<02.1〜3に観た舞台の記録>

  ・二兎社『日暮町風土記』(02.1)
  ・中島らも事務所プロデュース『お正月〜女傑版』(02.1)
  ・ランニングシアターダッシュ/ダンディリーグ『ボクのサンキュウ』(02.2)
  ・MOTHER最終公演『Long Distance』(02.2)
  ・自転車キンクリートSTORE『OUT』(02.3)
  ・『天保十二年のシェイクスピア』(02.3)
 

 

 ・二兎社『日暮町風土記』:(7)

    1/12〜13・近鉄小劇場での公演。
    1/13に観に行きました。
    C列(3列目)17番(センターブロック真ん中)席での観劇。
 
    四国のある田舎町。老舗和菓子屋・大黒屋が、これまで店鋪兼住居
   としてきた築140年の日本家屋を解体し、ビルに移るという。その話を
   聞いた塾講師・波子は、町役場の知人や自身が主宰する「町並くらぶ」
   のメンバーとともに解体を阻止しようとするが、持ち主の清家夫妻の
   考えは変わらない。その騒ぎの中、大黒屋に現れた山倉という男性。
   東京からの旅行者で、道に迷う最中この家を見つけ、感嘆したと言う。
   解体が避けられないのならせめて実測調査を、という話が持ち上がり、
   一週間だけ猶予がもらえることになる。専門家のいない慣れない調査
   を続ける中、彼らはそれぞれに家への思いを馳せる。
 
    20周年公演+関西初公演、だそうです。
    全然劇団名は知らなくて、チラシを見つけたのも偶然でした。それ
   が何故観に行こうと思ったかと言うと、昨年7月『ペーパーマリッジ』
   に出てらした浅野和之さんの名前が出演者の中にあったから。感想を
   読んでいただければ分かると思いますが、その時の役がすごく好きで。
   まぁ今回がどんな役かはもちろんチラシだけでは分からなかったです
   けど、違う役でも一度観てみたいと思っていました。今回は和菓子屋
   の主人役で、奥さんの尻に敷かれてる感のある、ちょっと気弱っぽい
   旦那さんでした。……解体するのが一番辛いのはそれを決心した本人
   なんだろうな、と思います。維持のために費やされる苦労やお金と、
   家に対する断ち難い思い。どちらも一番背負わなければならないのは
   住んでいる当人たちで……釣り合いが取れるならばそうしたいけど、
   そうできないのが現状なんですよね。
 
    家に対するノスタルジーの物語としては良かったと思います。
    しかしいくら小さい町とはいえ、登場人物同士が全員、事あるごと
   に恋愛や不倫の匂いを感じさせているのはどうかと思いましたが……
    ラストももうちょっと先まで知りたかったですね。真相が分かって
   から終わりまでがずいぶん短くて、「まさかここで終わっちゃうの?
   ……え、やっぱり終わり?」と拍子抜けしてしまいました。……でも
   まぁ、劇中で解体が避けられないことである以上、前日でこの物語が
   終わるのはある意味正しいのかも知れませんけど。登場人物たちの、
   今までもこれからも続く人生の物語の一部分、という印象を強く受け
   ました。本来、物語はそういうものなのでしょうけどね。キャラメル
   などのように「一応の区切り」を分かりやすくつける(と感じられる)
   傾向の強いところを今まで多く観てきたので、そうでないものを観る
   と、なんとなく消化不良な気分になることもあるのです。……うーん、
   まだまだ観劇修行が足りないかな (^^;
    2002年初観劇としては……まあまあでしたでしょうか。70点ぐらい。
                            (02.1.14)

 ・中島らも事務所プロデュース『お正月〜女傑版』:(8)

    神戸朝日ホールで1/25〜27の公演。
    1/27の昼に観てきました。
    J列(10列目)3番(左端近く)席での観劇。
 
    約120年に及ぶ、鈴木という家族のお正月の風景。舞台となるのは
   あくまでお正月の短い日々だけで、場所も家の一室のみ。そこに長い
   時間の積み重ね、明治から平成までの歴史の一端がさりげなく描かれ
   ていく。展開は早いのだけど、何故かゆったりと流れていく物語。
 
