財産の伝説」については『岩と雪 100号』の「登攀浪人(クライミング・バム)たちの豊かで奔放な世界」でもふれられている。 また、この実話に基づいて『復讐渓谷』(ジェフ=ロング著、近藤純夫訳、光文社文庫、1989年、ISBN4-334-76028-7)という本が書かれている。
グレッグ・チャイルド著、白幡憲之訳、竹書房文庫、2003年、619円 ★
2000年、キルギスのアクス〜カラス峡谷をクライミング中に、イスラム・ゲリラの人質として捕えられた
クライマー4人(トミー・コールドウェル、ジョン・ディッキー、ベス・ローデン、ジェイソン・スミス)
についてのノンフィクション・ドキュメント。
著者もクライマーで登場人物もクライマーが多いけれど、クライミングの話はあまりでてこない。
山野井泰史著、山と溪谷社、2004年、1500円 ★★★
山野井さんが実践してきたヒマラヤの高峰でのクライミングについて自ら書いたもの。 気負いや誇張なく淡々と自分の心情や考えを述べた文章にひきこまれ、どんどんと読んでしまった。 それぞれの章の間に挿入されているコラムの内容も興味深い。
登山家は、山で死んではいけないような風潮があるが、山で死んでもよい人間もいる。 そのうちの一人が、多分、僕だと思う。
(中略)
ある日、突然、山での死が訪れるかもしれない。 それについて、僕は覚悟ができている。
と書いてあるけれど、山野井さん夫妻のどちらか片方が亡くなって、クヌギの木や柿の木が植えられるような事態にはなってほしくないものだと思う。
ピット=シューベルト著、黒沢孝夫訳、山と溪谷社、2004年、2400円 ★
名前のとおり『生と死の分岐点』の続編です。 「確保点での自己確保」、「テープ結び」、「懸垂下降」、「エイト環がカラビナを押し開ける」、「ビレイヤーの法的責任」、「他者の間違い」、の各章が私には興味深かった。 すべて実際にあった話で、色々と考えさせられました。
内容的に重なっている部分も多いので、一冊だけ読むなら『生と死の分岐点』の方を薦めます。
菊池敏之著、東京新聞出版局、2004年、1500円 ★★
元『クライミングジャーナル』編集長による日本でのフリークライミングの発展の様子を述べた本。 さまざまな逸話が述べられていて楽しい。 脚注として書かれている人物評もなかなかユニーク。
著者の意見に賛成できない部分もあるけれど、日本のフリークライミングの発展の時代の中で登ってきた一人のクライマーの視点からクライミングにまつわる色々なことが書かれていて楽しく読めた。
北山真編、新井裕己・北山真・杉野保著、山と溪谷社、2005年、1800円 ★★★
現時点での、フリー・クライミングに関する最良の教科書です。
写真が多く使われていて、見ているだけで楽しくなる。
基本編から始まり、用具、技術、ムーブ、クラック、マルチピッチ、ボルダリング、ルート開拓、トレーニング、
そして、コンディショニング&ケアまで、最新の情報を基に解説されている。
個人的には、あまりにも教科書的すぎて息がぬける部分がないのが通して読むと少し気になった。
菊池敏之・前之園多幸著、東京新聞出版局、2005年、1700円 ★★
平山ユージさんへのインタビューと、第1部「筋肉と体の基礎知識」、第2部「クライミングのためのボディ・コンデョショニング(ママ)」、 第3部「クライミングのためのボディ・ケア」という構成です。 クライミングのためのトレーニングと、クライミングでおこしやすい障害およびその原因と予防について述べた本です。
ちょうど肩の故障中に読んだこともあり、第3部の「クライミングのためのボディ・ケア」が非常に役に立った。
クライミングの障害についてまとまって書いてある初めての本だと思う。
故障と無縁のクライマーは少ないと思うので、第3部だけでも読んでみることをすすめます。
内容とは直接関係ありませんが、誤字・脱字など多くて読みづらい。
1700円するわけですから、ちゃんと校正してほしいと思ってしまった。
日本フリークライミング協会会報、2006年、無料 ★★★
クライミング中の事故や故障から自分自身を守るために知っておくべきことをまとめた56ページの雑誌。 「自己責任の原則」、「事故例」、「マナー」、「終了点の使い方」、「アクセス問題」など、クライマーやボルダラーとして最低限は知っておく必要があることがまとめてあります。 無料ですし、皆さん一度は目を通しましょう!