    登場人物が入れ替わり立ち代わり大人数なので、簡易パンフレット
   に系図がなければ人物関係が訳分からなくなりますね。系図があって
   もちょっとこんがらがりそうになったし (^^;
 
    のんびりと構えず、余計な緊張なしに観られる作品でした。個人的
   には80点。……ラストシーンが無ければ90点付けてもいいところなの
   ですが。ラストのみ、鈴木の家が人に売り渡された後の設定なのです
   が、あのシーンをわざわざ入れた意図がつかめない。家を買った夫婦
   を遠縁という設定にしていても。それまで続いてきた「家族の物語」
   の雰囲気が打ち壊されてしまうように感じられて、良くなかった。
                            (02.2.10)
   

 ・ランニングシアターダッシュ/ダンディリーグ『ボクのサンキュウ』:(8)

    大阪梅田・HEP HALLで2/9〜11の公演。
    2/10の夜に観てきました。
    F列(6列目)18番(右端近く)席での観劇。
 
    大学の男子寮。ある寮生の部屋で赤ちゃんの人形が見つかり、寮内
   はちょっとした騒ぎになる。説明によれば、先月子供を亡くした姉の
   ために、義理の兄が買ったものだという。彼女が体調を崩し入院する
   ので、預かってほしいと持ってきたのだった。嫌がる寮生をよそに、
   寮母や他の寮生は人形の世話を始める。同時に、彼らが抱える秘密や
   悩みが、ひとつずつ語られていく。
 
    ダッシュは去年8月以降、半年ぶり。単にそれ以降公演が無かった
   というのもありますが、前回が個人的にはハズレだったもので、妙に
   長く間が空いた気がいたします。
 
    普段は役者である岡部尚子さんの脚本で、大塚さんとの共同演出。
   プラス男優さんのみの出演。
    もう1本、プリティリーグと銘打たれて、女優さんのみで大塚さん
   脚本『I AM…』という作品の上演が同時期に(大阪公演では)あっ
   たのですが、時間的・予算的都合でダンディリーグのみの観劇になり
   ました。こちらを選んだのは、岡部さんの脚本という点が大きかった
   です。番外公演で脚本・演出をされた時の評判が結構良かったので、
   一度観てみたいと思ってましたから。
 
    普段のダッシュとは違って、特に走り回ることも叫ぶことも無く、
   基本的に会話が中心の展開。寮母がニューハーフ?だとか訳あり?の
   人物が妙に揃ってたりとか設定の少々突飛な点が多く目に付いたり、
   漠然と違和感や粗さを感じる時があったりはしましたけど、観ていて
   おもしろかったし、観劇後に嫌な気分や消化不良な感じを覚えたりは
   しませんでした。比較的淡々と会話が積み重なって進んでいく流れは、
   ちょっと小説っぽい趣があるかもしれません。
 
    普段だと人数が多いため、印象が薄い役者さんも結構いるのですが、
   そういう方々をいつもより集中して観られたのも面白いです。……と
   はいえ、一番インパクトが強かったのはやっぱり寮母役の佐藤太一郎
   さんかなぁ(笑)。いつもの公演だと硬派な役どころや怖いお兄さん
   系が多いので、今回は全然イメージが……アヤシイ役がまた、やけに
   はまってましたので、大笑いしてしまいました……それだけで終わる
   役ではないんですけどね、実は (^o^;
                            (02.2.24)

 ・MOTHER最終公演『Long Distance』:(8)

    大阪上本町・近鉄小劇場で2/9〜17の公演。
    2/17(千秋楽)に観てきました。
    P列(16列目)24番(右サイドブロック真ん中辺り)席での観劇。
 
    舞台は香港。
    恋人・メイと静かに暮らすため、泥棒稼業から足を洗うことにした
   ジェフ。これが最後だと友人・トニーに持ちかけられ、ある物を盗み
   に行くが、何故か警官隊の待ち伏せに遭い、仲間のディッキーを射殺
   される羽目に……捕まったジェフは、警察からある仕事を持ちかけら
   れる。ディッキーの双子の兄・ラウ刑事と共に麻薬密売組織を調べ、
   その正体を暴くこと。しかし正義感がやたらと強く、弟の件でジェフ
   を嫌うラウとはなかなか息が合わない。また一方で、ジェフはトニー
   が自分たちを裏切り、先日の一件を引き起こしたのではないかと考え
   始める。
 
    11年続いた劇団・MOTHERの最後の公演。……聞くところによれば、
   当初からその予定で活動していたとか。結構若い役者さんが多いので、
   その方々が今後どうしていくのかなぁ、と気になるところ。一部の人
   は5月あたりに組んで公演打ったりするみたいですけど。
 
    ある知人も言っていたと思うのですが、全編を通して、いかにも升
   さんのための作品って感じ(笑)原案も升さんだそうですし。
    人によっては、最終公演でまで座長芝居はしてほしくなかったとか、
   客演はいらなかったとか、そういった意見もあるようです。個人的に
   はどちらも特に気にはなりませんでしたが、思い入れの深いある種の
   ファンの方々にしてみれば、そう思うのも自然ではあるかも。私自身、
   第三舞台の時にはちょっと思いましたし(厳密には「封印公演」です
   が)、キャラメルボックスの時に客演さんがメインやってたらやはり
   落ち着かないかも知れません。
 
    前回の作品よりも私は好きかな。非現実すぎなかったし、出てきた
   謎はだいたい解決ついてたと思うし。途中、伏線がごちゃごちゃして
   きて少々こんがらがりそうにはなりましたけど……まぁストレートに
   「観て楽しめる作品」だったのではないかと。
    ラストは思いっきり「別れ」を意識させる流れでしたねぇ……その
   余波+千秋楽ということで、カーテンコールも凄かったし。計3回、
   30分弱。ある意味カーテンコールでお腹いっぱいな気分になりました
   (苦笑)
 
    客演の方について少し。近江谷さんはシンプルでクール、でもやっ
   ぱり……という感じでしょうか。キャラメルの時よりもギャグ関連は
   ずーっと抑えてますが。パンフレットに書かれていた「ライバル」に
   ついてのコメントも「あぁやっぱりね」てな感じで笑えます。
    前回に引き続きの岩橋さんは……今回はちょっと勿体無い、という
   か存在感が薄い。位置付けは一応ヒロインなんだろうけど、牧野エミ
   さんの方が出番も存在感もあったし……恋人って雰囲気もあまり感じ
   られなかったかも。うーん。
                            (02.3.3)

 ・自転車キンクリートSTORE『OUT』:(9)

    大阪上本町・近鉄小劇場で、3/8〜11の公演。
    3/10の昼に観てきました。
    E列(5列目・実質3列目)3番(左サイド左端近く)での観劇。
 
    2000年に初演があり、今回は再演。
    原作は日本推理作家協会賞受賞の同名小説。いつかは忘れましたが
   テレビドラマにもなってたかと。
    私はそのいずれも全く未見です。なので、内容はガイド誌に書かれ
   ていたあらすじ程度にしか知りませんでした。その部分だけでも結構
   すごい話なんですけど……実は本当に始まりにしか過ぎなかったんで
   すねぇ。
 
    ある意味、今まで観てきた舞台の中で、一番強烈でした。
    開演後30分か1時間ぐらいで中座した後列の人は、そのまま戻って
   きませんでした……(気持ちは凄く良く分かる)
    終演後にパンフレットを買いましたが、舞台が印象に残ったからと
   いうよりは、役者さんたちが舞台の世界よりも自分たちの日常に近い
   人たちだと思いたかったから、と言えます。それほどに凄まじかった。
 
    少しだけ言うなら、登場するある男女の関係は「恋」というよりは
   「愛」だろうな、と個人的には思いました。パンフレットでは「恋」
   とか「色恋」と表現されていますが。……普通に言う「愛」とは全然
   違うでしょうけどね、もちろん。
                            (02.3.10)

 ・『天保十二年のシェイクスピア』:(9)