これだけの内容のものが無料で配布されていることに対し、クライミングをしている者の一人として感謝したいと思います。 私もJFAの会員になり、保険にも申し込むことにしました。
東秀磯著、山と溪谷社、2006年、1200円 ★★★
内容の約半分が「ムーブ」について書かれている今までになかった画期的な本。 イラストや写真も豊富で分かりやすい。 「インサイド・フラッギング(木村ステップ)」、「アウトサイド・フラッギング」など、本書で初めて名前を知ったムーブも多かった。 本書を片手にクライミング・ジムでムーブの修得に励みたくなるような本です。 フィットネスの章では、筋力トレーニング、ストレッチ、食事、障害についても書かれています。 レベルアップを目指す初級者以上の人に絶対お勧めです。
1997に出版された初版が2006年に改定され、ムーブについての補講が巻末に8ページ追加されました。
國分誠著、Office Team Red Point、2006年、1600円 ★★★
1988年に出版された『伊豆・城山フリークライミングガイド200』の改訂版にあたる本。 ワイルド・ターキー・ゴージ、ワイルド・キャット・ゴージ、ウェーブ・ロック&エンドレス・ウォール、ポンポコランドの4つの新しいエリアが紹介され、8年間の間にルートの数も倍増している。 「100岩場に負けないようなトポを作りたかった」という著者の言葉どおり、なかなかすばらしい仕上がりの本。 (白黒写真の印刷の質はちょっと負けているけど。)
亀ノ甲岩、クレヨン・ウォール、鷲頭山、寝姿山のトポと、城山周辺の温泉情報も載っている。 裏表紙の写真は小林由佳さんだが、146ページの小さな写真との間に時間の流れの早さを感じる。 城山へよく登りに行く人は買って損はない。
岳人編集部編、東京新聞出版局、2006年、1600円 ★
日本を代表する登山家たちが、国内の山からお気に入りのルートを紹介した『岳人』の連載をまとめたもの。
今の私にとって興味のあるルートや人が書いた部分だけ拾い読みした。
それぞれの人たちの考え方が書かれていて、そういう部分が面白かった。
北山真編、山と溪谷社、2009年、2000円 ★★★
日本100岩場の2関東が増補改訂された。
中里の岩場、柴崎ロック、塩原ボルダーが100岩場に追加され、子持山と川乗谷が消えた。
「その他の岩場」でも追加と削除がおこなわれ、河又など一部の岩場ではグレードの改定も実施されている。
関東地方のほとんどすべての岩場が収録されており、現在のクライミング・ルート図集の決定版といえる内容です。
私の気がついた誤植をあげておきます。
北山真編、山と溪谷社、2010年、2200円 ★★★
2002年に出版された本の増補改訂版。私には鳳来が役に立っている。
北山真編、山と溪谷社、2011年、2200円 ★★★
2003年に出版された本の増補改訂版。私の田舎の岩場は掲載されなくなってしまった。
菊池敏之著、山と溪谷社、2011年、2000円 ★★
フリークライミングで登るマルチピッチのルートをまとめたトポ。 収録されているのは、関東近県、奥秩父、南アルプス、北アルプス、近畿、中国、となっていて、九州などは含まれていない。
1ピッチの短く難しいルートにばかりにかじりついているいるフリークライマーも、 たまにはマルチのルートを登ると、違ったものが見えてくるかもしれない?
北山真編、山と溪谷社、2012年、2000円 ★★★
2000年に出版された本の増補改訂版。これで全シリーズが改訂された。 この本を持ってツアーに行きたいものだ。
北山真著、山と溪谷社、2012年、1000円 ★
1991年に出版された本の改訂版です。
「フリー・クライミングってなあに?」というまったくの初心者が最初に気軽に読むには良い本です。
新書サイズで、軽快な書き方の本なので読みやすいです。
ただし、本格的な入門書としては『フリークライミング』を勧めます。
最後の章のルートガイドは改訂によりなくなってしまいました。
北山真編、山と溪谷社、2012年、2300円 ★★★
以前に出版されていた増補改訂版がさらに改訂されて増補改訂新版になった。 改訂版では、小川山、瑞牆、鷲頭、城ヶ崎などで新しいエリアが追加された。 さらに改訂新版では瑞牆山ボルダーなどが追加された。 [その他の岩場]で紹介されていた亀の甲岩と寝姿山はなくなった。 一部グレードの改定がされたルートもある。
長野、山梨、静岡の岩場が収録されている。 小川山の部分では、それぞれの岩場へのアプローチがくわしく書かれている。 ♂と♀の記号でパワー系とテクニカルなフェース・ルートを示しているのも楽しい(ただし小川山のみ)。
NHK取材班、新潮文庫、2013年8月、630円 ★
NHKで放送された番組のドキュメント。 番組としてはあまり面白くないなあと思ってテレビを見ていたのだけれど、 この本は山野井夫妻の考え方や暮らし方などがよくわかって私には面白かった。 解説もいい。
北山真編、山と溪谷社、2014年、2000円 ★★★
北海道、東北、関東、甲信のボルダリングエリアを収録したトポ。 これまで特定のエリアのトポが個人などの手により出版されてきたが、このシリーズが決定版になるのは間違いないと思われる。 ボルダラーなら持っておいて損のない一冊でしょう。
北山真編、山と溪谷社、2014年、2000円 ★★★
東海、関西、中国・四国、九州のボルダリングエリアを収録したトポ。 にも言えることだが、代表的なエリアや課題を収録している。 トポを見ながらバーチャル・ツアーを妄想するのも楽しい?
山野井泰史著、ヤマケイ新書、2014年、760円 ★★★
副題は「僕が登り続けてこられた理由」となっており、「はじめに」に次の記述がある。
「個人の能力を限界まで引き出していく限り、あるいは山という大きな自然に向っていく限り、 山での事故はなくならないとは思いますが、あれ以来、僕にできることはなかったのだろうかという思いが続いていました。
いろいろと印象深いことが書かれているのだが、私には次の一文が心に残っている。
僕は上手くなるのが遅くなったとしても、情報が早く手に入らなくても、 小さな岩でもいいから一人で対峙し取り組んでいたい人間だった。