    大阪厚生年金会館芸術ホールで、3/30〜4/7の公演。
    3/31(昼)に観てきました。
    2階A列(2階の最前列)43番(中央右ブロック右手)席での観劇。
 
    これを観に行くまでには紆余曲折がありました。日曜を狙っていた
   ものの取れず、会社の入社式が3/30と聞いていたので外して4/6分を
   何とか取り、なのに入社式が4/6に延期されてしまったため泣く泣く
   チケットを譲り、あちこち探し回って3/31のチケットを当日昼に確保
   した……という次第で。確保が寸前になったのは連絡に少々行き違い
   があったためで、本当に直前までヒヤヒヤしました。ふぅ。
 
    これを観に行ったのは、キャラメルボックス所属の上川さんが出る
   ということも勿論(笑)ありましたが、その他の出演陣も面白そうな
   人たちが勢揃いで、これは観に行かなきゃもったいない(特に小劇場
   系舞台好きとしては)と思ったからです。たぶん、他にも多くの方々
   が同じような理由でチケット確保に頑張ったことでしょう。
 
    感想はいくらか日記にも書きましたが……出ている方々の顔ぶれ+
   劇団☆新感線のスタッフさんが裏についてるとあって、見た目に大変
   豪華で贅沢な舞台でした。約4時間(うち休憩25分)とかなり長いの
   で行く前はちょっと腰が引けてましたが(苦笑)、いざ観はじめたら
   思っていたほど時間は気になりませんでした。たいてい開演後1時間
   ぐらいで時計を見てしまう癖のある私にしては珍しく、終演予定20分
   前まで見ようという気は起きませんでしたし。
    ……とはいえ同時に、観る人(というか、観るのをお薦めする人)
   を選ぶ舞台でもあるかなぁ、とも。作品自体が結構特殊だと感じます
   し……シェイクスピアの作品37本全てから多かれ少なかれ要素を拾っ
   て、日本風作品に構成し直した試みは興味深いし、すごいと思います。
   ですが純粋な「演劇」作品というよりは、「実験的要素」の強い作品
   といいますか……今回の公演は「お祭り公演」と時々言われていたの
   ですが、確かにそういう、ある意味遊びの入った公演にふさわしい、
   そんな作品という印象を受けました。(あくまで個人的には)
    だから演劇・観劇初心者よりは、ある程度舞台を見慣れた人・出演
   する役者さんたちに関してある程度知っている人・シェイクスピアに
   ある程度詳しい人etc向けなんじゃないでしょうか。もちろん、観劇
   慣れしてなくても、知らないことの方が圧倒的に多い人でも、楽しめ
   た人はいるかも知れませんけどね。
 
    役者さんについて、多少。
    上川さんは今回、とことん悪人の役だという話を聞いていました。
   なるほど、確かに善人ではないんですが……悪人というよりは「俗人」
   だったと私個人は感じました。すごーく姑息な俗人で、「うわぁ嫌な
   奴〜」とは思ったんですが、「凄い悪人」とまでは感じなかったんで
   すね……でもそれはそれで結構うまくいっていたと思うし(ご本人や
   演出の意図が「凄い悪人」だったら申し訳ないのですが (^^;)個人的
   には今まで上川さんで観たことのないタイプの役を見られて、おもし
   ろかったです。……ただし、何ケ所かの登場人物へのツッコミ方は、
   やっぱり普段(主にキャラメルで)の上川さんでした(笑)
    沢口靖子さん……かなりの割合で評価悪かったですね。声が聞こえ
   ないとか殺陣がダメダメだとか。まぁ、それには私も同感です。舞台
   向きとは言えないですね……失礼ながら、良くも悪くも「綺麗どころ」
   なんだなぁと。
    他、パンフレットで1ページor2ページ独占(笑)の役者さん方は、
   それぞれに良かったです。古田新太さん(今回は妙に真面目ないい人)
   や粟根まことさん(ちょっと影が薄い、見せ場のない役)の使われ方
   が勿体無くて物足りないというファンの皆さんの意見にも頷けますが。
                           (02.4.14)
 
 

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